2025年3月6日木曜日

トランプとゼレンスキーの口論と決裂 - 和平プロセスを一撃でぶち壊したCIA

「世に倦む日々」氏が掲題の記事を出しました。
 ウクライナ戦争を早期に終結させるのはトランプの公約とも言えますが、彼がロシアとの「和平」の実現を非常に急いでいる理由について、記事の冒頭の節で思いもかけない視点から推測しています。氏一流の洞察力です。
 そしてホワイトハウスで行われたゼレンスキーとの会談が、予想もしなかった「口論の挙句の決裂」になったのは、ウクライナ戦争がロシアの勝利で終ることになっては面子が丸つぶれになるCIAがゼレンスキーを焚きつけたからだと見ています。確かにバンス副大統領の発言に噛みついたのはゼレンスキーの方でした。
 あの言い合いがCIAの策動によるものというのは大いに説得力があるもので、冒頭から興味深く読ませてくれる記事になっています。

 併せて櫻井ジャーナルの記事「ウクライナ議会はトランプ米大統領の和平イニシアチブを歓迎」を紹介します。
 3月3日ウクライナ議会ロシアとの戦争に関する声明を出し「ウクライナ国民は世界の誰よりも平和を望んでおり、ドナルド・トランプ大統領の個人的役割と彼の平和維持活動が敵対行為の迅速な停止とウクライナ、ヨーロッパ、そして世界全体の平和達成に決定的な影響を与えると信じている」として、トランプの和平イニシアチブを歓迎していると表明しました。
 これはゼレンスキーの主張とは正反対のもので、あのときの決裂は何だったのかということになりますが、同ジャーナルは以前からゼレンスキーはイギリスの情報機関MI6のエージェントであると指摘していてホワイトハウスでの会談決裂の背景にはMI6が存在しているのでは、と述べています。
 いずれにしても西側のいわゆる「正義派」の主張に沿っていてはいつまで経っても和平を達成することは困難で、その間に更に多くの尊い人命が失われることになります。
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トランプとゼレンスキーの口論と決裂 - 和平プロセスを一撃でぶち壊したCIA
                        世に倦む日日 2025年3月4日
2/28、DCで開かれたトランプとゼレンスキーの首脳会談は、テレビ中継の中、激しい口論が応酬されて決裂の展開となった。ウクライナの鉱物資源権益をめぐる協定は、調印されずご破算となった。ホワイトハウスは険悪な空気に包まれ、記者会見もキャンセルされた。先週末( 3/1 - 3/2)のテレビとネットはこの騒動の話題で持ち切りとなり、週が明けても激震の余波と興奮の余韻が続いている。日本だけでなく世界中が同じだろう。こんなショッキングな絵を見るのは初の経験で、絶句し呆然とするばかりだが、分析と考察を加えたい。まず、トランプの側から見よう。トランプは何を目論んでいる(いた)のか。トランプが猛スピードで始めた和平プロセスの意図と目的は何なのか。それは実にトランプらしくシンプルで、ノーベル平和賞だと断言できる。ウクライナ和平を実現した平和の英雄”として賞を獲得し、その功績と栄誉を武器にして来年の中間選挙を勝利に導くことだった

それがトランプの戦略だ。トランプの政治は政局オリエンテッド⇒指向な点が特徴で、理念や構想をベースに政策を立案したり調整したりするのではなく、最初に選挙の勝利ありきであり、何より政敵の打倒ありきであって、その闘争目的めざして政権が運営される生理法則で動いている。トランプがフォーカスしているのは、来年の中間選挙の勝利であり、そのゴールに導くまでの1年半の政治工程のマネジメントと主導権とモメンタム⇒勢いの維持である。勝利を得る上で国民にアピールする最大の宣伝材料(成果)がウクライナ和平とノーベル平和賞で、その打算の下ですべてを計算して動いている。ノーベル賞の発表は10月第1週から第2週で、遅くとも夏には内定者が決まっている。トランプが和平プロセスを急いでいるのはこの時間軸の由縁であり、4/20 の復活祭を停戦合意(第一段階)のマイルストーンに設定したのは、今年のノーベル平和賞内定の日程から逆算しての思惑からに他ならない

希少鉱物等の地下資源の協定というのは、実際にはあまり意味のないもので、表面的な名目というか口実というか、目眩ましの外殻装置であって、いかにもその取引でアメリカによるウクライナへの安全保障の関与が担保されているように見せかけ、世界の世論が半信半疑で納得するよう仕向けるための疑似餌の道具に過ぎない。アメリカ(トランプ)は、停戦後のウクライナには安全保障の保証は与えないのであり、アメリカは最早コミットしない⇒責任を取らない)と態度と立場を決めている。その前提の下でロシアと停戦交渉を始めていて、プーチンとの間で基本要綱(領土譲歩・NATO加盟断念)を合意している。それは、キエフ政権側には呑めない条件だが、それを呑ませるしかロシアと停戦合意する道はないので、トランプはゼレンスキーに強引に呑ませようと図ったのであり、地下資源という疑似餌を利用したのである。2/27 の時点では、表面上、ゼレンスキーは観念して署名の方向で動いていた

トランプとプーチンの合意では、ゼレンスキーを排除するという工程も決まっていて、ゼレンスキーがDCで協定に署名するということは、自ら失脚と退場を世界の前で受け入れる儀式に出席するという意味だった。それによって米露主導の停戦協議は一気に前に進み、復活祭までの停戦合意が見通せ、トランプのノーベル平和賞が視界に入るという算段だった。ゼレンスキーは、土壇場でそれを乱暴にひっくり返したのであり、米露の和平プロセスを潰す挙に出たのである(一時的な逆襲で終わるかもしれないが)。トランプの激怒と挫折の失意は察するに余りある。2/28 朝に韓国の中央日報が報じた注目記事があり、2/26 の段階で、アメリカ側からゼレンスキーに対して訪米中止の要請が発されていた内幕が書かれている。今回のような卓袱台返しが起こるという不安と予想がDCの中であったのだろう。ゼレンスキーの態度が曖昧で、協定合意(失脚の承諾)が生煮えだったという意味だ

そして、マクロンが介在してトランプにとりなし、ゼレンスキー訪米を実現させたとある。この情報から想像し理解できるのは、和平プロセスを壊したいCIAが、ゼレンスキーを励まし、マクロンを使い、巧みにトランプを騙したという政治であり、今回の騒動がCIAによるトランプ政権に対する暗闘とミニ・クーデターであったという事件の真相である。ここは明確に言っておきたいが、ゼレンスキー単独でこんなことができるわけがない。カメラと記者の前の公開の場で、米大統領をはじめ、米政権首脳に食ってかかって口喧嘩の醜態を演じ、米政権に恥をかかせ、米政権が推進する重要政策を潰すなど、小国の、しかもアメリカからの支援だけで生きている小国の首脳ができる所業では絶対にない。あり合えない話だ。あり得ない図なのに現実に起きた。なぜそれが可能だったのか。ゼレンスキーの背後にCIAが付いているからであり、ゼレンスキーがCIAを直に代弁しているからである

つまり、今回の騒動はトランプとCIAの権力闘争の図であり、それが赤裸々に噴出して現象化した一幕だ。ゼレンスキーは敢えて派手に立ち回ってトランプの和平プロセスを潰したのであり、あの口論は偶然ではなく意図的で計画的な芝居に他ならない。CIAの指図の下で動いた謀略工作であり、狙いは和平プロセスの破壊である。トランプとCIAが熾烈な権力闘争を演じ合っていて、CIAはトランプの支持率低下を狙って大胆な一撃に出た。トランプはマクロンの巧言に騙され、油断して大事な局面で失敗を犯してしまったと言える。トランプはゼレンスキーを信用しておらず、CIAの操り人形のピエロだと軽蔑して歯牙にもかけてないのだが、取り入り上手のマクロンの小僧は可愛がっている。今回はその隙を衝かれ、トランプの momentum drivenの⇒勢いに駆られた戦略と外交に深刻なエラッタ⇒誤動が発生した。無論、マクロンを動かしたのはCIAである。トランプは「嵌められた」と臍を噛んでいるに違いない

今回のウクライナ戦争は、徹頭徹尾「CIAの戦争」である。キエフ政権を支持する側は、これを「プーチンの戦争」と名付けて呼ぶけれど、前哨戦は2004年のオレンジ革命から始まっていて、カラー革命の欲望と暴走の果てに爆発した侵攻と戦争であり、すなわち積分的な視角と方法で本質化すれば「CIAの戦争」と総括するしかない。主役はCIA(と兄弟分のMI6)であり、CIAがウクライナの軍備を整え、NATOの勝利を確信した上でプーチンを挑発し、挑発に成功して侵攻を招いた戦争だ。通常兵器での限定戦争なら必ずNATO(ウクライナ)が勝利するという根拠と戦略があり、CIAはプーチンを逆上させて侵攻に追い込んだ。実際、スターリンクとジャベリンによって侵攻は一瞬で迎撃され、ロシア地上軍は退却を余儀なくされ、キエフ制圧を諦めて作戦範囲を縮小、防衛線を築いて持久戦を構える戦況となる。強力な経済制裁と外交的孤立化策の奏効でNATO勝利は確実に見えた

トランプ主導の和平プロセスが実を結べば、NATOはこの戦争に負けたことになる。トランプとプーチンが勝利者となり、NATOとウクライナが敗者となる。それは、NATOの正義が破綻し、NATOが崩壊と解散に導かれる重大事態に違いなく、また、CIAが決定的に敗北して断末魔の叫びを上げる瞬間でもある。生き物としてのCIAは、自ら生き延びるため、化身たるNATOを存続させるため、この戦争をやめるわけにはいかず、永遠に継続させなければならず、トランプの和平プロセスを潰さなければならない。それがCIAの主眼と動機なのだが、佞悪な本音を隠して美化と装飾を施し、西側大衆の耳触りに正当性を醸し出した言説が、東野篤子や鶴岡路人のナラティブ⇒言説)とレトリック⇒修辞法であり、松原耕二と堤伸輔のロシア憎悪の漫才トークである。本来、和平プロセスが始動し、NATO敗北が明確になりつつある今、東野篤子や鶴岡路人や廣瀬陽子や小泉悠や秋元千秋や駒木明義は退場しなければならない

彼らはゼレンスキーと運命共同体の身で、キエフ政権と城を枕に討ち死にする同志だ。CIAチームであり、戦争プロパガンダ軍団である。すなわち彼らに入れ代わって、羽場久美子、塩川伸明、下斗米伸夫、伊藤孝之、松里公孝など、言わば正統派アカデミーの研究者がマスコミの解説の席に座るべきときで、理性と良識の言葉がマスコミ空間に復活すべき時期だろう。ミアシャイマーや.サックスがインタビューされ、報道番組で紹介されるべきときであり、T.カールソンやE.トッドが来日してテレビに出演し、持論を披露すべき言論の局面だろう。春が到来し、「古い上着よさようなら」の季節を迎えたと思う。日本のマスコミは、アメリカの戦争研究所が発する大本営発表を中継発信する下請け基地局だった。日本もゼレンスキーを支援する同志国に仲間入りさせられ、戦時の空間になり、国民は大本営発表を鵜呑みにして戦争指導に従っていた。碌に説明もなく、アメリカの言いなりで「西側諸国の一員」をやり、多額の税金を渡していた

ゼレンスキーから屈辱を受けたトランプの怒りは凄まじいと想像する。ゼレンスキーが土下座して謝罪するか、大統領を交替させるしか収拾の方途はないだろう。跪いて謝罪するということは、鉱物資源協定に素直に署名するという意味であり、自らが失脚し退場する和平プロセスを受け入れ、ロシアが要求する条件を土台にした米露の停戦協議に参加するという恭順となる。その結論に転ばなかった場合は、トランプ政権はウクライナへの支援停止を断行するだろう。欧州がどれほど反発し抵抗しても、その方向性は昨年の米大統領選の民意であり、公約であり、トランプ政権の基本方針である。欧州はアメリカの肩代わりはできない。私自身の認識を言えば、この戦争はNATO(アメリカ)とロシアの戦争であり、ウクライナはNATOのフロントの位置と存在であって、したがって停戦協議はアメリカとロシアが主となって行うのが当然で、そこに欧州が入る必要も道理もない。ウクライナが交渉に入るのは当然だが、アメリカが主でキエフ政権は従の立場だ

今回の衝撃的事件により、トランプが進めてきた米露の停戦協議は成立が遠のき、その計画で達成をめざした復活祭までの停戦合意(第一段階)は、日程が窮屈になった感が否めない。今、この瞬間の断面図としては、CIAによる和平プロセスぶち壊しが成功し、トランプに押されていたCIAが巻き返しの橋頭堡を築いたと言えるかもしれない。二者の対立と緊張はアメリカ帝国主義権力の内部分裂と矛盾露呈を意味する。この衝突と闘争は国際社会(特にグローバルサウス)に大きな影響を及ぼし、アメリカの威信失墜を甚だしいものにさせ、CIAが支配し操縦してきた20世紀的世界の終焉を人々に予感させるだろう。トランプがCIA(ゼレンスキー)にどう反撃し報復するか注目したい


ウクライナ議会はトランプ米大統領の和平イニシアチブを歓迎  
                         櫻井ジャーナル 2025.03.05
 ウクライナ議会は3月3日にロシアとの戦争に関する声明を出した。「ウクライナ国民は世界の誰よりも平和を望んでおり、ドナルド・トランプ大統領の個人的役割と彼の平和維持活動が敵対行為の迅速な停止とウクライナ、ヨーロッパ、そして世界全体の平和達成に決定的な影響を与えると信じている」としているトランプ大統領の和平イニシアチブを歓迎しているのだ。

 ウクライナにおける大統領の任期は5年である。ウォロディミル・ゼレンスキーが大統領に就任したのは2019年5月なので、24年5月に任期は切れたわけだが、ゼレンスキー政権や後ろ盾の西側諸国は戒厳令を口実にして大統領選挙を実施せず、居座っている。トランプ大統領はゼレンスキーの支持率は一桁だと言っているが、ウクライナ人に支持されていないことは間違いないだろう。ゼレンスキーは大統領に就任した直後、ロシアとの関係修復に前向きの姿勢を見せていたが、和平に向かって歩き出しはしなかった。
 国内では不人気のゼレンスキーだが、イギリスやフランスを含むヨーロッパの一部リーダーからは支持され、そのリーダーたちはロシアとの戦闘に執着している。問題は彼らにロシアと戦争する能力がないこと。そこでアメリカを引き込まなければならないのだが、彼は2月28日にホワイト・ハウスでトランプ大統領と口論、ドナルド・トランプ政権はNATOに相談することなくキエフへの軍事援助停止を決めたと伝えられている。

 トランプがロシアとの戦争から手を引こうとしている可能性は高い。大統領に就任した当初、彼はウクライナでの戦闘で戦死したロシア兵を100万人近くだと主張、ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回るとしていたが、そうしたことは口にしなくなった。
 こうした発言は彼がウクライナ特使に起用したキース・ケロッグ退役陸軍中将の主張に基づいていた。同中将はロシアが軍事的にも経済的にも疲弊しているとしていたのだが、ロシアが制空権を握っている事実だけでも間違いがわかる。

 戦場において発射された砲弾の数は死傷者数に反比例すると言われているが、その数は6対1から10対1でロシア軍が上回る。つまりロシア軍の死傷者数はウクライナ軍の6対1から10対1だということだ。実際は1割程度だと見る人が少なくない。
 イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中で、その当時、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求していたそれだけ死傷者数が多いということをイギリスの元国防大臣も認めている。現在の状態はさらに悪化しているはずだ。
 ウクライナ軍が保有する武器弾薬が枯渇していることはゼレンスキーの発言でも明確であり、ヨーロッパ諸国の兵器庫も空だ。ヨーロッパのNATO加盟国は何もできない。

 NATOを東へ拡大させないという西側諸国の「約束」をソ連やロシアの政府は信じたが、その「約束」は反故にされた。2014年のミンスク1と15年のミンスク2も西側諸国は守らなかったアンゲラ・メルケル元独首相  フランソワ・オランド元仏大統領 ミンスク1とミンスク2はキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと発言している。ロシアは何度も煮湯を飲まされてきたのだ。ウラジミル・プーチン露大統領は話し合いでの解決が不可能だと腹を括ったはずである。そのプーチン大統領は2022年9月21日に部分的な動員を実施すると発表した。その時点で戦争の中身が変わった。

 崩壊状態のウクライナ軍にトドメを刺すつもりなのか、ロシア軍は春に攻勢をかけると言われている。ゼレンスキーはウクライナ軍が100個以上の旅団を戦場に展開しているとしていたが、ロシア軍はその倍、つまり200個師団以上だと見られている。しかも兵器の質や量でロシアはウクライナを圧倒している。そうした中、ヨーロッパ諸国の軍隊が3個師団程度を派遣しても意味はないのだが、各国の国民に幻影を見せ続けるには、無意味なことでもしなければならないのかもしれない。