2025年12月31日水曜日

31- トランプ化で激動した2025年

 田中宇氏が掲題の記事を出しました。
 田中氏が「米国の隠れ多極派」云々を言い出してからあちこち20年かそれ以上になるのではないでしょうか。
 トランプが登場してから世界の多極化は明瞭になりましたが、そのことに何も気づいていないのが日本であり、日本の外務省です。
 ただ不幸なのは、トランプが依拠している情報組織がイスラエル系のリクード派であるという点であり、トランプが今後もイスラエルの「非人道性」を阻止できないことを思うと絶望です。英国系の情報組織を凌駕するためには、そうするしかなかったということなのでしょうが。
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トランプ化で激動した2025年
                田中宇の国際ニュース解説 2025年12月30日
2025年は、トランプ政権になった米国が世界を大転換させていく激動が始まった1年間だった。大転換はこれから何年もかけて進むので、世界は2026年も激動し続ける。
世界は、戦後ずっと続いてきた英国系の米単独覇権体制(冷戦構造も、英米が中ソや反米左翼に「敵」を演じさせていた点で、単独覇権体制の一部だった)が崩れ、いくつもの「極」が立ち並ぶ多極型の覇権構造に転換していく。トランプが進めている大転換の本質は「多極化」であり「英米覇権の崩壊・自滅」である。トランプの多極型世界戦略

2025年にトランプが起こした最大の転換は、ウクライナ戦争の構図を「米英欧が団結してウクライナをテコ入れし、対露戦争を続ける」から「米国がロシアと結託してウクライナ戦争を終わらせようとする(演技をする)が、英欧が露敵視をやめたがらず、米国と英欧が対立する」に変えたことだ。
露敵視によって米英欧が団結して英米覇権を維持する策は、本質的に、戦後の覇権国になったはずの米国の上層部(諜報界)を前覇権国である英国が傀儡化し、英国が米覇権体制(=世界)を牛耳り続けるための策略だった。
バイデン前政権など、トランプ以前の米上層部は本質的に「英傀儡」「英国系」であり、英国系による支配を維持するためにロシア敵視が使われてきた(独仏EUや日豪の上層部も英傀儡)。

ウクライナ戦争も、英国系が露敵視によって米覇権を強化する策として始まった。だが実のところあの戦争は逆に、英国系を自滅させる謀略として最初から用意されていた。
米英欧がウクライナに支援した兵器類が戦場で露軍によって破壊され続け、米英欧が軍事力を浪費して自滅を深め、戦線自体は、ロシアが奪回したかったドンバス地方を取ってロシア領に編入した状態で膠着し続ける。
ロシアが大体勝った状態で、米英欧の軍事力が浪費される構図が早期から定着していた。今後もこの状態が続く。ウクライナ戦争は2026年末になっても続いているだろう。ウクライナ戦争の永続

トランプは表向き停戦しようとし続けるが、実際は停戦せず、停戦仲裁の茶番劇だけが続く。トランプは「反英」であり、ウクライナ戦争は英潰しの策だからだ。
トランプが大統領に返り咲いた後、米上層部の英国系は駆逐され、英傀儡である民主党はもう政権を取れない。トランプは、米国を英傀儡から離脱させた。
日本も高市政権が英傀儡の官僚機構の独裁体制を破壊し始めている。日本も英傀儡でなくなる。豪州などもいずれ変わる。英国系が残っているのは、英欧EUだけだ。
ウクライナ戦争が続くほど、英欧EUの英国系は、敗北が確定した対露戦争の構図の中にはめ込まれ続けて国力を浪費し、自滅していく
トランプもプーチンも、英国系を自滅させたい。米露は裏で連絡を取り続け、表向き停戦に努力しているかのように演じつつ、実際は停戦せず、英国系が完全に自滅するまで、ウクライナ戦争の構図を続けていく

2025年に大騒動だった(そして今後も延々と続きそうな)もう一つの戦争は、イスラエルのガザ戦争=パレスチナ抹消策だ。ガザ戦争も、英国系覇権の崩壊と関連している
イスラエルは、意図的に極悪な人道犯罪をやって世界をわざと怒らせている。なぜそんなことをするのか一見理解に苦しむ
だが、パレスチナ問題が、イスラエルを弱めたい英国系の謀略だったことと、人道主義が英国系の覇権戦略の根幹にあった策略だったこと、トランプ政権下で諜報界を握るイスラエルが大きな国際政治力(覇権)を持っていることを考えると、イスラエルは、強烈な人道犯罪をやっても潰されずむしろ台頭していくことを世界に示すことで、人道主義ごと英国系を無力化しようとしていると考えられる。ずっと続くガザ戦争

イスラエル(ユダヤ人)は、諜報や覇権の元祖だ。人類初の世界帝国だった英覇権(大英帝国)は、ロスチャイルドなどユダヤ人の諜報ネットワークの技能を使って世界を隠然と動かし、覇権をとって維持していた。
第二次大戦後、イスラエルが大英帝国から分離独立したが、その際に、独立したイスラエルが諜報力を使って独自の覇権を拡大したり、台頭して英国系に対抗せぬよう、イスラエルを弱体化させておく英国系の策が、イスラエルの国土を狭くする「パレスチナ分割」(や、ヨルダンやシリアやレバノンの建国)とか、英国系が諜報力でアラブ諸国を誘導してイスラエルと恒久戦争させる「中東戦争」だった

英米の上層部では、第二次大戦での英国から米国への世界覇権の移譲以来、世界覇権を分解して多極型にしたい米国勢(ロックフェラーなど。隠れ多極派)と、英国系の単独覇権を維持したい英国勢が暗闘し、英国系が冷戦を起こして多極派を封じ込めのに対し、多極派はベトナム戦争をわざと稚拙に過激にやって敗北させて覇権の自滅を引き起こし、米中和解や米ソ和解につなげた。

冷戦を終わりにされた英国系は「英米欧vs敵勢力」の覇権構造を復活するため、イスラム世界を敵に仕立てる第2冷戦的な「文明の衝突」を画策し、台頭してきそうなイスラエルもついでに騙して第2冷戦の分断の構図にはめ込もうとした(この部分は今回の新説)。それで出てきたのが、イスラエルの傀儡になるパレスチナ国家(PA)を作ってパレスチナ問題を終わりにするオスロ合意の構想だった。
オスロ合意でのパレスチナ国家は、ヨルダン川に接しておらず国土が完全にイスラエルに囲まれ、財政もインフラも治安維持もイスラエルの監視下に置かれる傀儡国家だった。イスラエル(労働党政権)は、これなら脅威にならないと判断し、アラファトを迎え入れてオスロ合意を結んだ。

だが、おそらくオスロ合意は、英国系がイスラエルを騙した罠だった(独自の新説。同時期に米国で「文明の衝突」から始まって、クリントン政権によるタリバン敵視策(ユノカルパイプライン案などのアフガン融和策から、「ならず者国家」策など敵視への転換)へとつながり、イスラム世界への敵視が強められた。
イスラエルがあのままパレスチナ国家の建国を進めていたら、2000年ぐらいにパレスチナ国家が完成して軽武装した警察隊が作られたあたりで、イスラム主義を強めたパレスチナ人と、今よりはるかに人道重視だったリベラルなイスラエルとの関係が悪化し、イスラエルは内部内戦的な不安定を恒久的に抱え込まされていた。

実際は、英国系が第2冷戦を起こして単独覇権を蘇生する前に、反英的な米国の隠れ多極派がイスラエルと米国のユダヤ人の右派(リクード系)と結託し、ラビン暗殺や入植地の急拡大に始まるイスラエルのパレスチナ敵視と右傾化、反リベラル化が始まった
リクード系は、もともと英国系が起案した「文明の衝突」の謀略を進める実働部隊のふりをして米諜報界に入り込んで乗っ取り、隠然と拡大していくはずだったイスラム敵視策を、911テロ事件やイラク戦争など超派手で過激で稚拙なテロ戦争に変質させた。
私の新たな仮説は、もともとイスラム世界を敵とする第2冷戦として英国系が起案したテロ戦争を、リクード系が途中で乗っ取り、英国系が企図しない外道的な911事件やイラク戦争を起こし、戦略を過激で稚拙なものにして、米英覇権を自滅させる策に転換したというものだ。
隠れ多極派が、リクード系を誘ってオスロ合意潰しや911事件、米諜報界の乗っ取りをやらせ、ライバルである英国系を潰した。諜報界では、謀略の乗っ取りや諜報員のなりすまし(背乗り)などが珍しくない。英国系潰し策としてのガザ虐殺

911事件以来、米覇権の運営担当だった諜報界はリクード系に乗っ取られ、もともとの黒幕だった英国系が追い出されていった。リクード系による米諜報界乗っ取りの完成が、トランプの登場だった(ウクライナ戦争を起こすために、諜報界が米民主党に不正をやらせてトランプをわざと落選させた後に返り咲かせた)。
ガザ戦争は、トランプの返り咲きが事実上内定した直後の2024年秋に開戦(ハマスを引っ掛けて侵攻させる策)した。開戦直後から、ガザ市街を全破壊する民族浄化の流れが見えていた。それまでイスラエルに脅されてもガザ市街から南部に避難しなかったガザ市民が大量に南部に避難した。

トランプの返り咲きが内定した時点で、世界的に英国系が潰されて米単独覇権がなくなり、多極型に転換することが決まった。イスラエルは、多極型になった世界がイスラエルにパレスチナ国家を作れと加圧できないようにするため、トランプ返り咲きの内定と同時に、パレスチナ抹消のガザ戦争を開始した
ガザ戦争は、今後も停戦しない。停戦したら、ガザ市街(=パレスチナ)を再建しろという話になるからだ。
世界的に、パレスチナ国家を作れと言い続けているのは、リベラル左翼とイスラム主義者たちで、彼らはいずれも英国系の(うっかり)傀儡だ。今後英国系の自滅が進んで力が不可逆的にゼロになったら、パレスチナ国家を作れと言っているリベラル左翼やイスラム主義者たちも頭が切り替わる。人道主義を求める世界的なちからが大幅に低下する。それまでイスラエルはガザを瓦礫の山のままにしつつ、西岸の人道犯罪を拡大する
トランプやイスラエルと親しくする世界各地の極右は、人道主義を軽視し、イスラム教徒にも手厳しい

米諜報界を乗っ取ったイスラエル(リクード系)は、非常に強い国際政治力を手にした。リクード系は、英国系の単独覇権を居抜きで取得した。単独覇権は崩壊しつつあるが、ある程度の力として残っている。
イスラエルはこの残余の覇権を使い、世界各地の諸国と関係強化していく策を展開している。アゼルバイジャンやカザフスタンやソマリランドなどのイスラム諸国が、ガザ戦争の人道犯罪を批判せずイスラエルとの国交を深めている。
トランプは、イスラエルが乗っ取った諜報力に依存しているので、イスラエルを助ける策を連発している。この点もイスラエルを強くしている。
イスラエルが国際政治力(覇権)を発揮するほど、多くの諸国がイスラエルへの非難を控える。

BRICSでも、中共や南アやブラジルはパレスチナ支持だったが、中共は最近パレスチナ支持を言わなくなった。南アはイスラエルをICJに提訴したが、トランプから制裁されるなど報復されている。
イスラエルは、ブラジルの左翼政権をへこますために、隣のアルゼンチンの右派ミレイ政権をテコ入れしている。ブラジル左翼政権は、右翼の前任者ボルソナロを投獄したが、イスラエルやトランプが諜報力を発揮し、いずれボルソナロは免罪され、本人もしくは息子が大統領に返り咲く

ウクライナ戦争もガザ戦争も、英国系潰しや多極化に関係しているのでまだ続く。2026年末までに終わらない
イスラエルの覇権拡大についても、まだ分析していない話がある。たとえば、日本で高市政権ができたことが、イスラエルの覇権拡大としての中国牽制策の一つだろうという話とか。いつも、肝心な話を書く前の基本的(マンネリ)な解説をするのに延々とかかり、肝心な話を書けずに終わる