2025年3月13日木曜日

米欧同盟を機能停止したトランプ(田中宇氏)/態度の修正(賀茂川耕助氏)

 田中宇氏が掲題の記事を出しました。
 トランプが軍事用GPS(衛星測位システム)の情報提供を止めたことで、英仏がウクライナに送り込んだ戦車や長距離砲の照準の設定が出来なくなり、欧州からのウクライナ向け軍事支援が無力化されました。米欧軍事同盟でも、その決定的なポイントは米国が握っていたのでした。
 欧州に関するその他の件に関しては多岐に渡って記述されています。

 海外記事を紹介する賀茂川耕助氏が「態度の修正」とする短い記事を出しました。
 ヨーロッパには、ウクライナやロシアに関して何かを成し遂げる力はなく、英国軍の現役兵士は74,296人に過ぎず、英国の北海油田の生産量は2000年以降 73パーセント減少し、ドイツの石油生産量は国内の石油需要のわずか2%に過ぎないという状況が、米国とロシアを必然的に同盟関係に追い込んでいると見ています(一方プーチンは、ソ連崩壊後10年間の混乱を経てロシアを再び秩序ある国にし、かつてのヨーロッパの普通の国家の定義に近づけたと評価しています)。
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米欧同盟を機能停止したトランプ
                  田中宇の国際ニュース解説 2025年3月9日
トランプ米大統領が、2月末のウクライナのゼレンスキー大統領との喧嘩を口実に、米欧同盟(NATO)を破壊している。これはトランプの隠れ多極主義の発露だ。
2月28日に米大統領府(ホワイトハウス)を訪問したゼレンスキーが、(はめられて)トランプやバンス副大統領と喧嘩してしまって追い出された後、トランプは、好戦的で和平を嫌うゼレンスキーにもう協力しないと言って、米国からウクライナへの支援の多くを停止した。Poland confirms US has suspended military aid to Ukraine)(Kiev could run out of Patriot missiles in few weeks

米軍がポーランドからウクライナに搬入していた兵器類の流れも3月4日から止まった。だが、最重要な点はそこでない
最重要な打ち切りは、ウクライナ軍がミサイルや無人機、精密誘導弾などでロシア側を攻撃する際の標的設定で必ず使う軍事用GPS(衛星測位システム)の情報提供(諜報共有)の停止だった。トランプは、米軍の最高司令官として軍用GPSシステムを管理している。
トランプはゼレンスキーと喧嘩した後、ロシア本土を標的にする場合にGPSが使えないように設定(ログイン用の秘密鍵を更新)した。この新設定のキモは、軍用GPSを使えなくした「ロシア本土」の中に、ウクライナ開戦後にロシアに併合されたドンバスなど、ウクライナ東部(つまり戦場)の大半が含まれていることだった。
ウクライナ戦争の戦線の多くの地域で、兵器類の標的設定ができなくなり、ウクライナにある兵器の多くが使えなくなった。Trump Exposes More Evidence Of Proxy War After Disabling Ukraine Access To U.S. Missile And Drone Systems

ゼレンスキーは昨夏、対露和解しろという米国などからの加圧を無効にして戦争長期化(とゼレンスキー自身の政治延命)するために、ロシア領のクルスクに侵攻し、占領している。ロシア側も、ウクライナ戦争の長期化は非米側に有利で、クルスク占領をやめない限り和解しないと言って和平を拒否できる。
しかし今、GPS使用不能で、クルスクのウクライナ軍は露側を攻撃できなくなり、露軍(や北朝鮮軍)が包囲網を狭め、占領された地域の64%を奪還した。ここは注目点だ。クルスクからウクライナ軍が敗退しない限り、停戦和平にならない。敗退すると、停戦和平の交渉が始まり得る。'We Can't Stop Them' - Thousands Of Ukraine Troops Suddenly Face Encirclement In Russia's Kursk

ウクライナでは、米軍だけでなく英軍(特殊部隊など)がウクライナ軍を事実上指揮している。昔から、米国よりも英国の方がロシア敵視策の黒幕で、英軍は米軍の諜報システムを自由に使い、米露敵対の構造を扇動してきた。
トランプは今回、ウクライナ東部とロシア本土における米軍GPSの使用を停止したので、米軍やウクライナ軍だけでなく、英軍も、露側を標的にする攻撃をやれなくなった。Lavrov weighs in on US decision to halt intel sharing with Ukraine

トランプの米国はゼレンスキーと喧嘩してウクライナ支援を打ち切ったが、それを受けて英国は、独仏などを招集し、米国抜きでゼレンスキーを支援し続ける新計画をぶち上げた。米国が抜けても、英国が主導してウクライナ戦争を続けられるかのように見えた。
実のところ、そうではなかった。英軍は、GPSなど軍事諜報を全面的に米国に頼っており、英軍が戦車部隊をウクライナに持っていっても、米軍GPSを使えないので大砲を撃てないUK banned from sharing US intel with Ukraine

バンス副大統領は、大事な同盟相手であるはずの米国(トランプ)から離反し、やくざなゼレンスキーを支持して戦争を続けようとする英国を「勝てるはずない」と非難し、英上層部を激怒させたが、実のところ、バンスは正しかった。標的設定できない英軍は、勝てるはずがない。Britain Can’t Help Ukraine - Just Look At Its Tank Force)(Vance’s comment on troops in Ukraine sparks anger in UK

英国は戦後、米国の黒幕として機能することで安上がりに覇権維持してきた。トランプの返り咲きを最も恐れていたのは英国(とその傀儡たち)だった。英国系の懸念は現実になっている。
英国と対照的に、フランスはもっと愚直に、米国から自立したもう一つの覇権国を目指してきた。しだいに貧しくなるフランスにとって独自路線は重荷であり、世界(グローバリスト=英傀儡)から馬鹿にされてきたが、今回は意外な主役に躍り出ている。
フランスなどEUは、米国のGPSに対抗するガリレオなど独自の衛星測位システムを持っており、軍事用にも使える。フランスは今回、英国の提案に呼応し、ウクライナに自国製の戦闘機ミラージュを初めて送り込み、ウクライナ空軍が露軍と戦っている。Kiev claims first combat use of French jets

フランスは、戦闘機や測位システムなど独自の戦闘機能を使って、トランプが抜けた後の穴をとりあえず埋めている。
核保有国であるフランスのマクロン大統領は、ドイツなど他の欧州諸国をフランスの核の傘の下に入れることも提案し始めた。これは仏独など欧州勢が、トランプは欧州を米国の核の傘の下から追い出す(NATOを離脱する)のでないかと考えていることを意味している。
トランプは、世界的な(米中露の)核兵器の半減を提唱しており、その一環として欧州に配備した核を抜いていく(米国が核を半減してもフランスは減らさないとか?)France Steps Up Its Military Intelligence To Ukraine After US Halt)(TRUMP: EVERYBODY SHOULD GET RID OF THEIR NUCLEAR WEAPONS

核兵器の面でも、英国は、米国の核搭載潜水艦の大西洋巡航システムの中に英国の寄港地を組み入れることで核保有国を名乗る、安上がりな同盟依存戦略をとっている。今回の延長で、米国が同盟機能の停止を拡大すると、いずれ英国の核兵器も使えなくなる。
これからの多極型世界の中で、英国は現状のままだと、米国から自立した単独の極として機能できないことがわかってきている(だから英国は近年AUKUSなどを作ってジタバタしていた)。Macron In Anti-Russia Rant Says France Considering Expanding Nuclear Umbrella To Europe

対照的にフランスは、米国(や中国)に比べてかなりショボいものの、ロシアや印度となら肩を並べられる欧州の「極」として機能するかもしれない。
特に、ドイツとの連携がうまくいき、ドイツが近年のようにリベラル化して自滅したがる傾向から離脱(右傾化)して復活できれば、独仏合わせた力量はかなりのものになる。EU militarization a deep concern

とはいえ現状だと、仏独は間抜けで自滅的な英傀儡だ。仏独は、ロシアを敵視する必要などないのに、英国系の歪曲情報を積極的に軽信して露敵視している。大馬鹿。
ウクライナ開戦まで、ドイツはロシアと組んで経済発展していた。ロシアから天然ガスをパイプラインで安く買えることがドイツ経済の強さだった。フランスの伝統的な自立性も、反米親露な国家戦略に支えられていた。Macron: EU needs ‘hundreds of billions’ in defense spending as US pivots away)(Europe's nightmare is here: They have to fight Putin without the U.S

仏独の国益に沿った親露姿勢は、英国系(と隠れ多極派)がウクライナの露系住民を殺す挑発をやってウクライナを開戦させると同時に雲散霧消した。仏独は間抜けなロシア敵視を続け、軍事費を浪費し、エネルギー高騰で経済自滅した。
独仏は、この構図を打破しようとする合理的なトランプを敵視し、トランプの米国が欧州を見捨てるなら独仏英EUだけでウクライナを支援してロシアを打ち負かすのだと、いまだに不合理を突っ走っている。Europe's 'ReArm' Plan "Is Going To Come At A Vast Cost"; Rabobank

米国が抜けた後の安保の穴を埋めるために、独仏は急いで軍事拡大するのだと言っている。ドイツは国債発行を急増し、過剰発行で金利上昇していく。合理的に考えて、無意味なロシア敵視をやめれば、今のままの軍事費で十分なのに、大馬鹿である。
独仏英EUの自滅を、プーチンが含み笑いしながら眺めている。トランプは、欧英を無視して勝手にロシアと和解していく
独仏英は、英国系(と隠れ多極派)の歪曲情報である地球温暖化人為説も軽信して経済を自滅させている。まずは、この多重馬鹿を脱して目を覚ます必要がある。Futures Plunge As German Bond Rout Goes Global)(Kremlin agrees with Washington’s assessment of Ukraine conflict

ウクライナ(や英仏)軍が戦えなくなり、ロシアとの停戦和平を望むようになっても、すんなり和平に進むとは限らない。プーチンは、停戦したいと言いつつ、付帯条件として、NATO諸国(英仏など)軍のウクライナからの完全撤退など、欧州勢が受け入れられない要求を出してくるからだ。Putin Said To Be "Ready To Agree" To Ceasefire... With Conditions That Are Unacceptable To Ukraine

和平したくない動きは欧州勢にもある。ロシアに隣接するバルト三国のリトアニアは3月6日、米国の欧州撤退で強まりそうなロシアの圧力に安上がりに対抗するため、クラスター爆弾禁止条約からの離脱を決めた。人道犯罪な兵器を使ってロシアと戦うんだと言っている。テロ組織と紙一重のリトアニア。リベラル(=全体主義)な欧州人の本性が見えている。EU state withdraws from cluster munitions treaty


態度の修正
                 耕助のブログNo. 2469  2025年3月12日
      Attitude Adjustment
  そのルーツを忘れ、世俗化され、無神論に傾倒したヨーロッパは、自国民の個人的自由
  を守るつもりはないことを実演している。  – Jim Shea
                          by James Howard Kunstler
整理してみよう。英スターマー首相はこう言っている。「英国はウクライナに「地上部隊と航空機を配備」し、有志連合(NATO)を率いてロシアに対抗したいと考えている。」どうも英国首相は、官邸で降霊会を開き、広大で神秘的なユーラシア大陸の東部で破滅的なクマ狩りを始めた往年のヨーロッパの指導者たちの霊と交信しているようなかんじだ。(誰の霊が思い浮かぶ?)

なぜヨーロッパはこれほどまで戦争を熱望するのだろうか 80年以上にわたり世界中から旅行者を集めカフェでくつろぐいでいるうちに、戦争とはどのようなものか忘れてしまったのかもしれない。ニューヨーク・タイムズは次のように報じている。ウルスラ・フォン・デア・ライエンは、EUはウクライナを経済的・軍事的に支援し、潜在的な侵略者にとって「消化できない鋼鉄のヤマアラシ」に変えることを目指すと述べた。これには、ロシアが西ヨーロッパを侵略しようとしているという偽りの考えを信じ込む必要がある。 EUがアメリカの民主党のように振る舞っていることに注目してほしい。つまり、敵対者に敵対的な空想を投影しているのだ。

また、アメリカの民主党のように、ヨーロッパは忘れ去られようとしている。ドイツとフランスの与党を突き動かしているのは、自国民を検閲や専制政治で罰し、ヨーロッパ文化を破壊しようとする異星人の侵略を支援するという精神である。彼らの経済の専門家たちはヨーロッパ大陸を中世に戻し、虫を食べる敗戦農民が住む世界の僻地にしようとしている。私はスターマー、フォン・デア・ライエン、フリードリヒ・メルツのような人物が、来年のクリスマスまでに怒れる暴徒によって権力の座から追い出されるだろうと予測している。

それまでの間、ヨーロッパは自らを滑稽な存在にしてしまった。ヨーロッパには、ウクライナやロシアに関して何かを成し遂げる力はない。英国軍の現役兵士は74,296人で、これはアルジェリアと同等の規模だ。英国の北海油田の生産量は2000年以降、約73パーセント減少しているドイツの石油生産量は1日あたり約2万3千バレルで、国内の石油需要の2%しか満たさない。いずれにしても、ちょうど1年前、ショルツ首相は「欧州諸国やNATO加盟国はウクライナ領内に地上部隊も兵士も送らないだろう」と言っていた。誰が誰を欺いているのだろうか?

この状況は、米国とロシアを必然的に同盟関係に追い込んでいる。目下の目標は、ジョージ・W・ブッシュにまで遡るトランプ以前の政権(およびEU)が引き起こした狂気の戦争を阻止することだ。この戦争は、ウクライナで「カラー革命」(政権交代)を繰り返し、ウクライナをNATOに引き入れることでロシアの「玄関先」に敵対的な前進基地を置くことを目的としている。最も熱狂的なネオコンの妄想の中にある考えは、ロシアを分裂させてその石油や鉱物資源を奪うことだ。

そのプロジェクトは実現しなかった。ソ連崩壊後10年間の混乱を経て、プーチンはロシアを再び秩序ある国にし、かつてのヨーロッパの普通の国家の定義に近づけた。そしてロシア文学でさえ、皮肉なことに、ヨーロッパの他の国々が集団自殺のキャンペーンを開始する中、西欧文明を守る要塞となった。歴史は常に人を欺き、時代精神はその相談役である。

明らかにトランプとその側近たちはわかっている。すなわち、ウクライナはスラブ語の語源である「Украина」(ウクライナ)が意味するとおり、まさに「国境、辺境、周辺、郊外」であるということだ。ウクライナはロシアの端にある。何よりもウクライナは地政学的にロシアの影響圏内にあり、それはメキシコが米国の影響圏内にあることと同じである。ウクライナはほとんどが平坦な平原であるため、歴史的にロシアへの侵略の踏み台として利用されてきた。そのため、特にドローンやミサイルの新時代において、ロシアがそこにNATOが居座るという見通しに快く思わない理由が分かるだろう。

ヨーロッパが今、無力にももがき、自らを破滅させている中、アメリカとロシアはウクライナを巡る不必要な世界大戦に巻き込まれることを回避しようとしている。ゼレンスキーはカラー革命の時代遅れの産物に過ぎず、そのカラー革命は「ジョー・バイデン」とともにようやく終わった。バイデンは、ウクライナでの巨大な金儲け作戦の先頭に立っていた人物である。その仕組みについてはすでに多くのことが知られているが、実際の反逆行為の度合いを含め、さらに多くのことが明らかになるだろう。ジョー・バイデンの周辺の人々は、この件で刑務所行きか、それ以上のことになるだろう。

また、私はあえて予測するが、 ゼレンスキーはそれほど長くはかからずに、自国の将軍たちによってその地位から解任されるだろう。ウクライナは世界にとって危険でない辺境の地という、長年の地位に戻ることになるだろう。アメリカとロシアは、野心的な中国から、残された西洋文明を守る態勢を整えることになるだろう。そして、もしヨーロッパの狂気じみた国家指導者たちが、1945年以前の2千年間のように、再び互いに争い始め、この地域を再び虐殺の場にしてしまうようなことがあれば、神のご加護があれ。

トランプがその争いに巻き込まれないようにしていることは正しい。我々には、過去30年間に自らに与えたダメージを修復するという十分な課題がある。良いニュースは、その修復がすでに始まっているということだ。
https://www.kunstler.com/p/attitude-adjustment