2025年5月29日木曜日

29- 状況認識を間違い、計画通りに物事が進まずに苛立つトランプ大統領

 北大西洋条約機構(NATO)はゴルバチョフの時代に、NATOは1センチも東側(ロシア側)に歩を進めないと約束したのですが、2000年以降はウクライナへの進出を企て、2014年にはついに米国主導のクーデターを起こして親米政府に変え、ロシア国境への圧力を強めました。

 その後ドンバス地方での内戦で政府側が不利になるとミンスク合意を結んで停戦し、8年を掛けて軍備を増強し再びドンバス地方=ロシア国境へ軍隊を進めた時点で逆にロシアの侵攻を招きました。
 そうした経緯を鑑みるとプーチン大統領が、ウクライナ停戦の条件としてNATOの東方拡大停止や対ロシア制裁の一部解除を文書で誓約することを要求しているのは無理からぬことです。
 トランプが手を引いて、イギリスMI6(エムアイ6:英情報機関)のエージェントと言われるゼレンスキーが停戦交渉に臨んでますが、それではなかなか停戦は実現しそうもありません。ゼレンスキーはネタニヤフと同様、戦火が治まれば自分の立場がなくなるからです。
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状況認識を間違い、計画通りに物事が進まずに苛立つトランプ大統領
                         櫻井ジャーナル 2025.05.27
 ドナルド・トランプ米大統領は自分が仲介役になり、ウクライナでの戦争、ガザでの虐殺、イランとイスラエルの対立をすぐに解決させられると吹聴していたが、実現していない。ウラジミル・プーチン露大統領に対する不満を口にし、プーチンは「完全に狂っている」と発言した。アメリカの情報機関はトランプ大統領に間違った情報を伝えている可能性がある
 しかし、少なからぬ人はトランプの宣伝通りにならないと予想していただろう。例えばウクライナではロシア軍が圧倒的に優勢であるうえ、EUはウクライナに対する軍事支援を継続すると主張、キエフ政権はモスクワに対する攻撃を続けているわけで、ロシア側が戦闘を止めるはずがない。
 ウクライナ軍は5月20日から23日にかけて数百機のドローンを発射20日にはクルスク地方を訪問するプーチン大統領を乗せたヘリコプターも狙ったというが、こうしたことをすればロシアが報復するだけのことだ。ウクライナの報道によると、25日にロシア軍69機のミサイルと298機のドローンでキエフを攻撃している。

 ウォロディミル・ゼレンスキーはロシアによる空爆に対するアメリカの沈黙はプーチンを勇気づけるだけだと述べたが、トランプはゼレンスキーの口から出る言葉は全て問題を引き起こすと非難、「私はそれが気に入らない」とも語ったゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントである可能性が高く、トランプはイギリスを批判したとも言えるだろう。
 ウクライナの問題でトランプはプーチンとゼレンスキー、両者を批判しているが、それはトランプが状況を理解していないことにあるのだろう。トランプはウクライナでの戦争でロシア軍の死傷者が多く、ロシア経済が疲弊しているという前提で動いているのだが、この認識が間違っている。ロシア軍は民間人に被害が出ないようにしているだけでなく、自軍兵士の死傷者ができるだけ少なくなるよう慎重に戦っている。つまりロシア軍には余力があるのだ。余力のあるロシア軍が6月から大攻勢に出るという見方もある。

 イスラエルによるガザでの虐殺に対する批判は世界的に高まり、イスラエルを支援する欧米諸国の政府も非難されている。西側有力メディアはイスラエルを擁護するためのプロパガンダを継続しているが、その有力メディアを見る人びとの目も厳しくなってきた。それを懸念した欧米のエリートはイスラエルを非難する言論を弾圧。「民主主義国家」という幻影は消え去り、帝国主義国家という本性が現れている
 そのイスラエルはイランを攻撃しようとしているが、イランの防空システムを突破する能力がイスラエル軍にはなく、単独でイランを攻撃することは不可能。つまりアメリカを巻き込む必要があるのだが、そのアメリカでもイランに勝つことはできないと見られている。しかもイランの背後には中国とロシアがいる。

 インド洋に浮かぶディエゴガルシア島の基地に配備されていたアメリカ軍のB-2爆撃機6機はイエメン爆撃に使われたが、この攻撃は失敗に終わった。その後、一部のB-2はB-52戦略爆撃機4機に置き換えられたようだが、こうした爆撃機がイラン攻撃に使われるかどうか、注目されている。