イスラエルによる2年に及ぶガザ地区でのジェノサイド(集団殺害)を受けて、イスラエルの後ろ盾となってきた米国の特に若者の間で、米政府のイスラエルに対する軍事支援を批判的にみる人が増えています。
米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは3日、ガザでの戦闘開始から2年にあたり全米の成人約3400人を対象に行った世論調査の結果を発表しました。それによると、イスラエル政府を「否定的にみている」という人は59%に達し、「好意的にみている」(35%)を大きく上回りました。
「好意的」が「否定的」をやや上回っていた2022年と比べて、見方が逆転しました。
米国の歴代政権はイスラエルに巨額の軍事支援を行ってきて、これまでは国民の多くもおおむねイスラエル寄りの傾向を示してきました。
しんぶん赤旗と耕助のブログの記事を紹介します。
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〝ガザと世界 2年″米世論 見方が逆転 イスラエルに「否定的」6割
しんぶん赤旗 2025年10月15日
イスラエルによる2年に及ぶパレスチナ・ガザ地区でのジェノサイド(集団殺害)を受けて、イスラエルの後ろ盾となってきた米国で世論に変化がみられます。特に若者の間で、米政府のイスラエルに対する軍事支援を批判的にみる人が増えています。
米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは3日、ガザでの戦闘開始から2年にあたって行った世論調査の結果を発表しました。調査は全米の成人約3400人を対象に、9月22~28日に実施。トランプ大統領が停戦に向けた計画を発表した29日の直前です。
それによると、イスラエル政府を「否定的にみている」という人は59%に達し、「好意的にみている」(35%)を大きく上回りました。
「好意的」が「否定的」をやや上回っていた2022年と比べて、見方が逆転しました。
米国の歴代政権はイスラエルに巨額の軍事支援を行ってきました。国民の多くもおおむねイスラエル寄りの傾向を示してきました。
若者で顕著
今回の調査では、18~29歳の若者の約4割がイスラエルに「支援しすぎだ」と回答し、「妥当」や「不十分」を上回りました(表)。65歳以上とは対照的な結果であり、若者の変化が顕著です。
トランプ大統領の姿勢について「イスラエル寄りすぎる」とした人は今年3月時点と比べて5ポイント上昇。「均衡がとれている」とした人は6ポイント減りました。
米国の市民は「ジェノサイドの共犯者にはならない」と声を上げ、ホワイトハウス前などで抗議行動に取り組んできました。こうした運動や世論を背景にして、連邦議会にも若干の変化がみられます。
民主党のラミレス下院議員は5月、イスラエルヘの攻撃兵器の提供を中止する法案を提出しました。共同提案者は今月12日時点で55人に上っています。民主党の「進歩議員連盟」は9月、100人近くいる構成議員の投票で法案への支持を決定しました。
上院では7月、サンダース議員が主導したイスラエルヘの武器売却を阻止する決議案の採決を実施。民主党議員の過半数が賛成し、同氏がこれまでに提案した同様の決議案としては最多の賛成票を得ました。
米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所が今月7日に発表した報告書によると、米政府は過去2年間にイスラエルヘ少なくとも217億ドル/(約3兆300O億円)の軍事支援を行いました。報告書は「米国の資金、兵器、政治的支援がなければ、イスラエル軍はこれほど急速に広範囲にわたってガザの人々とインフラを破壊することはできなかっただろう」と結論付けました。
ガザ停戦を求める米団体「AROCアクション」設立者のサマル・アラービ氏は米メディアで、国民は学校や道路、医療支援に税金を使ってほしいと思っていると指摘。「国民は暴力的な民族浄化に税金を提供することに何の関心もない」とし、「議員とトランプ政権はこのことを心に留めるべきだ」と述べています。
イスラエルに対する米国の軍事支援についての米国世論
単位:% (リサーチ・センターの資料から作成)
年 代 | 支援しすぎ | 妥当 | 不十分 | 分からない |
18~29歳 | 42 | 13 | 8 | 37 |
30~49歳 | 37 | 17 | 6 | 40 |
50~64歳 | 29 | 29 | 9 | 33 |
65歳~ | 24 | 34 | 10 | 32 |
「驚くべき逆転」:ニューヨーク・タイムズ世論調査で米国のイスラエル支持率が急落
耕助のブログNo.2685 2025年10月15日
‘Stunning reversal’:The New York Times poll finds US support for Israel
has plummeted by Julia Conley
「5年前には全く考えられなかったことだが、世論調査で繰り返し示された今、あまりに定着し、逆転は難しいだろう」とあるジャーナリストは言った。
ガザ地区へのイスラエルの爆撃と封鎖地帯における飢餓政策が3年目に差し掛かる中、6万6千人以上のパレスチナ人を殺害した攻撃は、米国におけるイスラエル支持を急落させたとある論評家は指摘した。これは月曜日、ニューヨーク・タイムズ紙とシエナ大学が発表した世論調査を受けての発言である。
有権者1313人を対象としたこの調査では、1998年から同紙と大学がイスラエル・パレスチナ紛争に関する米国人の支持動向を調査して以来初めて、パレスチナ人を支持すると答えた回答者がイスラエル人を支持すると答えた回答者を上回った。
パレスチナ側に同情すると答えたのは35%、イスラエル人を支持すると答えたのは34%、わからないまたはどちらにも同情する答えたのは31%だった。
この世論調査では、パレスチナ人を支持する回答者が過半数に達したわけではない。パレスチナ人は、シオニスト勢力が1940年代にユダヤ人多数国家イスラエルを建国するため、数百のパレスチナ人町や都市から民族浄化を行い、1万5000人を殺害し、少なくとも75万人のパレスチナ人を故郷から追放して以来、自己決定権とイスラエルの占領・アパルトヘイト政策の終結を要求し続けている。
しかし支持率がパレスチナ側へ移ったことはジャーナリストのクリスタル・ボールを含む政治評論家の間で「イスラエルは米国民を失った」と評されるほど、地殻変動的な変化と見なされた。
イスラエルと、建国以来3000億ドル超(大半が軍事援助)の支援を続ける米国の政策への支持は長年両主要政党の議員間で揺るぎないものとされ、国民も数十年にわたり同様の姿勢を示してきた。
2011年のギャラップ調査では、米国成人がパレスチナ人よりもイスラエル人に同情と支持を示す可能性が4倍以上高いことが判明した。1988年から2011年にかけて、パレスチナ側を支持する米国人が20%を超えたことは一度もなかった。
ニューヨーク・タイムズ紙とシエナ大学の世論調査でも同様の結果が出ており、2023年10月7日のハマス主導の攻撃後、回答者の47%がイスラエルを支持すると答え、パレスチナ人に同情を示したのはわずか20%だった。
2023年12月、タイムズ紙とシエナ大学の調査では、イスラエルが意図的にパレスチナ民間人を殺害していると信じる米国人はわずか22%だった。イスラエル当局者がその政策を示唆する数々の声明を出していたにもかかわらず、である。戦争開始当初、当時のヨアヴ・ガラント国防相は「人間以下の動物と戦っている」としてガザへの水・食料・燃料供給を遮断すると表明した。イサアク・ヘルツォグ大統領はガザの200万人以上のパレスチナ人全員が、ハマスの攻撃に「責任がある」と述べ、「関与していない」民間人などいないと述べた。
それから約2年後、米国人の見方は変わった。40%が「イスラエルは意図的にパレスチナ人を殺害している」と答えた。民間人犠牲を防ぐためにイスラエルは十分な努力をしていると答えた回答者は4分の1で、2023年の30%から減少した。また、イスラエルは意図せず民間人を殺害していると答えた人は16%で、21%から減少した。
ニューヨーク・タイムズ紙は、2023年10月以降の米国によるイスラエル支援継続に関する世論の「驚くべき逆転」を報じた。有権者の半数以上が、イスラエルへの軍事・経済支援提供に反対している。反対意見は44歳未満の有権者層で最も高く、30~44歳の62%が米国はイスラエルへの資金提供を停止すべきだと回答。18~29歳の有権者では68%が同様の見解を示した。
先月のクィニピアック大学調査でも同様の結果が示され、政治的立場を問わず有権者の60%がイスラエルへの追加軍事援助に反対と回答した。同大学が2023年11月にこの質問を開始して以来、最も高い反対水準である。
ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドは、このタイムズ調査について「若い米国人におけるイスラエル支持の崩壊を示す、まったくもって驚異的な世論調査だ」と述べた。
グリーンウォルドは「5年前にはまったく考えられなかったことだが、今では調査ごとに反映され、定着しすぎて逆転は難しいだろう」と語った。
この世論調査が発表されたのは、進歩派コメンテーターのハサン・パイカーが『カレント・アフェアーズ』のSNSに投稿した動画で、民主党議員はイスラエル支持が「現実的」だという考えを捨てるべきだと主張したタイミングだった。パイカーは、ニューヨーク市民主党市長候補のゾーラン・マムダニが、占領下のパレスチナ地域におけるイスラエル政策を公然と批判したにもかかわらず6月の予備選挙で楽勝したことを指摘した。
「企業献金者やロビー団体をどれほど恐れても、このことで罰せられることはないだろう。ゾーランが予備選教で勝利したように、有権者は支持してくれるだろう」とパイカーは述べた。
イスラエル支持を続けるのは「現実的ではない。むしろ現実主義の対極にある」と彼は付け加えた。
https://johnmenadue.com/post/2025/10/stunning-reversal-new-york-times-poll-finds-us-support-for-israel-has-plummeted