2023年6月12日月曜日

暮らしより軍拡 生活者より大企業 岸田内閣成長戦略案・「骨太」原案

 岸田首相は発足した時から「新しい資本主義」を口にして来ましたが、その実態はずっと不明でした。それが7日にようやく明らかにされたのですが  

 しんぶん赤旗が7日に示された新しい資本主義実行計画(「成長戦略」)案と「太の方針」原案の問題点を探りました。
 それは何より「日米同盟の抑止力と対処力を強化する」という軍事優先のもと、ひたすら財界と二人三脚で推し進めるというもので「新しさ」は何もありません。肝心の「分厚い中間層の形成」については、「投資しやすい環境」整備するから金融商品への投資で達成するようにということのようです。遂にギャンブルが政策の中枢に位置しました。
 もう一つの「構的な賃上げ」実現では、①リスキリング(学び直し)②職務給の導入③労働侈動の円滑化を柱とするもので、その中身はまさに「賃下げ・リストラ政策そのものです。
 兼ねてより「羊頭狗肉」が岸田氏の身上とはいえ、「大軍拡」と「大企業擁護」以外には何もなくただ言葉の遊び?というのが岸田政治です。
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暮らしより軍拡 生活者より大企業 岸田内閣成長戦略案・「骨太」原案
                        しんぶん赤旗 2023年6月9日
 岸田文雄内閣が6、7日に示した新しい資本主義実行計画(「成長戦略」)案と「太の方針」原案の問題点を探ります。

財界との二人三脚あらわ
「骨太の方針」原案は冒頭、「内外の歴史的・構造的な変化と課題に直面している」と宣言します。対外政策では、「日米同盟を基軸」とした国際連携をうたいます。その中身は、「日米同盟の抑止力と対処力を強化する」と、軍事的対決姿勢を鮮明に打ち出しています。
 経済分野では、気候変動や国内での少子化、格差などの課題を列挙しました。国内での産業空洞化や賃金抑制、非正規雇用の増加などは、国際競争のもとで企業が「コスト削減を優先」せざるを得なかったためだと、大企業を弁護しています。
 二つの文書を作成・検討しきたのは、経済財政諮問会議(「骨太の方針」)と新しい資本主義実現会議(「成長戦略」)です。両会議には、経団連の十倉雅和会長と経済同友会の新剛史代表幹事という財界代表がともに参加しています。また、子育て対策の方針をつくるこども未来戦略会議にも、両氏がメンバーとして参加。さらには、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の会長は十倉経団連会長です。政府と財界の二人三脚です
 岸田政権の政策が人々の暮らしよりも軍拡を優先し、生活者よりも大企業の利益が第一に置かれているのは、このためです。「骨太の方針」原案は、「官が的を絞った公的支出を行い、これを呼び水として民間投資を拡大させる」ことを強調。「分厚い中間層」の形成も、金融商品への投資であり、「投資しやすい環境」(「成長戦略」案)整備が政府の役割とされます。
 財源づくりにも行き詰まりが見えます。大企業・富裕層が優遇されているゆがみをただすことができないためです。 (清水渡)

中身は〝賃下げ・リストラ″
『労 働』
「骨太の方針」原案は、「三位一体の労働市場改革」による「構的な賃上げ」実現を掲げます。①リスキリング(学び直し)②職務給(「ジョブ型」人事)の導入③労働侈動の円滑化-ですが、中身は賃下げ・リストラ政策そのものです。
「ジョブ型」導入は、リストラや賃下げがセッです。富士通は昨年、一般社員への「ジョプ型」導入と問時に、幹部社員3000人の退職を募集。NTTは、真ん中の職位の基準内賃金を月1万円以上も引き下げ、労働者の過半数の賃金上限額が下がりました。パートナー扶養手当1万に9300円など各種手当もなくなり、多くの労働者が月3万円前後の減収です。
「骨太の方針」原案に先行して策定された「三位一体の労働市場改革の指針」は、「リスキリングの方法、従業員のパフォーマンス改善計画(PIP)」のモデルを示すといいます。IPとは、日本IBMなどのリストラ手法で、従業員の能力向上策(リスキリングを偽装し実現不可能なノルマを押し付け、未達成を口実に退職・解雇に追い込むものです
「骨太の方針」原案は、「賃上げ率は約30年ぶりの高い伸び」と誇ります。しか実賃賃金が13カ月連続の低下とり、賃上げが物価上昇に追い付かない状況です。
 最低賃金で「今年は全国加重平均1000円を達成する」としていますが、物価上昇を上回ってさらに生活改善につなげるには不十分なうえ、地域間格差は解決しません。全国一律制度の導入、500円の実現こそ急務です。(田代正則)

財源のゆがみ 手をつけず
『子育て支援』
「骨太の方針」原案は、岸田首相の目玉政策である「異次元の少子化対策に全力で取り組む」といいます。ただし、具体化は月内に決める「こども未来戦略方針」に委ねているため、原案では詳細は省かれています。
 政府が1日に発表した「こども未来戦略方針」の素案は、少子化対策の財源に「消費税を含めた新たな税負担は考えない」と強調。消費税堰税の先送りと抱き合わせで、大企業・富裕層優遇になっている法人税や所得税のゆがみを放置しようとしています。
 財源で決まっているのは社会保障の「徹底した歳出改革」(岸田首相)だけ。「骨太の方針」原案は、高齢者の社会保障給付減と負担増で現役世代の社会保険料負担を軽減すれば、消費活性化を起点とした好循環が実現すると主張しています。
 具体的には、原則1割の介護保険の利用者負担割合の引き上げについて「年末までに結論を得る」と明記当初は夏までに結論を出す予定でしたが、解散・総選挙の可能性が強まるもと、年末に先送りしたうえで、改悪は実行する構えです。
 介護保倹については歴代の「骨太の方針」でも、ケアプラン有料化や、要介護1、2の人の保険給付外しなど、同制度を根底から壊す改懸案が繰り返し提案されてきました。少子化対策を口実に、こうした議論が急加速する危険があります。
 医療機関の統廃合や病床削減に向けた「地域医療構想」の推進も明記。2024年度の診療報酬・介護報酬改定では、現場が求める抜本引き上げではなく、デジタル機器の活用など政府の方針に合う事業所だけを支援対象にしようとしています。 (佐久間亮)

官民連携積極果敢な投資
『経済安保』
 岸田政権の経済成長戦略の際立った特徴は、「官民連携」「積極果敢な投資」を行うというものです。大企業の利益を確保するために、成長の見込まれる戦略分野に対し、「予算・税制、規制・制度改革を総動員」(「骨太の方針」原案)して支援するというものです。
 戦略分野に挙げられているのが半導体、蓄電池、バイオものづくり、データセンター。さらに原子力の活用も進めます。さまざまな危険性が指摘されている生成AI(人工知能)についても「開発・提供・利用を促進する」(「骨太の方針」原案)ことをうたっています。
 さらに、「新しい資本主義の実現のための基礎的条件は、国家の安全保障である」(「成長戦略」案)と強調。軍事力だけでなく、「総合的な防衛体制を強化する」とし▽研究開発 ▽公共インフラ整備 ▽サイバー安全保障 ▽わが国および同志国の抑止力向上等のための国際協力-の4分野が「防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のもの」(「骨太の方針』原案)だとしました。
 このもとで、「骨太の方針」原案は、経済安全保障法の「着実な実施と取組の更なる強化」を掲げました。重要物資の製造などを行う「民間企業への資本強化を含めた支援の在り方について、更に検討を進める」としました。
 経済安保の推進体制として、憲法違反の「秘密保護法」を民間に広げる「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」について「法制度等の検討をさらに深め、速やかに結論を得る」としました。さらに、インテリジェンス(諜報)能力の強化を掲げました。 (日限広志)