兵庫県の斎藤知事は、県の百条委員会で「複数の県職員が自殺したことに対して道義的責任を感じていないのか」と聞かれたときに「『道義的責任』の意味が分からない」と答えて委員や視聴者を唖然とさせました。
虚偽の回答をしたのであればいざ知らず、少なくとも高校生くらいになれば『道義的責任』の意味くらいは分かるものです。それが分からないというのであれば、人格の重要な部分が欠落しているのでは?という疑いを持ってしまいます。
その後現在に至るまでの彼の様々な対応を見ると「そう考えれば納得できる」場面が頻出しています。
先(10日付)に、兵庫県百条委員会がまとめた報告書への知事の受け止め方を厳しく批判した読売新聞、日経新聞、朝日新聞(2件)の社説を紹介しました。
⇒ 斎藤知事の百条委報告の受け止めに関する各紙社説
12日付で新潟日報と毎日新聞が同様な社説を出しましたので、6日付の産経新聞の社説と共に紹介します。
併せて植草一秀氏の記事「有害無益の八百長第三者委」を紹介します。
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(社説)兵庫百条委報告 知事は反省し混乱収拾を
新潟日報 2025/3/12
議会が調査を重ね、導き出した結論だ。兵庫県知事は真摯(しんし)に受け止めて反省し、混乱や分断の解消に全力を挙げるべきだ。
斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書問題で、県議会調査特別委員会(百条委)の報告書が議会で了承された。
報告書は、当時の県民局長が配ったパワハラなどの疑惑告発文書について「一定の事実が確認された」と結論づけた。
疑惑のうち、斎藤氏の職員に対する強い���責(しっせき)などは「パワハラと言っても過言ではない不適切なものだった」と断じた。特産品などの贈答品受領については「『おねだり』との臆測を呼んだことは否定できない」とした。
注目されるのは、県が文書を公益通報と扱わずに告発者を特定し、処分するなどした対応について「公益通報者保護法違反の可能性が高い」と指弾したことだ。
県の対応の違法性はかねて識者らによって指摘されていた。
報告書では、当時の総務部長が元県民局長のプライバシー情報を複数の議員に見せたことが明らかになったとし、「告発者をおとしめることで文書の信頼性を毀損(きそん)しようとしたこともうかがわれる」と非難した。
通報者保護制度の根幹を揺るがしかねない行いで、許されない。
残念なのは、斎藤氏に百条委の報告を受け入れる姿勢が見られないことだ。
斎藤氏はこれまでパワハラについて「業務上必要な範囲で厳しく注意、指導したことはあったが、ハラスメントになるかは司法の判断だ」とし、告発文書に関しては「誹謗(ひぼう)中傷性が高く、真実相当性がない」と主張してきた。
そうした主張を一部否定した百条委報告に対して斎藤氏は記者会見で「一つの見解」と述べ、従来の主張を繰り返した。
11月の出直し知事選で再選したとはいえ、それで問題が不問になったわけではない。行政のチェック機関である議会の意思を無視することは民主主義を否定することにもなる。
兵庫県の混乱は1年に及んでいる。元県民局長は死亡し、文書問題を厳しく追及した県議はネット上の中傷を理由に議員辞職した後に亡くなった。
出直し知事選での公選法違反疑惑も浮上し、関わったPR会社の関係先が家宅捜索を受けた。
元県民局長の私的情報や百条委での非公開情報の漏えい問題なども発覚し、日本維新の会の県議3人が党の処分を受けた。
真偽不明な情報や誹謗中傷が交流サイト(SNS)上にあふれる状況は今も続き、県民の分断をもたらしている。
地方自治で大きな権限を持つ知事が公益通報を理解し、過去の言動を省みる姿勢を示さなければ、風通しの良い県政は実現しない。
(社説)兵庫知事の疑惑認定 反省の色も見せぬ無責任
毎日新聞 2025/3/12
自らの不適切な振る舞いを認めず、反省の色さえ見せない。行政のトップとしての資質を疑わざるを得ない。
斎藤元彦・兵庫県知事のパワーハラスメントなどの疑惑を巡り、県議会調査特別委員会(百条委)が最終報告書をまとめた。
告発文を書いた人物を特定するよう部下に命じ、公表したことが公益通報者保護法違反にあたる可能性を指摘し、「リーダーとして厳正に身を処す」ことを求めた。
ささいなことで職員を怒鳴り、夜間や休日にチャットを送りつける。そうした行為がパワハラに該当しうると結論づけた。
百条委は行政の疑惑を調査するために設置され、通常の委員会より権限が強い。過去に自治体の長や幹部の辞任につながった例もあり、その判断は重い。
しかし、知事は報告書を「一つの見解だ」と軽視するかのような発言を繰り返している。
告発を「うそ八百」と否定し、公益通報として扱わなかった。告発文を作成した元西播磨県民局長は懲戒処分を受けた。
内部告発者の探索や不利益処分を禁じた公益通報者保護法に反する行為である。権限を乱用し、自身の行為への告発を封殺しようとしたことは許されない。元局長への処分は撤回されるべきだ。
告発の信頼性を低下させるような言動も見過ごせない。
報告書を受けた記者会見で、「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」と述べただけでなく、「元局長の公用パソコンには倫理的に不適切な文書があった」などと、私的情報を暴露するような発言もした。
告発の内容とは関係のないことである。告発者の人格をおとしめることによって問題をすり替え、自身の行為を正当化しようとするのは言語道断だ。
閣議決定された公益通報者保護法改正案には、今回の問題を受け、内部告発者の保護を強化する条文が盛り込まれた。
元局長と、百条委の委員を務めてネットで中傷を受けた元県議は死亡した。自殺とみられている。
にもかかわらず、知事は一連の対応を「適切だった」と強弁し、責任を認めようとしない。これでは県政の混乱を収束させることは到底できまい。
<主張>兵庫の百条委報告 知事は責任をどう考える
産経新聞 2025/3/6
極めて重い調査結果である。斎藤元彦兵庫県知事の疑惑を巡り、県議会の調査特別委員会(百条委)が報告書をまとめ、議会で了承された。
報告書は斎藤氏のパワハラ疑惑などを「一定の事実」と認定した。告発者を特定、処分した県の対応は公益通報者保護法に反する可能性が高いと指摘し、「客観性、公平性を欠いており、大きな問題があった」と総括した。
日本の地方自治は首長と議会の二元代表制である。地方自治法に基づき県議会に設置した百条委の判断を斎藤氏は真摯(しんし)に受け止めなくてはならない。
ところが斎藤氏は、5日の記者会見で「議会側から一定の見解が示されたことはしっかり受け止める必要がある」と述べる一方、県の一連の対応は「適切だった」と語り、パワハラ疑惑も「業務上必要な指導」と、従来の主張を繰り返した。
これで理解を得られるのかは疑問だ。斎藤氏は県民が納得できる説明を尽くし、自らの責任を明確にすべきではないか。その上で特別職を含むハラスメント防止条例の制定など、再発防止策も急ぐ必要がある。
県議会の各党各会派も報告書を踏まえ、斎藤氏とどう向き合うのか態度を示すべきだ。
県政の混乱と分断は依然憂うべき状況にある。告発者の男性は百条委の証人尋問を前に死亡した。百条委委員だった県議はSNSでの誹謗(ひぼう)中傷を理由に県議を辞職し、死亡した。いずれも自殺とみられている。
百条委は斎藤氏を含む延べ34人から聴取し、専門家の意見も聞いた。報告書は、告発文書の存在を把握した時点で、県は作成者ではなく文書内容を調査すべきであり、第三者に調査を委ねる必要があったとした。
百条委を巡っては非公開の証人尋問の内容が県議から流出するなどの失態もあった。百条委の意義を示すため、県議会の責任で委員や運営のあり方を検証し、見直すことも必要だ。
疑惑を巡ってはSNSで真偽不明の情報が飛び交い、知事選も混乱した。今国会提出の公職選挙法改正案の付則で、SNSでのデマや誹謗中傷の拡散、2馬力選挙への対応が検討課題とされた背景の一つもここにある。斎藤氏や議会は、県政の混乱に国民の厳しい視線が向いていることを自覚してほしい。
有害無益の八百長第三者委
植草一秀の「知られざる真実」 2025年3月12日
国政が兵庫県問題を歪めている。国政では少数与党の石破内閣が野党を一本釣りして政権の維持を図る。
野党が結束して与党に対峙すれば政権交代を実現できるが、野党は結束しない。
政治刷新よりも与党の利権政治に参画することを優先しているためだと見られる。
昨年の総選挙後にいち早く自公にすり寄ったのは国民民主。これに刺激されたのか、維新も自公へのすり寄りを鮮明にした。
〈103万円の壁〉よりも安上がりな〈高校授業料無償化〉をアピールして自公政権に秋波を送った。石破内閣は費用のかさむ103万円の壁大幅引き上げよりも安上がりの高校授業料無償化を選択して維新と予算成立のための合意を結んだ。
しかし、政府予算案には〈高額療養費制度改悪〉の内容が含まれていた。維新は高額療養費制度改悪に賛成したことになる。
国会で高額療養費改悪阻止を訴えたのは立憲民主。自民の参議院議員は、このまま進めば参戦選大敗を免れないと分析。参院自民党が石破政権の軌道修正を強く求めた。
結局、石破首相は25年度の高額療養費改悪を断念。予算の再修正に応じる考えを明示した。
石破内閣は自公に秋波を送る国民、維新、立民の三者に愛敬を振りまいて、連携の可能性を示す。国民、維新、立民を競わせて自民が主導権を握ろうとの考えだ。
ただし、予算案の衆院通過で結託したのは維新。維新との連携が自公政権の現時点での基軸になっている。その維新が深く関与するのが兵庫県知事問題。
昨年3月に県民局長が斎藤知事に対する告発文書を外部に送付。
文書は公益通報に該当する可能性のあるものだったが斎藤知事を含む県幹部は誹謗・中傷文書だとして犯人捜しを実行し、県民局長公用PCを押収し、県民局長に対する懲戒処分を実行した。
しかし、この過程で元県民局長は4月初旬に県窓口に公益通報を行った。
少なくともこの時点で、県は元県民局長を公益通報者に該当する可能性があるものとして保護する必要があった。
県内部では公益通報の可能性を踏まえた対応が必要との意見が提示されたが、斉藤知事、片山副知事が主導して懲戒処分を強行。これを問題視した議会が百条委員会を設置。
その報告書が議会で承認されて公表された。
この間、県議会は百条委の報告を待たずに斎藤知事に対する不信任決議を可決。
斎藤知事は辞職せず、失職後に、出直し知事選への出馬を表明。
11月17日投開票日の知事選で勝利した。
斎藤氏再選のシナリオを描いた〈黒幕〉が存在する。
この勢力が最大活用したのが元県民局長のプライバシー情報。
プライバシー情報は告発とは無関係であり、外部に漏洩されてはならないもの。
しかし、斉藤知事を筆頭とする県幹部がこの情報を入手して、これを選挙に活用するストーリーを描いたと見られる。
斎藤氏を知事に再選させる目的は県政を支配すること。
兵庫県が関与する巨大な利権事業が存在する。その利権を獲得するために斎藤氏の再選をどうしても必要とする勢力が存在すると見られる。
県民局長のプライバシー情報が漏洩され、この情報が選挙戦で最大活用された。
重大な問題は、情報そのものが外部漏洩されてはならないものであることと、情報流布・拡散に際して、文字通りの〈嘘八百〉が盛り込まれたことである。
この〈プライバシー情報〉の不正利用と〈嘘八百〉情報を背景に二人の命が失われた。
この斎藤知事再選を追求する勢力の中核が〈維新〉であると見られる。
石破内閣は国政において〈維新〉との連携を強めている。
当初は国民民主のすり寄りが先行したが、兵庫県問題を背景に、維新が急激に石破内閣へのすり寄りを強めたと見られる。
このことが、斉藤知事に対する刑事告発の警察・検察行動に強い影響を与える可能性がある。
また、斉藤知事は県の前総務部長による情報漏洩疑惑、ならびに立花孝志氏に対する百条委員会音声データの提供問題について第三者委員会に調査を委ねたとしているが、結論は第三者委員会の人選でほぼ決まる。斎藤知事は自分が希望する結論を示す人選を行ったと考えられ、第三者委員会の報告内容を無条件で是認できない。
だが、国政が自公と維新の連携を軸に進展し始めており、適正な処理がなされずに兵庫県問題に幕が引かれる可能性が浮上している。
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「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。