シリーズ「学術会議 解体法案の狙い」の(6)です。
この項では法案が、首相が学術会員以外の者から任命した「監事」が、学術会議の組織、業務の全般にわたり監査を行うとしていて、同会議が政治権力(首相)により日常的に監督される恐れを予感させます(監事の資格や資質に開する規定はありません)。
また「評価委員会」を内閣府に設置し、学術会議に6年の中期的な計画および年度計画を作らせ、自己点検・自己評価を行わせそれを評価委員会に報告させるとしています。
これらは、元会長の山極 壽一氏が「日本学術会議は会議体であり、大学のような実行組織ではなく、その時々の事象について、科学的な見地からそれを分析・評価し、解決策を講じて、それを政府やさまざまなステークホルダー(利害関係者)に提案する」ものという、本来の在り方に真っ向から反するものです ↓
(4月21日)ストップ!学術会議解体法案 忖度政治の悪しき側面 独立・自律性損なう恐れ
また国からの補助金を口実に、学術会議に介入しようとする発想も「浅ましい」というしかありません。
いずれにしても監事や評価委員には本来高い知性と見識が求められますが、一体どんなメンバーが選ばれるのか、そしてその結果どんな学術会議に変わってしまうのかは、全く予断を許しません。
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学術会議 解体法案の狙い(6) 首相による日常的監督
しんぶん赤旗 2025年4月23日
現在の国家機関としての学術会議の「職務と権限」が、法案では法人の「業務」とされ、現行法第3条の「独立して職務を行う」との規定は消失し、「その運営における自主性及び自律性に常に配慮」に置き換わります。その意昧とは-。
法案では、学術会議の業務運営は、新設される「監事」や「評価委員会」による監督を受けることになります。この監督を前提にした「自主性及び自律性」のレベルでの「配慮」にとどまるのです。つまり、政府の監督下の業務で〝自主性はできるだけ尊重しよう″という程度の「配慮」のもとで、政府による業務への監督・介入を受けることが原則となるのです。
自律に疑問
具体的には、「監事」は「会員以外の者」から内閣総理大臣が任命し、学術会議の組織、業務の全般わたり監査を行います。監事の資格や資質に開する規定はなく、文字通り政治権力=首相による日常的監督となる恐れがあります。
「評価委員会」は「内閣府に置かれ、その委員は「会員以外」から内閣総理大臣が任命します。
学術会議は「中期的な活動計画」の作成を義務付けられ、作成に際しては評価委員会の意見を聞くことを求められます。また、毎事業年度の終了後に「自己点検評価書」の作成と評価委員会への提出を義務付けられ、厳しい説明義務を負います。
評価委員は「内外の社会経済情勢」に高い見識を持次ことも要件とされ、学術的観点以外からの「評価」に縛られる懸念があります。
このほか運営助言委員会が置かれ、会長の職務に関し意見を述べるとされ、同委員会の委員も「会員以外」から会長が任命します。ここでも委員の要件として「内外の社会経済情勢」に高い見識を持つことが要件とされます。
こうして法案は、会員選考への介入も含め、内閣総理大臣を背景とする外部者による監督で学術会議をがんじがらめにします。科学者の「自律的組織」と呼べるものになるのか、大きな疑問と懸念が広がっています。
また、学術会議会員は、違法・不正な行為だけでなく「著しく不適当な行為」を理由に解任されます。「不適当」の意味は不明確です。
さらに、役員、会員、職員のすべてに対し「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」(34条)と守秘義務が課され、違反者は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。軍事動員の狙いとの関係で、特定秘密保護法の範囲にとどまらない秘密保持の強制が懸念されます。
学術会議法1条3項で「日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする」としているのに対し、法案48条1項は「政府は、予算の範囲内において、会議に対し、その業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができる」とします。財政的基盤について国が責任を持つ体制から、「法人」とすることで「補助」にとどめます。ナショナル・アカデミーの5要件の一つ「国家的財政支出による安定した財政基盤」の確保が大きく揺らぎます。不足分は民間からの寄付など自主財源をつくることで賄えということです。
(PDF)図解 政府案による学術会議の運営 ↓
https://drive.google.com/file/d/17DJm3vgFSJ8ACLdSKULRppBOeqffbIGb/view?usp=sharing
財政通じて
一方で、「補助金が出る以上、国の監督が必要だ」とする論理を押し付けます。総じて、財政を通じて揺さぶるもので、この面からも学術会議の運営に介入する狙いが透けて見えます。
(つづく)