2023年6月10日土曜日

参院法務委で入管法改悪案採決を強行 参院本会議で可決・成立

 外国人の収容と送還のルールを見直す入管改悪法は9日、参院本会議で自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立しました。廃案を求めていた立憲民主党、共産党などは反対しました。
 これによって国連の人権機関から、日本の難民受け入れ率が異常に低いとして人権意識の低さを数次にわたって指摘されてきたにもかかわらず、それを受け入れるどころか一層悪い方向に向かうことになりました。
 とりわけ今回の法改定は、ベースとなる「立法事実」が総崩れになったので本来は廃案にするしかなかったのですが、岸田政権は数を頼んで強引に成立させました。これでは自民・公明・維新などの極右勢力が一致すれば何でも成立することになります。

 改定案は成立してしまいましたが、共産党の仁比聡平議員らは最後まで成立させてはいけない法案であることを主張し、市民や移民者達も国会外で連日必死に成立を阻止しようと抗議行動を行いました。
 法案成立直前のしんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
 併せて田中龍作ジャーナルの記事「入管という名の特高警察」を紹介します。
 そこでは強制送還を拒否する外国人を入管施設内で入管職員が4人掛かりで拷問に掛ける映像大橋毅弁護士から記者団に提供された2枚が紹介されています。
 うしろ手錠をかけて肘を伸ばした状態で手が頭よりも上にねじり上げ、肩が痛くて立ち上がろうとするのを2人が抑えつけているシーンと苦痛で卒倒した犠牲者の写真です。入管は戦前の特高警察の考え方・在り方をそのまま踏襲したと言われますが、そのことを如実に示す写真です。
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入管法改悪案採決強行 仁比議員が反対討論 「数で決めてはならない」
                        しんぶん赤旗 2023年6月9日
参院法務委
 日本に暮らす外国人の命を危険にさらす入管法改悪案が8日の参院法務委員会で、採決が強行されました。自民、公明、維新、国民の賛成多数で可決され、日本共産党と立民は反対しました。委員会室が騒然となるなか、日本共産党の仁比聡平議員は反対討論で「政府案の立法事実の根本部分にかかわる重大な問題が次々と吹きあげているのに、このまま終局、採決などあり得ない」と主張し、政府案の撤回と審議の継続を求めました。国会前には多くの市民が集まり、「採決反対」のコールが響きわたりました。

 傍聴席には名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの遺影を持った妹のワヨミさん、ポールニマさんの姿もありました。採決を強行しようとする杉久武委員長(公明党)に共産、立民の議員が「採決反対」「人の命を奪うな」と抗議の声をあげるなか、自民党議員が杉委員長の周りにスクラムを組みガードする異様な光景が繰り広げられました。共産、立民は最後まで採決反対の姿勢を貫き、立民の石川大我議員は反対討論で「現段階での採決などあり得ない」「審議は続行すべきだ」と訴えました。
 13分間にわたる反対討論で仁比氏は、「確かに、自民党、公明党、そして法案に賛成する会派の数は、この委員会において多い。しかし、数で決めてはならないことがある」と主張。命、人権にかかわる法案を数の力で強行しようとしていることを厳しく糾弾し、「委員長が職権で終局を宣言したこと自体が、国会の自殺に等しい」と説きました。斎藤健法相は微動だにせずぶぜんとした表情で、与党議員も静まりかえりました。

 さらに、仁比氏は、法案の立法事実が総崩れとなったうえ、大阪入管の常勤医師の酩酊(めいてい)問題など次々と新事実が発覚していることを指摘。入管収容の人権侵害の実態を示し、「民主主義が届かない入管の闇」と強調しました。そのうえで仁比氏は「国家の利益を中心に据えた20世紀の国際法でなく、人間の利益を中心に据えた21世紀の国際法の在り方をしっかり反映させた形で入管法が見直されることを念じている」との阿部浩己参考人の発言を紹介し、「政府案を撤回し、共生への希望を開いていくために、徹底した審議をさらに尽くすことを強く求める」と述べました。


入管法改悪案採決強行 「撤回!」国会前で市民抗議 賛成政党・議員忘れない
                         しんぶん赤旗 2023年6月9日
「採決、撤回!」。参院法務委員会で入管法改悪案の採決が強行された8日、国会前・国会図書館前には多くの市民が集まり、廃案を求めて声を上げ続けました。可決の知らせが入ると、「賛成した政党、議員は外国人の人権を何だと思っているのか」と当事者や支援者の怒りと涙があふれました。

 国会前には午前9時ごろから市民が集まり、委員会の傍聴に行く人も。仕事や学校の都合をつけて、「短時間でも」と抗議に参加しました。
 神奈川県茅ケ崎市に住む女性(16)は、数カ月前にSNSで入管問題を知ったと言います。「きょう初めて、抗議に参加しました。嫌な法案が採決されて悔しいし、許せない。けれど、当事者をはじめたくさんの人が頑張っている姿を見ました。自分もできることをし続けたい」
 「#FREE USHIKU」の長島結さんは、同法案を廃案に追い込んだ2年前より、行動する人が全国に広がったとスピーチ。「次にやることは決まっています。改悪案に賛成した政党を忘れず、選挙で審判を下すことです」と語りました。
 野党から、日本共産党の山添拓参院議員、立憲民主党の石川大我参院議員、社民党の福島瑞穂党首が駆け付けました。山添氏は、採決強行に断固抗議すると表明。「すでに多くの外国籍の人たちが、この社会で一緒に暮らしています。採決されたからといって諦めるわけにはいきません。頑張りましょう」と述べました。
 動画(3分)入管法改悪案が参院法務委員会で強行採決!抗議する人々(2023年6
        月8日)「レイバーネット日本」より


絶対にあきらめない 入管法改悪 東京・有楽町 野党有志議員ら怒りの抗議
                        しんぶん赤旗 2023年6月9日
「絶対にあきらめない。もう一度ここからたたかおう」―。入管法改悪案が参院法務委員会で強行採決により可決した8日、野党の有志議員らが東京・有楽町イトシア前で改悪反対の緊急集会を行いました。イトシア前が市民の怒りと悲しみに包まれる中、野党議員らが「たたかいは終わったわけではない。こんな根拠のない法案は絶対に廃案にしなければならない」と訴えると、「そうだ!」「やり直せ」の声と大きな拍手が湧き起こりました。

 日本共産党、立憲民主党、社民党、沖縄の風の国会議員がマイクを握り、強行採決への抗議を表明。共産党の本村伸子衆院議員は、審議をすればするほど人権を踏みにじる入管行政の問題点が次々に浮き彫りになっていると批判し、「真実を明らかにせず、国際人権法に違反する法案のまま採決するなどありえない。廃案一択だ」と訴えました。


入管という名の特高警察
                   田中龍作ジャーナル 2023年6月6日



後ろ手錠で拷問される強制送還拒否者。=大橋毅弁護士提供=

 強制送還を拒否する外国人を入管職員が拷問に掛ける映像が、大橋毅弁護士から記者団に提供された。同弁護士が入管に開示請求をかけ、裁判所が証拠保全命令を出したのである。
 最初から犯罪者扱いである。戦前戦中に思想犯と疑いを持たれれば治安維持法違反で逮捕され、過酷な取り調べを受けた。作家の小林多喜二のように殺されるまで殴られた例も少なくない。
 難民認定申請者も同様である。申請者をなかなか難民と認定しない審査員に審査が極端に偏っていたことが明らかになっている。(入管行政では『参与』と呼ぶ)
 それもそのはず。出入国在留管理庁が強制送還のノルマを課していたことが、『赤旗』の調べで分かった。2022年度の目標は456件だった。2021年4月~22年の送還実績は147件。
 強制送還を拒否すれば送還忌避者として惨い扱いを受ける。本稿に添付した拷問の画像が格好の例だ。人権などあったものではない。

 当然のように人命は軽視される。1月、大阪入管で女性医師が酒に酩酊した状態で診察していた。医師は診察した難民申請者に対して間違った薬を処方したうえ暴言を吐いていた。
 齋藤法務大臣は2月下旬にこの事実を知りながら3月7日に入管難民法の改革法案を提出していたのである。
 酩酊した状態で診察した1月20日以降、同医師は一度も勤務していない。
 にもかかわらず毎月70~80万円の報酬と6月1日には240万円のボーナスが支払われていた。
 さらに呆れるのは―
 大阪入管は欠員により常勤の医師はゼロ人であるのにもかかわらず、出入国在留管理庁は国会で1名と答弁していた。それも書類を添えて。明らかな虚偽答弁である。
 恣意的な身柄拘束と人命・人権無視の処遇。前身は共に内務省とはいえ、戦前戦中の特高警察と戦後の入管は何ら変わるところがない。



拷問の苦痛で泡を吹く強制送還拒否者。=大橋毅弁護士提供=






~終わり~