17日、皇室典範改定案が参院で可決成立しました。議会は一体何を考えているのでしょうか。高市内閣並みに劣化しているというしかありません。
私たちは平成天皇方と近上天皇方の二代にわたって、象徴天皇としての至上の在り方に接することが出来ました。それは質素な生活に甘んじながら常に国民に寄り添うという真の帝王学の具現の姿でした。
今般の改定案は強引にそれに終止符を打たせるというもので、衆参両議員が審議してきた原案とは異るものでした。そこではひたすら今上天皇の代で終止符を打つことが目指されていて、次代の天皇がどの様に国民から評価され、海外からどう評価されているかについて何の関心も持たないものでした(漏れ聞くところによると色々問題があるようです)。
明確なことは、これまで国民から敬愛されてきた象徴天皇像を 愛子様を含めたご三方で終焉させるというもので、まことに恐るべき法案です。
参院予算委員会集中審議で、蓮舫議員が「38親等も離れた、遠い遠い親戚の男子を見つけて養子にして、その子に皇位継承権を渡すのであれば、陛下の一親等、直系長子であられる内親王殿下への皇位継承も認めることこそ、憲法に規定する世襲の原則に沿うものではないか」と指摘したことに対して、高市首相は「たとえば過去に122代明治天皇の御代に、32親等の隔たりのある皇族の男系男子が養子になられた例がある」と、得意げに述べたようですが、それは改定法の本質を偽る的外れの回答でした。
朝日新聞は7月9日、「皇室典範改正をめぐる暴走 このままの成立は許されない」とする異例に長い社説を掲げました。また日経新聞は、6月27日、6月30日、7月10日と立て続けに3回に渡り、抑えきれない怒りの社説を掲げました。
これらは高市内閣の邪悪な改定案の問題点を明確にしているので、記録を残す意味で掲載します。
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【社説】皇室典範改正をめぐる暴走 このままの成立は許されない
朝日新聞 2026年7月9日
この社説のポイント
●旧宮家の養子案などを含む皇室典範改正案は、男尊女卑をいびつに反映する内容だ
●立法府や国民の「総意」からも逸脱しており、合意形成とはほど遠い
●このままでは歴史に汚点を、将来に禍根を残す。撤回し、議論をやり直すべきだ
「立法府の総意」でも「国民の総意」でもない皇室典範改正に向け、高市早苗政権が遮二無二突き進んでいる。わきおこる異論や批判を顧みない姿は、極めて異常である。
皇室典範改正案について、与野党は10日の衆院議院運営委員会で審議することで合意した。ところが与党はわずか3時間の審議で採決して本会議に緊急上程し、即日衆院通過させることを急いでいる。国のかたちに関わる重大テーマであるにもかかわらず、力ずくで押し切る構えだ。必要と主張してきた「静謐(せいひつ)な環境」を自ら壊す暴挙である。
このまま成立させれば、歴史に汚点を、将来に禍根を残す。政府は法案を撤回し、一から議論をやり直すべきだ。
皇室典範改正案のポイント
皇室典範改正の議論は、通常の法案とは性格が異なる。憲法1条は天皇の地位を「国民の総意に基づく」と定める。だからこそ歴代政権は、皇位継承や皇室制度をめぐる問題で慎重な対応を重ねてきた。特に、この改正案は重大な欠陥を抱えている。結論ありきで進めてはならない。
にじむ男尊女卑
当初、「皇族数の確保」策を議論することが目的だったはずだ。「安定的な皇位継承」という大きな目標は、その先に位置付けられる。
そうした観点からは、改正案で女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにすることには一定の意味はある。一方、結婚した際の配偶者や子を皇族にするかどうかは、今後の議論に委ねるはずだった。
ところが、結婚した女性皇族に住民基本台帳法を適用するなど、女性皇族の配偶者や子を皇族としないことを前提とした仕組みが、突如として政府案に盛り込まれた。
さらに問題なのが、戦後間もなく皇籍を離れた旧11宮家の男性子孫を養子として迎えることができ、その養子の男性子孫は皇位継承資格を持つと明示したことだ。
女性・女系天皇への道をできる限りふさいでおこうという思惑が前面に出た形だ。
天皇制に埋め込まれた男性第一主義を見直す好機だったのが、これではかえって男尊女卑を歪(いびつ)に反映する制度になってしまう。養子推進派の論理は、女性は決して皇位継承にはかかわらせないが、補佐的な役割としてはとどまってほしいという身勝手なものに映る。6月25日の与野党の全体会議でもこういった批判が相次いだのは当然だ。
二つの総意から逸脱
改正案が「国民の総意」を得たとは到底言えない。世論調査では女性天皇や女系天皇を容認する意見が多数を占める一方、旧宮家からの養子縁組については賛否が割れる。朝日、読売、毎日、日経の全国4紙と多くの地方紙が、そろって社説で反対を表明している。歴史学や法学など各学界からも批判が相次ぐ。
改正案は、与野党協議で事前に取りまとめられた「立法府の総意」も逸脱している。一部野党だけでなく自民党内からも、「国会の総意にも基づかない内容であれば、憲法の精神に反することになりはしないだろうか」(船田元・衆院議員)などの声が上がる。国会内の十分な合意はまったく形成されていない。
天皇陛下も6月11日の記者会見で「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べた。求められているのは、幅広い理解と納得を得られるよう議論を尽くすことであろう。
野党の対応は割れる。国民民主党や参政党などは賛成、立憲民主党や共産党などは反対の方向だ。そして、態度を決めかねているのが中道改革連合だ。
野党の対応も焦点
中道がまとめた付帯決議案には「女性天皇の是非や女性宮家創設の検討」などが新たに加えられたが、仮に認められても法的拘束力はない。そんな付帯決議と引き換えに、十分な審議なしに賛成するのが妥当といえるのか。中道には良識ある判断を求めたい。
逆に衆院と参院でそれぞれ野党第1党の中道と立憲が反対すれば、改正案が可決されても「立法府の総意」は崩れ去る。野党の対応も焦点だ。
国民や立法府の総意から乖離(かいり)した改正案を政権が押し通せば、むしろ天皇制への国民の信頼を失いかねない。
歴代天皇や皇族は戦後、被災地や福祉施設などを訪ねてひざをついて対話し、戦争をめぐる慰霊の旅を繰り返してきた。象徴天皇制は、国民とともに築き上げてきた信頼関係の上に成り立っている。
象徴天皇制と、法の下の平等や個人の尊重など「人類普遍の原理」という、異質なものが憲法には同居しており、完全に整合させることは難しい。ただ、憲法的価値をはじめ国民が象徴として求めるものをさまざまに体現する努力が重ねられてきた。そこに歪な制度が無理やり導入されれば、不整合をかえって広げてしまわないか。
与党は成立ありきの姿勢を改めるべきだ。野党も安易な妥協に流されてはならない。必要なのは採決を急ぐことではなく、国民的な理解と納得を得る丁寧な議論である。このままの成立は許されない。
[社説]強引な皇室典範改正は禍根を残す
日本経済新聞 2026年6月27日
政府による皇室典範改正案の内容が明らかになった。与野党協議でまとめた「立法府の総意」の枠を越え、男系による皇位継承を固めたい意向が鮮明だ。幅広い合意形成が必要な皇室を巡る議論の進め方として、乱暴と言わざるを得ない。丁寧な対応を求めたい。
先に公表された「立法府の総意」は、意見が割れる論点の多くで結論を出していない。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるかや、結婚する女性皇族の配偶者や子を皇族とするかどうかなどだ。
ところが政府が検討する具体的な皇室典範の改正案には、「総意」にはなかった内容がいくつも盛り込まれている。
養子に男子が生まれれば、皇位継承権を持つことが明確にされた。生まれた時から一般人だった人の子が天皇になりうるということだ。現在の天皇家に取って代わるということでもある。これほど大きな方針転換を十分な議論もなく行うのは、民主主義の軽視にほかならない。国民の理解が得られるか極めて疑問だ。
養子は配偶者と子のいない15歳以上の男子で、いったん皇族になれば自らの意思でその身分を離れられないという。養子選びに政治的な思惑が入り込む余地もあり、人権上も問題があろう。
結婚した女性皇族には住民基本台帳法が適用される。皇族は通常「皇統譜」と呼ばれる皇室の特別な戸籍に記載されるが、それとは異なる扱いになる。女系継承の可能性を排除する方策ではないか。
全体を通して男系継承にこだわる意図が明確だ。報道機関の世論調査では女性・女系天皇への高い支持が目立つ。養子案は賛否が割れるうえ「分からない」との声も多い。改正案は国民の意見を十分に反映しているとは言えまい。
皇室問題は国民統合の根幹に関わる特殊なテーマだ。だからこそ与党の「数の力」によらない議論が求められ、歴代政権も慎重に対処してきた。それを無視すべきではない。強引な改正は禍根を残す。
[社説]皇室典範の改正案は再考を
日本経済新聞 2026年6月30日
政府が皇室典範の改正案を閣議決定した。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるなど、先の与野党協議では議論されていなかった項目が唐突に盛り込まれる異例の展開である。あまりに拙速で、政府・与党には強く再考を求める。
改正案では養子に男子が生まれた場合、皇位継承権を持つことが明確になった。近現代だけ見ても明治から令和まで連綿と続く今の天皇家に代わり、一般人の養子の子孫が天皇になり得る仕組みだ。皇室と国民の間の長年の信頼と敬慕の念が、ないがしろにされたと感じる人は多いのでないか。
一般人である旧皇族の家系が特別な「養子の出し手」として扱われれば、門地による差別を禁じた憲法に抵触する恐れがある。違憲訴訟が起きる可能性が高い。国民統合の象徴である天皇や皇室を巡り、法的地位に疑義が生じるような制度を持ち込むべきではない。
明治期の旧皇室典範も「皇統が乱れる」などの理由で養子を禁じていた。2005年に自民党政権下の有識者会議がまとめた報告書も、第三者の介入が起きかねない、国民の理解を得るのが難しいといった事情から、養子案の採用は極めて困難としている。
にもかかわらず一方的に制度改正を急ぐのは理解できない。新たな仕組みを盛り込むなら、立法府の協議をやり直すのが筋だ。
自民党の中曽根弘文憲法改正実現本部長が、天皇陛下の長女愛子さまによる皇位継承を「あり得ない」と発言するなど、与党で男系への固執を示す言動が相次ぐ。皇室問題は世論に耳を傾けた柔軟な検討が不可欠なのに、それに背を向けていると言わざるを得ない。
天皇陛下は記者会見で「国民の理解が得られるものとなることを望む」と述べられた。現在の改正案は、広く理解を得られる内容とは到底言えまい。政府は強引な姿勢を改め、静謐(せいひつ)な議論の環境を早急に整えるべきだ。国民に支持されない皇室制度を作っては元も子もない。
[社説]結論ありきの皇室典範改正は理解得られぬ
日本経済新聞 2026年7月10日
皇室典範改正案を巡る国会論戦が始まり、衆院は1日だけの審議で可決され参院に送られた。
内容、経緯ともに疑問や異論が出ている法案にもかかわらず、短時間の審議で成立を急ぐ姿勢には問題がある。合意形成に向けた政府の努力は十分とは言えない。結論ありきで強引に進めても、国民の理解は得られまい。丁寧に議論を積み重ねるべきだ。
与党が衆院議員の定数削減法案の今国会での成立を見送ったことなどから、空転してきた国会は正常化が進み、皇室典範改正案も審議入りした。
改正案では、皇室の養子となった旧皇族の子孫に男児が生まれた場合、皇位継承権を持つことが明確にされた。事前の与野党協議による「立法府の総意」には含まれていなかった内容である。
政府側は10日の審議で、養子の子の皇位継承権に関する記述が「総意」にないことから、現行の皇室典範に基づいて判断することになり、養子の子は継承権を有すると説明した。だが与野党協議は継承権には踏み込まない前提だったのであり、唐突との指摘はやはり免れまい。
政府側は今回の改正案について、立法府での将来の検討を縛る趣旨ではないとし、付帯決議によって制度の再検討の余地があるとの趣旨の説明もしている。中道改革連合はそうした点も踏まえて改正案に賛成した。
もっとも付帯決議には法的拘束力がない。2017年の上皇さまの退位特例法の付帯決議では、女性宮家の創設が検討課題に挙げられたが、その後具体的な議論は進んでいない。重要な論点は議論を尽くして法律本体に反映させるのが筋ではないか。
改正案は約3時間の質疑などを経て、衆院本会議で可決された。象徴天皇制のあり方に大きく影響する可能性があり、異論もある中、1日で衆院の審議を終えるのは拙速と言わざるを得ない。
今後は参院での審議に移る。立憲民主党などは反対の意向を示している。十分に議論を行い、課題点を洗い出す必要がある。
皇室を巡る問題は、できる限り幅広い合意形成と国民の理解が欠かせない。にもかかわらず、政権は国会での熟議や国民への説明責任を軽んじていないだろうか。「数の力」をたのんで改正案を押し通すべきではない。慎重な国会運営を改めて求めたい。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。