2025年12月25日木曜日

首相補佐官の尾上定正が「核保有すべき」とオフレコ観測気球 - マスコミは糾弾せず看過

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 論旨は明快で、官邸幹部が(12人だったかの)記者たちをまえにオフレコと断って、「日本は核保有すべきだ」と発言したのは、高市氏の指示のもとで上げた「観測気球」であるというものです。
 その結果は、取り分け大問題とはならなかったわけで、それを確認できたことで「観測気球」の役割は十分に果たせました。

 しかしそのことと米国を含めた海外の諸国が日本の核保有を認めるかどうかは別問題です(例の「敵国条項」との関係もあります)。その点を全く考えていなかったのであれば「台湾有事」と同じ轍を踏んだことになります。

 併せてしんぶん赤旗の記事:「軍拡の帰結 『核保有』発言 NHK討論で山添氏 対話の外交こそ」を紹介します。
 自民党、維新の会、参政党の反動性は目を覆うばかりです。
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首相補佐官の尾上定正が「核保有すべき」とオフレコ観測気球 - マスコミは糾弾せず看過
                       世に倦む日日 2025年12月23日
師走も押し詰まろうとする時期に、また重大な陰謀事件が起きた。臨時国会が閉幕した 12/18 の夜、官邸幹部の一人が「日本は核保有すべきだ」とオフレコで発言、翌 12/19 に各社から報道されて大問題となった。発言は記者団を前にした 非公式取材”のものと説明されていて、すなわち官邸の番記者を全員集めた上での行動だ。この一事だけでも驚愕して卒倒する出来事であり、全身の神経が麻痺するほど衝撃を受け、X や note に何と書いて憤激や恐怖を表すべきか悩んで戦慄したが、それ以上に驚いたのは、そこから1日経っても2日経っても、発言者が特定されず、非難が爆発的に集中する事態にならなかった問題だ。糾弾の声が燎原の炎の如くに広がらなかった。昭和も遠く..否、平成すら遠くなりにけりで、日本の国の政治の絵とは思えない。上皇ご夫妻は仙洞御所でどう思われているだろう。正直、喪心状態でいる。目の前の現実が信じられない

以前なら、と言うか、普通なら、12/19 のワイドショーに田崎史郎や佐藤千矢子のような政治記者が出てきて、この「官邸幹部」の特定に繋がる輪郭像を示唆し、それを番組コメンテーターが叩き、続いてネットのXが炎上の奔流となり、名指しされた「官邸幹部」に批判のボルテージが昂まっただろう。12/19 夜 にも罷免の決定と会見という展開になり、早期収拾が図られたはずだ。だが、今回はそうならない。糾弾と馘首という流れにならず、高市政権の打撃と挫折という進行にならない。逆に、閣僚や野党や自民党からは「官邸幹部」に内在する声が上がり、核保有論は選択肢の一つだと言い、自由な政策意見を認めろという声が上がり続けた。小泉進次郎や河野太郎や玉木雄一郎が容認論を言っている。さらに、オフレコ発言なのに報道の表面に出したマスコミが悪いという声が一斉に上がり、右翼が中心になってマスコミ叩きの声が多数であるかのような景観が出現している

今回のようなオフレコの政治は、典型的な観測気球の政治に他ならない。過激な、世間から拒否反応の多い政策を、政治家が匿名でマスコミを通じて打ち上げ、世間の反応を窺って反発と支持の度合を測り、同時にその政策が政治空間で市民権を得るべく布石と地均しを図る政治だ。普通は、こうした政策に関わるオフレコ政治は、自民党の幹部や政調の要職者や族議員の重鎮がやるもので、政府の外から打ち上げ、同調するマスコミ記者が広めて世論化するものである。そしてまた、その政策発信の中身が毒性が強すぎ、世間のアレルギー反応が激越で、政権の支持率低下を招くリスクのある場合は、最初から役職辞任とか謝罪謹慎とかの責任対処の始末を決めて覚悟した上で臨む行為だ。けれども、今回は政府の中枢からアドバルーンが打ち上がった。異例中の異例の事態であり、さらに時間が経っても特定されず、責任追及されないまま、むしろ暴言が正当化される空気が作られている

その人物は、首相補佐官で安全保障政策担当の尾上定正だと推定されている。高市早苗と同じ奈良県出身で66歳。防衛大卒で元空将。笹川財団の上席フェロー。高市とは飲み友達の昵懇の関係らしく、今年5月には日本会議の講演会に二人で揃って登壇していた。高市の身内中の身内の人物だ。尾上定正の名前が浮上したのは 12/19 の正午頃だったが、私はこの情報が俄かに信じられなかった。通常、いくら防衛系で霞が関とは別系統だと言っても、官僚はこういう政治家の真似事は絶対に厳禁だからである。12/18 夜にこの問題が騒動になった時点で、私はてっきり、維新の遠藤敬の発言だろうと推測していた。内閣官房の幹部として正式に紹介されているのは、補佐官5名を含む18名で、うち7名が政治家であり、残り11名が官僚だ。7名のうち、官房長官の木原稔と官房副長官の尾崎正直は絶対に切るわけにはいかない。とすると、佐藤啓か補佐官3名のうち誰かという引き算になる

最も切りやすい(責任の軽い)立場にいて、4人の政治家の中で安保政策関係に関わっていたのが遠藤敬だったので、この男が更迭覚悟で手を挙げて敢行したのかなと想像していた。議員削減法案を反故にされ、通常国会でも大阪副首都法案が難航だと囁かれている状況で、維新の吉村洋文が官邸へのコミットを後退させる政局と重なった動きかなと、深読みの邪推をした。他の3人(佐藤、井上、松島)は政策の畑と担当が違う。しかしまさか、防衛官僚の補佐官がこんな重大な謀略の実行役をするとは思わなかった。まさかの底が抜けている。特定され追及されたら引責辞任となる。罷免される。政治家であれば、確信犯として堂々と、役目を果たしたと開き直って辞任すれば終わりだが、官僚はそうはいかない。致命的な不祥事であり、総理の足を引っ張って政権に打撃を与えた罪人になる。官僚にとっては、組織による更迭は処分沙汰であり、エリートのキャリアに傷がつくペナルティに他ならない

なので、勲章も欲しいし上等な天下り先も欲しい官僚は、この種の政治家的な火遊びは絶対にしないのである。禁忌なのだ。今回、官邸中枢で記者団を集めて大胆なオフレコをやり、観測気球の政治をローンチ⇒打上げ)したのだから、誰がその実行役になろうと、明らかに高市早苗の指示と差配の下でやっている。しかもそれが、前代未聞の、官僚の補佐官がやったとなれば、まさに高市の代弁そのものだ。尾上定正は罷免へっちゃらで、事の次第で免職となった後は、報道1930や深層NEWSに出演し、定番の安保評論家(外回りの日米同盟軍参謀)となり、日本の核武装の具体論を吼えまくる魂胆なのだろう。この政治も 11/7 の台湾有事発言と同じで、高市が周到な準備と計算の上で行った計画的なものだ。12/18 に国会は閉じたから暫くは質疑での追及は受けない。罷免と撤回の要求をかわし、時間稼ぎに成功すれば、1か月後に通常国会を開いた頃には世論が冷めて忘れている。その間に賛否両論割れさせる

政府中枢が核保有必要論を打ち出し、従来の日本政府の態度を一転させたという、重大な政治の一撃を既成事実化して固める。2月の国会で揉み、テレビの報道番組で揉み、マスコミの 世論調査”で賛成多数か賛否半々の 結果”にして、安保3文書の改定内容を提言する4月に、非核三原則の撤廃と核保有を新規の基本要項として盛り込む思惑だろう。日本として正式に核武装の国家意思を内外に示し、中国と敵対する諸外国の同意と了承を調達する戦略を示すのではないか。①日本の自前の核開発、②保有弾頭数の目標と時期、③トマホークと12式への核実装、④戦略ミサイル作戦群の新設、が具体項目として並ぶと思われる。私は前々から、(1) スパイ防止法、(2) 徴兵制、(3) 核武装、(4) 靖国国営化 が来るぞ来るぞと執拗に警告を言い続け、長年ネットでオオカミ少年の役割を演じ、左翼から「陰謀論者」と侮辱され罵倒されてきた。が、いざその瞬間に立ち会うとなると、スピードの速さに呆然とさせられる

その後、週末と週明けのテレビ報道を見たが、依然として「官邸幹部」の名前は出ない。マスコミは高市に忖度し、多数世論を押さえている右翼を恐れ、この「官邸幹部」を庇う行動に出ている。と言うより、高市と一緒になって、日本の核武装を推進する政治に協力し、非核から核保有へと国是・国策を転換する環境へと日本を改造している。私は、12/19 夜に報ステに千々岩森生が出てきて、「官邸幹部」の特定を臭わせるものと思っていた。通常はそのパターンだ。普通なら当該「官邸幹部」は罷免覚悟の政治家で、観測気球の政治工作の任務を遂げて引責辞任となるもので、その筋道を千々岩森生のような政権と癒着した政治記者が敷く。お決まりのコースの政治芝居を配役たちが粛々と演ずる。だが、12/19 夜に千々岩森生は登場せず、大越健介も「官邸幹部」が誰かを言おうとしなかった。オフレコとして隠蔽したまま報道した。ところが、そうしたら、なぜか右翼が「ルール破り」だと吼えて大越健介に襲いかかったのだ

オフレコなのに報道の表に出すとは何事かと、12/20 に大越健介が右翼から袋叩きに遭っていた。普通なら、名前を隠すとは何事かと叩かれるはずなのに、オフレコの政治に協力した大越健介を右翼が「ルール破り」だと叩いているのだ。そうやって、核保有発言の官邸謀略を二重三重にカバーし、極限までプロテクトし、不当化の要素を排除し、正当化の世論工作を強烈に固めているのである。こんな異常な政治光景は初めて見た。右翼化の極みと言うしかなく、民主主義政治制度の下での右翼独裁と言うしかない。予算編成の報告とか、年始の会見とか、これから高市が政治記者の前に姿を現す機会があるが、記者は高市に対してこの件をどう質問するのだろう。無論、打ち合わせはできているだろうし、この核保有発言の謀略を一緒に遂行した官邸記者たちは、高市や木原や尾上と忘年会のクリスマスパーティを開き、この2か月を互いに慰労し、高級シャンパンで豪勢に乾杯して呵々大笑しているに違いない。その政治記者たちの上司に千々岩森生のような男がいる

マスコミは、この核保有発言の謀略の共謀共同正犯なのだ。記者が躊躇した形跡は一切ない。尾上定正は無傷で役職に留まったままでいる。官邸に通勤しているはずなのに、マスコミはカメラさえ向けない。中谷元が更迭に動いたのに動じなかった。年明け以降、尾上定正のオフレコスピーカーで、徴兵制導入が、憲兵隊設置が、靖国神社国営化が、次々とアナウンスされ、色とりどりの観測気球が空に舞うのだろうか


軍拡の帰結 「核保有」発言 NHK討論で山添氏 対話の外交こそ
                      しんぶん赤旗 2025年12月22日
 日本共産党の山添拓政策委員長は21日、NHK「日曜討論」に出演し、各党の安全保障政策責任者と議論を交わしました。各党から「抑止力強化」だとして軍拡ありきの主張が相次ぐなか、山添氏は「際限のない軍拡競争になる。その行き着く先が政府高官の『核保有』発言だ」と厳しく批判し、軍事一辺倒の転換を求めました
 高市早苗首相が17日の会見で安保3文書の来年中の改定に向け議論を加速させる考えを示したことについて、自民党の小野寺五典安全保障調査会長は、安全保障環境が変化しているとし「戦略を見直すのは大事だ」と強調日本維新の会の前原誠司安全保障調査会長は、最新技術導入で戦い方が変化したほか、中国が空母3隻体制になり「脅威が高まっている」と述べ、安保3文書改定が必要だと主張しました。
 山添氏は、政府が主体的判断で軍事力を強化するというが、軍事費増額や敵基地攻撃能力保有、日米司令部機能の統合などは「米側の要求に基づき日米一体の戦争体制づくりとして進められてきた。米軍は先制攻撃まで戦略としており、大変危険だ」と強調。米国が新たな安全保障戦略で日本を名指しし軍事費増額の圧力をかけ、中国抑止戦略を日本に肩代わりさせようとしていると指摘しました。
 「新しい戦い方が言われ、抑止力強化が言われるが、これは際限のない軍拡競争になる」と述べ、行き着く先が首相官邸の高官による「核保有発言」だと強調しました。「非核三原則を公然と否定することは唯一の戦争被爆国として絶対に許されない」とし、撤回させ罷免するべきだと主張。小泉進次郎防衛相が非核三原則の見直しについて「あらゆる選択肢を排除せず検討を進めるのは当然だ」と述べたことを挙げ、「たがが外れている。軍事一辺倒を改めるべきだ」と厳しく批判しました。
 自民の小野寺氏は「核の議論から何も考えずにいることは政治として無責任だ」などと強弁しました。

「台湾有事」が存立危機事態になり得る、との高市首相答弁をめぐる日中関係について各党が意見を表明しました。「謝罪する必要はない」(前原氏)「問題ない」(日本保守党の有本香事務総長)などと擁護する発言が出る中、山添氏は、「台湾有事」で米中の交戦になった際、日本が攻撃されていなくても米軍を守るために自衛隊が武力行使するということであり、「中国と戦争するという宣言にほかならない」と指摘「戦争放棄をうたう憲法に反し、日中双方の国民に大変な被害をもたらしうる極めて危険な発言だ」とし撤回を要求。「互いに脅威とならない」など日中双方の合意を再確認し、関係を再構築する必要があると主張しました。
 日本の安全保障に何が必要か問われ、参政党の松田学両院議員総会長は「防衛費は当然増大しなければならない」と述べました。
 山添氏は、与党が決めた「軍拡増税」は軍事費GDP(国内総生産)比2%の財源だとし、トランプ米政権が要求するGDP比3・5%になれば「いっそうの負担増、社会保障削減、暮らしへの圧迫となることは間違いない」と指摘。「軍事費を削って暮らしに回し、戦争準備ではなく対話の外交を」と訴えました