2023年6月5日月曜日

マイナ保険証 命にかかわる人違い 被害女性語る「薬局で他人の投薬情報」

 健康保険証の廃止が盛り込まれたマイナンバー法等改定案2日に参院本会議で採決されました。同日、全国保険医団体連合会は都内で緊急の会見を行い、採決強行に抗議する声明を発表しました。
 声明は、健康保険証の廃止は「『無保険』扱いとなる者を政策的に作り出すものと厳しく批判しマイナンバーカード保険証情報の誤登録他人の情報の紐づけは医療事故を招きかねない重大問題で、国民の命と健康にかかわると強調しています。
 会見ではトラブル事例の最新集計分も公表し、竹田智雄副会長は、2481医療機関でトラブルがあったと明らかにしたうえで、医療の質を上げる」(河野太郎デジタル相)どころか手間やトラブルだらけで、日常診療で取り扱うのは困難だと述べました。
 また住江憲勇会長は、マイナ保険証が1医療機関あたり1日に1~2人程度の利用にとどまっていながら、トラブルが続出していることに「普通の商取引なら返品ものだと強調し、「あらゆる方策を駆使して、来年秋の健康保険証廃止を中止に追い込む運動を続ける」と訴えました。しんぶん赤旗が報じました。

 またしんぶん赤旗日曜版は、4月中旬に医療機関と薬局を受診した30代の女性は、マイナ保険証に別人の投薬・医療情報がづけられていましたが、幸いにかかりつけの病院だったので異常に気が付いて大事に至りませんでした。その後薬局に薬を貰いに行ったときにもまだ誤登録のままだったため、異常に気付いた薬剤師から項目ごとに確認を受けたということです。
 幸いに4月という早い時期だったので、医療関係機関が異常に気が付いて対処できましたが、そうでなければ女性の命や健康に関わる重大な事故につながる惧れもあるケースでした。併せて紹介します。
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マイナ保険証強要 成立 無保険者 作り出す愚策 保団連緊急会見 中止へ運動続ける
                        しんぶん赤旗 2023年6月3日
 健康保険証の廃止が盛り込まれたマイナンバー法等改定案が参院本会議で採決された2日、全国保険医団体連合会は都内で緊急の会見を行い、採決強行に抗議する声明を発表しました。
 住江憲勇会長名で発表された声明では、健康保険証の廃止は、「『無保険』扱いとなる者を政策的に作り出す愚策だ」と、厳しく批判しています。また、マイナンバーカード保険証情報の誤登録について、「他人の情報の紐(ひも)づけは医療事故を招きかねない重大問題。国民の命と健康を軽視していると言わざるを得ない」と強調しています。
 会見では、マイナ保険証をめぐり現場で発生しているトラブル事例の最新集計分も公表。竹田智雄副会長は、2481医療機関でトラブルがあったとしたうえで、「河野太郎デジタル相は、出演したテレビ番組で、『マイナ保険証で医療の質を上げる』といっていたが、それどころか、手間やトラブルだらけで、日常診療で取り扱うのは困難なのが現実だ」と述べました。
 千葉県で訪問医療を行っている伊藤真美医師は、訪問診療でもマイナ保険証とオンライン資格確認のシステムが必要になる中、安定的なシステムが作れるのか疑問の声をあげました。
 住江憲勇会長は、マイナ保険証が1医療機関あたり1日に1~2人程度の利用にとどまっていながら、トラブルが続出していることに「普通の商取引なら返品ものというのが世間の常識」だと強調。「あらゆる方策を駆使して、来年秋の健康保険証廃止を中止に追い込む運動を続ける」と訴えました。


マイナ保険証 命にかかわる人違い 被害女性語る「薬局で他人の投薬情報」
健康保険証廃止ありえない 岸田政権に怒り
                     しんぶん赤旗日曜版2023年6月4日号
 世論調査でも国民の過半数が「反対」にもかかわらず、健康保険鉦を廃止し、国民に「マイナンパーカード保険証」を強要する岸田政権。しかし、マイナ保険証に別人の医療情報が約7300件ひもづけられるという重大事態が起きています。被害者や医師は「命にかかわる大問題だ」「健康保険証を廃止することは許されない」と、岸田政権に怒りの声をあげます。 取材班

 4月中旬に医療機関と薬局を受診した30代の女性。マイナ保険証に別人の投薬・医療情報がひもづけられていました。薬剤師から「軽い薬同士でも飲み合わせが悪いと命の危険に及ぶこともある」と言われ、驚きました。「大事に至らなかったのは不幸中の幸いだった」と語ります
 埼玉県保険医協会理事長で医師の山崎利彦さんは警鐘を鳴らします。「初めてかかった病院では、登録されている情報が他人のものだと見破るのは困難。この瞬間も、誤った医療情報で、病気の発見を妨げられたり、持病の悪化を招いたりしている可能性があります
 健康保険証を廃止し、国民にマイナ保険証を強要する「マイナンバー法等改定案」。衆院では「自尽・公明・維新・国民」の「悪政連合」が推進してきました。
 日本共産党の山下芳生参院議員は特別委員会(5月29日)で、マイナ保険証の運用を時中止すべきだと要求。「憲法が保障する国民の生存権などを脅かす深刻な問題だという認識はあるのか」と追及しました。
 河野太郎デジタル相は「間違ったデータをもとに医療が行われ、健康に被害が及べば深刻なトラブルだ。個人情報が保護されないことは、個人の尊厳にもかかわる重大な事案だ」と認めました。
 全国の開業医の6が加入している全国保険医団体連合会(保団違)の調査(5月29日発表)では、医療機関でマイナ保険証が「無効」となるなどのトラブルが回答の6、1429件にのぽります。「無効」を理由に窓口で10負担を徴収したケースが206件。保団違はマイナ保険証システムの運用を「中止すべきだ」と訴えます。

氷山の一角
 政府が公表している約7300件の誤登録は「氷山の一角」。政府は登録データを点検し、7月末までに結果を報告するよう求めています。まさに、制度の根幹を揺るがすような重大な事態です。こうした問題を未解明のまま、マイナ保険証を国民に押しつければ、さらなる混乱は必至。「健康保険証を廃止するな!」の怒りの声が広がっています。


マイナ保険証命懸けの〝実証実験″
    被害女性 〝薬剤師さんの確認で大事に至らず″
                    しんぶん赤旗日曜版 2023年6月4日号
 マイナ保険証に別人の情報がひもづけされていた-。関西地方に住む30代の女性が、この事実を知ったのは4月中旬のことでした。
 毎月通うかかりつけの病院を受診した時のこと。保険証を忘れたため、持っていたマイナ保険証を読み取り機にかざし、暗証番号を入力しました。すると画面に表示されたのは別人の氏名。名前の読みは同じですが、姓が違っていました。
 「機械の不具合か何かだろう」と思っていた女性。受付の人から「ご結婚されて保険証を変わられましたか。保険組合が変わっています」と尋ねられましたが、女性は身に覚えがありませんでした。
 原因が分からず、病院のスタッフが総出で対応。いつもは2~3分で終わる受け付けが、20分以上かかったといいます。
 その後、いつも服用する薬を受け取りに薬局へ。再びマイナ保険証を使うと、また別人の氏名と、別人の過去に処方された薬剤情報が表示されました。
 薬剤師は「薬の飲み合わせはとても大事です。軽い薬同士でも飲み合わせが悪いと命の危険に及ぶこともあります」と説明。「大変なことになっては困るので、何度も何度も確認して申し訳ない」とのべました。女性に改めて、マイナ保険証を使って表示された病院で、表示された薬を受け取ったことはないかと確認しました。
 女性は「薬剤師さんが私の身を案じ、何度も確認してくださったので、大事に至らなかった。不幸中の幸いだった」と話します。

どこもミスを認めなかった
 「どうして別人の情報が登録されているのか」。女性は、マイナンパー制度を所管する総務省、デジタル庁に問い合わせましたが、どちらも「こんなケースは聞いたことがない」と回答。翌日、国民健康保険中央会から連絡を受け、医療情報が表示された別人の加入する国保組合で誤登録していたことが分かりました。
 女性は同国保組合に問い合わせましたが、「国のガイドラインにのっとってやっている。こちらにミスはない」と強弁。女性は怖くなって眠りが浅くなり、精神的な不調で通院するようになりました。
 「トラブルが起きても問い合わせる窓口すらない。たらい回しの上に、納得のいく説明もありませんでした。ずさんな管理にあきれます。マイナンバーカードの普及のために健康保険証を廃止する法案を推し進めることは許せない」
 女性は、医療情報の誤登録は命にかかわる大問題だと考えています。
 「旅先での急病や事故に遭った際に、誤った医療情報に基づいて医療が行われたら、どうなるのか。もし、身内が命を奪われるようなことになったらどうするのか。マイナンバーカード制度を推進する岸田文雄首相をはじめ、政治家はそのことを考えてほしい」

誤った情報で薬処方される危険
     血液サラサラにする薬飲む人に止血剤⇒血栓でき梗塞起こす

開業医などでつくる埼玉県保険医協会理事長・医師 山崎利彦
 政府がマイナ保険証システム(オンライン資格確認等システム)を強引に進めた結果、現在進行形で国民の命や健康が危険にさらされています。全国を網羅するデジタルシステム構築の実証実験″を、こともあろうに人の生死に関わる医療現場で行っている。トラブルを招いた政府の責任は重大です。
 マイナ保険証に他人の情報が登録されている問題は、医療事故の原因になりかねません。
 例えば、3ヵ月ぐらい前から肩が痛いと受診してきた患者がいたとします。マイナ保険証システムを使って、医療情報(画像診断など)を確認すると、数週間前に総合病院で脳や心臓のCT検査をしていました。そうなると、脳や心臓は問題なしということだから、それ以外を疑うことになります。ところが、この情報が他人のものだったときに、脳梗塞や心筋梗塞を見逃す事態になりかねません。
 また、血栓ができやすいため血液をサラサラにする薬を飲んでいる人がいたとします。ところが、間違って登録された他人の投薬情報にはそれが載っていなかった  ケガなどによる出血を止めるため、血液を固まりやすくする薬を服用すれば、血栓ができて梗塞を引き起こしかねません。
 緑内障の治療で眼圧を下げる薬を服用していた人がいたとします。投薬情報の誤登録でそのことが分からず、別の病気の治療で眼圧が上がる薬を処方することもあり得ます。
 かかりつけの病院であれば本人の記録があるので、そういった危険を回避できるでしょう。しかし、初めてかかった病院では、登録されている情報が他人のものだと見破るのは困難です。この瞬間も、誤った医療情報で、病気の発見を妨げたり、持病の悪化を招いたりしている可能性があります。マイナ保険証に他人の情報が登録されていたという7300件超は氷山の一角です。
 保険証や患者の情報はマイナ保険証システムを使って取得します。しかし氏名にまれる旧字が伏せ字になっていたり、カナの氏名だけになっていたりする例が、私の病院でも毎日のように見つかります。
 名前の読みでいうと、「良太」の小文字の「」が大文字になっているため、他人と判別されることもあります。領収書発行のため、伏せ字の部分を直すとエラーが出る事例もありました。
 ただでさえ医療機関の受付窓口の業務は煩雑なのに、新しいシステムの不具合・不備が重なり、負荷がかなり増しています。政府は、便利さや「質の高い医療」などと宣伝していますが、まったく逆です。現場に混乱をもたらしています。間違った情報が載っているものでの高い医療の提供はできません。精神論で対処を迫っているも同然です。
 この状況下で、健康保険証を廃止することは許されません。健康保険証廃止法案は廃案しかありません。国民の命と健康が危険にさらされているとの認識を持ち、政府を挙げてシステムトラブルに対処するよう求めます。