安倍首相が昨年末、侵略戦争と植民地支配に対する従来の日本政府の謝罪を見直す考えを示唆したことに対して、元日付の韓国各紙はその“極右的な歴史観”を批判する記事を大きく報じました。
曰く、「歴史に関する周辺国の批判を正面突破しようという安倍
脱亜構想」(東亜日報)、「安倍首相は戦犯の存在自体を否定する極右的な歴史観を持っており、安倍談話は事実上、村山談話を否定する内容を盛り込む見通しだ」(朝鮮日報)、「安倍首相が新しい談話を発表するとすれば、村山談話と河野談話を無力化する可能性を排除できない」(ソウル新聞) 等々。
また韓国日報は「右翼の歴史認識に基づいた新しい談話を発表する」と述べたのは、「経済に力を集中させるために右翼の本性を隠してきたことに対する党内の不満勢力を意識した」との見方を紹介しました。
そんな中、英国のエコノミスト誌1月6日号に、「日本の新内閣 バック・ツー・ザ・フューチャー 安倍晋三が組閣したぞっとするほど右寄り内閣が、この地域に悪い兆し」と題する論評を載せました。
レイバーネットに翻訳記事が載りましたので、簡単に要約して紹介します。
原文は下記URLの記事でご覧ください。(英語版も載っています)
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日本の新内閣 バック・ツー・ザ・フューチャー 安倍晋三が組閣したぞっとするほど右寄り内閣が、この地域に悪い兆し
英国The Economist誌 2013年1月5日
(要旨:事務局まとめ)
12月26日、第一級ナショナリストの安倍晋三氏は新内閣を組織し、第三期目の景気後退に耐える日本経済の転換に専心すると約束した。しかし本当にその課題に専心できるのかについては、内閣の構成を見ると疑いを抱く。
安倍氏は19人の閣僚を選ぶにあたり、むしろ専心することを疑わせようと望んでいることを示した。
閣僚中の14人は「一緒に靖国に参拝する会」のメンバーで、靖国は戦犯罪として処刑された指導者たちに栄誉を与える神社である。
13名は、「日本会議」といって「伝統的な考え方」への復帰を支持し、戦時の過ちにたいする「謝罪外交」を拒否する集団のメンバーである。
9人は、学校教育で軍国主義時代日本にもっと栄光を与えるよう求める議員の会に属している。彼らは日本の戦時残虐行為のほとんどを否定する。
文科相下村博文は、日本のアジアへの残虐行為を遺憾とする”村山談話“の撤回を望むばかりか、戦犯裁判判決の取り消しさえ求めている。
安倍氏は憲法、教育法、そして日本が従属的役割を担う安全保障条約の3つを改訂しようとする希望を明白にしている。
国民は何を望んでいるのか?
安倍氏は、日本の戦後構造を根本的に改革したいという彼の欲望に同調する国民は少ないことを知っている。これからの数ヶ月 経済に専心する理由はそこにあり、6月まで安定した経済運営が行われれば夏の参議院選で勝利を得られると考えている。
そうなれば彼はここ数年来なかった最強の統治権限を持つことになる。
現在のところ、安倍氏は経済の順調な滑り出しを目論み、長期デフレから脱するべく日銀に対し2%のインフレ目標設定を強く求め、財務省には貸借制限なしの新しい金融刺激策を作ることを指示した。
元首相の麻生財務相は財務省官僚に打ち勝てる数少ない政治家である。
安倍氏は予算を大幅に増額するに当り、過去の自民党の大型消費の時代とは違うと主張するが、新しい借金がある時点で突然鋭い上昇カーブで高利子となり、政府の果たすべき負債返済に影響する危険がある。
これまでのところ、安倍氏の日銀叩きが円安を誘導したので投資家たちは彼を評価し、株価も3.11の大震災のころより高値をつけている。さらに投資家たちは、電力業界や原子力産業に支持されている自民党が、原発推進にスイッチを入れることを期待している。
海外に対しては少なくとも参議院選挙までは、注意深く歩むようである。額賀福志郎氏が1月4日ソウルを訪問するのは、竹島をめぐる紛争で怪しくなった関係修復にとって歓迎すべき企てである。
安倍氏はまた、米との安全保障関係を強めると約束しているが、それに対して中国の中華日報は、日米同盟を中国に圧力かけるために使えば「尖閣諸島をめぐる紛争の緊張を悪化させる」と警告した。安倍氏は中国政府に対して和平のパイプを進めることなく日本の領土を守るとの意思を述べ、日本の領空への中国偵察機の侵入を招いた。
安倍氏は中国の苛立ちを抑えなくてはならず、自らのナショナリスト的本能は抑制し、過去の幽霊は地下倉庫に閉じ込めて置かないといけないが、そうした抑制はつねに困難なもので、安倍内閣の構成はそれをほとんど不可能なものとしている。