政府は生活扶助費を3年間で8.3%減額することを決めました。2004年以降最大の減額幅で受給世帯の約96%の世帯で受給額が減ります。
世帯の類型別の月当減額幅は、「20代~30代の夫婦と4歳の子供」:16,000円(9.3%)、「40代の夫婦と小学生、中学生の子供」:20,000円(9.0%)、「70代以上の夫婦」:15,000円(13.2%)(いずれも「都市部」の場合)となります。
各種給付金や負担軽減を受けられる所得基準は、多くが生活保護の水準を参考に決められているために、この減額は受給者だけでなく一般低所得層にも及ぶもので、例えば現在156万人が受給している就学援助も、多くの自治体は「所得が生活保護の基準より10%多い世帯まで」などと生活保護を基準に決めているので、3万〜7万人が就学援助を受けられなくなるということです。
また、最低賃金も同法で「生活保護との整合性に配慮する」とされているので、引き上げられるどころか下げられる可能性の方が強く、国民全体の生活レベルを切り下げる悪循環の始まりにもなり兼ねません。
そもそも2015年度以降には、物価は3%もアップし、大衆課税である消費税は10%に上がっている惧れがあります。そうした政府の方針と過去のデフレ傾向を口実にしたこの大幅減額は、一体どういう風に整合するというのでしょうか。
東京新聞と毎日新聞の記事を紹介します。
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生活保護 受給世帯96%で減額
東京新聞 2013年1月28日
政府は27日、生活保護のうち食費などの生活費に充てる生活扶助費を2013年8月から3年間かけて、段階的に国費ベースで約850億円(約8・3%)削減すると決めた。生活保護受給世帯の約96%の世帯で受給額が減る。保護費の引き下げは2004年度以来で、過去最大の減額となる。
麻生太郎財務相と田村憲久厚生労働相が会談し、合意した。
生活扶助の基準額を約670億円(6・5%)、年末に支給する期末一時扶助を70億円削減。さらに、受給者が働いて得た収入から仕事に関する経費を差し引く特別控除廃止で約110億円カットし、全体として約8・3%削減する。
扶助費は年齢や世帯人数、居住地域などに応じて計算するため削減率も世帯ごとに異なるが、減額の幅は10%を限度とする。
厚労省の試算によると、東京23区や名古屋市など、都市部の40代夫婦と子ども2人(子どもは小・中学生)の世帯の場合、受給額は現在の月約22万2千円から15年度には2万円減り、約20万2千円になる。都市部の70代以上の夫婦は11万4千円から10万9千円に減る。厚労省はこのほか、医療扶助の見直しや就労支援などで13年度で340億円程度の削減を目指すとしている。
生活扶助基準見直しの具体例
20代~30代の夫婦と4歳の子供
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現 在
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2013年8月
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2015年度以降
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都市部
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172,000円
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167,000円
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156000円
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町村部
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136,000円
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133,000円
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128,000円
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40代の夫婦と小学生、中学生の子供
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現 在
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2013年8月
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2015年度以降
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都市部
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222,000円
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216,000円
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202,000円
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町村部
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177,000円
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172,000円
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162,000円
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70代以上の夫婦
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現 在
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2013年8月
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2015年度以降
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都市部
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114,000円
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112,000円
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109,000円
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町村部
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90,000円
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88,000円
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88,000円
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生活保護減:一般低所得者に影響 就学援助打ち切りも
毎日新聞 2013年01月27日
日常生活費分の生活保護費「生活扶助」が、3年で7.3%減らされることが決まった。影響は受給者だけでなく、一般低所得層にも及ぶ。各種給付金や負担軽減を受けられる所得基準は、多くが生活保護の水準を参考に決められているからだ。田村憲久厚生労働相は27日、他制度への影響を和らげる意向を示したものの、内容はまだ見えてこない。【遠藤拓、鈴木直】
◇最低賃金上げ、難しく 「整合性」の大義失われ
「生活保護の切り下げが影響するなんて」。東京都内に住む40歳代の女性は、中学3年生の次男分として受けている年十数万円の就学援助がなくなるかもしれないと知り、ため息をついた。家計は次男の週1500円程度の交通費にも圧迫されるのに「もっと切り詰めることになるのか」との不安が頭をよぎる。
就学援助は家計の苦しい世帯に小中学校の学用品代などを支給する制度だ。11年度の受給者は95年度(約77万人)の2倍、156万人超。対象者について多くの自治体は「所得が生活保護の基準より10%多い世帯まで」など生活保護を基準に決めている。つまり、生活保護が下がると打ち切られる世帯が出てくる。民主党政権で内閣府参与を務めた湯浅誠氏によると、生活扶助の1割減で3万〜7万人が就学援助を受けられなくなるという。
困窮者の子どもが再び貧困に陥る「貧困の連鎖」も指摘される。「全国学校事務職員制度研究会」代表の竹山トシエさん(66)は「就学援助を受けずに親が借金を重ね、子供が不登校になることもある」と懸念する。
生活保護基準の引き下げは最低賃金にも影響する。最低賃金法は「生活保護との整合性に配慮する」と定めているからだ。本来は最低賃金が生活保護費より低い地域の賃上げを促すための規定だが、生活保護費が下がれば賃上げの「大義名分」が失われかねない。
時給換算で849円の最低賃金に対し、保護費は854円−−。最低賃金より保護費が高い「逆転」が生じている6戸道府県の一つ、神奈川県。横浜市でアルバイトをかけもちする女性(25)は「今は若さで乗り切っているが、10年後も続ける自信はない」。収入は月15万円前後で蓄えもない。最低賃金を1000円以上にするよう国に求める訴訟を起こした原告の一人だ。
昭和女子大の木下武男特任教授(労働社会学)は「非正規雇用労働者の多くは収入が生活保護と同水準かそれ以下。生活保護を切り下げて最低賃金との整合性を取るのはおかしい」と話す。
04年度の保護費減額時は住民税を払わねばならない世帯の所得基準も下がった。非課税世帯は推計約3100万人おり、税の免除を受けられなくなる人が多数出かねない。
さらに、各種保険料、医療費などの負担軽減措置の多くは課税基準に連動している。新たに課税され、医療費や保育料も増える人が出てくる。ただし、市町村の国民健康保険は課税基準と連動させないことを決めたため、「影響はない」(厚労省国民健康保険課)という。