2025年4月14日月曜日

学術会議解体法案 廃案以外の道はない/能動的サイバー法案 通信の秘密侵し戦争招く危険

 しんぶん赤旗に掲題の2つの記事が載りました。
 石破政権が日本学術会議解体法案の審議入りを急ぐ中、学術会議と連携する学協会の会長や研究者らは11日、国会内で「法案には廃案以外の道はない」と訴え、集会を開きました。

 法案は、学術会議を国の機関から切り離して特殊法人化し、首相が任命する「監事」「評価委員会」などを新設。政府から独立した科学者の代表機関である学術会議を政府の監督下に置こうとするものです
 3月18日付の日弁連会長声明を併せて紹介します。

 サイバー攻撃による被害を防止するとして、国民がスマホやパソコンなどで送受信する通信情報を常時収集・監視するとともに、警察や自衛隊が疑わしい海外のコンピューターに侵入し使用不能にすることを可能にする能動的サイバー防御法案が衆院を通過(8日)し、参院で審議されようとしています。
 しんぶん赤旗に「能動的サイバー法案 通信の秘密侵し戦争招く危険」という「主張」が載りましたので併せて紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
学術会議解体法案 廃案以外の道はない 学術関係者ら国会内集会
                       しんぶん赤旗 2025年4月12日
 石破政権が日本学術会議解体法案の審議入りを急ぐ中、学術会議と連携する学協会の会長や研究者らは11日、国会内で「法案には廃案以外の道はない」と訴え、集会を開きました。

田村委員長 決意表明

 法案は、学術会議を国の機関から切り離して特殊法人化し、首相が任命する「監事」「評価委員会」などを新設。政府から独立した科学者の代表機関である学術会議を政府の監督下に置こうとするものです。
 広渡清吾・学術会議元会長は、形式的な会員の任命権しか持たなかった首相が法案によって「全体を監督する地位を与えられる」と危惧を表明。小玉重夫・日本教育学会会長は、学術会議が軍事研究に一貫して慎重な姿勢を示してきたことを紹介し、学問を軍事に動員させないためにも、廃案に追い込むことが大切な課題だと強調しました。
 三成美保・ジェンダー法学会理事は、会員選考の自律性を保障している現行の学術会議は、現会員が次期会員を選ぶ方式で、会員の女性比率を急速に伸ばしたと指摘。「現行法に何ら問題はない」と述べました。
 吉村忍・学術会議第3部前部長は、混沌(こんとん)とした社会の中で、多様な学問領域の科学者が真の科学的合意形成を進める学術会議の役割を強調。国会議員に対し「国家百年の計における熟議」を求めました。

 日本共産党の田村智子委員長が「法案の危険性を知らせ抜いて必ず廃案に追い込む」と表明。小池晃書記局長、塩川鉄也国対委員長があいさつし、堀川あきこ衆院議員が参加しました。立憲民主党、社民党、れいわ新選組の議員もあいさつしました。
 集会は、法案反対のオンライン署名を呼び掛けている学者や法律家らでつくる16団体が主催。廃案に向け声をあげることを呼び掛ける声明を発表しました。


日本学術会議法案に反対する会長声明

政府は、本年3月7日、「国の特別の機関」とされている現在の日本学術会議(以下「学術会議」という。)を廃止し、国から独立した法人格を有する組織としての特殊法人「日本学術会議」(以下「新法人」という。)を新設する日本学術会議法案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、衆議院に提出した。

しかし、本法案は、当連合会がこれまでの会長声明(2023年2月28日「政府の「日本学術会議の在り方についての方針」に反対する会長声明」、2024年6月19日「日本学術会議の独立性・自律性の尊重を求める会長声明」)において指摘してきた問題点を払拭していない。そのため、本法案が成立すれば、時の政治権力から独立した立場で、政府に対し、科学的根拠に基づく政策提言を行うナショナル・アカデミーとしての学術会議の根幹をなし、学問の自由(憲法23条)に由来する独立性・自律性が損なわれるおそれが大きい。

本法案の最大の問題点は、学術会議が職務を「独立して」行うという現行法3条の文言が踏襲されず、政府を含む外部の介入を許容する新たな仕組みが幾重にも盛り込まれていることである。その仕組みとは、アカデミア全体や産業界等の会員以外の者から会長が任命する科学者を委員とし、会員の選定方針等について意見を述べる選定助言委員会(本法案26条、31条。以下の条項は本法案のものをいう。)、会員以外の者から会長が委員を任命し、中期的な活動計画や年度計画の作成、予算の作成、組織の管理・運営などについて意見を述べる運営助言委員会(27条、36条)、内閣府に設置され、内閣総理大臣が委員を任命し、中期的な活動計画の策定や業務の実績等に関する点検・評価の方法・結果について意見を述べる日本学術会議評価委員会(42条3項、51条)、内閣総理大臣が任命し、業務を監査して監査報告を作成し、業務・財産の状況の調査等を行う監事(19条、23条)、という各機関の設置である。これら各機関の設置は、活動面における政府からの独立性、及び会員選考における独立性・自律性というナショナル・アカデミーとしての生命線ともいうべき根幹を損なうものであり、学問の自由に対する重大な脅威ともなりかねない。

さらに懸念されるのが、新法人の会員の選任方法である。会員は「優れた研究又は業績がある科学者」のうちから選任されるが(9条2項)、会員候補者の選定に際しては「会員、大学、研究機関、学会、経済団体その他の民間の団体等の多様な関係者から推薦を求めることその他の幅広い候補者を得るために必要な措置を講じなければならない」とされ(30条2項、附則7条3項)、諸外国の多くのナショナル・アカデミーが採用している標準的な会員選考方式であるコ・オプテーション(現会員が会員候補者を推薦する方式)による選考方式が損なわれるおそれがある。その上、新法人が発足する際の会員については、現行の学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が会員予定者125人を指名すると定められているところ(附則3条1項)、その会員予定者を選考する候補者選考委員会の委員を会長が任命しようとするときは、内閣総理大臣が指名する有識者と協議しなければならないとされている(附則6条5項)。他方、新法人の発足時点で任期を残している現会員は、新法人の会員となるとされるものの3年後に再任されることはなく(附則11条)、上述した会員の選任方法が実施されることにより、新法人は現在の学術会議との連続性が途絶えることとなる。このような選考方式で選考された会員によって構成される新法人が、時の政治権力から独立した立場で科学的根拠に基づく政策提言を政府に行うという、これまで学術会議が果たしてきた任務を遂行することができるのかについては、大きな懸念を抱かざるを得ない。

また、これまで国の特別の機関とされてきた学術会議を特殊法人にすることにより、政府の財政措置は補助にとどまるとされ(48条)、その結果として、新法人には自主的な財政基盤の強化が求められ、ナショナル・アカデミーとしての安定した財政基盤を維持するための国家財政支出が確保されなくなることも強く危惧される。

加えて、2020年10月に学術会議会員候補者6名が任命拒否されて以降、当連合会はその違法性を指摘して、速やかにその是正を図るよう繰り返し求めてきたが、その問題を放置したまま学術会議の法人化を進めていくことも看過できない。

本法案からは戦後間もなく制定された現行法の前文に相当する規定もなくなっているが、そこにうたわれた科学者の初心に基づく学術会議の使命が見失われることを危惧する。
よって、当連合会は、政府に対し、あらためて2020年10月の学術会議会員候補者6名の任命拒否を是正してその正常化を図り、相互の信頼関係を構築することを求めるとともに、学術会議の独立性・自律性を損なうおそれが大きい本法案に反対する
                         2025年(令和7年)3月18日
                                日本弁護士連合会
                                会長 渕上 玲子


主張 能動的サイバー法案 通信の秘密侵し戦争招く危険
                       しんぶん赤旗 2025年4月12日
 サイバー攻撃による被害を防止するとして、国民がスマホやパソコンなどで送受信する通信情報を常時収集・監視するとともに、警察や自衛隊が疑わしい海外のコンピューターに侵入し使用不能にする。そうしたことを可能にする能動的サイバー防御法案が衆院を通過(8日)し、参院で審議されようとしています

 サイバー攻撃とは相手のコンピューターに不正侵入し、混乱させたり、機能停止にさせたりするなどの行為です。
 法案は、自治体を含む、電気・ガス・水道・鉄道・航空・金融といった基幹インフラ(社会基盤)の事業者などへのサイバー攻撃による被害を防止するのが目的とされています。しかし、衆院での日本共産党の論戦を通し、法案の重大な問題点や危険性が浮き彫りになっています。

■同意なく情報収集
 第一に憲法が保障する「通信の秘密」を侵害します。
 基幹インフラの事業者などは、政府との協定に基づき利用者との間で通信する情報を利用者の同意なく政府に提供することになります。
 政府は、取得した通信情報から送受信先を示すIPアドレスやメールアドレスなどの「機械的情報」を取り出しそれ以外は直ちに消去するとしています。しかし、IPアドレスは、スマホやパソコンなどインターネットに接続する個々の機器に割り当てられる識別番号です。手紙で言えば住所に当たり、それ自体が「通信の秘密」の対象です。
 しかも、政府が情報を恣意(しい)的に選別していないか、手紙の中身に当たる「機械的情報」以外の内容を実際に消去しているのか、を確かめる制度はありません
 収集した情報は外国政府など第三者に提供することもできます。サイバー攻撃による被害防止の目的以外にも利用できる規定があり、警察や自衛隊が自らの業務で使用することも可能です。これは、警察が風力発電事業に反対する市民の個人情報を収集し民間企業に提供したことを違法と断じた「大垣事件」判決をないがしろにするものです。同事件では、警察が市民のメールの内容を把握していたことも明らかになっています。
 衆院での法案「修正」で「通信の秘密」の尊重規定が入りましたが、法案の仕組み自体は何も変わっていません。

■違憲の先制攻撃へ
 第二は自衛隊と警察が憲法と国際法に反した先制攻撃に踏む込む危険です。
 自衛隊と警察は収集した情報に基づき疑わしいと判断した海外のコンピューターに侵入し使えなくする「無害化措置」を行うことができます。相手国の同意もなく「疑い」だけで無害化措置を行えば重大な主権侵害、先制攻撃とみなされる危険があります。
 政府は、海外で戦争する米軍を安保法制に基づいて自衛隊が支援する際、相手国への無害化措置も可能としています。相手国からは日本が参戦したとみなされ、戦争の危険を呼び込むことになります。
 警察は犯罪の処罰を超えた無害化措置を裁判所の令状なしに実施でき、警察のあり方は大きく変質します。
 憲法と国際法を踏みにじる法案は廃案しかありません。