2025年5月26日月曜日

26‐パビリオン建設業者を見殺し・無責任な万博協会(レイバーネット日本)

「レイバーネット日本」に掲題の記事が載りました。

 E社は関西万博でアフリカの某国のパビリオンの建築を請け負った5次下請けの業者で、当該国からA社、B社、C社、D社へと順次発注され、D社の下、E社が実際の工事を行いました。
 E社は25年2月から400人の工事労働者を派遣し、工事に必要な機械なども持ち込みました。E社の下にも更に4つの会社が下請けとして加わっていて、建築業界の典型的な下請構造です。
 ところがD社からの支払いが滞りました。調べてみるとC社からD社には1億4500万円が支払われていました。それでE社の責任者K氏は5月18日、従業員とともにD社を訪ね支払いの交渉を行いましたが、D社は一銭も払えないと拒否しました。D社はそもそも計画性のない経営で、C社から入った1億4500万円は借金返済に消えていました。

 A社はヨーロッパに本社を持つイベント会社で、東京に日本事務所を置いています。KさんはD社からの支払いが無理ならA社に代位弁済(下請け業者が支払いできない場合に元請け業者が支払いを行う制度)をさせようとしましたが、A社は万博貿易保険にも加入していない上、特定建設業登録も行なっていなかったので代位弁済の道も閉ざされました。
 C社は実際の工事にはノータッチのまま巨額の金額を懐に入れたわけです。まことに踏んだり蹴ったりです。
 このパビリオンは現在、E社が工事をストップさせ、所有権を渡さないようにしていて、開館のめどは立っていません。正に国際問題です。アフリカの某国はどうするのでしょうか。
 大阪府建築振興課に確認したところ、パビリオン建設を行った複数の業者から工事費の未払いの相談が来ていると回答がありました。
 労働法制に反するという批判を浴びながら突貫工事をさせた万博協会は、建物さえ完成したら業者のことは知らないという態度で、国も大阪府も見て見ぬふりです
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現地レポート:大阪・関西万博の現場で起きていること
                       2025-05-22 レイバーネット日本
パビリオン建設業者を見殺し・無責任な万博協会
 かわすみかずみ
5月11日、E社(大阪府外の建設業者)を紹介された。E社は大阪・関西万博でアフリカの某国のパビリオンの建築を請け負った5次下請けの業者だった。当該国からA社、B社、C社、D社へ発注され、E社が実際の工事を行った。E社の下にも4つの会社が下請けとして参加している。建築業界の典型的な下請構造である。

工事費未払いの実態
E社の社長であるKさんは、D社からの支払いが滞り、会社が持たないかもしれないと訴える。
 D社とは2025年2月からの約束で、400人の工事労働者を派遣。工事に必要な機械なども持ち込んだ
 2月分の材料費と人件費は支払われたものの、3、4月分の4300万円は未払いとなっている。Kさんは持ち込んだ機材のリース代や従業員への給与支払いができず、このままでは倒産しかないと不安を大きくしている。
 下請けの建設業者や労働者の生活はもう限界に近い。いっときは「死んで生命保険で従業員の給与に充てようか」とも考えたという。Kさんは「そもそも万博の工事はあまりいい噂を聞いていなかったので、業者としては参加するつもりはなかった」と語っている。実際に現場に入ると、昼夜働かされた。コンセントの位置も決まっておらず、指示に従って付けるとすぐにやり直しさせられるなど、二転三転することも多かった。Kさんは設計がしっかりしていないと感じた。
 A社からB社、C社に支払いがなされているかは確認できなかった。C社からD社には1億4500万円が支払われていた。ある政党関係者は「最近、パビリオン工事費の未払いの相談が増えているんです」と語った。下請け・孫受け業者の連鎖倒産が目に浮かぶようだった。

元請けは逃げた者勝ち
 5月13日、報道機関から、パビリオンを建設した業者への未払いが複数あるというニュースが流れた。万博協会は「民間と民間のことなので関与しない」と公言。大阪府の吉村洋文大阪府知事は「契約が履行されるよう働きかけていきたい」と語った。
 5月18日、Kさんは従業員とともにD社を訪ね、支払いの交渉を行った。しかし、D社は一銭も払えないと言った。そもそも計画性のない経営で、C社から入った1億4500万円が借金返済に消えていた
 A社に電話してみた。「新聞社ですか? ノーコメントで。失礼します」と事務員らしい女性が慌てて電話を切った。A社はヨーロッパに本社を持つイベント会社で、東京に日本事務所を置いている。Kさんは、D社からの支払いが無理ならA社に代位弁済(下請け業者が支払いできない場合に元請け業者が支払いを行う制度)をさせようとした。だが、A社は万博貿易保険(外国の業者が建設費を払えない場合に補償を行う保険)にも加入していない上、特定建設業登録(下請け業者に一定額以上の支払いを行う元請け業者の登録)も行なっていなかった。代位弁済の道も閉ざされた。Kさんは「一生懸命働いて、なんでこんなことになるのか。許せない」と悔しさをあらわにしている。このパビリオンは現在、E社が工事をストップさせ、所有権を渡さないようにしている。開館のめどはたっていない。

政府・行政は見て見ぬふり
 大阪府建築振興課に確認したところ、パビリオン建設を行った複数の業者から工事費の未払いの相談が来ていると回答があった。E社のように倒産するかもしれないと怯える業者はいくつもあるだろうと想像できる。
 経済産業省に対して、未払いによって被害に遭った下請け業者への対応を検討しているかどうか電話で聞いた。折り返し電話すると言ったまま返事はない(5月21日現在)。万博協会へ電話をかけるが誰も出ない。メールで問い合わせても返事はない
 大阪府の定例会見で未払い問題について吉村知事に聞くと、「民間と民間のことなので介入できないが、できるだけ寄り添っていきたい。契約履行されるよう促していく」と答えた。具体策を尋ねたが答えはなかった。国、府市、万博協会で対応を協議するかどうかについても、答えをはぐらかした

 労働法制に反するという批判を浴びながら突貫工事をさせた万博協会は、建物さえ完成したら業者のことは知らないという。国も大阪府も見て見ぬふりだ。労働者を自らの都合で使い捨て、対応しない政府、大阪府市、万博協会。その影で命を落としかねない中小の建設業者がいる。早急な対応が必要だ。