選挙制度は民主主義の根幹をなすもので一部の政党が党利党略的に改定して良いものではありません。
維新が自民に求めている国会議員の定数削減ーそれも比例代表制の定員削減ーの問題点と危険性について、しんぶん赤旗が3人の識者に聞きました。
また「選挙制度関係資料集」(2025年版)によると、主要7カ国(G7)の国会議員1人当たりの人口は、日本が17万5千人で、ドイツの11万9千人(2位)~英国4万6千人(7位)を大きく上回っています。
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議員定数削減容認できない 民主主義の根幹揺るがす
しんぶん赤旗 2025年10月19日
日本維新の会が連立入りの条件として自民党に求めている国会議員の定数削減の問題点と危険性について各界の識者に聞きました。
国会の機能を弱くする
東京慈恵会医科大名誉教授 小沢隆一さん
欧州などでは日本より人口が少なくても日本と同じくらいか、多い国会議員を擁している国がほとんどです。日本の国会議員が多すぎるという議論は基本的に成り立ちません。
全国民の代表として、主権者である国民のさまざまな声を政治に反映させるという大切で、かつみんなですべき仕事を担う国会議員が減れば減るほど、唯一の立法機関であり国権の最高機関である国会の機能が弱くなってしまいます。
議院内関制のもと、大臣や副大臣、政務官などは国会議員の身分を持ちながら行政側で働くことになります。その数は現在だいたい50~60人ぐらいおり、残りの国会議員が行政監視の役割を担うことになり、議員削減すればそれを担う議員、とくに野党議員がさらに手薄になります。国会が立法と行政監視の両方の機能をしっかり発揮するためには議員削減などしてはならないはずです。
維新は、国会議員としての自らの存在意義を分かっておらず、本気で議員活動をやろうとしないから、こんなとんでもない提案を出してくるのでしょう。
企業・団体献金禁止も本気で追求するつもりがないので、何か目玉になるものを差し出さねばとあせり、〝身を切る改革″というすでにうそが見破られた古いパフォーマンスをかつぎ出したのではないでしょうか。
比例こそ女性の声反映
楽しく比例制をめざす会 三井マリ子さん
比例代表制を対象に議員定数削減を日本維新の会が自民党との連立の「絶対条件」にしたことに強く抗議をします。少数政党や少数意見の切り捨てを自ら宣言したようなものです。
衆院の比例代表制は小選挙区制の補完制度として導入されました。小選挙区制では少数意見の意志を反映できないとの理由があったからです。それが、何回もの定数削減で比例代表は減らされてきました。今回また減らすなんて言語道断です。
女性をはじめ社会的弱者の議席を議会に増やすには、比例代表制中心の選挙にすることが絶対に必要です。比例代表制は理念や公約で政党を選ぶ選挙です。人権尊重や平等推進、選択的夫婦別姓の導入や男女賃金格差の是正などへの政党の姿勢を見て選ぶことができます。参院選の比例代表には重複立候補がなく、女性や社会的弱者が比較的当選しやすい状況もあります。
ジェンダーギャツプ指数の上位国のほぼ全ては、比例代表制中心の選挙であることを、日本国民は知ってほしいと思います。
少数派の声届きにくく
中央社会保障推進協議会事務局長 林信悟さん
維新の会は自民党との連立政策協議で、国会議員の定数を1割削減する政治改革を盛り込んでいますが、少数派の声が議会に届きにくくなり、民主主義の根幹を揺るがす大問題です。
社会保障政策では、2025年通常国会で3党合意した医療費4兆円削減の確実な履行を求めています。これは現役世代の負担軽減を口実に11万床もの病床削減やOTC類似薬の保険外しなど、国民の命を脅かす社会保障切り捨ての「全世代型社会保障改革」をいっそう加速させるものです。
例えば医療機関で日常的に処方されるアレルギー薬や解熱鎮痛剤、皮膚の塗り薬など医療用医薬品が保険から外れると患者負担は大幅に増えることになります。負担増が治療の中断・抑制を引き起こし、症状悪化を招くのは必至です。
定数削減により、社会保障改悪反対の声が届けられなくなる可能性が出てきます。この動きを断固として許さない声を大きく広げましょう。
国際的にも少ない日本の国会議員数
しんぶん赤旗 2025年10月19日
日本維新の会が衆院比例代表を念頭に国会議員定数の1割削減を自民党との連立入りの条件として主張し、自民もこれに応じようとしています。しかし、日本の国会議員数は国際的にみて、けっして多くはありません。
衆議院調査局第二特別調査室が4月に公表した「選挙制度関係資料集」(2025年版)によると、主要7カ国(G7)の国会議員1人当たりの人口は、日本が17万5千人です。(グラフ)
主要国の国会議員1人当たりの人口(単位:千人)
※米国は1人当たり632だが、州の権限が大きい連邦制国家のため事情が異なる
(衆議院調査局第二特別調査室「選挙制度関係資料集」から作成)
英国が4万6千人、フランスが7万人、カナダが8万7千人、イタリアが9万8千人、ドイツが11万9千人です。日本と英国とでは、3・8倍の開きがあります。
米国は63万2千人ですが、同国は50州などからなる連邦国家で州の権限が大きく、各州のほとんどが上下両院からなる議会をもっているなど特殊な事情があります。米国を除けば、日本はG7で最下位です。
今でも少ない日本の国会議員の定数を削減すれば、さらに国民の声が国会に届きにくくなってしまいます。