2025年3月10日月曜日

仏発ニュース17 「トランプ革命」に翻弄される世界

レイバーネット日本」に掲題の記事が載りました。今回は8100字余りの長文です。
 記事は、ウクライナ戦争の終結に向けて米ロ両首脳の会談の地ならしをしたのは「中国の習近平」であったことから始まり、トランプの動機は「ノーベル平和賞」にあると述べます。
 当初のバイデンの予想に反し、3年間に渡るウクライナ戦争でむしろロシアが優勢に進めている現状に終止符を打ち、「和平」を迎えることが出来れば両国兵士の無駄な戦死を防げるので確かにそれに「平和賞」に値します(不純な動機などということは出来ません)。
 それから英仏独の政治情勢に移り、このところの欧州における政治的動向について概括します(基礎知識がないので1回読んだくらいでは頭に入りませんが…)。
 日本に関する部分は最後の2節ほどで、トランプ旋風に日本はどう対応すべきかについての提案で締め括られています。
USAID米国国際開発庁)」は兎も角として、「NED全米民主主義基金)」については勤務先でも耳にしましたが、それらが「第2のCIA」であることについては確かに隠されていました。
 石破政権やメディアはいま トランプが次々と繰り出す政策に翻弄され、その内容を精査することができずに、せいぜい「トランプは独裁者」などと冷笑を浴びせるくらいですが、メディアの劣化はそのまま国家、政治、社会、文化の劣化でもあると述べます。
 そして、トランプ政権を礼賛する必要はないが、トランプが打ち出す政策の意図や影響力をきちんと分析し、肯定すべきは肯定し批判すべきは批判すべきであるとします。「トランプの再登場」は日本にとって「米国の属国」関係から脱するチャンスになる可能性もあると捉えるべきで、われわれはトランプや極右とは一線を画した、「もうひとつの」政治的・市民的対抗軸の構築を真剣に考えるべき時を迎えているとしています。
 何時までも「米国至上主義」では世の中から大きく後れを取ることになります。
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フランス発・グローバルニュースNO.17 「トランプ革命」に翻弄される世界
                       レイバーネット日本 2025--1
                             土田修 2025--1
                  ル・モンド・ディプロマティーク日本語版前理事
                     ジャーナリスト、元東京新聞記者
 米国は2月24日、国連安全保障理事会に「ロシアとウクライナの紛争の迅速な終結」を求める決議案を提案し、ロシアと中国がこれを支持した。この決議案に対し英仏など5カ国が棄権したが、賛成10票で採択された。日刊紙ル・モンド(2月27日付)によると、棄権した英仏が拒否権を発動しなかったのは「(この決議案が)将来の安全保障を排除するものではなく、国際法に反するものでもない」という理由からだった。結果として、英仏は米国に忖度し「ウクライナ抜き」の和平交渉を承認したに等しい。

 実は同じ日にウクライナと欧州連合(EU)は、国連総会に「ロシア軍のウクライナからの即時撤退」を求める決議案を提案していた。こちらはハンガリーを除く欧州各国に支持され、93票の賛成で採択された。だが、米国とロシア、北朝鮮、ベラルーシなどが反対票を投じ、中国、インド、ブラジル、南アフリカなどが棄権している。この2つの決議案への対応によって、トランプ政権のロシアに対する融和的な姿勢と欧米間の亀裂がより鮮明になった。さらに同紙によると、トランプ政権はゼレンスキー大統領に国連総会に提案した決議案を取り下げるよう圧力をかけたという。ゼレンスキー氏が拒否したことから米国は「戦争モード」に突入、ウクライナに対する中傷キャンペーンを開始し、安保理に上記の決議案を提案するに至ったというのだ。

 同紙の報道では触れられていないが、ウクライナ戦争の停戦交渉をめぐる米ロの急接近は、どうやら中国の習近平国家主席がお膳立てしたというのが真相のようだ。2月13日、米国の日刊経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が「中国はウクライナに和平をもたらす役割を果たそうとしている」というタイトルの記事を掲載した。翌日には英国のロイター通信が「中国、ウクライナ戦争を終わらせるためにプーチン・トランプ首脳会談を提案WSJが報じる」とより明確なタイトルで同じ内容を伝えた。だが、日本のメディアは沈黙を守っている。

 WSJの記事こうだ。米中政府関係者によると、中国の当局者らはここ数週間、仲介役を演じトランプ政権に対し、米ロ首脳会談の開催と停戦後の平和維持活動への支援を提案してきたという。注目すべきは「(この会談は)ウクライナのゼレンスキー大統領抜きでの開催」を想定していたことだ。中国の提案の中には、中国が「保証人」となって、紛争地域に平和維持部隊を派遣することまで含まれていたというが、トランプ政権による経済面での攻撃を回避することが目的だったとみられている。実際、トランプ氏は中国に対する「60%関税」を延期し、「就任100日以内の訪中」や「習氏の訪米」を示唆するなど親中国的な発言を繰り返している。

 さらにウクライナに関する和平交渉案をめぐって、米国とロシアは「停戦」「ウクライナ大統領選挙」「最終合意」の3段階で調整しているという。ゼレンスキー大統領の任期は昨年5月に満了しており、現在も大統領職を続けていられるのは戒厳令下での選挙が禁止されているからだ。ゼレンスキー大統領の支持率が低迷していることもあり、ウクライナで大統領選挙が行われれば、ゼレンスキー氏が再選される可能性は極めて低いという見方もある。それもあってプーチン大統領だけでなく、トランプ大統領もゼレンスキー氏の大統領職の「正統性」に疑問を呈し、大統領選挙の早期実施を求めているわけだ。

 2月18日にサウジアラビアでウクライナ停戦に向け、米ロ代表による会談が行われた。こうした動きに対し、欧州各国は欧州の利益を軽視する協議の進め方に危機感をあらわにしている。中国による米ロ会談の仲介について、遠藤誉筑波大学名誉教授は「史上最大のディール」と評し、「トランプ氏が最も欲しがっていたのはノーベル平和賞であることを習近平氏はよく知っている」と指摘する。ブルガリア出身の政治学者イワン・クラステフ氏がル・モンド紙(3月1日付)に掲載した「トランプ政権は皇帝の宮廷のような組織だが、革命的である」と題する記事で「米大統領は大きなことを成し遂げようとしており、しかもそれを非常に速やかに実現しようとしている」と書いた。今、世界は〝トランプ革命〟のスピードに翻弄され〝脳死状態〟に陥っている。  

〝巨大彗星〟を前に立ちすくむ政治リーダー
 「車のヘッドライトに照らされたウサギのようだ」。リール大学のレミ・ルフェーブル教授(政治学)は、フランスの政治指導者のことをこう批判した。トランプ大統領の再登板による「歴史的転換点」に立ち会いながら沈黙を守っている政治リーダーたちを「呆然と立ち尽くすウサギ」にたとえたのだ。象徴的だったのは、2月14日にドイツ・ミュンヘンで開かれた安全保障会議で、米国のJ.D.ヴァンス副大統領が北大西洋条約機構(NATO)を疑問視し、「欧州の民主主義は言論の自由を抑圧している」と批判する演説を行った時のことだ。ヴァンス氏は演説の中で、2月23日に行われたドイツ連邦議会選挙(総選挙)で大躍進した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持まで表明した。
 会場内にいた欧州各国の代表者らはあっけにとられ凍りついたまま沈黙した。演説後、総選挙を前にしたドイツのピストリウス国防相は「容認できない」と批判したが、フランスでは政界でもメディアでもほとんど話題にさえならなかった。マクロン大統領の与党連合「アンサンブル」の中心人物であるガブリエル・アタル元首相や、与党連合と協力関係にある中道右派「オリゾン」のエドゥアール・フィリップ元首相も論評を避けている。

 こうした状況に対し、欧州議会議員のラファエル・グリュックスマン氏はテレビ局のインタビューで「欧州のリーダーたちはこの無気力な眠りから目を覚ませ」と強く呼びかけた。彼はNetflixの映画「ドント・ルック・アップ(Don’t look up)」を引き合いに、「今、われわれは歴史的な転換点に直面しているのに、まるで何事も起こっていないかのように日常を続けている。これは異常なことだ」と警鐘を鳴らした。この映画は、巨大彗星が間もなく地球に衝突するのに、政治家もメディアも「空を見上げるな!」と言うだけで現実を直視せず、目の前に迫っている危機を無視し続けるというコメディーだ。「トランプ旋風」を前にフランス政界はひたすら立ちすくんでしまっている。

 唯一、ヴァンス演説に対し明確なメッセージを発したのはフランスの極右政党「国民連合(RN)」のジョルダン・バルデラ党首だった。彼は極右勢力を代表してヴァンス氏の演説内容に絶大なエールを送った。欧州議会議員だったバルデラ氏は2022年に、大統領選挙に専念するため退任したマリーヌ・ルペン前党首の後継者として27歳でRNの党首に就任、TikTokなどSNSを活用した「政治インフルエンサー」として人気があり170万人を超えるフォロワー数を誇っている。2024年6月の欧州議会選挙では33%を超える支持率でRNを圧勝に導き、その直後の国民議会選挙でRNは左派連合、与党連合に次いで第3党に躍進している。

 これまでRNは移民に否定的でEUに対して懐疑的な地方在住者の支持を集めてきた。さらにバルデラ氏はいわゆるエリート階級である「伝統的なブルジョワ保守層」をターゲットに「政権を担える党」へとRNを進化させようとしている。その結果、かつてはマクロン派を支持していた都市部のリベラル保守層や中道派がRN支持へと流れ始めた。ル・モンド紙(2月18日付)が掲載した「RNと右派有権者の大移動」という記事によると、バルデラ氏の戦略はエリート層と大衆の融合という「トランプ式戦略と類似している」と指摘している。

 フランスだけではない。トランプ氏の再登板は欧州極右の追い風にもなっている2月8日にマドリードで、欧州議会の政党グループ(会派)「欧州のための愛国者(PfE)」が初サミットを開催した。フィデス=ハンガリー市民同盟(フィデス)、国民連合(RN)、スペインVOXなど極右政党の代表者らが集まり、トランプ氏のキャッチフレーズ「MAGA」を模倣した「欧州を再び偉大に(Make Europe Great Again、MEGA)」をスローガンに、トランプ氏のホワイトハウスへの復帰を「世界的な変革の兆し」と称賛した。サミットに参加した極右リーダーたちの共通テーマは、移民の制限、欧州グリーンディールの拒絶、国家主権の防衛、グローバリゼーション批判などだ。それに「ウォーク(woke)思想」や多文化主義への批判が加えられた。ウォーク思想とは社会的正義や不平等に対する意識を高く持つことで、人種差別やジェンダー差別、LGBTQ+の権利、環境問題などに対して「目覚めている(woke)」状態を意味する。高学歴でリベラル派エリート層の多い米民主党支持者のことを「ウォーク思想」の持ち主と批判し、DEI(多様性・公平性・包括性)」推進の取り組みを廃止する大統領令に署名したトランプ政権の政策と一致する点が多い。

 欧州グリーンディールは欧州委員会のフォン・デアライエン委員長が「パリ協定」に基づいて打ち出した環境政策パッケージで、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをめざしている。そのため化石燃料の使用の段階的削減や再生可能エネルギーの促進といった脱炭素化のほか、化学合成農薬や肥料の使用削減、有機農業の拡大など農業・食料システムの改革も含まれている。これに対し、欧州各国の農民が反旗を翻し、各地でトラクターによるデモ行進を繰り返しているが、彼らの中からも極右政党の支持者が増えているのが現実だ。トランプ氏は「パリ協定」からの離脱も宣言しており、農業従事者の右傾化を加速している。

イーロン・マスク氏が称賛するAfDの躍進
 2月23日にドイツで総選挙(定数630)が行われた。メルケル前首相が所属していた最大野党会派の中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が第1党(208議席)になり、4年ぶりの政権復帰に向けた連立交渉を進めているが、反移民・難民を訴える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が152議席を獲得し第2党に躍進した。この総選挙でAfD共同党首のアリス・ワイデル氏は「首相候補」として立候補し、大量移民の制限を主張したほか、親ロシアの姿勢をあらわにし、ロシアとドイツを結ぶノルドストリームの再稼働とロシアからの天然ガスの供給の再開を訴えた
 2013年に創設されたAfDは「EUからの離脱」を訴えていたが、次第に「反移民・親ロシア・気候変動懐疑派・伝統的家族観」を掲げるようになった。最近ではナチス時代を肯定する発言が増えており、フランスの国民連合(RN)でさえ距離を取るようになっていた。そのAfDについて、イーロン・マスク氏は1月9日、X(旧ツイッター)で「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と発言。ヴァンス米副大統領は2月14日にミュンヘン安全保障会議の場で、ドイツの政党と極右との関係を禁止する「ファイアウォール(防火壁)」政策を批判、「民主主義の原則に反する。極右を政治から排除する権利は誰にもない」と主張した。AfDに対するドイツ総選挙向けの露骨な応援演説だ。

 常にきちんと整えられた金髪、シンプルなスーツ、真珠のネックレス…。ワイデル氏(46歳)のスタイルは、どこか英国の元首相マーガレット・サッチャーを彷彿とさせる。実際にバイデル氏はサッチャーを政治リーダーのモデルと仰ぎ、その冷徹な態度や鋭い発言から「鉄の女」ならぬ「氷のプリンセス」という異名を授けられた。2015年の欧州難民危機を契機にAfDは「反移民・反イスラム」を表看板とする極右政党へと脱皮し、穏健派の指導者らが党を去ったことで、ワイデル氏は党内での地位を固めていったという。

 そのワイデル氏はスリランカ系移民の女性映画監督であるパートナーとスイスの村に住み、2人の子どもを育てている。彼女は党内で移民やイスラムに対して最も強硬な姿勢を取っているが、その生活ぶりはAfDの主張するLGBTQ+に対する批判や伝統的な家族観から大きくかけ離れている。それを理由に「ワイデル氏は極右ではない」と言う声もあるが、AfDは昨年1月にポツダムで極秘会合を開き、移民・難民とその支援者ら200万人を北アフリカに強制送還する「再移住」の実施を検討していたことが暴露されている。だが、ワイデル氏の人気は衰えず、旧東ドイツ(特にザクセン州、チューリンゲン州、ブランデンブルク州)でAfDは急成長し、昨年6月の欧州議会選挙では旧東ドイツの多くの地域で30%以上の支持を獲得している。

 AfDは移民問題や「ドイツ第1主義」を掲げ、若年層や労働者階級の支持を集め、「エリート主義への反発」という流れをつくりだした。そこに旧東ドイツ地域の経済格差が浮き彫りになり、「西側に搾取されている」という意識に火をつけた。マスク氏やヴァンス氏の支援も総選挙での大躍進を後押しした。さらに「ドイツのためのアリス(アリス・フュア・ドイチュラント)」というナチス突撃隊(SA)を彷彿とさせる選挙スローガンが若者の支持率を押し上げたともいわれる。遂に欧州における極右の波がドイツにも押し寄せたのだ。

 ドイツでは左派政党も移民問題では厳しい立場を取っている。昨年6月の欧州議会選挙で得票率6.2%を挙げ、6議席を獲得した「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」がそうだ。旧東ドイツに残存する共産主義と西側の社会主義を接合し2007年に設立。月刊紙ル・モンド・ディプロマティークが掲載した「ドイツの新たな『保守的な左翼』」(日本語版2024年11月号)によると、BSWの政策は「社会政策に関しては左翼、社会・移民問題に関しては保守的、EUの中では一種の主権主義を支持、北大西洋条約機構(NATO)とドイツの新たな好戦主義に対しては批判的」であるという。

 上品で知的な雰囲気からメディアに登場する機会の多いザーラ・ヴァーゲンクネヒト共同代表2015年以来、メルケル元首相の「100万人の難民受け入れ政策」に反対を表明し、「欧州への無秩序な移民を終わらせる」と主張してきた。一方、ウクライナ戦争はNATOの東方拡大に責任の一端があるとし、NATOがロシアに対する「代理戦争」に関与することに反対する。イスラエルを無条件で支持するAfDとは激しく対立し、ロシアを含めた「新たな安全保障同盟」をめざしている。「ローザ・ルクセンブルグの再来」とも称せられるヴァーゲンクネヒト氏の「反移民の左翼」路線は、今回の総選挙では有権者に受け入れられず、得票率5%を下回ったため議席を獲得できなかった。

 左翼政党でさえ政策として掲げる「移民・難民問題」が欧州で極右勢力を底上げする糧になっているのは間違いない。だが、イーロン・マスク氏らが欧州各国の極右勢力に熱いエールを送るのは、「米国にとって経済的に敵対関係にある」EUの屋台骨を揺るがし、EU加盟国内部でトランプ氏が唱える「自国ファースト」への共感を個別に高める戦略ではないか。欧州での極右の台頭がEUの官僚組織に代表される「エリート支配層」に対する反発に基づいているとすれば、それはトランプ戦略の格好の攻撃材料となるに違いない。

 これに対し、EU各国のリーダーはあまりにも無力だ。2月下旬にフランスのマクロン大統領と英国のスターマー首相が相次いでワシントンを訪問し、トランプ大統領と会談した。英仏2人の首脳がトランプ氏に笑顔を振りまき媚びへつらう姿は、まるで植民地の酋長が宗主国の「皇帝」に謁見しているように見えた。少なくともフランスでは、マクロン氏が何らかの外交的成果を挙げ、低迷する支持率アップにつなげたという報道は見当たらない。

 欧州が「米国抜きの欧州」をイメージできずに「ヘッドライトを浴びたウサギ」のように立ち尽くしているとしたなら、日本はどう立ち振る舞えばいいのだろう。戦争を糧とする米国の軍産複合体とネオコングループに操られたバイデン政権がウクライナ戦争に続いて台湾有事を画策した可能性が高い。東京外国語大学名誉教授の西谷修氏によると、トランプ政権は国家に戦争をさせて儲ける連中のことを「ディープ・ステート(闇の政府)」と呼んで「本丸」から崩そうとしているという(長周新聞「トランプ復帰が促すアメリカ世界統治の終焉」)。

 その標的は、世界中で〝米国的〟民主主義の促進を掲げ、民主的と称するさまざまな団体や組織に資金提供してきた「全米民主主義基金(NED)」や「米国国際開発庁(USAID)」だ。NEDは発足当初から「第2のCIA」といわれたが、両者はCIAに協力して秘密工作に関与してきたという歴史を持っている。だが、日本のテレビの報道番組はそうした事実を隠すだけでなく、トランプ氏が次々と繰り出す大統領令や政策に翻弄され、その内容を精査することができず、「トランプは王様気取りだ、独裁者だ」「これから先、トランプは何をするのかわからない」などと冷笑を浴びせ続けている。日本のメディアの劣化は、日本という国家レベルや政治、社会、文化の劣化でもある

 欧州の極右勢力にならってトランプ政権を礼賛する必要はないが、トランプ氏が打ち出す政策の意図や影響力をきちんと分析し、肯定すべきは肯定し、批判すべきは批判すべきなのではないか。「トランプ2.0」は、欧州と日本にとって「米国の属国」関係から脱するチャンスになる可能性もある。政治社会学者クリスチャン・ヨプケ氏は著書『新自由主義ナショナリズム』で、右派政党が主流化する背景に新自由主義とナショナリズムが結びついた統治理論の台頭があると指摘する。例えば、トランプ氏や極右が提唱する不法移民政策は難民の選別的な受け入れと排除を目的とするEUの「送還ハブ」構想と一致する。われわれは、トランプ氏や極右とは一線を画した「もうひとつの」政治的・市民的オルタナティヴ(対抗軸)の構築を真剣に考えるべき時を迎えている