植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
斎藤兵庫県知事は「百条委の報告書」は「一つの見解」で、「『違法の可能性がある』ということは『違法でない可能性もある』ということ」などと述べて一蹴しました。
自分が立ち上げた「第三者委 報告書」に期待していたのかも知れませんが、判事経験者3人を含む6人の弁護士によって作成された「報告書」は、「百条委」よりも厳しい表現で「10件のパワハラ」を認定し、元県民局長の「公益通報」を「ウソ八百」「公務員失格」などとして「懲戒処分」したのは「間違い」で、「直ちに取り消されるべきものであった」と述べました。
斎藤氏にはもう逃げ道はなく、どの様に身を処するのかが注目されましたが、何と「パワハラは認めたものの「今後は襟を正す」と述べただけで減給などの自分へ処罰は一切なく、「公益通報」の扱いについては、「様々な議論があって定まっていない」かのような虚言を弄して「第三者委の結論」を無視しました。前代未聞のことです。植草氏は、「このままで知事職に居座ることは通らない。適正な是正措置が取られなければ、この国の〈法の支配〉は完全に崩壊する」と警告しました。
追記.大学在学中に弁護士資格を取りその後テレビ朝日社員になった西脇亨輔弁護士(現在は退社し弁護士業務に専念)がこのところ連日、斎藤知事に関する動画を発表し、とても分かりやすく要点を説明しています。Urlは下記なので興味のある方はご覧ください。
西脇亨輔チャンネル https://www.youtube.com/@nishiwakikyosuke
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通用しない斎藤知事の言い逃れ
植草一秀の「知られざる真実」 2025年3月28日
告発発文書問題で兵庫県が設置した第三者調査委員会が3月19日に調査報告書を提出した。
第三者委員会は元県民局長が昨年3月に県警や報道機関など10ヵ所に送った文書が公益通報者保護法に定める〈3号通報〉、外部公益通報に当たると判断した。
県民局長による外部通報文書に記載された7つの事項のうち、
事項4(贈答品に係る事項)
事項6(プロ野球優勝パレードに係る問題)
事項7(職員に対する言動ないし対応の適否)
は3号通報の「通報対象事実」の要件を満たしているとした。
また、元副知事の片山安孝氏が百条委で主張した「クーデターという不正目的だから公益通報には当たらない」との主張を退けた。
報告書は、
・県民局長が当該文書内容を流布させることで「不正の利益を得る」ということは考えにくい。
・同局長が、将来的に何らかの影響力を行使して、実際に斎藤知事や県の幹部職員を失脚させる目的があったとまでは認めることができない。
・当該文書の末尾に当該文書の取扱いについて注意を促す記載があることに照らすと、当該文書に記載された企業、金融機関や県の外郭団体に「損害を与える」目的があったとも認め難い。
・当該文書の配布先が10か所に限定され、その中に県警本部が含まれていたことからは、直ちにこの文書内容を広く流布して県政を混乱に陥れようとの不当な意図を看取することもできない。
などの根拠を列挙した上で、「当該文書の配布が〈不正の目的〉でなされたものと評価することはできない」とした。
文書が公益通報であると認定されたため、告発者探しは違法である。
元県民局長を特定したメール調査も、片山副知事(当時)が行った事情聴取や公用PC押収も違法になる。
告発者探索は違法であり、県による5月7日の通報を理由とする懲戒処分も無効である。
外部通報が行われた直後、斎藤知事は側近4人を呼んで対応を協議。
4人は告発文書が指摘する各自に関係する事実を否定し、当該文書を「核心部分が真実でない怪文書」と決め付けて通報者探索の行動を取った。
斎藤氏および4人の側近は当該文書で名指しされている被告発者。利害関係者である。
被告発者が告発を握りつぶすことこそ公益通報者保護法が警戒する典型的ケースである。
斎藤知事は昨年3月27日に知事定例記者会見で元県民局長の処分について聞かれ、こう答えた。
「職務中に、職場のPCを使用して、事実無根の内容が多数含まれ、かつ、職員の氏名等も例示しながら、ありもしないことを縷々並べた内容を作ったことを本人も認めている。」
「公務員ですので、選挙で選ばれた首長の下で、全員が一体として仕事をしていくことが大事なので、それに不満があるからといって、しかも業務時間中に、嘘八百含めて、文書を作って流す行為は公務員としては失格ですね。」
この斎藤氏発言を第三者委員会は〈パワハラ〉と認定した。
県民局長の外部通報は公益通報に該当する。
したがって、通報者探索行為は違法、公用PC押収も違法、通報に対する懲戒処分も違法。
これが第三者委員会の出した結論。
第三者委員会は県が設置した委員会。
兵庫県弁護士会が「県との利害関係が無い」などの条件をもとに推薦した藤本久俊委員長ら3人を「委員」とし、さらに調査の実務を補佐するために追加で3人の弁護士が「調査員」としてサポートする体制が構築されて組織された。
藤本委員長を含む委員の3人は全員が元裁判官。県が設置した第三者委員会が示した結論を無視することは許されない。
世の中には無限の主張がある。法律の解釈についても無限の解釈があるだろう。
弁護士の見解も無数に存在する。しかし、公式の判断を得るには公式の組織が判断を示すしかない。県は第三者委員会を組織して判断を委嘱した。
したがって、斎藤知事は第三者委員会の判断を尊重する必要がある。
自分に都合が悪い部分は受け入れないというのは〈法の支配〉に反する。
斎藤知事は第三者委が違法と断じた外部公益通報の取り扱いや通報者探索について、「いろんな意見がある」、「あの時点ではやむを得なかった」、「私自身は見解が違う」と違法性を認めない。非を認めず、知事職に居座る考えを主張している。
しかし、これは通らない。適正な是正措置が取られなければ、この国の〈法の支配〉は完全に崩壊する。
(後 略)