2023年6月19日月曜日

19- ロシアと中国を恫喝し、窮地に陥ったアメリカ(櫻井ジャーナル)

 櫻井ジャーナルが掲題の記事を出しました。米国が衰退の一途を辿っていることは既に対米従属者以外の人たちの共通認識になっていますが、この記事では、米国がロシアや中国を排除しようとして逆に中東諸国の明確な離反を招いたという意味です。

 ウクライナ戦争に関しても米国は「和平を目指す」つもりはないと見ています。確かに開戦前の状態に戻すという方針が維持される限り和平は実現しないことでしょう。
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ロシアと中国を恫喝し、窮地に陥ったアメリカ
                         櫻井ジャーナル 2023.06.19
 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は6月18日に中国を訪れた。中央外事工作委員会の王毅弁公室主任と19日に会談する予定だというが、何らかの進展があると期待する人は多くない。ブリンケンは6月14日に中国の秦剛外相と電話で会談、その際に中国側から内政干渉や安全保障を脅かすような行為をやめるよう警告されている。
 その直前、5月25日から6月15日にかけてアメリカ軍と韓国軍は非武装地帯から40キロメートル南にある訓練場で軍事演習を実施、朝鮮を挑発した。演習ではステルス戦闘機、攻撃ヘリコプター、多連装ロケット発射システムも使われたようだ。朝鮮側の対抗手段が限られている。

 アメリカの下院議長だったナンシー・ペロシが昨年8月2日に突如台湾を訪問したところから東アジアの軍事的な緊張は一気に高まった。アメリカでは大統領が何らかの理由で職務を執行できなくなった場合の継承順位が決められている。第1位は副大統領(上院議長)だが、第2位は下院議長。その下院議長が「ひとつの中国」を否定、中国は怒った。その後、アメリカは台湾海峡に軍艦を入れるなど挑発を続ける。
 中国と戦争する準備を日本は1995年から本格化させていた。アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年に発表した報告書の中で、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する案を示している。
 しかし、RANDによると、そのミサイルを配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされている。この計画に合わせ、2016年に与那国島、19年に宮古島と奄美大島、そして23年には石垣島に自衛隊の施設が建設された。これらの施設にはアメリカ軍の計画に基づいてミサイルが配備されるはずだ。

 アメリカはウクライナでロシアと戦っている。バラク・オバマ政権は2014年2月、ネオ・ナチを利用してウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、ネオ・ナチが大きな影響力を持つ傀儡政権を作った。ジョー・バイデン現大統領は当時、副大統領としてクーデターを指揮していた。その下にいたのがビクトリア・ヌランド国務次官補と副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバン。このトリオにブリンケン国務長官を加えたチームが戦争政策を推進してきた。
 アメリカは交渉を時間稼ぎに使う。そこでウクライナの停戦交渉は当初イスラエル、次にドイツとフランスが仲介した。
 仲介の当事者だったイスラエルのナフタリ・ベネット前首相よると、ロシアとウクライナはいずれも妥協に応じ、停戦は実現しそうだったという。3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。
 その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会談したのだが、その3月5日にゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフをウクライナの治安機関SBUのメンバーが射殺してしまう。クーデター直後からSBUはCIAの下部機関化しているので、アメリカ政府が殺したと言えるだろう。
 ミンスク合意ではアメリアが排除されたが、これも失敗に終わる。ドイツやフランスが仲介したのだが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が合意を守らなかったのは、合意がインチキだということを知っていたからだろう。アメリカ政府は少なくとも容認している。

 つまり、アメリカと話し合いで問題を解決することはできない最終的には軍事的に破壊しようとするのがアメリカ流だ。国際情勢を調べている西側の人間ならアメリカと問題を外交的に解決することはできないことをわかっていたが、ロシアや中国のエリートには米英に留学した欧米信奉者が少なくないため、国の存続を危うくした。
 すでに中国やロシアもそうしたことを理解しただろう。ロシアはすでに話し合いで解決するという希望を捨てた。中国も厳しい姿勢だ。アメリカに従う日本のような国々に対しても厳しい姿勢で臨んでくる可能性が高い。実際、韓国は揺さぶられ、動揺している。ヨーロッパでは自分たちの置かれた状況を理解し、軌道修正を図る国も見られるが、成功するかどうかは不明だ。

 アメリカの暴走、そして敗北を見て、かつての「友好国」もアメリカから離れている。その典型例がサウジアラビア昨年10月5日の原産合意に対し、バイデン大統領は制裁を匂わせたが、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は個人的にアメリカ政府を脅したというアメリカが石油削減に報復すれば数十年来の米国とサウジの関係を根本的に変え、米国に多大な経済的犠牲を強いるというのだ。
 ブリンケン国務長官が6月6日にサウジアラビアを訪問、ビン・サルマン皇太子と会談したが、その際に撮影された写真が話題になっている。ブリンケンの後ろにアメリカの国旗が飾られていないのだ。アメリカが侮辱されたと考えられている
 アメリカと同盟国の連携による対中包囲網が効果を上げ、インド・太平洋地域でアメリカなどに戦略的な追い風が吹いているとラーム・エマニュエル駐日米大使は主張したようだが、戯言だ。