植草一秀氏が19日~21日、3つ記事を出しました。
国民民主の玉木代表は〈103万円の壁〉を華々しく打ち出しました。しかし植草氏は〈103万円の壁〉よりもはるかに重要なのが〈106万円の壁〉と〈130万円の壁〉で、正確には〈106万円の沼〉と〈130万円の沼〉と呼ぶべきもの。なぜ「沼」なのか、それは収入がそのレベルを超えると前者では16万円、後者では27万円「手取りが減る」からと述べます。
そして企業側も同額の社会保険料を負担することになるので、多数の中小零細企業が倒産することになります。政府はその分「将来の年金給付が増額されるから」と喧伝しますが、実際には別の理由をつけて厚生年金の支払いを減額しようとしているので、106万円と130万円の基準撤廃は〈百害あって一利なし〉というのが実態です。
植草氏は、「いま何よりも求められるのは消費税減税で、まずは消費税の税率を10%から5%の、単一税率に引き下げ恒久減税にすること。
その財源は、20年度に比べて24年度の一般会計税収は12・6兆円増え、それに24年度の所得税減税額2・3兆円を加えると自然増収は年間14・9兆円、地方を合わせれば18兆円程度の自然増収になるのでそれを充てればよい」と述べます。
要するに玉木氏の〈103万円の壁〉の「華々しさ?」は欺瞞で、内実は皆無、いま国民の困窮を少しでも緩和するためには、財務省が何よりも忌避する「消費税率の引き下げ」以外にはありません。それを回避しようとするための国民民主(や立憲民主)の案ではどうにもなりません。
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全ての人が沼に嵌るようにします
植草一秀の「知られざる真実」 2025年5月19日
〈103万円の壁〉よりもはるかに重要なのが〈106万円の壁〉と〈130万円の壁〉。
正確には〈106万円の沼〉と〈130万円の沼〉。
106万円は従業員51人以上の企業のケース。
130万円は従業員51人未満の企業のケース。
106万円には残業代や通勤交通費などを含まない。
130万円には残業代や通勤交通費などを含む。
この水準を超えると社会保険料負担が発生する。
何が起こるのか。収入が増えると手取りが減るのだ。これを〈沼〉と表現する。
その106万円、130万円の基準を撤廃する法律案が提出された。
これを政府はどう表現しているか。「パートの労働者が社会保険に加入しやすくなるようにする制度改正」と表現している。
まさに詐欺師の手口。〈損をする話〉を〈得になるような話〉であると語る。
〈106万円の沼〉に嵌(はま)ると〈手取りが16万円減る〉。
〈130万円の沼〉に嵌(はま)ると〈手取りが27万円減る〉。
だから、人々は気をつけて〈沼〉に嵌らないように行動している。当たり前のこと。
政府の提案は〈すべての人が沼に嵌るようにします〉というもの。
〈パート労働者が沼に嵌りやすくなるようにします〉と言っているようなものだ。
金額による区分と、企業規模による区分を撤廃する。〈ほとんど人が沼に嵌るように〉制度を変える。
この〈沼に嵌らない〉ための方法はただ一つ。〈週に20時間以上働かない〉こと。これが唯一、〈沼に嵌らない〉方策になる。
圧倒的多数の人は〈沼に嵌らない〉道を選択することになるだろう。
政府は〈壁〉があるから〈働き控え〉が生じて労働力不足が深刻化していると主張してきた。
その労働力不足を緩和するために〈壁〉を取り払うと言ってきたのではないか。
しかし、肝心要の〈106万円〉と〈130万円〉の基準が破壊されると、多くの人が〈沼に嵌る〉ことになる。
沼から脱出するには、週労働時間を20時間未満にしなければならなくなる。
結果として労働供給は一段と減少することになると考えられる。
それだけではない。多数の中小零細企業が倒産することになる。
労働者が社会保険に加入するとき、社会保険料負担は企業と労働者が折半になる。
106万円の沼で16万円、130万円の沼で27万円の社会保険料が巻き上げられると記述したが、同じ金額の負担が企業の側にものしかかる。
この企業負担で多くの中小零細企業が倒産することになるだろう。
財務省は世の中を大企業と無産労働者の二種類で構成しようとしているのだと思われる。
それからもうひとつ。
労働者が社会保険に加入すると「将来の年金給付が増額される」と喧伝されている。
しかし、これほど疑わしいことはない。現に、いま論議されている〈基礎年金のかさ上げ〉とは一体何か。
就職氷河期世代の年金給付の所得代替率(年金額の現役時代所得に対する比率)が低くなりすぎるから基礎年金の金額のかさ上げが必要で、「そのための資金を厚生年金の積立金から流用する」というもの。
厚生年金の支払いが勝手に減額される。つまり、強制的に厚生年金等に加入させられて高額の保険料を巻き上げられても、その資金が将来の自分に返ってくる保証がない。
むしろ、返ってこない保証があると言う方が正しいかも知れない。
106万円と130万円の基準撤廃は〈百害あって一利なし〉である。
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(後 略)
参院選で一票一揆!
植草一秀の「知られざる真実」 2025年5月20日
参議院選挙で大事なことは政策を基準に投票先を選ぶこと。
いま、何よりも求められるのは消費税減税。
まずは、消費税の税率を10%から5%に引き下げる。重要なことは恒久減税を行うこと。
もう一つ重要なことは複数税率をやめて単一税率にすること。
税制に求められる重要な要素の一つが〈簡素〉。
複数税率は事務処理が煩雑になる。複数税率を廃止して一本化する。
財源論が叫ばれるが財源はある。税の自然増収が膨大な規模に達している。
2020年度の一般会計税収は60・8兆円。
これが2024年度に73・4兆円に増大。12・6兆円増えた。
2024年度は2・3兆円の所得税減税が実施されたから、これを加えると自然増収は14・9兆円。
地方を合わせれば18兆円程度の自然増収が生まれている。
自然増収は税負担の増加だから広義の増税と言ってよい。この増税分を国民に還元する。
自然増収を財源に15兆円減税を実施すべきだ。
2025年度予算で減税が論議された。〈103万円の壁〉が騒がれて〈壁の引き上げ〉が行われた。しかし、その正体は〈しょぼい減税〉
2025年度の所得税減税の規模は0・7兆円。
メディアが国民民主党を大宣伝しているが、あれだけ騒いで実現した所得税減税は0・7兆円。
2024年度は所得税の定額減税が実施された。地方の住民税を除く所得税減税の規模は
2・3兆円。これは1回限りの減税。したがって、2025年度は逆に増税になる。
2025年度に0・7兆円の減税が実施されるが、定額減税廃止により2・3兆円の増税になるから、両者の差し引き合計は1・6兆円の増税になる。
減税を大騒ぎしたが、所得税は2025年度に1・6兆円の増税になる。
これが〈103万円プロセスの正体〉だ。
消費税率を10%から5%に引き下げると国、地方合わせて15兆円の減税になる。
自公が過半数割れに転落したから、野党が結束すれば、これを衆議院で可決できた。
衆議院が可決した消費税率5%を参議院が否決する場合、どの勢力が消費税減税を阻止したのかに関心が集まる。
野党は結束して消費税減税を追求するべきだった。しかし、消費税減税で野党が結束することはなかった。
国民民主党は昨年10月の総選挙では消費税率5%を公約に掲げたが、選挙後は封印した。
〈103万円の壁〉で大騒ぎして、結果として実現したのは1・6兆円の所得税増税だ。
この事実を知って、なお、国民民主党を支持する有権者がいるだろうか。
国民民主党人気はメディアが創作した虚像だと考えられる。
国民民主党は通常国会で消費税減税実現に向けて力を結集するべきところ、衆院総選挙後は消費税減税論議を封印。
結局、しょぼい減税どころか、所得税増税が決定されたというのが現実だ。
その国民民主党が参院選に向けて再び消費税減税の旗を掲げたがまったく信用できない。
しかも、時限措置としての減税。
5月29日(木)午後3時から6時に衆議院第一議員会館第五会議室で〈ガーベラの風国会イベント〉を開催する。 https://x.gd/Y3Mt5
テーマは〈参院選で一票一揆 しょぼい減税を-ぶっ壊す!〉
参加申し込みが定員に達したので受付は終了したが、イベントを動画配信するのでぜひご高覧賜りたい。
(後 略)
党首討論でプロレス
植草一秀の「知られざる真実」 2025年5月21日
参院選を前にはっきりさせておくべきことがある。
それは国民民主党が主権者の選択肢の中心に来ることがあり得ないということ。
誰がどのような風を吹かせたのか。消滅間近だった政党が息を吹き返した。
しかし、この国民民主人気が沸騰する理由がない。
5月21日の党首討論。国民民主の玉木雄一郎氏が、
「先ほど、新しい大臣の下で、コメの値段、必ず下げるとおっしゃった。どのように、いつまでに、5キロいくらまで下げますか。明確にお答えください」と質問。
石破茂首相は
「米は(5キロ)3000円台でなければならないと思っております。4000円台などということはあってはならない。1日でも早く実現する」と答えた。
これに対して玉木氏は
「5キロ3000円台に下がらなければ、総理として責任を取りますか?」と質問。
「これは責任を取っていかねばならないと思っております。下げると申し上げているわけですから。仮に下がらないなら、なぜ下がらないかきちんと説明するのは、政府の責任」
と答えた。
玉木氏はプロレスラーに転向した方がいい。
「103万円プロレス」に続く「コメ3000円台プロレス」。
コメはつい先日まで1キロ2000円だった。これが1キロ4000円に暴騰。
コメの値段を下げると言うなら1キロ2000円に下げると言うべき。
3000円台というのは3999円を意味する。4000円を3999円に下げて手柄になるとでも言うのか。
玉木氏は3000円台という石破答弁を非難すべきであるのに、3000円台を実現できなければどう責任を取るかなどと発言。党首討論を聴いてる者が思わず吹いた。
「103万円の壁」で大騒ぎしたが、2025年度の所得税は前年度比1・6兆円の増税になった。
消費税率を5%に引き下げるなら地方分を含めて15兆円の減税。野党が結束すれば実現できた。国民民主党は昨年の衆院総選挙のときだけ消費税減税を掲げ、選挙後は封印。
「103万円」に突き進んだが、結果として産み出されたのは〈1・6兆円増税〉である。
ところが、この数字が一切報道されない。メディアは勉強不足だから事実を捕捉していないのだろう。
財務省はすべて認知しているが説明しない。この所得税増税に全面協力したのが国民民主党。
水面下で財務省と手を握っている。だから、国民民主党は参院選の投票先候補に入らない。
国民民主党への投票は自公への投票と同じ。立憲民主党もダメだ。国民民主と立憲民主は〈ザイム真理教〉。
コメの値段は1キロ2000円に下落させる必要がある。政府に1キロ3999円を求める野党は終わっている。
(後 略)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。