中国の習近平国家主席は11月24日に米大統領トランプと電話会談をしました。
習氏ははじめに「中国と米国は第二次大戦で『ファシズムと軍国主義』に対して共に戦った同志である」ことを確認し、その「勝利の成果」を共同で守っていくべきだと訴えた上で、トランプに「台湾問題における中国の原則的立場」を説明したとされています。
その際に日本に関してどのような発言をしたかは明らかではありませんが、習氏の剣幕に驚いたトランプが会談後に高市氏に電話を寄越し、その電話の内容も明らかにはされていませんが、「もう日中間でもめ事は起こさないように」と高市氏に釘を刺したであろうことは容易に想像されるところです。
海外の記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
それは高市氏の「台湾有事」に関連する発言が第二次世界大戦後国連憲章に盛り込まれた「敵国条項」に違反していると中国が見ていることと、そのことの重大性を述べたものです。
中国は高市氏の「台湾有事」発言以降、2通の書簡を国連事務総長に提出しているとされています。中国が国連に日中間の仲裁を求めるなどということはあり得ないので、その内容は「日本は『台湾有事』に絡む発言を撤回しないことで『敵国条項』に反する行為を行った」ことと、「そのことによって中国は日本を征討する権利を有している」ことを国連に通告するものであると推測されます。
そもそも高市氏が敢えて「米国の関与を除外」して「台湾有事は日本有事」と発言したことは、取りも直さず「中国と台湾は別の国であり、日本は台湾の側に立つ」という途方もない言明をしたことであり、「台湾が中国の核心的利益」であるとする中国の主張を蹂躙するものでした。最早中国の忍耐の限界を超えているわけです。
それを中国が様々な嫌がらせをしているなどという高市ファンの主張は余りにも的外れであり、事実は中国はいま最大限の自制をしているということに他なりません。
ここに「敵国条項」とは国連憲章第53条、第77条、第107条に基づくもので、これは旧連合国(第二次世界大戦の戦勝国)が、もし旧敵国(日独伊)が再び侵略的な政策をとった場合には、「安全保障理事会の事前の承認なしに、その旧敵国に対して強制行動(戦争を仕掛ける)をとることができる」ことを意味します。詳しくはブログをお読みください。
直ちにそれが実行されるかどうかは別にして、何よりもまず日本の為政者たるものは「敵国条項」がまだ生きているという事実を認識する必要があるのに対して、高市氏にはその認識は全くないように思われます。
極めて深刻な事態にあることの認識が何もない中で、高市ファンとTVメディアが自分を持ち上げることにいい気になって、中国を刺激し続けることは到底許されません。
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日本が台湾の戦争に参加したらどうなるか
耕助のブログNo. 2746 2025年12月12日
What happens if Japan joins the war in Taiwan
特別軍事作戦は歯止めのない全面戦争になるだろう Hua Bin
新たに首相に就任した高市早苗は、11月に日本の国会で、台湾での紛争は日本の「存立危機事態」であると述べ、日本が中国との戦いに直接かつ積極的に関与することをほのめかした。この発言は、10月末に韓国で習近平国家主席とトランプ大統領が貿易関係をリセットするための大規模な会談を行った直後に出された。台湾問題は米中会談では両者によって明確に棚上げにされた。
この発言を挑発的だと言うのは、タイガー・ウッズを「優れたゴルファー」と言うようなものだ。
大雑把で不完全な例えをすれば、アラスカが米国から分離独立した場合、アラスカを再統合しようとする米国の行動はカナダにとって存立の危機となるのでカナダは米国を攻撃するとカナダのマーク・カーニー首相が宣言するようなものだ。このような主張に対する米国の反応は想像に難くない。しかもカナダには、米国やアラスカに対して犯罪を犯した歴史的背景はない。
高市の主張は、台湾の分離独立派政府が法的に独立を宣言し、北京が軍事行動の準備をしている状況において、中国が先に日本の軍隊や日本の領土を攻撃しなくても日本が先制的に中国を攻撃できる、というものである。
「存立危機事態」という表現は単なる言い間違いではない。日本の公式用語では、この表現には特定かつ致命的な意味がある。
大日本帝国は1931年の満州事変前、そして1941年の真珠湾攻撃前にも、全く同じ表現を用いて侵略を正当化した。
日本の戦後憲法では、自衛隊が外国との戦争に動員されるのは「存立危機」に直面した場合に限られる。
台湾問題に関しては、米国でさえ長年、中国のレッドラインを直接越えないよう「戦略的曖昧性」をとってきた。一つの中国政策を認めつつ、現状の変更を拒否する立場である。
ワシントンは、中国による武力統一の可能性に対する反応を意図的に曖昧にしてきた。
米国が地域の従属国と台湾戦争のシナリオを密室で議論していることはまちがいないが、戦略的明快さを公に示せばそれは危険と見なされる。
日本の歴代首相の中で、たとえ個人としてどう考えていようと、高市以前に台湾に関して公の場で「存立危機」という主張を口にした者はいない。高市のメンター(⇒指導者)である右派政治家・安倍晋三でさえ、首相退任後にようやくほのめかしたに過ぎない。彼は「台湾有事は日本有事である」と言った。本質は同じだが、表現ははるかに曖昧だ。台湾を巡る極めて敏感な日中関係において、高市が弄んだ言葉遊びは極めて危険である。
この発言はすぐに北京から非難された。中国はこれを敗戦国による戦勝国への直接的な挑戦であり、第二次世界大戦後に確立された国際秩序への完全な違反と見なしている。北京は一連の外交的・経済的・文化的対抗措置を発動した。
さらに重要なのは、中国が国連に対し正式な抗議を行い、国連憲章第53条、第77条、第107条に基づく「敵国条項」の公式引用を行ったことだ。
これらの条項は第二次世界大戦に敗れたファシスト国家や軍国主義国家(つまり日本とドイツ)を対象に制定され、これらの国々が再び侵略戦争を起こすことを防ぐことを目的としている。これらは武力行使を禁じる憲章の一般原則に対する例外を設け、特に第二次世界大戦の枢軸国を対象としている。
この条項では「敵国」を、第二次世界大戦中に国連憲章の署名国のいずれかの敵であった国と定義している。
第107条は中核条項を定めている:「本憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中に本憲章の署名国の敵国であった国に対して、当該戦争の結果として、その行動の責任を有する政府によって取られた、または許可された措置を無効にしたり妨げたりするものではない。」
この条項は、連合国が敗戦国に対して行った措置(占領、戦争犯罪裁判など)を既得権として認め、これらの戦後措置は法的有効性を有し、安全保障理事会の承認を必要としないと定めている。
第53条は、「敵国」(enemy state)に対する措置について、「そのような国家(敵国)による侵略政策の再開に対して」措置を講じる場合の「敵国例外規定」を定めており、これは第107条に基づいている。
これは、旧連合国(第二次世界大戦の戦勝国)が、もし旧敵国が再び侵略的な政策をとった場合には、安全保障理事会の事前の承認なしに、その旧敵国に対して強制行動をとることができることを意味する。
中国当局者やメディアは、日本が台湾問題、特に軍事介入に踏み切った場合、国連憲章の「敵国条項」が発動される可能性があると明言している。これにより中国や他の国連創設加盟国は、国連憲章に完全に準拠した形で、そのような敵国(旧枢軸国)に対して先制的な軍事行動を取ることが可能となる。
さらに中国の法学者らは、沖縄を含む琉球諸島に対する日本の主権を無効化するため、国連第77条(信託統治)の発動を主張している。日本は1879年に琉球王国を併合し、沖縄県を設立した。中国は琉球が日本の一部であることを公式に認めたことはない。さらに、第二次世界大戦終結時のカイロ宣言とポツダム宣言は、日本の法的領土が四つの主要島嶼に限定されると規定した。これらを超えた領土拡張は法的に無効と見なされる。
国連憲章第77条は「第二次世界大戦の結果として敵国から分離される可能性のある地域」を国連信託統治制度の対象地域と定めている。現在の沖縄は米国の信託統治下にある。
これらの条項は、もし日本が戦後の平和主義的立場を放棄し、特に台湾問題や領土紛争に関連して「攻撃的政策」を再開した場合に行動を起こす法的根拠を提供する。
危機発生後、北京はロシアと協議を重ねてきた。第二次世界大戦の戦勝国である両国は、日本の首相の発言が戦後秩序への直接的な挑戦であると合意している。
ロシアもまた、12月2日に王毅外相がセルゲイ・ラブロフ外相及びセルゲイ・ショイグ安全保障会議書記と会談した際、中国が「敵国」条項を引用した立場に同調した。
会談後の共同声明では「両国は第二次世界大戦の勝利を堅持し、植民地支配と侵略の歴史的裁定を改変しようとするいかなる試みにも断固反対する」と表明した。
高市の狂気と愚かさは理解を超えている。もし中国の指導者や政党が日本の軍国主義の復活に少しでも優しい姿勢を見せれば、中国の国民からの目に正当性を保てないだろう。
軍事態勢、経済力、国土規模や資源に至るまで、日本が中国との軍事対決に勝つ可能性はゼロだ。本格的な戦争になれば日本は壊滅するだろう。
高市が北京との絶対的な「レッドライン」を越えた時、多くの中国人は密かに喜んだ。彼女は1895年から1945年までの日本の犯罪と残虐行為に対する清算を中国が成し遂げるための完璧なオウンゴールを提供したからだ。
中国のSNSにおける世論調査では、日本が再び中国を脅威に晒した場合、政府が対日軍事行動を取ることをほぼ100%の中国市民が支持している。
中国人の日本に対する敵意を理解するには、9.11後に米国人がイスラム教徒に対して抱いた憎悪を1000倍に増幅する必要がある。
9.11では3000人が犠牲になった。それに対し、南京大虐殺では30万人の中国人が日本軍に殺害された。1937年から1945年までの8年間の抗日戦争では1700万から2000万人の中国人が命を落とした。
第二次世界大戦後のドイツとは異なり、日本は中国やアジア諸国民に対する犯罪を完全に悔い改めたり償ったりしたことがない。数十万人の慰安婦への賠償も一度も支払っていない。シンガポール陥落後チャンギ海岸で一日2万人以上を虐殺した東南アジアでの犯罪や、英豪軍捕虜の「死の行進」についても償っていない。日本の政治指導者たちは、戦後絞首刑に処されたA級戦犯を含む戦没者を祀る靖国神社を定期的に参拝している。これはドイツの政治家が、ナチスドイツの兵士だけでなくヒトラー、ヒムラー、ゲーリング、ゲッベルスを称える記念碑に毎年敬意を表しに行くようなものだ。
台湾が正式に分離独立した場合、中国軍による台湾占領は、特殊軍事作戦として実施される可能性が最も高い。その際、不必要な民間人の犠牲を避けるよう特に注意が払われるだろう。精密攻撃と付随的損害の回避が、この紛争における最重要パラメータとなるだろう。
たとえ米国が台湾防衛を宣言しても、北京は米国に先制攻撃を行わないだろう。北京は米国が先制攻撃を仕掛けてから反撃するだろう。しかし、もし日本が積極的に戦闘に加わる場合、日本とその本土に対する制約はない。
それは東京や大阪、日本の本土諸島にまで及ぶ全面戦争となるだろう。日本の側に付く台湾人は、容赦なく日本の協力者として扱われる。彼らの唯一の保護要因である「中国人であること」は消滅し、最大の弱点である「準日本人であること」へと転じるだろう。
高市の発言が露骨な攻撃性を帯び、中国の反応が完全に想定内であることを踏まえると、敗戦国の指導者がなぜこのような主張をしたのかが疑問である。純粋な狂気なのか、それとも米国と中国の冷戦において進んで代理人となる計算された動きなのだろうか?
高市の発言はトランプ大統領のアジア訪問直後に出された。習主席との会談前に、トランプは高市首相と会談している。トランプは彼女に何を伝えたのか。
もし高市の発言が米国と協議せず独自のものであれば、彼女は日本が中国との戦争を挑発すれば、米国が日本を援護すると思っているのだろうか?
米国から7000マイルも離れた核保有国(中国)との戦争で、単なる属国である日本のために米国国民が喜んで戦って死ぬと高市は思っているのだろうか?
合理的な分析をすれば、台湾や日本を巡る米中対立において、エスカレーション優位性が北京にあることはあきらかだ。
もし米国が支援に来なくても、日本が中国との戦争で勝てると高市は思っているのだろうか? それは日本をウクライナ以上の廃墟にする自殺行為だということがわからないのだろうか?
はるかにありそうなシナリオは、高市がワシントンの要請で中国のレッドラインを測るための探りとして発言したというものである。
日本の軍事・政治構造の実質的な指揮官で公式な占領者であるワシントンの承認なしに、彼女がこれほど挑発的な発言をするはずがない。彼女は飼い犬に過ぎない。
米国自身も「戦略的曖昧性」を捨てようとはしない。台湾問題で中国と「取引の術」を弄する柔軟性を保つ最善策だと知っているからだ。しかし使い捨ての駒である日本は、北京の決意を試す道具として利用できる。
もし中国が予想通りレッドラインを堅持すれば、直接ワシントンは晒されない。結局、トランプは依然として北京に重要鉱物禁輸の緩和と米国農産物の購入を必要としている。彼は中国との関係を壊したくはない。
もし北京が日本に挑発行為に対する罰を与えれば、日本はその代償を支払うことになるが、中国と日本の間に最大限の対立を起こしたいワシントンにとってそれは関心事ではない。
トランプにとって日本は中国と同様「米国を利用している」罪を犯しており、むしろ悪質である。なぜなら少なくとも北京は米国の保護にただ乗りしてはいない。
トランプの計算では、日本の生存が米国への依存度を高めるほど、武器販売や対米投資、産業移転をより多く搾り取れる。
12月初めに発表された『米国国家安全保障戦略』で、米国は欧州とアジアの「同盟国・パートナー」に安全保障を「外注」する意図を明言した。
目的は明白だ。欧州にウクライナ問題の負担を押し付けたように、日本に台湾問題の負担を押し付けようとしている。おそらく西太平洋の他の二つの下位パートナーであるオーストラリアとフィリピンも加わるだろう。もちろんこの2カ国は取るに足らない能力しかないので実際の決戦では、むしろ足手まといになるだろう。しかし日本は規模と富を有し、アジアにおける米国の利益を守る番犬として再軍備化が可能である。従順な韓国も同様かもしれないが、新大統領は高市よりはるかに知性があるように見える。
米国の国家安全保障戦略が明示する目的は、ワシントンが「西半球」の安全地帯から駒を動かす間、これらの「同盟国」をウクライナのような最前線戦場として米国の地政学的敵対者に対峙させることだ。
ここで日本人が気づいていないのは、台湾がウクライナになるのではなく日本そのものがウクライナになるということだ。台湾は歴史的に中国の一部であるドンバス地域に相当し、戦後には保全・再建されるだろう。
日本は爆撃で荒廃したウクライナ西部となり、当分の間は残存国家のままだろう。
もし中国と日本の間で戦争が勃発すれば、その結果日本は再び非軍事化され、靖国神社は破壊され、琉球諸島は独立を回復するだろう。1963年以来米国がキューバに課してきたように、日本は中国による恒久的な封鎖と制裁の脅威下に置かれるだろう。日本はアジアにおける主要国になることは決してなく、米国からの保護を永遠に失うだろう。
キッシンジャーが鋭く指摘したように、米国の敵であることは危険だが、その「友人」であることは致命的だ。
https://huabinoliver.substack.com/p/what-happens-if-japan-joins-the-war