学術会議を特殊法人化し、首相任命の監事や、会員解任規定などを新設する日本学術会議解体法案を参院で廃案に追い込もうと20日、国会内で緊急集会が開かれ、学術会議前会長ら学者や国会議員が次々スピーチに立ちました。
主催した「法案に反対する学者・市民の会」は緊急声明を発表。衆院で「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は今度の法案で解任できる」と答弁した坂井学内閣府担当相の辞任を求めました。
日本学術会議の歴代会長3氏は20日、日本記者クラブで会見し、学術会議解体法案の廃案をあらためて求める歴代会長6氏(吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極壽一、梶田隆章)の声明を発表しました。
声明は、現行法の前文にある「科学者の総意の下に」設立という文言を「日本学術会議の自律性・自主性を根拠づける最重要の規定」だと表明。学術会議の歴史的意義と使命を述べる前文の削除は「日本学術会議を根本的に変質させるものであり許されない」と主張しています。
「将来戦には国家の総力による研究開発速度の向上が求められる」、「新技術を実戦投入するまでの時間短縮が不可欠だ」。陸上自衛隊のトップの森下泰臣陸上幕僚長は2月18日に東京都内で開催された「陸上自衛隊フォーラム」でこう力説し、企業に加え、研究者も最新兵器の開発に関与させる狙いを露骨に示しました。
共産党の田村資昭衆院議員事務所が入手した講演原稿全文と説明資料から明らかになりました。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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学術会議法案 参院で廃案に 前会長ら学者・議員が集会
しんぶん赤旗 2025年5月21日
日本学術会議解体法案を参院で廃案に追い込もうと国会内で20日、緊急集会が開かれ、学術会議前会長ら学者や国会議員が次々スピーチに立ちました。主催した「法案に反対する学者・市民の会」は緊急声明を発表。衆院で「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は今度の法案で解任できる」と答弁した坂井学内閣府担当相の辞任を求めました。(関連記事下掲)
法案は国の特別の機関である学術会議を特殊法人化し、首相任命の監事や、会員解任規定などを新設。学術会議は法案の抜本的な修正を求めています。
梶田隆章学術会議前会長は、法案が政府の学術会議への監督を強めると懸念を表明し、「参院で真摯(しんし)に議論し、廃案もしくは抜本的修正」を要求。広渡清吾学術会議元会長は「市民の力で廃案の展望を開くことを心から願っている」と述べました。会員任命拒否された加藤陽子東大教授は、任命拒否の情報開示請求訴訟の経過を報告し「議論は着々と進んでいる」と報告。任命拒否の違法性は時間を経ても変わらないと強調しました。
藤田祐子日本弁護士連合会副会長、長谷部恭男早稲田大学教授、田中優子法政大学元総長、隠岐さや香東大教授が法案の問題点を訴えました。
日本共産党の小池晃書記局長は「学問を戦争に動員する法案だ」と強調。山添拓政策委員長、井上哲士参院議員もスピーチし、田村智子委員長がメッセージを寄せました。立憲民主党、れいわ新選組、社民党の国会議員も発言しました。
学術会議変質させる法案 歴代6会長 廃案要求
しんぶん赤旗 2025年5月21日
日本学術会議の歴代会長3氏は20日、日本記者クラブで会見し、学術会議解体法案の廃案をあらためて求める歴代会長6氏の声明を発表しました。法案は学術会議の独立性を奪い、政府・財界の意に沿うよう変質させるもので、声明は13日に衆院で法案が可決されたことを受けて公表されました。吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極壽一、梶田隆章各氏の連名。
声明は、現行法の前文にある「科学者の総意の下に」設立という文言を「日本学術会議の自律性・自主性を根拠づける最重要の規定」だと表明。学術会議の歴史的意義と使命を述べる前文の削除は「日本学術会議を根本的に変質させるものであり許されない」と主張しています。
会見で梶田氏は、世界が気候変動など深刻な問題を抱える中、学術の人類社会への貢献という観点で学術会議を議論すべきだと指摘。「参議院では真摯(しんし)な議論がなされて、法案の抜本的な修正、あるいは廃案とすることを望む」と発言しました。
法案にある会員の解任制度を巡り、坂井学内閣府担当相が9日の衆院内閣委員会で「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」と述べたことについて問われ、広渡氏は、首相が「学術会議を管理、監督」する意図で解任制度をつくった可能性があると発言。学術会議は特定の主張やイデオロギーを繰り返すような場所ではなく学者が議論を行う場だと指摘し、制度の目的を具体的に議論するべきだと主張しました。
さらに、大西氏は、2015年に政府の有識者会議が学術会議法の見直しを行い、「これ(現在の制度)を変える積極的な理由は見いだしにくい」と有識者会議が結論づけていることを挙げ、「法改正そのものが根拠なく行われている」と批判しました。
「国家総力」で兵器開発 陸自トップ 研究者動員を力説
しんぶん赤旗 2025年5月21日
「将来戦には国家の総力による研究開発速度の向上が求められる」。陸上自衛隊のトップの森下泰臣陸上幕僚長は2月18日に東京都内で開催された「陸上自衛隊フォーラム」でこう力説、企業に加え、研究者も最新兵器の開発に関与させる狙いを露骨に示しました。日本共産党の田村資昭衆院議員事務所が入手した講演原稿全文と説明資料から明らかになったもの。
学術会議解体法案 強硬推進の背景か
政府が学問の軍事動員に反対する日本学術会議の解体法案を強硬に進める背景が浮かびあがりました。
今回で22回目となる同フォーラムは、米軍などの同盟国・同志国の駐在武官のほか、今年初めて軍事関連企業を招待し、約40の企業・団体がブースを出展。小型無人機(ドローン)や安全保障を専門とする大学の研究者も参加しました。
森下氏は、「産学官」の初参加を求めた理由について「将来戦には国家の総力による『研究開発速度の向上」が求められている危機感があるからだ」と強調。戦場の変化に適応するため「新技術を実戦投入するまでの時間短縮が不可欠だ」と述べています。
強調するのは人工知能(AI)と無人機の重要性です。森下氏は「AI・無人化」を駆使した戦い方に変化していると指摘。「今後、AIを搭載したドローンや自律型装備の活用が進み、監視、攻撃、防御の自動化や戦場のリアルタイム分析も向上するだろう」と述べ、AIの軍事利用を進める考えを示しました。
さらに、安保3文書に基づく将来の戦争の様相をリアルに示した資料を提示。ミサイルなどを狙った目標に当てる「精密性」、多種類かつ大量の兵器でいっせいに攻撃する「高密度性」、無人機などで絶えず攻撃を続ける「連続性」などの能力を強化すると主張しました。資料では「スペリオリティ」(優勢)と記していますが、森下氏の原稿は「リーサリティ」(殺傷性)と明記。まさに殺傷性の高い兵器を導入するために大学や企業の研究者が「総力」を結集することを呼びかけているのです。