2025年3月31日月曜日

斎藤知事の第三者委報告無視 を批判する主な社説

 兵庫県の斎藤知事は県議会が設置した「百条委員会」の報告書を「一つの見解(に過ぎない)」として事実上無視しました。
 その後19日に知事自身が設立した第三者委員会(判事経験者3名を含む6人の弁護士で構成)の報告書が出されました。
 それを受けて斎藤知事はパワハラについては認めましたが自分への処罰はせず、故県民局長による内部告発は公益通報に当たると認定されたにも拘らず、「専門家の間で様々な意見があるから」としては受け入れを拒否し、懲戒処分の撤回や遺族への謝罪等は拒否しました。

 この件に関して、朝日新聞、毎日新聞(2件)、読売新聞、産経新聞、神戸新聞が知事の態度を厳しく批判する社説を出しましたので紹介します。
 いずれも斎藤氏は知事としての資質に欠けるのみでなく人間的にも大いに問題があることを言外に語る内容になっています

 紹介する社説のタイトルは以下の通りです。
 社説 斎藤兵庫知事 組織の長として失格だ       朝日新聞  3/29
 社説 兵庫知事の「違法」認定 もう責任逃れは許されぬ 毎日新聞  3/25
 社説 「違法」認めぬ兵庫知事 トップの任に値するのか 毎日新聞  3/29
 社説 兵庫第三者委 知事の資質欠如は明らかだ     読売新聞  3/20
 主張 兵庫県知事 「違法」の責任を直視せよ      産経新聞  3/29
 社説 知事の見解/責任認めて自らの処分を       神戸新聞  3/28
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(社説)斎藤兵庫知事 組織の長として失格だ
                         朝日新聞 2025年3月29日
 組織に問題が生じた際、独立した中立の立場から調べてもらう。調査結果に基づいて関係者の責任を明確にし、必要な対策を講じて、信頼を回復していく。そのために第三者委員会はある。
 しかし兵庫県の斎藤元彦知事は、第三者委が認定した自身の職員へのパワハラ行為を謝罪しつつ、自らの処分は否定。知事を告発した元県民局長の男性への対応が「違法」とされたことには「見解が違う」と受け入れを拒否した。あまりに恣意(しい)的で、第三者委の意義自体を否定するとも言える、看過できない事態だ。
 兵庫県の第三者委は、斎藤氏のパワハラ行為として10件を認定した。斎藤氏は関係職員に謝罪したが、今後の対応については「襟を正し、研修などを受けながら、風通しのよい職場作りに向けて努力していく。それが私の責任の果たし方だ」と語った。
 職員のパワハラ行為については、懲戒処分指針に基づき減給などの処分がされてきた。自身への処分に触れない斎藤氏に対し、県庁内で不公平だとする声が出ているのも当然だろう。
 斎藤氏は、男性が作成・配布した告発文書を自ら入手し、側近幹部に調査を指示した。それ以降の県の男性への対応に関し、第三者委報告書は事情聴取や懲戒処分の一部について、公益通報者保護法に照らし「違法」と断じた。
 斎藤氏は「各種論点には異なる考え方もある」「第三者委とは見解が違うところがある」と報告書を認めず「処分は手続き、内容とも適正だった」と従来の主張を重ねる。第三者委の提言を受けて公益通報保護の体制整備を進めると説明し、「報告書全体をしっかり受け止めていると考えている」とも語った。
 兵庫県の混迷は1年前、斎藤氏が会見で男性を「うそ八百」「公務員として失格」と非難したことから始まった。第三者委はその発言を「パワハラに該当する」と批判。斎藤氏は「強い発言だったことは反省している」としたが、撤回の意向は示さない。
 この人には、言葉や論理が通じない。そう思わせるようではトップの資格はない
 報告書への姿勢について、斎藤氏は「さまざまな方から意見をうかがい、最終的に知事である私が見解を判断した」と説明するが、「その内容や手続きの詳細についてはコメントを控える」という。
 報告書を「真摯(しんし)に受け止める」と繰り返しながら実質的に拒否する姿勢は、もはや独善と言っても過言ではない。斎藤氏こそが「知事として失格」と言うほかないだろう。
 
 
社説 兵庫知事の「違法」認定 もう責任逃れは許されぬ
                            毎日新聞 2025/3/25
 独立性の高い第三者委員会が違法と認定した事実は重い。斎藤元彦・兵庫県知事は真摯(しんし)に受け止め、非を認めるべきだ
 斎藤知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、県が設置した第三者委が報告書を公表した。県議会調査特別委員会(百条委)の報告書よりも踏み込んだ判断を示している
 調査対象となった知事の言動16件のうち、職員への激しい叱責など10件をパワハラと認定した。元県西播磨県民局長の告発を「うそ八百」と記者会見で非難したことも該当するとみなした。
 告発者を探し出し、懲戒処分としたことは公益通報者保護法に違反すると指摘した。処分は無効と断じており、知事は直ちに撤回すべきだ。

 第三者委は知事自身が設置を決断し、昨年9月に調査を始めた。日本弁護士連合会のガイドラインに基づいて設置され、県と利害関係のない元裁判官の弁護士3人が委員を務めた。事務局にも県職員は加わっていない。
 報告書について知事は、県議会最終日の26日以降、見解を明らかにするという。告発文は「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」との従来の認識を変えていない。
 一方で百条委の報告書に関しては「一つの見解だ」と述べ、軽視するような姿勢を取り続けてきた。「元局長の公用パソコンには倫理的に不適切な文書があった」などと、告発者をおとしめるような発言までしている。
 第三者委は、知事のそうした態度にも疑問を投げかけた。人を傷つける発言は慎み、自分とは違う見方もありうるという「複眼的な思考」をするよう求めている。

 再選を果たした出直し知事選では疑惑を否定する言説がネット上で広がった。知事はこれまで「第三者委の調査結果を踏まえて対応する」と繰り返してきた。多くが事実として認定された以上、けじめをつける必要がある。
 元局長と、百条委の委員を務めて中傷を受けた元県議は死亡した。自殺とみられている。失われた2人の命は戻ってこない。
 自身に不都合な結果を受け入れず、行政のトップとして責任逃れを続けるようなことがあってはならない
 
 
社説 「違法」認めぬ兵庫知事 トップの任に値するのか
                            毎日新聞 2025/3/29
 内部告発者が法律で保護される理由を、斎藤元彦・兵庫県知事は理解していないのではないか。
 知事によるパワーハラスメントなどの疑惑を調査した第三者委員会の報告書を受け、知事は初めてパワハラを認めて謝罪した。
 しかし、告発者を探し出して懲戒処分とした県の対応は「適切だった」と強弁し、公益通報者保護法違反との認定を「考え方が異なる」と突っぱねた告発文についても「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書」と、従来の見解を変えなかった
 行政の長としてのあるべき姿を説いた第三者委の指摘に真摯(しんし)に応えたとは到底言えない。
 第三者委には、外部の視点で組織内部の問題を検証し、必要な対策を提言することが期待されていた。知事自身が決断して設置され、「調査結果を受けて対応する」と繰り返してきた。それを受け入れないかたくなな姿勢では信頼の回復や再発の防止はおぼつかない。
 そもそも内部告発者が保護されるのは組織の健全性維持に欠かせない存在だからだ。不正や違法行為の通報には適切な対応が求められる。
 にもかかわらず知事は公益通報として扱わず、自身や側近幹部の判断で告発者の元県西播磨県民局長の処分を急いだ。そうした行為が容認されるなら、トップに不祥事があっても、部下は報復を恐れて告発を控えるようになる
 パワハラをした一般の公務員は何らかの処分をされるのが通例だが、知事は自身へのペナルティーには言及していない。とても公正とはいえない

 県議会調査特別委員会(百条委)がパワハラや公益通報者保護法違反の疑いを指摘した報告書についても「一つの見解」と言って聞き入れなかった。
 不都合な結果に耳を塞ぎ、自己の正当性のみを主張し続けるのであれば、自身だけでなく県政そのものへの信頼も揺らぐだろう。
 一連の問題が発覚して以降、元県民局長と、百条委の委員を務めて中傷を受けた元県議が死亡した。自殺とみられている。2人の命が失われた重大性を認識しなければならない。
 違法性を認め、元県民局長の処分は撤回すべきだ。さもなければ知事の任に値するとは言えない
 
 
社説 兵庫第三者委 知事の資質欠如は明らかだ
                            読売新聞 2025/03/20
 兵庫県が設けた中立公正な調査機関が、内部告発への県の対応は違法だと断じた。斎藤元彦知事の責任は免れない。自ら進退を決断すべきだ。
 斎藤氏のパワハラ疑惑や元県幹部の内部告発への対応について、元裁判官の弁護士らでつくる第三者委員会が報告書を公表した。
 「机をたたいて 叱責」「夜間・休日のチャットによる叱責や指示を長期間、継続」といった知事の行為は「パワハラに当たる」と認定し、「極めて不適切」「知事の威圧的な行為は、職員を 萎縮させる」などと非難した。
 さらに、元県幹部の告発は公益通報に該当すると判断し、知事の指示による告発者の特定や、告発を理由とする懲戒処分は「違法」「無効」などと指摘した。
 この問題では、県議会の百条委員会も斎藤氏のパワハラ行為や、県の対応の違法性を指摘した。
 しかし、斎藤氏は「一つの見解」などとして一顧だにしなかった。告発者への処分も「適切だ」と繰り返し、告発者の元県幹部を 貶めるような発言までしていた。
 今回、調査結果を発表した第三者委は、県の要請で設置された独立性の高い調査機関である。その調査結果は極めて重い
 元県幹部は昨年7月に死亡した。自殺とみられる。斎藤氏は懲戒処分を撤回し、遺族に謝罪すべきだ。これ以上、人ごとのような対応を続けるのは許されない
 公益通報制度の導入後は、兵庫県以外にも告発者に不利益な対応をする企業などが相次いだ。そのため国会では、解雇や懲戒処分にした組織と個人双方に刑事罰を科す法整備の審議が進んでいる。
 斎藤氏は、行政のトップであるばかりか、告発された当事者である。「告発者潰し」が許されないのは当然だ。にもかかわらず、公益通報制度を 蔑ろにするような発言を続ける姿勢は、公職者としての資質を疑わざるを得ない
 斎藤氏は昨年11月の出直し選で再選したことを、知事に 留まる根拠にしているのかもしれない。
 選挙では「斎藤氏は悪くない」という言説がSNSで広まり、終盤の追い風となった。知事側のPR会社が公職選挙法違反容疑で強制捜査も受けている。「斎藤氏は悪くない」という前提が崩れた今、選挙の妥当性も問われよう
 兵庫県では、斎藤氏を陥れた「黒幕」だとSNSなどで中傷された百条委の前県議も死亡した。自殺とみられる。県政の混乱が1年に及び、死者が相次ぐ状況は、異常だとしか言いようがない
 
 
<主張>兵庫県知事 「違法」の責任を直視せよ
                            産経新聞 2025/3/29
 斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書を巡る問題で、弁護士でつくる第三者委員会が報告書を出した。
 告発文書を公益通報として扱わず、作成者を処分した斎藤氏らの対応は「明らかに違法と指摘し、斎藤氏のパワハラ行為についても認めた。
 斎藤氏は会見でパワハラについては初めて謝罪した。一方、「違法」の指摘については専門家の間でも意見が分かれているとして、「対応は適切だった」と従来の主張を繰り返した
 第三者委に先立ち、県議会調査特別委員会(百条委員会)も報告書を出している。百条委の報告書は、県の対応は「違法の可能性が高い」とし、斎藤氏の言動や行動は「パワハラ行為と言っても過言ではない」と指摘していた。
 斎藤氏は、2つの報告書の指摘の重さを真摯(しんし)に受け止めるべきだ。その上で、自身の具体的な責任の取り方を明らかにしてもらいたい
 第三者委の報告書は、知事が告発者を捜し出して懲戒処分に付したことは、公益通報者保護法に違反すると指摘した。斎藤氏らが、告発者への処分を決める過程に関わったのは「裁量権の範囲を逸脱」するもので、処分は無効と結論付けた
 職員への厳しい叱責など10件をパワハラと認定した。
 斎藤氏は、告発者捜しを命じた初動の対応は「当時としてはやむを得なかった」と釈明し、告発文書を作成した元県民局長への処分見直しも否定した。
 これはおかしい
 公益通報制度は組織の不正を防ぐための仕組みである。告発者捜しが禁じられているのは、告発しようとする人が萎縮すれば、不正を改める機会が失われるからである。
 県政トップの知事に、この制度への正しい理解が求められていることは言うまでもない。
 公務員や会社員が違法行為やパワハラ行為を認定されれば懲戒処分を受けるのが普通だ。ところが斎藤氏は自身への処分や辞職の考えもないという。責任感が欠如している
 第三者委の報告書は「パワハラをなくし、公益通報者を保護する体制を築く自浄力」を県に求めた。議会は斎藤氏に責任の取り方を具体的に示すよう強く促すべきだ。うやむやなままでは県政を前に進められない。
 
 
<社説>知事の見解/責任認めて自らの処分を
                             神戸新聞 2025/3/28
 兵庫県の告発文書問題を巡り、県の第三者調査委員会が示した報告書に対し、斎藤元彦知事が会見して見解を公表した。
 机をたたいての叱責(しっせき)など認定された10件のパワハラ行為について、知事は「真摯(しんし)に受け止める」と初めて認め、職員に謝罪した。一方で、第三者委が違法性を認定した告発者に対する県の一連の対応については「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書だとの認識は変わらない。対応は適切だった」と従来の主張を繰り返した
 告発文書を公益通報と取り扱わず、告発者を特定して懲戒処分を科した知事らの対応について、第三者委の報告書は公益通報者保護法に違反すると認定した。告発文書の作成と配布を理由の一つとする処分は「裁量権の乱用で無効だ」と断じた。
 これに対し、知事は「指摘は重く受け止めるが、司法の専門家でもさまざまな意見がある」と反論した。関係者によると、県幹部が処分の撤回を進言したが受け入れなかったという。自身の責任については「反省すべきは反省する。襟を正して仕事を進める」と述べるにとどめた。
 文書問題の表面化から1年がたった。第三者委は中立性を重視した調査を求めて知事が自ら設置したものであり、その結論を受け入れなければ違法状態が続くことになる法令を順守し、独善的な姿勢を改めない限り、県政の混乱は収束できない。
 違法の可能性は県議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書も指摘し、知事は「適法の可能性もある」などと反論した。第三者委はこれを「正面から受け止める姿勢を示していない」と批判したが、知事はこれも「一つの意見」とかわした。
 元裁判官ら6人の弁護士で構成し独立性の高い第三者委が出した結論は極めて重い。自身に不都合な結果だからといって認めなければ、第三者委は意味をなさない。知事は責任を回避せず、告発した元西播磨県民局長の懲戒処分を見直すべきだ。
 パワハラについて、これまで知事は「業務上必要な指導」としていたが、会見では「不快、負担に感じた職員に改めて謝罪したい」と述べた。知事が昨年3月の会見で、元県民局長について「公務員失格」「うそ八百」と発言したことも第三者委はパワハラに当たると指摘した。知事はこれを受け入れ、元県民局長に対し「大変申し訳ない」と初めて謝罪したが、発言は撤回しなかった。責任の取り方については「ハラスメント研修を受けながら県政を前に進めていく」と繰り返した。
 パワハラを認めた以上は自らへの処分でけじめをつけなければ、信頼回復は望めない。知事が真摯に向き合うべきはその点に尽きる。