数年前に米国が「台湾有事」(日・米 対 中国 戦争)を打ち出したのは、当時7年以内に中国のGDPが米国を抜いて世界一になる恐れがあるので、「その前」に中国を叩こうという発想に基づくものでした。
現実は CIAの懸念は「後の祭り」で、既に中国がGDP世界一の座を占め、米国は二位に転落しました。そして多くの専門家が、トランプがウクライナへの支援をやめウクライナ戦争の迅速な解決を望んでいるのは、「台湾有事」に備えるためだと見ているということです。
ではトランプは遅まきながら「台湾有事」を勃発させるのでしょうか。CIAを敵視しているトランプが簡単にその路線に乗り、米中戦争の危険を冒すとはとても思えません。そもそもトランプはオバマやバイデンのような戦争志向型ではありません。
海外記事を紹介する「耕助のブログ」に、「台湾が中国と平和的に統一される理由」という記事が載りましたので紹介します。
記事は様々な要因からトランプは「台湾有事」を回避し、国内問題に傾注することになると見ています。日本の歴代の米国服従・思考停止型政府もこの際認識を新にして、破綻が証明されている「軍事国家志向」を改めるべきです。
併せて「耕助のブログ」の記事「DeepSeekは氷山の一角」を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
台湾が中国と平和的に統一される理由
耕助のブログNo. 2477 2025年3月20日
Why Taiwan Will Unite with China Peacefully by Ignis Rex @Ignis_Rex
トランプ大統領がウクライナへの支援を取り下げ、ウクライナ戦争の迅速な交渉による解決を望んでいるのは、次に中国が台湾を侵略する「ゴーサイン」だと多くの専門家が主張しているので、私はこの記事を書いている。
私の考えでは、中国が望んでいるのは平和的な統一であり、台湾との統一を急いでいるわけではない。台湾が独立を宣言しない限り、中国が軍事手段を用いて台湾と統一する理由はない。さらに、国連総会決議2758で、中国は唯一の中国であり台湾は中国の省であるとすべての加盟国によって認められている。
台湾はウクライナではない。なぜか?
台湾の地政学上の状況は根本的にウクライナのそれと異なる。ウクライナと違い台湾は中国本土からわずか200キロメートルの距離にある小さな島で、封鎖や軍事作戦に対して非常に脆弱である。台湾が独立を宣言して紛争が勃発した場合、中国は迅速かつ圧倒的な軍事的対応を行う可能性が高い。これには、台湾の軍事指揮および通信センター、レーダーシステム、ミサイル防衛システム、軍用飛行場、港湾の開戦時間内の破壊が含まれる。さらに、中国は無人機やロボット軍団を展開し、民間人の犠牲を最小限に抑え、1週間以内に紛争を終結させる可能性もある。台湾人は中国人である。つまり、頼清徳が率いる台湾独立派が独立を宣言した場合でも、流血を最小限に抑えることは人民解放軍(PLA)の責任である。
米国は台湾に関して戦略的なジレンマに直面している。台湾に独立を促せば、米国自身の軍事力の限界を露呈する危険性がある。米海軍は紅海でフーシ派との戦争にすら勝てない。中国のような超大国が背後に控えている状況で海戦に勝てるなどというべきではない。米海軍が台湾防衛に失敗すれば、米国は「張り子のトラ」として世界にさらされ、世界的な超大国としての信頼性を損なうことになる。
さらに、日本が台湾をめぐる紛争に軍事介入する可能性は低い。第二次世界大戦中に日本軍が中国で犯した残虐な行為の記憶から、日本は中国をこれ以上刺激することをためらうだろう。特に台湾がからめばなおさらである。またもし日本が台湾独立戦争に介入し敗北した場合、中国は敗者である日本に対して、1945年の連合国によるポツダム協定を履行し、日本の領土に沖縄(琉球諸島)を含めないよう命じるだろう。そして琉球諸島は中国を安全保障の保証人として独立国となることが認められるだろう。
米国の軍備は兵器や弾薬の備蓄が乏しく、また、レアアースや重要物質の輸出を中国が禁止しているために国防産業が麻痺しており、太平洋での直接対決において中国に打ち勝つことはもはや不可能である。西太平洋での海戦では、米国は艦船、航空機、潜水艦、ミサイル、弾薬が底をつくまでに2週間以上作戦を継続することは難しいだろう。米国の空母が1隻でも失われれば多大な犠牲者が出るだけでなく、米国の立場はさらに弱体化するだろう。敵対行為がこのレベルにまでエスカレートし、米国が少なくとも空母1隻を失った場合、つまり5,000人の軍人が命を落とした場合、停戦や平和的解決は望めなくなるだろう
台湾を巡る米中戦争が勃発した場合、米国経済に壊滅的な打撃を与えることになる。全面戦争が勃発すれば、世界的なサプライチェーンが混乱し、パニック買いによって、数日のうちにウォルマートやターゲットなどの米国の店舗で生活必需品が不足する事態となるだろう。世界のコンテナ船の約20%が中国所有であり、世界の商業船の少なくとも60%が中国で建造されているため、米中間の戦争が勃発した場合、米国の港に商品が届かなくなるという問題が生じるだろう。中国所有のコンテナ船や中国製のコンテナ船は没収されることを恐れて米国の港に寄港しないからだ。さらに、米国の防衛産業はすでにウクライナ戦争中に示されたように、サプライチェーンの問題や生産能力の不足に苦しんでいる。
地政学的な状況は今や強力な同盟国となった中国とロシアに有利に変化した。2つの海に守られた米国は、依然としてアメリカ大陸における覇権を維持できるが、改革とインフラ投資を通じて製造能力と軍事能力の再建に重点的に取り組まなければいけない。
トランプ大統領にとって「米国を再び偉大に(MAGA)」を実現することは、肥大化した官僚機構、二極化された政治情勢、貧弱なインフラ、製造業がほとんどないサービス産業中心の経済、持続不可能な高水準の債務など、主に国内の課題である。米国は、再び世界的な舞台で効果的に競争できるようになる前に、取り組むべき重大な国内問題に直面している。
https://x.com/Ignis_Rex/status/1899304276138000768
DeepSeekは氷山の一角(賀茂川耕助氏)
「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
中国が経済的に曲がり角に差し掛かっているのは事実と思われますが、そこは国家統制経済なのでどのように緩和し克服しようとするのか注目されます。
中国はGDPで世界一を達成しましたが、学術論文や特許数等のいわゆる知的分野でも、圧倒的に他を凌いでいることが分かります。
注 DeepSeek(ディープシーク)は、中国のAI開発スタートアップ企業が開発した大規模言語モデル(LLM)のことです
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
DeepSeekは氷山の一角
耕助のブログNo. 2478 2025年3月21日
DeepSeek is the tip of the iceberg
中国が技術面で主導権を握るための基盤 by Hua Bin
DeepSeekはここ数週間、AI分野で大きな話題となった。Unitreeの人型ロボットは、身体化された知性において驚くべき成果を上げている。12月には、第6世代ステルス戦闘機の試作機2機が発表された。
当然のことながら、多くの人々はこれらは中国が急速に追い上げ、未来の技術を支配する競争において欧米諸国を追い越していることを示していると認識している。
もしそうだとすれば、これらの技術的躍進の源は何だろうか? それらは単なる偶然の幸運なのか、それとも、これから起こることを予兆するものなのだろうか?
これらの革新の基盤はいくつかある。人的資本、研究/産業のエコシステム、政府投資だ。
まず、中国の膨大な人的資本がようやく開放されつつある。数世代のうちに、栄養失調(脳の発達を妨げる)は中国ではほぼ根絶され、ほとんどの子供たちが高校を卒業し、およそ60%(年間1300万人)が大学に進学している。大学生の3分の1がSTEM(⇒科学・技術・工学・数学)科目を専攻しており、これは米国の6%と比較すると非常に高い割合である。また、中国の一流大学は現在、欧米の大学と同等の高い評価を得ている。
https://huabinoliver.substack.com/p/whose-universities-are-better-chinaを参照。
テレグラムの創設者であるパベル・ドゥーロフは、中国のAIの急速な進歩は競争の激しい教育システムによるものだとし、世界的な数学やプログラミングのコンテストで中国が常に優秀な成績を収めていることを指摘した。
中国は世界最大のSTEM人材を輩出しているだけでなく、重要なのは欧米とは異なり、中国のSTEM卒業生は金融や仮想経済ではなく、エンジニアリング、デザイン、テクノロジー、基礎研究の分野に就職していることだ。
投資の賢人として知られるチャーリー・マンガーは、アメリカの金融文化について次のように述べている:
私は、頭脳が資金運用に投入されていることは国家的なスキャンダルだと考える。さまざまなヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドには、物理学や数学の博士号を持つ人々が大勢いて市場を出し抜こうとしている。最も聡明な人材を高度な詐欺システムに駆り立てるようなインセンティブがあるのは狂っている。
DeepSeek自体が、金融から工学への転換が驚異的な成果を生み出すことができるという興味深い例である。DeepSeekは、数年前にコンピュータによる高速取引に対する政府の取り締まりを受けた定量的なコンピュータ取引を行うヘッジファンドから成長した。
DeepSeekは広大な中国のテクノロジー人材のエコシステムを活用している。欧米では、CATL、Deep Robotics、iFlytek、SMIC、Pony.ai、BrainCoといった企業名を聞いたことがある人はほとんどいないが、これらはバッテリー、ロボット工学、自動運転、チップ製造、ライダー、ブレイン・コンピュータ・インタフェース技術において世界トップクラスの中国企業である。
第二に、中国の技術開発は豊富な人材プールから恩恵を受けているだけではない。これらのエンジニアや研究者が、巨大な産業エコシステムを活用できることも同様に重要である。これは、脱工業化が進む米国とは対照的である。中国の焦点は、真の進歩を生み出す産業と研究の物理的・知的近接性を促進することである。
2022年4月、中国科学院計算技術研究所の所長であるSun Ninghaiは、中国政府の最高幹部で構成される中国全国人民代表大会の常務委員会(定数約200名)で講演を行った。彼は中国は「実体経済軽視」というアメリカの轍を踏んではならず、IT人材を仮想現実、メタバース、ブロックチェーンなどで構成される「仮想経済」に流用してはならないと警告した。
Sun は、米国は有益な物理的製品の製造を怠ってきたと主張し、2000年以降、製造業の雇用割合は劇的に減少していると述べた。目に見える形での実物を作り出さない金融投機や仮想技術といった偽りの経済に、あまりにも多くの知的エネルギーが費やされてきた。例えば、GoogleとFacebookの収益のほとんどは広告から得られており(それぞれ77%、98%)、Amazonの収益は主に中国製品の販売によるもので、同社のeコマースサイトに掲載されている商品の70%を占めている。
これに対し、Sunは中国にAIのイノベーションを「実体経済」に適用するよう促した。これは、AIアルゴリズムをさまざまな業界の物理的な製品に統合することを意味する。その狙いは、中国の成功している製造業および輸出主導型モデルにAIのイノベーションを組み込み、できるだけ多くの産業カテゴリーやサプライチェーンにおいて米国を技術的に凌駕するという政府の既存の取り組みを強化することである。
第三に、中国政府は科学技術に多額の投資を行っている。中国の研究開発費は2024年に4960億ドルに達し、2023年から8.3%増加した。中国の研究開発費のGDPに対する割合(研究開発強度)は2.8%に達し、これは世界全体の27%を占める。
米国科学振興協会によると、2015年以降、中国の特許申請数は毎年世界一となっている。米国科学アカデミーは、2003年から2022年にかけて一流科学誌が毎年発表した科学・工学関連の記事の数は、米国では33%増加したのに対し、中国では10倍増加したと報告している。
中国は次々とイノベーション(⇒技術革新)を生みだしている。Huaweiの優れた5G、人民解放軍の世界をリードする極超音速ミサイル、DJIのドローン、Unitreeのヒューマノイドロボット、第3世代の超伝導量子コンピュータ「Oringin Wukong」、清華大学のニューラル・エレクトロニック・オポチュニティ(NEO)ブレイン・コンピュータ・インターフェースなど、中国の技術進歩は広範囲にわたっており、加速している。
中国はまた最先端の核融合研究も行っている。1月には、Hefeiのプラズマ物理研究所の実験用先進超伝導Tokamakが1億度を超えるプラズマ温度を1006秒間、つまり約18分間維持するという世界記録を樹立した。もし中国が常温核融合を発明できれば、究極のスプートニクの瞬間となるだろう。
中国の技術革新のペースは加速し続け、最終的には18世紀以前に何千年の間享受していた世界的な技術的リーダーシップを再び中国にもたらすだろう。
中国は技術革新の黄金時代に突入したのである。
https://huabinoliver.substack.com/p/deepseek-is-the-tip-of-the-iceberg