2025年12月1日月曜日

トランプ氏 日中対立懸念 首相に安定的関係要請

 新潟日報に掲題の記事が載りました。
 トランプは24日、中国の習近平主席と約1時間電話会談を行い、会談後、米中関係は「極めて強固」とし、来年4月に中国を訪問する招待を受け入れたと明らかにしました。
 習主席は会談で「中国と米国はかつて肩を並べファシズムや軍国主義と戦った。今、第2次世界大戦の成果を守るために連携すべきだ」と伝え、台湾の「中国への復帰」が戦後国際秩序の重要な構成部分という中国の立場を明確に示しました
 トランプは「米中はG2」(世界最強の2国)という言い方をして、両国の良好な関係に満足の意をあらわしました。
 そして自身のSNSへの投稿で、ウクライナ紛争や合成麻薬フェンタニル、大豆やその他の農産品など、多くのテーマについて協議したと明らかにした上で、「われわれは偉大な農家のために良好かつ非常に重要な合意を結んだ。そしてこれはさらに良くなっていく。われわれと中国との関係は極めて強固だ!」と述べ、米国の大豆やその他の農産品を中国が大量に且つ恒常的に輸入する約束をしたことに大いに満足し、「中国との関係は極めて強固だ!今回の電話会談は3週間前に韓国で行った会談のフォローアップだ」と述べました。
 日本側の発表に拠れば、トランプは同日高市首相に電話をよこし、日米の良好な関係を確認したということで、台湾問題についての特別な言及はなかったとしましたが、普通に考えれば「台湾問題で中国ともめごとを起こして、米中関係を損なうようなことはしないように」と、「釘を刺した」であろうことは容易に想像されます。

 10月31日、高市首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席した際に中国の習主席と会談しました。ところが高市氏同日、台湾林信義代表と会談しその旨をXに「日台の実務協力が深まることを期待する」などの言葉を添えて投稿しました。
 それに対して中国外務省は11月1日、高市首相がAPECに合わせて台湾当局者と会談し、その様子をSNSに投稿したことを巡り、「こうした行為は悪質で悪影響を及ぼす」、「中国は断固反対を表明し、日本側に厳正な申し入れと強烈な抗議を行った」と発表しました。
 中国側は習主席と就任後初めての首脳会談を行ったあと、台湾代表と会談を行い そのことをXで公表したことについて、中国側は「習主席の顔にドロを塗った」と受け止めたということです。中国は元々 面子を重視する国でした。

 その1週間後の11月7日に衆院の予算委で例の高市氏の「台湾有事」発言があり、そのマイナスの影響を解消すべく 10日に大串博志(立民)議員が敢えて長時間をかけて「発言取消」を要求しましたが高市氏は応じませんでした。それでついに中国の「堪忍袋の緒が切れてしまった」のでした。
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トランプ氏 日中対立懸念 首相に安定的関係要請
                        新潟日報 2025年11月28日
 トランプ米大統領が高市早苗首相との25日の電話会談で、日中両国の対立に懸念を示していたことが分かった。トランプ氏は対立のエスカレートを避けるよう要請。安定した日中関係を維持する重要性に言及した。日本政府関係者が27日明らかにした。台湾有事は存立危機事態になり得るとした首相の国会答弁をきっかけとした日中関係悪化に米国が注文を付けた形だ。
 日中対立が、2国間にとどまらず米国を巻き込む外交問題に発展した格好。トランプ氏は対中貿易交渉を重視し、日中の緊張が米中関係に波及する展開を警戒しているとみられる。首相は、中国側が求める答弁撤回に応じない姿勢を示しており、沈静化の道筋は見えていない。
 日米電話首脳会談は米側が呼びかけ、約20分間行われた。関係者によると、トランプ氏は日中関係に触れ「マネージ(管理)する必要性」に言及した。首相に対し国会答弁の撤回は求めなかった。
 電話会談後、首相は自らの国会答弁が話題に上ったかどうかについて記者団に明らかにしていなかった
 トランプ氏は日米電話首脳会談の前に、中国の習近平国家主席と約1時間にわたり電話会談し、半分を台湾問題に費やして協議した。中国側の発表によると習氏は、台湾は不可分の領土だとする中国の原則的立場を説明。トランプ氏は「中国にとっての重要性を理解している」と応じていた。
 トランプ氏は首相との電話会談について「大変素晴らしい会話だった」と記者団に話った。根拠は示さないまま、東アジア地域は「うまくいっている」と主張していた。


日中対立危機 トランプ氏介入 首相苦境 期待の後ろ盾、対中接近
                        新潟日報 2025年11月28日
 高市早苗首相がトランプ米大統領との電話会談で、台湾有事を巡る日中対立への懸念を伝えられていたことが判明した。対中国の「後ろ盾」と見込んでいたトランプ氏の介入により、首相は一層苦しい立場に置かれる形となった。実利を重視するトランプ氏のさらなる対中接近に危機感は募る。日中関係改善の妙手はなく、事態打開の見通しは立だない。
「中国を挑発しないよう助言との記述があるが、そのような事実はない点は明確にしておく」。木原稔官房長官は27の記者会見で、トランプ氏と首相の電話会談を伝えた米紙ウールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道内容の一を否定した。会談内容の詳細は「外交上のやりとりであり、答えは差し控える」と明かさなかった。
 台湾有事は「存立危機事態」になり得るとの首相答弁をきっかけに日中関係が悪化する中、25日に行われた電話会談。官邸幹部は「首相は自制を促されたわけではない。事態の沈静化に向けて協力していこうとのニュアンスだった」ご説明。トランプ氏の立ち位置はあくまで中立的だったと修正に躍起となった。
 沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入を繰り返すなど、覇権主義的な行動を強める中国に対峙するには「日米同盟の結束が欠かせない」(外務省幹部)。ましてや首相答弁後、中国は国際社会で日本への批判をエスカレートさせており、米国からの支援は重要度を増す一方だ。政府関係者は「トランプ氏が中国側に付いたとの見方が広がれば、日本の立場はますます悪くなる」と指摘。ダメージコントロールの必要性を訴えた。

■立ち位置
米中関係は非常に良好で、それは親密な同盟国である日本にとっても良いことだ。平和な状態を維持しよう」。トランプ氏はWSJの取材に対する声明で強調した。強固な関係を築きたい中国の習近平国家主席との間に「余計なもめ事を持ち込むな」とのメッセージとも受け取れる。
 米中間の緊張緩和が図られた10月下旬の習氏との対面会談直前にはG2(グループ・オブ・ツー)」と両国関係を表現した。「米中2極体制」とも訳され、両国が世界を仕切り、けん引するとの意味合いを持つ。
 トランプ氏が対中関係を重視するのは、習氏との会談で合意したとする米国産大豆の輸出再開が喫緊の課題であるからだ。主要生産地は自身の支持者が多い中西部。輸出が滞れば、来年
11月の中間選挙に影響を与えかねない。
 最悪のケースは、日中対立激化の板挟みになることだ。日中首脳との電話会談後、トランプ氏は記者団の質問に応じた際、東アジア地域は「うまくいっている」と一方的に主張。白中対立への見解を問われるのを避けるように取材を打ち切った。

■かじ取り
 日本にとって、トランプ氏が対中関係を重視するど、国際社会で孤立するスクが高まる。
 首相は日中関係を好転せる手だてを欠く。26日党首討論では台湾有事と存立危機事態の関係につい具体的に踏み込むことを避け、従来の政府見解を踏襲した。ただ中国は答弁の撤回を求めており、軌道修で攻勢が止まる保証はない。

 首相周辺は、日本の厳い立ち位置を不安視した。「米国が中国と話し合い、日本の将来を決めていくかのような事態だけは避けければいけない」 (東京、ワシントン共同)