植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
植草氏が国際問題の記事を出すのは珍しいですが、これまでウクライナ問題に関しては、「ネオ・ナチ政権」の根拠を示す文献や「マイダン・クーデター」の実写動画などの、重要な資料を紹介しています。
ウクライナ軍は23日、激戦が続く東部ドネツク州の北部にある防衛拠点の1つ、シベルシクから部隊を撤退させました。激戦とされた戦線からの撤退は大いに劣勢であることを示すものです。
なお記事はメルマガ版の前半の公開部分のため「マイダン・クーデター」勃発のところで終っていますが、その後の概略の経過は下記の通りです。
米国のバラク・オバマ政権は2014年2月、NATOの訓練を受けたネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのですが、ネオ・ナチ体制を拒否するウクライナ人は少なくはなく、東部や南部の住民はクーデター政権に対する反発が強く、南部のクリミアでは住民はロシアとの一体化を選び、東部のドンバス(ドネツク州、ルガンスク州)では武装闘争が開始されました。
軍や治安機関のメンバーの約7割がクーデター政権を拒否して離脱し、その一部はドンバスの反クーデター軍に合流したため戦況は反クーデター軍が優勢でした。そこでドイツやフランスが仲介する形で停戦合意が成立したのが、2014年の「ミンスク1停戦合意」と15年の「ミンスク2停戦合意」でした。
それにはドンバス地方に自治権を与えるということが含まれていましたが、実現せず 逆にロシア語を公用語から外すなどの迫害を行いました。
もともとこの停戦はクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎが目的であったことを、のちにメルケル元独首相やオランド元仏大統領が告白しており、2021年にその増強が完了すると年末~年初に掛けて米国のバイデンが、米軍は動かないからと盛んにプーチンに侵攻を煽るとともに、クーデター軍をドンバス地方の近くまで進めました。
西側はドンバス地方の制圧を機会に、ロシア軍を侵攻させて一挙に叩こうという作戦だったのですが、現実はウクライナが決定的に劣勢であるのに利権を失いたくない一心で停戦はさせないという姿勢で臨んでいます。
併せて櫻井ジャーナルの記事:「ウクライナは露国に対するテロ攻撃を激化させようとしているが、大勢に変化なし」を紹介します。
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ウ戦争を終わらせない圧力
植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月24日
トランプ大統領はウクライナ戦争のクリスマス終戦を目指していたと見られる。
しかし、その実現は困難と見られる。
戦況は明確。ドネツク、ルガンスクの東部2州、ヘルソン、ザポリージャの南部2州の大部分をロシアが占有している。戦況が逆転する可能性は極めて低い。これ以上犠牲者を出さないためには戦争を終結するしかない。
しかし、ウクライナが頑強に抵抗している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年5月にすでに任期を満了している。
本来は大統領選を実施しなければならないが戦時を口実に大統領選を実施せず、ゼレンスキーがそのまま大統領の座に居座っている。
ウクライナ戦争の遂行にあたり、ウクライナに法外な額の援助が行われた。
その援助資金の取り扱いにおいて巨大な不正が行われている。ゼレンスキー政権自体が巨大な汚職、腐敗の温床になっている。この状況下にあるウクライナに追加の資金支援が計画されている。
ウクライナに対する資金支援を中止すれば直ちに戦争は終結する。ところがEUを中心に巨大な資金提供が続いているために戦争が終結せず、停戦、終戦の見通しが立たない。
戦争の継続はウクライナ市民の犠牲を拡大させるだけで害悪が大きい。
第二次大戦では日本の敗戦が確実な状況であったにもかかわらず日本政府が戦争を継続したために国民の犠牲が飛躍的に拡大した。
沖縄、国内での大規模空襲、広島・長崎の原爆被害は日本政府が早期に敗戦を受け入れていたなら回避されたものである。
そもそもウクライナ戦争においてウクライナの正義は存在しない。ウクライナ戦争は、ウクライナとウクライナ東部2州が独仏ロの関与の下で締結した「ミンスク合意」という内戦停戦合意をウクライナ政府が誠実に履行しなかったために勃発したものである。
西側メディアはロシアによる一方的な「侵略」と表現するが事実は違う。
ウクライナ政府は東部2州に対する軍事攻撃を強め、これに対応して東部2州が共和国として独立を宣言。ロシアは2共和国を国家承認したうえで、集団的自衛権を行使するかたちでウクライナに軍事介入した。
ウクライナ戦争が発生するまでの経緯を検証することなく、ウクライナ戦争の原因を短絡的に捉えるべきでない。
ウクライナは独立して40年にも満たぬ歴史の浅い国である。元はソ連邦の一共和国だった。
冷戦終焉に連動して独立したが、当初は親ロシア共和国であった。
この状況下で米国が地下工作を行い、2004年に親米政権が創設された。
大統領選で親ロのヤヌコビッチが勝利したが、米国が工作した市民運動が「不正選挙」を唱えて選挙がやり直しになった。この過程で親米候補のユシチェンコが何者かによる毒薬攻撃を受けて顔がただれるという事態が発生した。
ユシチェンコ陣営は反ユシチェンコ陣営による謀略だと主張。この主張で同情票が集まり大統領選再選挙でユシチェンコが当選。親米政権が樹立された。
毒薬攻撃はユシチェンコ陣営による自作自演であった疑いが強い。米国の地下工作による政権転覆であったと考えられる。
しかし、ユシチェンコ政権の金権腐敗は深刻で政権は早期に崩壊した。正規の大統領選が実施されてヤヌコビッチがウクライナ大統領に選出され、親ロ政権が樹立された。
このヤヌコビッチ政権が2014年に破壊された
2013年11月、ヤヌコビッチ大統領はEUとの連携協定署名を先送りすることを決定。
ロシアが提示したウクライナ支援策を受けた方がウクライナ国民にとって利益が大きいと判断したためだ。
しかし、ヤヌコビッチ大統領の署名先送り決定に合わせてウクライナの首都キエフで大規模市民デモが組織された。
これと合わせて民間テレビ局が3局も同時に創設された。
そのうちのひとつはジョージ・ソロスによる資金投下によるものである。
キエフにあるマイダン広場に市民が集結した大規模デモを水面下で工作・指揮したのは米国であると見られる。
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第4288号
「ウクライナ戦争の真実」 でご高読下さい。
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(後 略)
ウクライナは露国に対するテロ攻撃を激化させようとしているが、大勢に変化なし
櫻井ジャーナル 2025.12.25
ロシア軍は12月23日、変電所、物流施設、軍事企業、軍事施設などを600機以上の異なるタイプのミサイルやドローンで攻撃したが、ウクライナ西部にあるジトーミルでは軍事物資を輸送していた列車をドローンが攻撃、脱線させている。破壊された車両には約70名の傭兵、そして軍事顧問としてスムイへ派遣されていたイギリス軍将校8名が乗っていたという。
その前日、モスクワではロシア軍参謀本部のファニル・サルバロフ作戦訓練部長を乗せて走行中の自動車に仕掛けられていた爆弾によって暗殺されている。ロシア軍はウクライナでNATO将校をターゲットにするようになっているが、そうした作戦を指揮していたのはサルバロフだったという。
ロシア側の発表によると、暗殺を実行したのはウクライナとイギリスの情報機関員。SBU(安全保障庁)やGUR(国防省情報総局)だけでなく、SIS(秘密情報部、通称MI6)やSAS(特殊空挺部隊)が実行したということになる。ロシア下院の国防委員会に所属するアンドレイ・コレスニク委員は「この攻撃を実行した者全員を特定し、排除する必要がある」と発言していた。
23日にもモスクワで爆弾事件が起こされている。サルバロフ中将が暗殺された場所の近くで不審者を発見した交通警察官2名、マクシム・ゴルブノフとイリヤ・クリマノフが近づいたところ爆発、警察官ふたりを含む3名が死亡した。ウクライナ側が行ってきた爆弾テロの手口から考えると、爆破は遠隔操作せ行われる。爆弾を設置していた人物の口を封じるために爆破したのかもしれない。
今のところ、キエフはMI6を後ろ盾とするウォロディミル・ゼレンスキーを中心とするグループが支配しているが、アメリカを後ろ盾とするNABU(ウクライナ国家汚職対策局)とSAPO(特別反腐敗検察)が汚職捜査「ミダス作戦」を進め、ゼレンスキー周辺を締め上げている。ロシアとの戦争を継続したいイギリスをはじめとするEUのエリートに対し、戦況が変化する可能性は小さいと考え、早く戦争を終結させようとしているドナルド・トランプ米大統領が対立しているようだ。
NABUやSAPOに追い詰められ、法務大臣を名乗っていたヘルマン・ハルシチェンコとエネルギー大臣を名乗っていたスビトラーナ・グリンチュークはすでに辞任、国防大臣を務めていたルステム・ウメロウは7月に辞任を表明し、11月に入って国外へ脱出、カタールにいると言われている。コメディアン時代からゼレンスキーと親しいテレビ制作会社共同オーナーのティムール・ミンディッチはイスラエルへ逃亡したという。ゼレンスキーを排除し、ウクライナ軍の元軍最高司令官で駐英大使のバレリ・ザルジニーを後釜に据えようとする動きもある。
ヨーロッパにはアメリカをロシアとの戦争へ引き摺り込もうとしている勢力、アメリカにはネオコンのようにロシアを破滅させることに熱中している勢力も存在しているが、彼らの思惑通りには進んでいない。そこで必死にテロでロシアを攻撃、おそらく一発逆転を狙ってウラジミル・プーチン露大統領の暗殺も狙っているだろう。プーチンを暗殺すればロシアとアメリカの全面戦争になると考えているかもしれないが、可能性は小さい。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。