2025年12月29日月曜日

軍事ローン17・9兆円 最大更新 予算案本体の2倍 戦前の反省軽視

 高市氏が首相になった時点では円の価値は1ドル=147円でしたが、現在では156円まで下落しました。円が下落すれば国債の金利が上がり、国債の価値はその分下がります。円が下がるのは世界の専門家が日本の円を信認していないということであり、「サナエノミクス」を信用していないことです。

 高市首相は自分の経済政策を「サナエノミクス」とか「積極財政」などと称していますが、日本経済をここまで弱くした「アベノミクス」の追随であれば話にならないし、では その失敗をどのように克服する方針であるのかについては何も明らかにしていません。一部の高市ファンは別にして、経済の専門家で高市路線を支持している人はいないのではないでしょうか。

 高市氏が何故年間の軍事費を11兆円/に、そしてやがては21兆円まで上げることに何の躊躇もしていないのは本当に不可解です。軍事費ほど有害で無益なものはありません。それを有益なものに見せるための仕掛けが「近隣国の脅威を煽る手法」に他なりません。一つの財布から出る軍事費が突出すれば、その分民生用の費用が圧縮されることは当たり前のことで、その打撃を最も受けるのは経済的弱者です。

 しんぶん赤旗が来年度予算案に関連して以下の4つの記事を出しましたので紹介します。
 ・軍事ローン17.9兆円 最大更新 予算案本体の2倍 戦前の反省軽視
 ・軍事費 初の9兆円超 26年度予算案 閣議決定 社会保障は自然増を圧縮
 ・国債費増で財政危機 新規発行29兆円超 金利急騰

 ・26年度政府予算案について 小池書記局長が談話
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軍事ローン17.9兆円 最大更新 予算案本体の2倍 戦前の反省軽視
                      しんぶん赤旗 2025年12月28日
 防衛省の2026年度予算案で、高額兵器の購入費などを複数年度に分割で支払う軍事ローン「後年度負担」が総額17兆9524億円に上り、過去最大を更新しました。25年度より2・3兆円増加。予算案本体(9兆353億円)の約2倍のツケを将来に回しており、予算の硬直化を招いています。
 内訳は、▽26年度の契約に基づき27年度以降に支払う「新規後年度負担」が6兆8860億円 ▽25年度以前の契約に基づき27年度以降に支払う「既定分の後年度負担」が11兆664億円。新規分は25年度より93億円減とほぼ横ばいで、既定分は2・3兆円増加。既定分が10兆円を超えたのは初めてです。

 後年度負担は次年度以降の軍事費(防衛省予算)にローン返済分にあたる「歳出化経費」として計上します。同経費は26年度予算案で4兆6857億円に上り、防衛省予算全体の51・9%を占めました。後年度負担の急増により27年度以降の軍事費の膨張をもたらします。
 政府は、軍事費を特例扱いして侵略戦争に突き進んだ戦前への反省から、憲法に基づき予算の「単年度主義」をとってきましたが、高額兵器の購入などは特別扱いしています。軍事費2倍化を盛り込んだ安保3文書に基づき23年度から新規分を急増させ、軍事ローンを野放図に膨らませています。「軍事最優先」のゆがんだ予算となっており、戦前への反省を軽視しています。

















軍事費 初の9兆円超 26年度予算案 閣議決定 社会保障は自然増を圧縮
                      しんぶん赤旗 2025年12月27日
 高市早苗内閣は26日、2026年度政府予算案と「税制改正大綱」を閣議決定しました。高市内閣にとっては初めての予算編成です。7月の参院選で当時の自民・公明与党は過半数割れとなりました。消費税減税を求める政党が多数を占めたのにもかかわらず、その要求に背を向け、軍拡と大企業優遇を続けます。一方、社会保障など国民生活を支える予算は抑制する「逆立ち予算」です。日本共産党の小池晃書記局長は同日、談話を発表しました。(小池書記局長は下記




 26年度政府予算案の一般会計総額は122兆3092億円で過去最大を更新しました。120兆円を超えるのは初めてです。国債費は6年連続で過去最大を更新し、31兆2758億円と初めて30兆円を超えました。失政による金利上昇を受け、想定金利を25年度の2・0%から3・0%に引き上げるためです。


 26年度の予算編成では物価高騰を受け、概算要求段階で各省庁の政策判断で使用できる裁量的経費について、前年度当初予算から1割削減することを前提としてきたこれまでの基準を改め、「前年度当初予算に相当する額」を要求できるとしました。それにもかかわらず「予算全体のメリハリ付け」などとして暮らし関連予算を削減しています。
 社会保障関係費は25年度当初予算比7621億円増となる39兆559億円でした。概算要求時には4000億円と見積もっていた自然増を、高額療養費制度の負担額を引き上げる▽OTC(市販)類似薬の保険給付はずし―などの制度改悪で1500億円も圧縮しました。文教予算では教員不足が深刻になっているのに、公立小中学校の教員定数を2548人も削減します。
 一方で軍事費は突出して増やし、過去最大の9兆353億円を計上しました。米国の対中国戦略に基づき、日米の軍事一体化を狙い、長射程ミサイルや小型無人機(ドローン)を大量取得します。
 内閣官房は情報収集衛星等の開発・運用として622億2600万円を計上。内閣府は準天頂衛星システムの開発・整備・運用の推進として169億600万円を盛り込みました。
 大企業優遇も目立ちます。経済産業省はAI(人工知能)・半導体への支援に1兆2390億円を計上しました。次世代半導体の量産化に向け、ラピダスを念頭に1500億円を出資することなどが盛り込まれています。GX(脱炭素)を口実に、次世代革新炉の技術開発などの支援に25年度比331億円増の1220億円を盛り込むなど、原発推進にも固執しています。
 米トランプ政権との関税交渉のなかで押しつけられた5500億ドルの対米投融資への対応として、日本貿易保険に1兆7800億円の交付国債を投じます。民間投資のリスクを国民に押しつけることになります。
「税制改正大綱」では軍拡財源として、防衛特別所得税(仮称)を創設し、27年1月から徴収するとしました。「大胆な投資促進税制」を創設し、大企業などに平年度4100億円もの減税の恩恵を与えます。所得税の課税最低限を現行の160万円から178万円に引き上げます。ただ、参院選で国民要求が強かった消費税減税には触れていません


国債費増で財政危機 新規発行29兆円超 金利急騰
                      しんぶん赤旗 2025年12月27日
 2026年度政府予算案では国債の新規発行が29兆5840億円と2年連続で30兆円を下回りました。歳入に占める国債収入の割合である公債依存度も25年度当初を下回る24・2%でした。国債費を除く歳出を税収・税外収入で賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)は一般会計当初予算として28年ぶりの黒字です。26日の記者会見で木原稔官房長官は「強い経済の実現と財政の持続可能性を両立させる予算とすることができた」と胸を張りました。
 しかし市場の財政への見方は甘くありません。高市早苗政権の発足移行、国債金利は急騰し2%前後の高水準で推移します。国債価格が暴落し、いっそうの円安に陥りかねません
 根底に高市政権の「責任ある積極財政」があります。これは国債を大量発行しても、財政支出で経済が金利上昇よりも大きく成長すれば、財政危機には陥らないという議論です。しかし、26年度政府予算案や「税制改正大綱」からも明らかなように、大企業への支援や軍事費に大盤振る舞いし、国民が求め、経済成長に直接つながる消費税減税には背を向けています。
 金利が上がり続ければ国債費が増大し、財政は硬直化します応能負担の税制と暮らし・社会保障中心の歳出へと税財政構造を転換させる必要があります


26年度政府予算案について 小池書記局長が談話
                      しんぶん赤旗 2025年12月27日
 一、本日、高市内閣が閣議決定した2026年度予算案は、国民の願いであり、日本経済立て直しのカギである消費税減税や賃上げには背を向け、軍事費を異常に突出させるとともに、大企業へのばらまきと、トランプ政権の要求にこたえた対米投資支援を拡大するという、大軍拡、財界・大企業優先、対米屈服の予算案となった。

 一、軍事費は当初予算として初めて9兆円を超え、関連経費を含めれば10兆円規模となる。補正予算の追加でGDP比2%を前倒し達成した25年度に続いて、当初予算でも2%に迫る規模となった。高市政権は、トランプ政権の要求にこたえて、来年中にも「安保三文書」を改定し、GDP比3・5%、21兆円以上となるいっそうの軍拡に踏み出そうとしており、それに向けて突き進む予算となっている。
 軍事費の中身は、極超音速誘導弾など他国に撃ち込むための長射程ミサイルの開発・取得、攻撃用ドローン取得、次期戦闘機開発など、安保法制のもとで米軍とともに戦争する国づくりに向けたものが目白押しとなっている。軍事対軍事の軍拡競争、軍事的緊張をさらに激化させ、平和を脅かす危険な予算である。
「軍拡増税」では、この間政府が先送りしてきた所得税への上乗せに踏み込み、年度中に増税を開始しようとしている。平和も暮らしも踏みにじる大軍拡計画は断じて許されない。

 一、一方、国民の命と暮らしを守る社会保障の予算は2%増と、物価上昇に遠く及ばない予算が続いている。年金改定率も2%の見込みとされ、3%以上とされる物価上昇に比べて、大幅な目減りが必至である。それにくわえて、石破政権時に「凍結」された高額療養費の負担増が「復活」し、OTC類似薬の追加負担導入、「子育て支援」と称する医療保険料への上乗せ負担の開始(初年度0・6兆円)など、給付削減と負担増が目白押しとなっている。
 国会での多数派工作のために追加する所得税の減税は、低所得者への恩恵は乏しく、中堅層への減税上乗せも2年限りの措置となっている。すべての人に行きわたる消費税の減税こそ必要である。
 前政権が掲げてきた「2029年までに最低賃金1500円」の目標もあっさり投げ捨て、中小企業の1割にも満たない適用しかない「賃上げ減税」を除けば、賃上げのためのめぼしい予算はない。介護労働者の賃上げでも、肝心の訪問介護の基本報酬は引き下げられたままとなっている。
 中小企業対策費は+0・3%、農林水産関係予算は+1・1%と、いずれも物価に追いつかない低い伸びである。教育予算は、国民の運動で実現した給食費負担軽減などで増額となっているが、学費値上げと大学の危機が深刻になっているにもかかわらず、国立大学運営費交付金+1・7%、私立大学経常費補助+0・3%と物価高騰に遠く及ばない。教職員多忙化を解決する教員増などにも背を向けている。
 物価高騰に苦しむ国民の暮らしを応援するうえでも、大企業のもうけが株主と内部留保にしか回らず経済に還流せずに格差が拡大するという日本経済のゆがみをただすうえでも、本予算案はまったく無策であると言わざるを得ない。

 一、AI・半導体企業への1・2兆円もの支援をはじめ、企業への投資減税0・4兆円など、大企業には大盤振る舞いの予算となっている。トランプ政権の理不尽な要求に屈服して政府が進める「80兆円対米投資」に向けて、日本貿易保険への交付国債1・78兆円が計上されたが、これは民間投資のリスクを国民に押し付けるものである。

 一、予算規模は122・3兆円と、過去最大となり、金利の上昇で国債費も過去最大となった。政府は新規国債発行を30兆円以内に抑えたとしているが、GX債、AI債、子育て債など、特別会計で別途発行される「隠れ国債」によって糊塗(こと)した結果にすぎない。高市政権の財政運営は、「責任ある積極財政」どころか「無責任な放漫財政」にほかならず、国債金利の急騰=国債価格の暴落のリスクを高め、いっそうの円安と物価高騰を招くおそれが拡大している。こうした事態を防ぐためにも、大軍拡や大企業へのバラマキを中止し、大企業・富裕層優遇税制をただす税制改革に踏み出すことが必要である。

 日本共産党は、暮らしと平和をまもるため、政府予算案の抜本的な組み替えを求めてたたかうものである。