2025年3月10日月曜日

斎藤知事の百条委報告の受け止めに関する各紙社説

 兵庫県議会は5日、斎藤元彦知事のパワハラ行為などに関する百条委員会がまとめた報告書を採択しました。
 報告書は「机をたたいて激怒した」など、斎藤氏の職員への言動を事実と認定し「パワハラ行為と言っても過言ではない」と結論付けるなど、内部告発された7項目のうち5項目についてはほぼ事実であると認められるとしました。斎藤知事がこれまで「内部通報は嘘八百を並べ立てたもの」と極めつけたのは「間違い」であることが明らかにされました。
 それに対して斎藤知事は、記者会見で「百条委の結論は『一つ見解』に過ぎず、パワハラかどうかは司法が決めるべきもの」として、内部通報者に対する県の対応は正しかったと述べるなど、この期に及んでも自らの非を認めませんでした。斎藤知事のこうした百条委の軽視は社会常識に反するものです。
 彼が絶対に「自分の非を認めない」さまは異常なレベルで、自分を守るためには他者がどんなに傷つこうとも意に介することはなく、これまで数人(五百旗頭真氏を含めると4人以上)の死者が出たことに対しても心を痛めている様子は見られません。
 驚いたことに斎藤氏は兵庫県の「自殺対策本部長」でもありました。たとえ名誉職であったとしても、何人を自殺に追い込んでも何の罪悪感も持たないという性格の持ち主が就くべき任務ではありません。当然SNS界では喧々囂々の議論が巻き起こっています。
 きっと聞こえのいい役職なので就任したのでしょうが、これほど不向きな役もありません。退任すべきです。
 またことあるごとに「俺は知事だぞ」を口にするなど、知事が「至上の存在」であるが如き態度を事ごとに示してきました。まさに異常な感覚の持ち主です。
 その一方で出身職場の総務省では仕事が出来ない人間とされて、主に外回りの仕事をさせられていました。21年、彼が兵庫県知事に立候補したときには、「これで厄介払いが出来る」と周囲は喜んだと言われています。
 要するに「能吏」でもなく、むしろ「最も嫌われる上司」の典型であって、本来知事になるべき人間ではありませんでした。

 百条委員会がまとめた報告書の知事の受け止めに関する各紙社説を以下に紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(社説)兵庫百条委報告 知事は責任の重大さ自覚せよ
                            読売新聞 2025/03/06
 告発者をおとしめ、公益通報制度をないがしろにする行為が許されないのは当然である。知事は非を認め、長引く混乱に終止符を打たねばならない
 兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラなどの疑惑を内部告発された問題で、県議会は百条委員会の調査報告書を了承した。
 報告書は、斎藤氏らが公益通報制度に基づく措置を取らず、いち早く独自の調査で告発者を特定し、懲戒処分にした対応は「告発者潰し」にあたると判断した。
 斎藤氏は告発を「うそ八百」だと主張していたが、告発者への不利益な取り扱いを禁じた公益通報者保護法に違反する可能性が高いと結論づけた。職員への 叱責しっせきについても「パワハラと言っても過言ではない」と指摘した。
 報告書は法的拘束力がないとはいえ、民意を代表する議会の結論である。斎藤氏は自分の行為の誤りを率直に認め、責任の取り方を行動で示すべきだ。
 にもかかわらず、斎藤氏は告発者への対応は「適切だった」と、いまだに従来通りの主張を続けている。これでは、再び同じような事態が起きても、また告発者潰しをやると言っているに等しい
 県の最高権力者がこの姿勢で、県職員と信頼関係を築き、円滑に業務を遂行できるのか。告発者を保護するルールを設けるなど、なすべきことはあるはずだ。
 斎藤氏はこれ以上、正当性を訴え、人ごとのような対応を続けるべきではない。事態をどう収拾させるか、考えるべき時である
 県政の混乱から間もなく1年になるが、異常な状況は一向に収まらない。告発した元県幹部は昨年7月、斎藤氏を陥れた「黒幕」とSNSで 誹謗ひぼう中傷されていた元県議は今年1月、それぞれ死亡した。いずれも自殺とみられている。
 斎藤氏が再選した出直し選ではSNS上に真偽不明の情報が拡散した。日本維新の会に所属していた県議2人が「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に、元県議らを中傷する文書などを渡したことが一因だとされる。
 2人はいずれも百条委のメンバーだった。議会に対する信頼の失墜も深刻な状況にある。
 出直し選を巡っては、知事側のPR会社が公職選挙法違反の容疑で神戸地検と県警の強制捜査を受けている。知事の支持派と反対派の「分断」は深まる一方だ。
 今夏には、東京都議選や参院選が控えている。再び兵庫県のような状況が生まれぬよう、政府も課題の解決を急ぐ必要がある。


社説斎藤知事は百条委報告に向き合え
                          日経新聞 2025年3月7日
兵庫県の斎藤元彦知事を告発した文書問題で、兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)が報告書をまとめた。告発された当事者の知事が、文書は公益通報に当たらないと判断するなどした一連の対応は「客観性、公平性を欠き、大きな問題があった」とし、知事に厳正に身を処すよう求めた。妥当な結論といえよう。
二元代表制の一翼として県民を代表し、知事を監視する役割を担う県議会の見解である。知事は真摯に向き合い、公益通報制度をないがしろにした責任をどう考えるのか、説明すべきだ。
報告書は、告発文書は一定の事実が含まれ、不正な目的だったと断言できる事情はないとして「公益通報に当たる可能性が高い」と判断した。そのうえで内容の事実確認よりも、通報者の特定や処分を優先した県の対応は「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」と指摘した。
知事は対応に問題はないとの姿勢を変えていない。報告書は一つの見解とし「違法性の判断は司法の場でされることだ」との認識だ。違法でなければ問題ないという姿勢は、行政を担う政治家として資質を疑わざるをえない
公益通報制度は同質性の高い日本社会で組織の健全性を保つ一つの手段であり、その定着を促すのは行政の役割だ。報告書が「法令の趣旨を尊重して社会に規範を示すのが行政だ」と強調したのは、もっともである。
にもかかわらず、兵庫県はずさんな運用に終始した。制度への信頼は毀損され、犠牲者を出す悲劇も生んだ。事の重大さは今国会で法改正が予定されていることをみても明らかだ。知事は法的な責任とは別に、こうした政治的、道義的な責任も負わねばならない
知事は先の知事選で信任を得たが、報告書は「兵庫県の混乱と分断は、いま、憂うべき状態にある」と懸念を示している。どうすれば県民の信頼を取り戻し、県政を正常化できるのか。しっかり考えてほしい。


(社説)百条委報告書 斎藤氏は責任を免れぬ
                          朝日新聞 2025年3月5日
 兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)が、斎藤元彦知事らに対する元県民局長の男性の告発について、報告書をまとめた。斎藤氏による職員へのパワハラと指摘された行為や贈答品受け取りに伴う問題点を認め、男性の告発を「公益通報に当たる可能性が高い」とした。
 知事とともに県民を代表する県議会が、公益通報の専門家の意見も踏まえ導いた結論は重い。男性を通報者と特定し、保護を欠いたまま調査を進めた県、とりわけ一連の対応を指示した斎藤氏は責任を免れない。百条委は厳正に身を処するよう求めた。どう応えるのか、対応が問われる。
 男性は昨年3月、斎藤氏らに関する「七つの疑惑」を記した文書を一部の県議やマスコミに送付。自ら入手した斎藤氏が片山安孝副知事(当時)ら側近に調査を指示し、男性は5月、勤務中に公用パソコンを私用に使ったことなどを理由に懲戒処分された

 報告書は、「パワハラ行為と言っても過言ではない言動があった」、贈答品の受領は「個人として消費したととらえられても仕方がない行為もあった」とした。男性の文書送付は、マスコミなどを通じた「外部公益通報」に当たる可能性が高いと結論づけた。
 特に問題視したのは県の初動だ。告発された斎藤氏が調査を指示し、同様に告発された片山氏が男性を調べた経緯も踏まえ、「不適切な対応に終始した」と批判した。
 百条委は専門家の見解を集めた。政府の有識者会議の複数のメンバーや、実務に詳しい弁護士らが強調したのは、次のような点だ。
 公益通報に該当するかは、中立・公正な態勢で慎重に調査すべきだ。内容の真実相当性も不正の目的の有無も、告発された当事者が判断することではない。通報者の特定はけっして許されない――。
 男性の文書について、斎藤氏は早々に「事実無根」「うそ八百」と断じ、男性への処分も口にした。そうした知事の言動が、公益通報者保護制度をどれほど傷つけたか。今回の問題も一因に法改正案が閣議決定されたことにも、事態の深刻さがうかがえる

 百条委が設置された昨年6月以降、兵庫県では混乱が続く。告発した男性らが死亡。非公開の百条委会合の音声録音を維新県議が立花孝志氏に提供し、男性の社会的評価をおとしめる私的情報がSNSなどで拡散、百条委自身も誹謗(ひぼう)中傷にさらされた。
 斎藤氏の今後の振る舞いとさらなる県議会の対応以外にも、問題は山積している。そのことも忘れてはならない。


(社説)斎藤氏の会見 知事の資質 改めて問う
                          朝日新聞 2025年3月7日
 自治体の首長と議会がともに住民を代表する「二元代表制」の意義も、議会が設置した調査特別委員会(百条委)の重みも、公益通報者を保護する行政の責務も、我関せずという認識なのだろうか
 兵庫県の斎藤元彦知事らに対する元県民局長の男性の告発について、県議会の百条委による報告書が本会議で了承された。斎藤氏は指摘を受け入れない考えを示した
 看過できない点が、いくつもある。まず、報告書について「一つの見解」との認識を再三、強調したことだ。
 首長と議会は車の両輪として、互いに牽制(けんせい)しバランスを取り合いつつ適切な行政を実現する。そのために、議会には百条委を通じた調査や首長の不信任決議が認められ、首長は議会の解散権を持つ
 百条委の結論は、多くの見解の一つではない。斎藤氏は「県民の皆さんがどう判断するか」とも語るが、知事自身が聞く耳をもたないと、二元代表制は機能しようもない
 報告書は、斎藤氏らが告発を知ってから男性の懲戒処分に至る一連の県の対応を「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」としたが、斎藤氏は県の対応は適切だったとの主張を繰り返した。
 斎藤氏は「最終的には司法の場で」との認識を何度も示す。百条委は「行政機関は法律に違反しなければいいのではなく、法律の趣旨を尊重した上で遵守(じゅんしゅ)することが重要」と批判。「組織の長や幹部の不正を告発すると、権力者が当事者にもかかわらず告発内容を否定し、懲戒等の不利益処分等で通報者がつぶされる事例として受け止められかねない」と危機感を示す。
 そして、男性の処分に関する斎藤氏の発言も問題だ。
 告発文書を入手した斎藤氏は側近幹部に調査を指示し、男性の公用パソコンからは私的な文書も見つかった。それが処分の理由の一つとされたが、百条委は処分を「告発者つぶし」と位置づけ、法の指針に基づき男性への救済・回復措置が必要だとした
 斎藤氏はそれを受け止めるどころか、男性の私的文書について、これまで使ったことのない、男性の社会的評価をおとしめる表現で説明した
 私的文書については、昨年秋の出直し知事選で斎藤氏を応援した立花孝志氏が演説やSNSで内容を拡散した。男性は昨年夏に死亡。自死とみられ、社会的評価がおとしめられた状況が続く。
 斎藤氏の発言は、立花氏らの行動を助長しかねない。
 改めて問う。斎藤氏は知事の資質を欠いているのではないか