2023年6月9日金曜日

大阪入管の内部報告書 入管庁、事実上認める 「送還忌避者」縮減目標も

 大阪入管の医師による酒気帯び診療が今年1月20日に発覚した経緯を記した内部報告書によれば、アルコールチェッカーを導入する事務連絡を221012日付で大阪入管の診療室長が発出し、10月と11月にも呼気アルコール検査が行われていました。そのことを共産党の仁比聡平参院議員氏追及すると、入管庁の西山卓爾次長は「事実確認中」として明言しませんでしたが、報告書の存在事実上認めました

 この医師はウィシュマさんの死亡を受け収容施設の医療体制強化の一環として大阪入管が昨年7月に雇ったのですが、昨年10月には既にアルコール検査が必要な状況にあり、今年1月20日に酒酔い診療が再確認されてからはずっと欠勤状態になりました。しかし政府は敢えて1名常駐していると偽っていたのでした。
 また仁比氏は、国外退去とされた外国人のうち様々な事情から帰国できない「送還忌避者」を22年度に456件減らす「縮減目標」を入管庁が立てていた問題でも追及し、入管庁担当者は、22年度以降に護送官付き国費送還や帰国説得などの目標件数を立てていたと認めました。
 しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
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大阪入管の内部報告書 入管庁、事実上認める 「送還忌避者」縮減目標も
                       しんぶん赤旗 2023年6月7日
野党ヒアリングで仁比氏追及
 出入国在留管理庁は6日、野党議員によるヒアリングで、日本共産党の仁比聡平参院議員が「赤旗」を通じて独自入手し同日公表した大阪入管処遇部門の入国警備官による内部報告文書について、「個々の詳細な事柄に関する事実の存否を申し上げるのと同じ結果になってしまうので、お答えは差し控えざるを得ない」として、事実上存在を認めました
 仁比氏が6日公表した文書には、大阪入管の常勤医師が酒に酔った状態で外国人被収容者を診察していた問題をめぐり、1月20日に当該医師を含む5人の医療職員に呼気アルコール検査を実施した経緯などが詳細に書かれています。ヒアリングは、文書の公表を受け野党の有志議員が緊急に開催したものです。
 仁比氏は、国外退去とされた外国人のうち、さまざまな事情から帰国できない「送還忌避者」を2022年度に456件減らす「縮減目標」を入管庁が立てていた問題でも追及。入管庁担当者は、22年度以降に護送官付き国費送還や帰国説得などの目標件数を立てていたと認めました
 一方で、仁比氏が示した「縮減目標」の具体的な件数についての質問には、「業務への支障をかんがみて、公にすべき情報ではない。正しい数値なのかどうか、お答えを差し控えさせていただく」と拒否しました。


「なんすかこれ」…法相が「調査中」と言った不祥事、実は報告書が存在 大阪入管の飲酒診察問題 医師の言動は
                          東京新聞 2023年6月7日
 大阪出入国在留管理局(大阪市)の常勤医師が酒に酔った状態で診察していた問題を巡り、大阪入管職員が診察日の翌日に作成した報告書とみられる文書の存在が明らかとなった。6日、野党が行った出入国在留管理庁(入管庁)へのヒアリングの中で、仁比聡平参院議員(共産)が公表した。(望月衣塑子)

◆猫なで声で診察、呼気検査でアルコール検出
 一連の問題で、斎藤健法相は「事実確認には時間がかかる」とし、国会などへの報告をしてこなかったが文書には医師の呼気検査の結果などが詳細にわたって記されていた。野党側は国側が早い時期から状況を把握していた可能性が高まったとして、法相の発言の矛盾を追及し、辞任を求めていく構えだ。
 仁比議員が、入管庁関係者から入手したとして公表した文書は、A4判5枚と添付資料からなる。大阪入管の入国警備官名で、同入管の診療室長に宛てていた。医師からアルコールを検出した翌日の今年1月21日の日付があった。
 文書の記載によると、医師は1月20日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた後、午後3時過ぎに登庁。職員に菓子や即席麺などの手土産を配る一方、笑みを浮かべて陽気に振る舞い、落ち着きや冷静さを欠いていた。診療対象者の1人目には、健康診断結果を通知したが、まぶたが重く、猫なで声だったため、医師を含め診療室にいた計5人の呼気検査を実施した。

 医師は計3回の検査で、酒気帯び運転の基準値を上回る呼気1リットル中0.22〜0.36ミリグラムのアルコールを検出。すると医師は「なんすかこれ。なんなんですか」などと言い、飲酒の有無は明言しなかった。入管側は医師に年次休暇を取るよう求めたが「失礼なことを」「無断欠勤でもいい」と言って午後4時に退室、欠勤扱いになったという。
 野党ヒアリングで、文書の内容の真偽について聞かれた入管庁の担当者は「お答えできない」と、回答を避けた。




 斎藤法相は2日の衆院法務委員会で、医師の飲酒問題を把握したのは「2月下旬」と述べていた。入管庁は4月、医療体制の改善策として「大阪の常勤医師1名(令和4年7月増)」と記した資料をまとめたが、当時、既に常勤医師は診療から外れていた。入管難民法改正案は3月に国会提出され、法相は「常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進などが着実に表れてきている」(4月19日の衆院法務委員会)などと、入管改革を国会で繰り返しアピールしていた。

◆ウィシュマさん遺族「医療整備、全くうそだった」
 名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で2021年に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=の妹のポールニマさん(28)は6日、記者会見し大阪入管の常勤医師が酒に酔って収容者を診療した問題について「(斎藤)法相は姉が亡くなったことで医療体制を整備したといっていたのに全くうそだった」と批判した。
 医師は、ウィシュマさんの死亡を受けた収容施設の医療体制強化の一環として大阪入管が昨年7月に雇った。ポールニマさんは「法相は問題を2月に把握しながら公表せず、そのまま改正法案を通そうとしている。無責任だ」と話した。
 2人は同日、法相に面談を申し入れたが受け入れられなかった。もう1人の妹ワヨミさん(30)は「入管の医療体制の改善が進んでいるのか聞きたかったが会えずに残念」と話した。

【関連記事】"斎藤健法相、2月に不祥事把握も公表せず 大阪入管医師の飲酒診察問題 「事実確認に時間がかかっている」


“入管の闇”許されない 大阪酒気帯び診療仁比氏が追及
                        しんぶん赤旗 2023年6月9日
参院法務委
 日本共産党の仁比聡平議員は8日の参院法務委員会で、入管法改悪案の採決強行に抗議するとともに、独自に入手した出入国在留管理庁の内部資料について追及しました。
 一つは、大阪入管の医師による酒気帯び診療が今年1月20日に発覚した経緯を記した報告書です。文書の中には、アルコールチェッカーを導入する事務連絡を2022年10月12日付で大阪入管の診療室長が発出し、10月と11月にも呼気アルコール検査が行われたことが記されています。
 仁比氏は「10、11月に検査を行ったのか」と追及。入管庁の西山卓爾次長は「事実確認中」と答えず、事務連絡についても「提出は差し控える」と拒否しました。
 仁比氏は、名古屋入管での死亡事件を受け、政府が大阪入管などに常勤医師を配置したことを誇ってきたと指摘。ところが、今年1月どころか昨年10月には医師にアルコール検査をしなければいけない事態に陥っていたと批判しました。

 もう一つは、本国に送還する外国人の目標を2022年度に456件とする資料です。仁比氏は「入管庁が作成したものか」と追及しましたが、西山次長は「内容の正否含めて答えを控える」と答弁を拒否しました。
 仁比氏は、参院審議の中で入管庁の数々の隠ぺいが明らかになったとして、採決が強行されたからと「入管の闇」を許してはならないと強調。「これからも当事者や支援者の声を聞き、徹底した審議をやるべきだ」と求めました。