2025年3月31日月曜日

生活保護基準引き下げめぐる裁判/画期的! 行政の敗訴ラッシュ

「レイバーネット日本」が掲題の記事を出しました。
 13~15年(第2次安部内閣)に生活保護基準額を減らした物価の下落などを理由に基準額最大10%引き下げたのは憲法25条(=すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないなどに反するとして、減額決定の取り消しなどを求めた訴訟で、東京高裁は27日、決定を取り消した東京地裁判決を支持する判決を言い渡しました。
 高裁判決は一審と同様、国が用いた独自の物価指数について、生活保護の受給者らがあまり買わないテレビなどの価格下落が大きく反映されていると指摘し、引き下げの判断は「専門的知見との整合性がとれていない」と述べました。
 この訴訟は全国29地裁で起こされ、高裁判決は9件目です。この判決を含めて過去5件が減額決定を取り消した一方4件は請求を退けました
 最高裁は今年5月、この生活保護支給額引き下げをめぐる違法性や賠償責任の有無について統一的な見解を示すということで、「レイバーネット日本」は最高裁判所の判断に期待したいと述べました

 以下の2つの記事を併せて紹介します。
 共産党の倉林明子議員は24日の参院厚生労働委で、10月から実施する25年度分の生活保護費への500円の加算では物価高に到底追いつかず、物価高騰に見合う生活保護基準の大幅引き上げこそ必要だと主張しました

 また悪名高い「桐生市の生活保護費不適切支給」問題についての「第三者委が報告書」が28日提出され、市による不正の数々が指摘されました。報告書を受け取った荒木市長は「生活保護制度の理念を勝手な解釈でねじ曲げた数々の問題を、発覚するまで一切気づかなかった責任は重く、心から恥じている」と述べました。改善が期待されます。
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生活保護基準引き下げめぐる裁判/画期的 行政の敗訴ラッシュ
                      レイバーネット日本 2025-03-29













2枚の旗は大阪地裁で掲げられた初代旗出しセットで、各地を転戦して風格にじむ趣になってきた。

報告 知多
 厚生労働省が物価下落を主な理由として生活保護基準を過去に例のないほど引き下げた2013年から、既に12年が過ぎた。
 生活保護支給費の減額についてその違法性を問う「いのちのとりで」裁判は、全国29の地裁で31件が争われている。
 3月27日、東京高裁初の東京1次(はっさく訴訟)判決は、一審判決維持の原告勝訴(写真右)。翌日、同じく東京高裁での埼玉控訴審も原告勝訴(写真左)。
 これで高裁判決は、違法を訴えた原告側の6勝4敗に。初期に続いた地裁での原告敗訴は一転しており、もはや高裁でも行政敗訴ラッシュの様相を呈してきた
 傍聴には、東京1次控訴審105人、埼玉控訴審は133人と、いずれも90席ほどの大法廷に入りきれないほど希望者が集まり、大詰めを迎えた裁判への関心の高さが感じられた。
 長期にわたる裁判中、高齢者の多い原告のなかには亡くなる方も少なくない。法廷では毎回のように、原告死亡による裁判取り下げが、裁判官から告げられる。
 憲法25条に生存権と国の社会的使命をうたうこの国の行政は、この問題をいつまでも放置せず早く解決救済すべきだ。
 生活保護制度は国民のナショナルミニマム(最低生活基準)の基礎。その金額は、最低賃金はじめ住民税非課税や医療・介護保険、就学援助などの基準となり、社会保障を支える岩盤として国民生活への影響が大きい。
 裁判を通して明らかとなったのが、物価偽装や悪質な統計不正。事実をゆがめるような国による弱い者いじめはやめてほしい。
 私たちが裁判官に求めるのは、三権分立、法の番人としての役割をきちんと果たし、国民の命と生活を守る正義の判決である。
 今年5月には、この生活保護支給額引き下げをめぐる違法性や賠償責任の有無について統一的な見解を示すという、最高裁判所の判断に期待をしたい。


物価高騰に見合わぬ 倉林氏「生活保護費大幅増を」 参院厚労委
                       しんぶん赤旗 2025年3月30日
 日本共産党の倉林明子議員は24日の参院厚生労働委員会で、10月から実施する2025年度分の生活保護費への500円の加算では物価高に到底追いつかず、実質的な引き下げになっていると批判し、物価高騰に見合う生活保護基準の大幅引き上げこそ必要だと主張しました。
 倉林氏は、桐生市で生活保護費の過少支給や虚偽の扶養届など不法行為が横行していた問題で、国が2度も監査しながら見逃してきたと指摘。水際作戦や不当な排除はないかとの視点に立ち、漏給・権利侵害防止の観点を強化し、保護率が急減したり、保護率が著しく低い自治体などを国の監査対象とするよう求めました。
 福岡資麿厚労相は、25年度の監査の重点事項として「権利侵害の防止を強化し、監査対象は保護率の急激な変動や長期的な減少を勘案する」と答えました。
 生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)で、13日に大阪高裁(京都訴訟)が、18日に札幌高裁が、いずれも生活保護費の減額処分の取り消しを国に命じる原告側の逆転勝訴判決を出しました。倉林氏は「国は上告を断念し判決を受け入れるべきだ」と主張しました。


桐生市の生活保護費不適切支給 第三者委が報告書提出
                    NHK 群馬NEWS WEB 2025/03/28日
桐生市が生活保護費の不適切な支給を繰り返していた問題で、調査にあたっていた市の第三者委員会は、荒木恵司市長に報告書を提出し、「違法な分割支給を市が組織的に許容していた」などと指摘しました。

桐生市では2018年以降、生活保護の受給世帯の一部に対して、保護費を分割して渡し全額を支給しないなど、不適切な支給を繰り返していたことがわかり、弁護士などで作る市の第三者委員会が調査を進めてきました。
28日は、第三者委員会の吉野晶委員長らが荒木市長に対し報告書を提出しました。
報告書では、保護費を分割で支給していた対応について「『極めて例外的な手法』で『やむを得ない事由が必要』という認識がなかったほか、違法な分割支給を市が組織的に許容していた」と指摘しました。
また、窓口などでの対応について「生活保護を申請する権利を侵害するような行為が行われていたと認めることができる」としています。
そのうえで、再発防止策としてすべての窓口での相談や電話対応について録音や録画することや県庁など外部と人事交流を行い継続的に指導を受けられる体制を整備することなどを提言しました。
報告書を受け取った荒木市長は「生活保護制度の理念を勝手な解釈でねじ曲げた数々の問題を、発覚するまで一切気づかなかった責任は重く、心から恥じている」と述べました。
そのうえで「報告書を真摯に受け止め改善に鋭意、取り組んでいく」としました。