2023年6月19日月曜日

小沢氏仕掛けの絶妙タイミング(植草一秀氏)

 次期衆院選を巡って泉健太・立民党代表は515日のBSフジの番組で、維新や共産党との選挙協力は「やらない」と否定「選挙はまず独自でやるものだ」と述べました。国会議員でありながら(小選挙区制)選挙に関してここまで無知であっては話になりません。当然党内外から反発の声が上がりました。
 立民党の小沢一郎氏や阿部知子氏ら同党の衆院議員12人が発起人となり、次期衆院選で野党共闘の実現を掲げる「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」が16日に発足しました。同会の設立趣意書では「次期衆院選で立民が単独で政権交代を果たすことは困難」とし、小選挙区で自民に打ち勝つには野党候補者の一本化が必要と訴えています。
 折角一時盛り上がった野党共闘が、枝野前立民党代表に続いての泉代表の共闘拒否宣言で以前の野党乱立状態に戻るしかないタイミングで、この「有志の会」が立ち上がったのは極めて時宜を得たものです。小沢氏らによれば立民所属衆院議員9653人が賛同しているということです(産経新聞)立民党にもまともな人たちが過半数を占めているということです。
 発起人の一人阿部知子氏は、取材に「巨大化する与党に対抗するため、分断化が進む野党をまとめて候補者を擁立することが野党第一党である立民の役割。自公政治をただす共闘をするべきだ」と話しています(神奈川新聞)。

 泉氏は次期衆院選で150人の当選が実現できなければ代表を辞任すると口にしています。それは大いに結構なことですが、見るも無残に惨敗したあとで辞任されても立て直しのしようもありません。
 泉氏は当初は政府に対して批判するのではなく提案するべきだと主張した(ものの最後には批判に徹するしかなかった)り維新の会との共闘を模索したりと、まさに解釈に苦しむことを繰り返してきました。もしも次回の選挙で立民が150人の当選を出せると本気で考えているとすれば余りにも現実離れしていてどんな思考回路なのか理解のしようもありません。泉代表は即刻辞任すべきです。

 いち早く野党間の統一候補擁立を提唱してきた植草一秀氏が、小沢氏らの「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」が発足したことを評価するとともに、その運動が立民党の創造的解体を誘導するべきだと期待する記事を出しました
 併せて産経新聞の記事「小沢氏ら立民有志『野党で候補者一本化を』 執行部に申し入れへ」を紹介します。
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小沢氏仕掛けの絶妙タイミング
                植草一秀の「知られざる真実」2023年6月17日
立憲民主党は岸田首相が今国会で衆院解散をしないことを確認して内閣不信任決議案を提出した。岸田首相が解散の可能性を維持していれば内閣不信任案を提出しなかった可能性がある。完全に腰の引けた対応。これでは誰からも相手にされない

内閣不信任案に共産党は賛成したが国民民主党は反対した。維新も同じ。
与党サイドに自公維国が位置する。
立憲民主党内に内閣不信任案提出に反対する勢力が存在した。
立憲民主党は政党の体をなしてない。これが日本政治停滞の最大要因だ。

立憲民主党の迷走を誘導しているのが連合。連合を支配するのは6産別。
電力、電機、自動車、鉄鋼、機械・金属、繊維・流通等の6つの産業別労働組合組織。
かつての同盟の系譜を引く大企業御用組合が中心。
同盟は1960年に創設された民社党の支援母体として創設された。
民社党は革新勢力を分断するためにCIAの資金援助で創設された。民社党、同盟と深い関係を有したのが国際勝共連合だ。

同盟系の富士社会教育センターに設置された富士政治大学校という研修機関。第二代理事長は松下正寿氏。
松下正寿氏は立教大学教授を経て民社党参議院議員に当選。
松下氏は世界平和統一家庭連合(旧統一協会)関与団体の日韓トンネル研究会の呼びかけ人。
また、旧統一協会創設者の文鮮明氏と深いかかわりを持った。
松下氏は旧統一教会系の世界平和教授アカデミー初代会長、旧統一協会の機関誌「世界日報」論説委員を務めた

連合は旧総評、旧同盟などが合流して創設されたナショナルセンターだが、現在の実権は旧同盟系の6産別が握っている。6産別に所属する芳野友子氏が現在の連合会長。
芳野氏は富士政治大学校で反共理論を叩き込まれたと言われている。この連合が立憲民主党の右旋回を誘導した
2017年10月総選挙の際に創設された立憲民主党は旧民主党=旧民進党のリベラル勢力が純化したものと理解された。
立憲民主党が野党第一党に躍進できた最大の要因は共産党の選挙協力にある。共産党を含む野党共闘が立憲民主党議席を伸長させた最大要因になった。
共産党を含む野党共闘が強化されれば、2009年8月総選挙のように自公が野党転落する可能性が高まる

この事態を恐れて、野党陣営の分断工作が進められた。連合が立憲民主党に介入して共産党との選挙協力を攻撃した
2021年10月衆院総選挙で立憲民主党代表の枝野幸男氏は次のように述べた。
「「野党共闘」というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。」
野党共闘の対象から共産党、社民党、れいわ新選組を除外した。共闘の対象は国民民主党と連合であると明言した。

この枝野発言で野党共闘支持の立憲民主党支持者が一斉離反した。その結果、立憲民主党は17年総選挙で惨敗
枝野氏は引責辞任したが、後任の泉健太氏は右旋回を加速させた。
その結果、2022年参院選で立憲民主党はさらなる大惨敗を演じた。
現在の執行部は自公維国の与党勢力に潜り込みたいと考えているのだろう。
しかし、このスタンスが提示される限り、立憲民主党の再興はない

小沢一郎元民主党代表などが次期衆院総選挙に向けて「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を立ち上げた。共産党を含む野党共闘再建を図るもの
立憲民主党はこれに賛同するグループとこれに賛同しないグループに分離されるべきだ。
一つの政党内に水と油が同居してうまくゆくわけがない。
小沢氏が立ち上げた運動が立憲民主党の創造的解体を誘導するべきだ。

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小沢氏ら立民有志「野党で候補者一本化を」 執行部に申し入れへ
                            産経新聞 2023/6/16
立憲民主党の有志議員が「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を立ち上げ、16日に記者会見を開いた。泉健太代表が次期衆院選で共産党などとの候補者調整を否定した方針の変更を求めており、今後、執行部への申し入れなどを検討する。小沢一郎衆院議員ら12人が呼びかけ人となり、ほかに所属衆院議員96人の過半を超える53人が賛同しているという。
候補者調整をめぐっては泉氏が5月15日、共産との選挙協力を「やらない」と明言。共産は反発し、立民との競合を辞さずに小選挙区での擁立を積極的に進める方針を示しており、調整の見通しは立っていない。
この日の会見で、呼びかけ人の小川淳也衆院議員は「泉氏の発言で党内に明示的、暗示的にさまざまな違和感や危機感が広がった。それが今回、1つのうねり、大きな動きになった」と説明。「日本のため、国民のため、何が日本の政治にとってベストかを最優先に、党執行部にさまざまな検討を求めていきたい」と語った。
小沢氏は「各党が全部候補を立てたのでは自民党に勝てるわけがない。一本化や野党間の協力が大事だと思っている人が大多数だ」と述べた。

「有志の会」呼びかけ人の立民衆院議員は以下の通り(敬称略)。

阿部知子▽稲富修二▽小川淳也▽小沢一郎▽鎌田さゆり▽菊田真紀子▽手塚仁雄▽原口一博▽松木謙公▽谷田川元▽柚木道義▽湯原俊二