2023年6月17日土曜日

マイナトラブル続出 悪評ふんぷんで岸田政権の命取りに

 国会は間もなく閉会しますが、河野デジタル相が進めているマイナンバー関連のトラブルは収束するどころか、まだ氷山の一角で このさきどこまで拡大するのか分かりません。
 2007年に発覚した「消えた年金問題」は、国民の年金積立記録に5000万件の漏れが見つかったものでした。当時の安倍首相は、最後の1人に至るまで解明すると約束しましたが、全く果たせないままそれが翌々年に自公政権が選挙で大敗する引き金になりました。
 政府はマイナンバーに住民票、マイナポイント、公金振込口座、保険証、医療データ、年金資料等々 あらゆる分野のデータを結び付けようとしているので、もしも当人以外のものが紐づけされていればそれが及ぼす被害は「生命の危険」を含めて計り知れません。
 河野担当相はマイナンバーに個人の各情報を紐づければ医療や行政上の処理が便利になるからと強調しますが、それは「すべてが正確に紐づけられていれば」(「個人の秘密」の問題を除き)便利な面があるということであって、紐づけの作業が完璧に行われるというシステム上の保障がなければ「絵に画いた餅」に過ぎません。
 デジタル庁の関連部局は連日深夜まで作業をしているものの、作業量は今後ますます増大する一方で作業の完璧を期すことなど出来そうもありません。闇は限りなく深いというしかありません。日刊ゲンダイの2つの記事を紹介します。
 問題は、河野太郎氏を担当相に据え続けていては 深刻なこの事態を解決することが出来ないのではないかということです。彼がデジタル化について生半可な知識しか持っていないことは明らかなので、早急に組織をうまく動かせる人に変え、作業範囲を確定しスケジュールを根本的に見直すべきでしょう。
 適菜収氏が「それでもバカとは戦え」で再び河野太郎氏を取り上げています。併せて紹介します。
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マイナ大混乱「消えた年金」再来の懸念も…トラブル続出、悪評ふんぷんで岸田政権の命取りに
                         日刊ゲンダイ 2023/06/15
「消えた年金問題」に似てきた──。マイナンバー関連のトラブルが次々と噴出している。岸田首相は14日、「万全の対策を迅速かつ徹底して講じる」と信頼回復に努める考えを示したが、今見えているのは氷山の一角。この先もあちこちで問題が起これば、政権の命取りだ。
 最近のトラブル一覧をまとめたのが別表だ。住民票、ポイント、口座、医療、年金……とあらゆる分野でトラブルが発覚している。
 中でも、医療現場で悪評ふんぷんなのがマイナ保険証だ。今春からマイナ保険証の受け付けに必要なシステムの導入が原則義務化され、多くの医療機関が運用を開始している。
 埼玉県保険医協会が開業医を対象に実施したアンケート調査(5月16~19日)によると、システムを運用していると回答した208人(72%)のうち、ナント148人(72%)が「トラブルがあった」と回答した。「患者情報が表示されない」「受付の混雑」「誤表示」「システム障害」などが多かった。
「想定以上にトラブルが多く、使い勝手も悪い」(同協会の担当者)という。




■“ポンコツシステム”に医療現場は困惑
 加藤厚労相は「質の高い医療が受けられる」と繰り返し、新システムでは患者の医療履歴などの情報を活用できると強調する。しかし「入力されている医療情報が誤っている可能性があり、誤診療や誤投薬などの事故につながりかねない。システムの情報は怖くて利用できない」(医療関係者)という。前出のアンケートでは、「現行保険証は存続すべき」との回答が85%に上った。
 自治体もソッポを向きつつある。マイナンバーと公金受取口座とのひも付けの誤登録が後を絶たない。これを受けて、神奈川県平塚市はマイナンバーとひも付けた「口座」への給付金支給を当面、取りやめることを決めたが横浜市や川崎市でも同様の動きが起きている。
「これから始まるのであればともかく、マイナンバー制度はもう走ってしまっている。マイナカードはこの1年間で5700万枚から9200万枚まで普及が進み、現行保険証廃止により、マイナ保険証も広く使われていくでしょう。システムの点検や改修には時間がかかり、とりあえず現行の仕組みで進まざるを得ない。その間、国民生活や自治体の行政などで、何か支障を来す事態が相次いでもおかしくない。“消えた年金”の時と同じ展開にならないかと懸念する声が広がってきた」(自民党関係者)
 2007年に発覚した「消えた年金問題」は、5000万件の記録漏れが見つかり、大炎上。09年に自公政権が倒れる引き金となった。列島中が“マイナパニック”に陥れば、岸田政権も危うい。


「健康保険証」廃止で自治体から悲鳴…事務作業激増で職員に「死人が出るレベル」深刻懸念
                          日刊ゲンダイ 2023/06/17
「このまま来年秋に健康保険証が廃止されると、全国の市町村の国民健康保険課がパンクしてしまう」──。こんな懸念の声が自治体職員の間で広がっている。河野デジタル担当相に言わせれば、マイナンバーカードの活用拡大は「行政運営の効率化」につながるらしいが、現実はまったく逆。自治体職員に業務負担増の過労を押しつけ、死屍累々となりかねない。
  ◇  ◇  ◇
 マイナカードをめぐり、15日も新たなトラブルが発覚。兵庫県市川町が今年4月下旬、20代男性2人の顔写真を取り違えて載せたカードを交付していたことが判明した。当時は窓口が混雑しており、確認作業が不十分だったという。
 ただでさえ、窓口業務の負担増がミスにつながっているのに、これから先、さらに業務が逼迫する恐れがある。最大2万ポイントがもらえる「マイナポイント第2弾」が9月末に期限を迎えるうえ、来年秋の保険証廃止に伴う新たな事務作業がのしかかるからだ。
 現行の保険証は廃止から1年間有効だが、マイナカードを持っていない人や、カードは持っていても保険証と紐づけていない人は、保険証代わりの「資格確認書」を毎年申請する必要がある。ウッカリして更新を忘れると、資格確認書が発行されるまでの間、無保険状態になってしまう。
 いちいち申請・更新を迫られるのも面倒だが、大変なのは申請を受け付ける自治体も同じ。13日に立憲民主党が国会内で開催した「マイナ保険証に関するヒアリング」では、出席した議員から、資格確認書の申請・発行による自治体の業務負担増を懸念する声が続出した。

1万世帯の自治体では約5500件の資格確認書が必要になる
 その中で山井和則衆院議員は、ある自治体職員の指摘として「1万世帯の自治体で約5500件の資格確認書が必要になる」との試算を紹介。「申請受け付けや発行などの仕事が増え、過労で倒れてしまう」との懸念が職員から寄せられていると明かした。
「1万世帯あたり約5500件」は1世帯あたりの構成人数を3人と仮定すると、約2割の住民が資格確認書を必要とする計算だ。一方、マイナ保険証の登録率は人口比51%。このまま国民の半分に資格確認書を発行しなければならないとすれば、「住民2割に資格確認書が必要」との試算は大げさではない。むしろ控えめだが、それでも“致死量”の業務増が危惧されるのだ。

 改めて山井氏に聞いた。
「自治体職員の方からは『大げさではなく、死人が出るかもしれないと思うぐらいの事務量の増加が予想されます』との痛切な声も寄せられています。行政の手間を省くことがマイナカード普及、ひいてはデジタル化の目的だったのに、逆に手間を増やしかねない事態になっています。本末転倒だと言わざるを得ません。河野大臣は『公務員の働き方改革』を訴えていますが、地方公務員は置き去りなのでしょうか」
 そもそも、保険証廃止をめぐるゴタゴタのツケを自治体職員が背負わされる事態に至ったのは、河野氏が発した“号令”のせいだ。
「もともと厚労省は『保険証の原則廃止』と同時に、『マイナ保険証か、現行の保険証かの選択制』を打ち出していました。ところが、河野大臣が昨年10月にマイナ保険証への完全移行をブチあげて以降、選択制は沙汰やみに。その結果、苦肉の策で出てきたのが資格確認書なのです」(霞が関関係者)


適菜収「それでもバカとは戦え」
日本は「河野首相」と甘酸っぱい国へ…思春期が現在進行形の“かまってちゃん”
                         日刊ゲンダイ 2023/06/03
 くどいようだが、再び河野太郎について書く。なぜなら目の前に危機が迫っているからだ。世論調査で「次の総理」として河野の名前があがるのも、メディアがその危険性を指摘せず、あさっての方角から持ち上げるからだ。「この人なら何かやってくれそうな気がする」とツイートしている人もいたが、そこは同意する。
 河野が総理になったら確実に何かをやらかす。政治家はこれから何をやるかではなく、これまで何をしてきたかで選ばなければならない。そうなると最初に選択肢から外れるのは河野だろう。
 マイナンバーカードを巡るトラブルが続出すると、河野は「デジタル庁としての感度が低かった点はおわびを申し上げる」と意味不明の発言。部下の手柄は取り上げるし、失敗の責任は部下に押し付ける強烈な自己愛に基づくスタンドプレーを繰り返し、周囲を振り回す。“輝いている俺”を見てほしいというのが行動原理になっているので、他人の迷惑も顧みない。一般的な常識に欠けている麻生太郎にすら「何が欠けているといえば、間違いなく一般的な常識に欠けている」と言われる始末。

 誰しも思春期の頃の「ああ、やってしまった」という苦い思い出があるだろうが、現在進行形なのが河野である。河野のツイッターを見ると、本当に自分が好きで好きでたまらないのだなとよくわかる。あそこまで自己愛だけで完結している人も珍しい。河野はG20の写真などと共に「タローを探せ」とツイート。「初級編」「上級編」などと銘打っていたが、どれだけ自分が好きなのか。星条旗のような柄のマスクや自分の顔をプリントしたマスクをつけたり、自分のかわいい似顔絵が描かれた「太郎のクッキー」の写真をアップしたり、自民党の役員会にはいていく靴下を公開したり。

 河野の人間性を如実にあらわすエピソードがある。「朝の3時半に帰宅したら、愚息が全力でベーコンと叫んでいた。どうしたいんだ?」と突然ツイート。その後「ああ、ベーコンは、結局、^%£$+*・!%」などと意味不明の言葉を投稿し、これが話題になると、動画生配信で「ベーコンの秘密」について明かすと告知。思春期の女の子でも、このレベルのかまってちゃんはいない。河野が総理になったら、日本は確実に甘酸っぱい国になる

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それでもバカとは戦え」(日刊現代・講談社 1430円)

適菜収 作家
近著に「ニッポンを蝕む全体主義」「日本人は豚になる」「思想の免疫力」(評論家・中野剛志氏との対談)など、著書45冊以上。「適菜収のメールマガジン」も始動。詳細は適菜収のメールマガジンへ。本紙連載が書籍化「それでもバカとは戦え」好評発売中