安倍元首相以上のタカ派ぶりを発揮している岸田首相は、いまや周囲に「自分はハト派じゃない」と口にしはじめているということです。要するにタカ派の道を歩んでいる自覚を持っているということで、信念を持たない人間はいずれこうなるという一つの見本を示しているように思われます。
バイデンはそれなりに近々の対中融和を意識しているようで、ブリンケン国務長官の訪中はその表れと思われます。
では岸田氏は米中対立が融和に向かった時にどう対応しようとしているのでしょうか。中国としては、米国の歓心を買おうとして米中対立を囃している岸田首相の方を当の米国よりも不快に感じるものですが、岸田氏にはそうした感覚はないようです。一体どんな感覚で長く外相に地位に就いていたのでしょうか。
国内問題ではデタラメ窮まるマイナンバー法をどうする積りなのでしょうか。全国保険医団体連合会によれば、マイナ保険証を使える医療機関の65%が何らかのシステムトラブルを経験していて、本来は有効な保険証なのに「無効」や「該当なし」と誤って判定されるケースが多かったということです。無保険者と見做されて10割を請求される不当性に加えて、もしも別人の医療情報が混入していれば直ちに重大な医療事故につながりかねません。
政府は現行の保険証を来年秋に廃止してマイナ保険証に一本化する方針ですが、現行のシステムのまま国民全体がマイナ保険証を使うようになれば、現場が大混乱に陥るのは必定です。
政府は全力を挙げてこのシステムを正常化するべきですが、元々設計の基本思想に欠陥のあるシステムが1年やそこらで正常化することはあり得ません。現行の(紙の)保険証であれば円滑に運用されているのですから完全なシステムが出来上がるまで現状のシステムを維持するべきです。
いずれにしてもマイナンバーシステムへの移行は一旦中止すべきです。
日刊ゲンダイの2つの記事を紹介します。
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マイナカードも岸田政権も葬り去る必要 軍拡だけで日中首脳会談の予定なし
日刊ゲンダイ 2023/06/21
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
安倍派のパーティーに出席し、「ハト派、タカ派のレッテル貼りには意味がない」──と挨拶した岸田首相は、周囲に「自分はハト派じゃない」と口にしはじめているそうだ。
実際、岸田政権による軍拡が急ピッチで進んでいる。この通常国会では、軍事費を5年間で43兆円に拡大させるための「財源確保法」も成立させている。岸田政権は日本の軍事費をGDP比2%まで膨らませる方針だ。このままでは、日本は世界第3位の軍事大国となってしまう。戦後、約80年間続いた「戦争をしない国」が、大きく姿を変えようとしているのは間違いない。
直感だったのかも知れないが、昨年末、2023年を「新しい戦前になるんじゃないですかね」と警告したタモリは、まさに慧眼だったのではないか。この「新しい戦前」について、慶応大の片山杜秀教授が、毎日新聞夕刊(19日付)で鋭い指摘をしている。
<この言葉が衝撃を与えているのは、実際に近い将来、戦争が起きうると多くの人が思っているからではないでしょうか。その可能性を認めることをけしからん、という人もあまりいない。つまり、新しい戦前である状況を受け入れていると思います>
<こんな危機の時代だから、防衛費を増額しても仕方ないとうなずいている状況です。それに対して、野党も十分に反発していない。国民的な議論が巻き起こる兆しもない>
<軍備の増強など国がやっていることを、国民が無為に追認してしまっています>
要するに、軍拡やむなしという思考停止が「新しい戦前」を招いているということだ。しかし、戦争を止める最後の砦である国民が「仕方ない」と思考停止に陥り、歯止めとならないとなると、あっという間に最悪の事態になだれ込んでしまうのではないか。「いつか来た道」である。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「内心“これはおかしい”と思っていても、大きな流れを前に“仕方ないか”となりやすいのが、日本人の特徴です。空気を読み、少数派になることを恐れる気持ちも強い。戦前の日本人も同じでした。主権在民となり、戦後約80年たっても、日本人の気質は大きく変わっていないということです。戦争の怖さは、はじまってしまうと、反対の声を上げようと思っても、その時は声を上げられない状況になっていることです」
このままでは、あとから振り返ったら、2023年は、あの時が分岐点だったとなりかねないということだ。
外交を放棄する最悪事態
最悪なのは、国民の「仕方ないか」という意識に便乗し、岸田政権が「戦争できる国」に向けてひた走っていることだ。それどころか、危機をあおって「新しい戦前」をつくり出している状況である。
とくに中国に対する「包囲網」構築に躍起になり、「台湾有事」をあおりまくっている。昨年、改定した「安保関連3文書」でも、わざわざ中国の動きを国際秩序への“最大の挑戦”と指摘し、国民に中国脅威論を印象づけようとしていた。防衛費倍増の最大の理由も中国脅威論である。
中国が軍事大国化しているのは事実だろう。しかし、いま必要なのは「軍拡」ではなく「外交」なのではないか。
中国の最大のライバルでもあるアメリカですら、なんとか正面衝突を避けようと、中国との対話姿勢を打ち出している状況である。ブリンケン米国務長官が中国を訪問し、秦剛外相と計7時間半、王毅政治局委員とも3時間にわたり話し合い、習近平国家主席とも会談している。バイデン大統領も、わざわざ「今後、数カ月以内に習主席と会うつもりだ」と記者団に語っている。
ところが、岸田政権は、軍拡だけで日中首脳会談の予定もないのだから話にならない。これでは戦前の日本と同じだ。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「米中共に、対話による外交で万一の衝突を回避したいのでしょう。当然ながら、戦争を望んでいないということです。本来、こうした緊張緩和に向けた外交は、隣国であり、平和憲法を掲げる日本が率先すべきです。理想は、5月の広島サミットに中国を招くことでした。成功していれば、日本は国際社会から注目を浴びたはずです。なぜ、岸田首相はアメリカよりも早く訪中し、首脳会談実現に動かなかったのでしょうか。それどころか、やっていることは大軍拡で、いたずらに中国を刺激してしまっている。これでは、対話による外交などとても無理でしょう。緊張関係に拍車をかけるだけです」
台湾有事にアメリカは参戦しない
このまま岸田政権に任せていたら、本当に「新しい戦前」になりかねない。当たり前のように「台湾有事」をあおっているが、「台湾有事」がどういう事態なのか、岸田は想像できているのだろうか。
「仮に台湾有事が起きた場合、最悪、日本だけが中国と向き合うことになる恐れがあります。アメリカ政府が台湾有事への対応で米軍を派遣する場合、議会の承認が必要となります。『日本のために米兵の血を流す必要があるのか』という世論が強くなれば、承認を得られない可能性がある。ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を巡っても、共和党からは消極的な意見が出てきているほどです。米軍派遣が議会で承認されなければ、日本だけが中国と対峙することになりかねません。軍事大国の中国と直接向かい合うことがどれほど危険なことなのか、岸田首相に想定できているとは思えません」(五野井郁夫氏=前出)
危ういのは、岸田は重要政策を国民に知らせないまま、好き勝手に決めていることだ。
昨年末に改定した「安保関連3文書」も、わざと国会閉幕後を狙って閣議決定している。専守防衛から逸脱する「敵基地攻撃能力」の保有も、国民の知らないところで決めてしまった。その後も、なぜ防衛費を倍増させるのか、どんな兵器を買うのか、と野党から追及されても「手の内を明かすことになる」と強弁して、ほとんど答えようとしない。
ウクライナ危機以降、日本は、「国難」と叫ばなくても、軍事費が拡大し、軍拡が進む異常事態となっている。
放っておいたら、岸田は、勝手に日本を「戦争できる国」にしてしまうのではないか。国民が「仕方ない」と思考停止に陥れば、取り返しがつかないことになるだろう。
国民の手で、“欠陥品”のマイナンバーカードとともに岸田政権を葬り去る必要がある。
これは詐欺だ 見えてきた 紙の保険証廃止で政権転落
日刊ゲンダイ 2023/06/22
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
他人の情報が誤登録されたとか、別人にマイナポイントを付与していたとか、毎日のようにトラブルが発覚するマイナンバーカード。とりわけ問題になっているのがマイナカードを健康保険証としても使う「マイナ保険証」で、システムの不具合などにより患者が医療費の全額を窓口で請求されるケースが少なくとも776件確認されている。
マイナカードは取得しても、保険証として利用している人はまだ少ないのに、トラブルは続出。
全国保険医団体連合会によれば、マイナ保険証を使える医療機関の65%が何らかのシステムトラブルを経験している。本来は有効な保険証なのに「無効」や「該当なし」と誤って判定されるケースが多かったという。別人の医療情報が表示されるなど、重大な事故につながりかねないケースもある。
政府は現行の保険証を来年秋に廃止してマイナ保険証に一本化する方針だが、国民全体がマイナ保険証を使うようになれば、現場は大混乱に陥るのではないか。
通常国会が会期末を迎えた21日、岸田首相は会見を開き、相次ぐマイナカードのトラブルに言及。「デジタル社会への移行のためには、国民の信頼確保が不可欠だ。一日も早く信頼を取り戻せるよう政府を挙げて取り組んでいく」と言い、以下の3点を河野デジタル相ら関係閣僚に指示したとアピールした。
「個人情報保護の重要性を踏まえ、マイナポータルで閲覧可能となっている全てのデータについて本年秋までをめどに総点検を行うこと」
「再発防止を徹底するため、マイナンバーの確認、氏名、住所、性別、生年月日の4情報を全て照合する手続きへの統一など、マイナンバー登録にかかる政省令の見直しを本年秋までをめどに行うこと」
「現行の保険証の全面的な廃止は国民の不安を払拭するための措置が完了することを大前提として取り組むこと」
そのうえで、来年秋に現行保険証を原則廃止する予定を見直す考えはないと強調した。
コロナ並みは自ら招いた厄災
マイナカードのトラブルに対応するため、岸田の号令で21日設置されたのが「マイナンバー情報総点検本部」だ。デジタル庁、厚労省、総務省などで構成され、河野が司令塔役を担う。
初会合で岸田は「政府を挙げてコロナ対応並みの臨戦態勢で、国民のマイナンバー制度に対する信頼を一日も早く回復するべく、政府・地方自治体・関係機関一丸となって全力を尽くして下さい」と挨拶したが、コロナ並みの危機だと認識しているのなら、いったんマイナカードの運用を停止したらどうなのか。だいたい、自らが招いた厄災だ。
「慌てて点検本部を立ち上げても、根本的な解決にはなりません。そもそもマイナカードの取得は任意だったはずです。それを保険証と紐付けることで事実上、強制したことが間違いなのです。続出するトラブルは、ポイントを大盤振る舞いする一方で、保険証と一体化することでマイナカードがないと生活できない状況に国民を追い込んで普及に躍起になってきたツケですよ。
総点検本部にしても、現行の保険証廃止ありきで、政府のメンツと利権を守るための対策でしかない。命に関わる問題なのに、国民の健康や個人情報を軽んじ過ぎています。政府がまずやるべきことは、保険証廃止の撤回でしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
立憲民主党の小沢一郎衆院議員も、事務所名義のツイッターでマイナカード問題への岸田の対応について「自分で勝手に火をつけて炎上させ、散々国民を困らせ混乱させておいて、今度は『私が消しますよ』と盛んに宣伝する。こういうのをマッチポンプと言う。一度、全部停止すべき」と猛烈に批判していた。
政府のメンツと利権を守ろうとして自壊に向かう
「マイナカードを取得するメリットが多ければ、強制しなくても国民は自主的に取得し、自然と普及するものです。ところが政府はメリットを明確に説明できないから、普及のためにポイント付与などで莫大な予算をつぎ込まなければならなかった。運転免許証や母子手帳、公金受取口座など何でもかんでもマイナカードに集約することで普及を進めようとしていますが、それは情報漏洩のリスクを高めることにつながり、余計に国民の不安を招いています。
一度、個人情報が流出してしまったら取り返しがつきません。国民を騙し討ちにするような真似をしてマイナカードを強制するのは権力の横暴だし、詐欺と言ってもいい。河野大臣ご自慢の“突破力”は、政府に対する国民の信頼を破壊してしまった。それでもマイナ保険証をゴリ押しする政府は、自滅に向けて墓穴を掘っています」(五十嵐仁氏=前出)
岸田政権の拙速な進め方には、与党内からも異論が上がり始めた。有権者の反発が思いのほか大きくてビビっているのだ。
自民党の山口衆院議院運営委員長は21日、来年秋にマイナ保険証に一本化する政府の方針について「ちょっと乱暴だ。これ以上、(トラブルが)出ると来年秋はまずいだろう。(現行保険証もマイナカードも)両方使えていい。信頼がないとダメだ」と苦言。
公明党の高木政調会長も「もし課題が解決できないのであれば、時期について検討しなければいけないだろう」と言っている。
普及ゴリ押しは裏の目的があるのか
「国民の不安は高まる一方なのに、政府がマイナ保険証にシャカリキでマイナカードの運用を止めようともしないのは、何か裏の目的があるのではないかと勘ぐってしまいます。マイナカードに個人情報を集約して国民管理を徹底した先に何があるのか。軍拡を進める岸田政権のことだから、現代の“赤紙”を想定している可能性だって考えられます。
戦争をしようと思ったら、武器弾薬を爆買いするだけではダメで、戦闘員が必要です。保険証と一体化すれば、健康な男子を瞬時に峻別できる。ウクライナでは60歳までが戦闘要員の対象です。政府はオンラインでの銀行口座の開設や携帯電話の契約の際、本人確認の手段をマイナカードに一本化する方針も決めた。スマホに“赤紙”が来ることになるかもしれません。いずれにせよ、マイナカードの利用拡大は思想統制にもつながりかねず、国民の不安を無視して強制するのは人権侵害です。
とことん国民をナメている政権には、マイナカードの返納やデモなどの国民運動で怒りを示す必要がある。世論が反対の声を明確にすれば、さすがに保険証廃止も強行できない。極めつきは、やはり選挙です。年内にあるといわれる解散・総選挙で『NO』を突きつけ、マイナカードと自公政権を追放するしかありません」(政治評論家・本澤二郎氏)
毎日新聞が17、18日に実施した全国世論調査で、岸田内閣の支持率は33%と5月の前回調査から12ポイントも下落。無党派層に限れば、支持率はなんと11%という低さだったという。マイナカードの混乱が大きな要因とみられている。
総選挙でカギを握るのは無党派層の動向だ。来年の総裁選での再選を狙って解散時期を探る岸田が国民の怒りと不安を甘く見ていたら、手痛いしっぺ返しを食らうことになるだろう。
国民の不安に寄り添おうともせず、見切り発車のマイナカードを押し付けて現行の保険証を廃止する政権は、国民をナメくさっているのだ。それなら、民意によって政権から引きずり降ろす。政権転落のトラウマを今こそ思い出させてやる必要がある。