植草一秀氏が掲題の2つに記事を出しました。
「立民消費税公約に悲鳴」
植草氏は「ニックネーム」を付ける名手です。この記事でも
「国民不倫党」 (国民民主党)、
「共に悪い民主党」 (国民+立民 合体党)、
「ザイム真理教立憲民主党支部」(立憲民主党) が出てきます。
他の記事では
「消費懲罰税」 (消費税)
「統一協会連合」 (連合) などもあります。
いずれにしても自公が過半数割れしているのに野党にはそれに代わる勢いがなく、それどころか「国民民主党」は折を見て自公と合流したいかの様子を示し、立憲民主党も、財務省系の野田代表と消費税減税派との対立が解消される余地はなさそうで、もしも、国民民主党と立憲民主党の財務省系が合流すれば「共に悪い民主党」が出来上がるだけの話です。
その立憲民主党が参院選公約として食料品の消費税率を1年に限りゼロにすることを掲げることを決めたということです。消費税減税反対では野党内でも相手にされないからということで、先行き給付付き税額控除の所得税制度を国会で提案するからというのが、1年限りにした理由ということですが、それが実現する保障は何もありません。
コロナ禍収束後、殆どすべての国が消費税を下げて景気浮揚を図ったのに日本だけは「魔法の税制」である消費税至上主義で、その税率を下げなかったのは税率を下げたりすればその責任者は次官コースから外れるとされている不文律があるからといわれています(余りにも身勝手で財務省以外には通用しません)。
では消費税はどのように使われて来たのでしょうか。
植草氏は本記事で次のように述べます。
消費税が導入されたのは1989年度で2023年までに消費税で509兆円が徴収され、同じ期間に所得税・住民税負担は286兆円減額され、法人税負担は319兆円減額されたので、消費税の全額がそれら減税の穴埋めに使われたのは明らかだとしています。
今後は消費税を圧縮し、所得税・法人税を中核に位置付けて〈能力に応じた負担〉を求めるべきであるとして 消費税率は1990年度の3%に戻すのが適正としています。
そして20年度から24年度に国税収入が12・6兆円増加、地方を合わせれば15兆円以上の自然増収が生じているので、それを財源に消費税率を5%に引き下げる政策は直ちに実施できるので、消費税率をまずは5%に引き下げることを公約に明示する政党・候補者に参院選で投票することが必要だと述べています。まさに理路整然です。
「〈しょぼい減税〉案オンパレード」
ここではゴールデンウィークを迎えた国民が、どんな風に過ごすかを見るとまさに「生活窮乏の悲鳴が聞こえてくる」「抜本策が必要である」として、なによりも消費税減税が求められるとして
「〈しょぼい減税〉を掲げる政党は選挙後の〈増税〉を目論んでいる」ので、〈しょぼい減税〉を掲げる政党の化けの皮を剥ぐ必要があると述べています。
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立民消費税公約に悲鳴
植草一秀の「知られざる真実」 2025年4月26日
立憲民主党が参院選公約として食料品の消費税率を1年に限りゼロにすることを掲げることを決めた。画期的にしょぼい。しょぼい立憲民主党。国民不倫党と合併して〈共に悪い民主党〉を結成することを推奨する。
1年限りの食料品消費税率ゼロで国民生活が支えられるとでも考えているのだろうか。
給付付き税額控除の所得税制度を国会で提案することが1年限りの理由だという。
給付付き税額控除の所得税制度が実施されることが決定されているなら1年限りの措置も一定の理解を得られるかもしれない。
しかし、立憲民主党が政権を奪取する見通しがゼロであるなかで給付付き税額控除制度が導入される可能性も現時点でゼロ。給付付き税額控除制度導入の見通しがついた段階で、その前提に基づく政策公約を提示すべきである。
立憲民主党は財務省とつるんでいる。〈ザイム真理教立憲民主党支部〉である。
立憲民主党は消費税が社会保障制度の重要な財源だと主張する。しかし、事実はまったく違う。
1990年度の税収と2020年度の税収を比較する。
1990年度 2020年度
一般会計税収 60兆円 一般会計税収 61兆円
所得税 26兆円 所得税 19兆円
法人税 18兆円 法人税 11兆円
消費税 5兆円 消費税 21兆円
消費税が導入されたのは1989年度。
2023年度までに消費税で509兆円が徴収された。
同じ期間に所得税・住民税負担は286兆円減額された。
同じ期間に法人の税負担は319兆円減額された。
消費税が社会保障の財源になったというのは真っ赤なウソ。
消費税の全額が所得税と法人税の減税に使われた。
国の財源による社会保障支出は1年で37兆円程度。
したがって、消費税の税収が37兆円になるまでは消費税の税収すべてを社会保障に充当すると〈言うことができる〉。
これは所得税も法人税も同じ。それぞれの税収が37兆円に達するまでは所得税や法人税の税収すべてを社会保障支出に充当すると〈言うことができる〉。
「所得税は社会保障の財源だから重要だ」
「法人税は社会保障の財源だから重要だ」 と〈言うことができる〉。
お金に色はついていない。消費税だけが社会保障の財源ではない。所得税や法人税を社会保障の財源と位置付けて何の問題もない。問題は税の構成をどうするかだ。
1990年度の税収構造と2020年度の税収構造を比較して、どちらが適正かという問題だ。
税収構造として適正なのは1990年度型だ。税負担の中心を所得税と法人税にしている。
所得税と法人税の基本は〈能力に応じた負担〉。これに対して消費税は最も逆進性が強い税制。所得の少ない人ほど負担率が大きい。
現代日本の最大の経済問題は〈格差〉。〈格差〉を是正する経済政策が求められている。
〈格差〉を是正する税制は、消費税を圧縮し、所得税・法人税を中核に位置付けて〈能力に応じた負担〉を求めること。
1990年度の消費税率は3%。消費税率を3%に戻すのが適正だろう。
2020年度から24年度に国税収入が12.6兆円増加。
地方を合わせれば15兆円以上の自然増収が生じている。
この自然増収を財源に消費税率を5%に引き下げる政策は直ちに実施できる。
しょぼい立憲民主党に期待できない。
消費税率をまずは5%に引き下げることを公約に明示する政党・候補者に参院選で投票することが必要だ。
(後 略)
〈しょぼい減税〉案オンパレード
植草一秀の「知られざる真実」 2025年4月29日
4月26日の土曜日からゴールデンウィークが始まったというが、優雅な大型連休とは程遠い。
なかには4月26日(土)から5月6日(火)までの11連休という人もいるが、アンケート調査では全体の7%。100人中7人しかいない。
最多は4連休の30%。暦通りに5月3日(土)から5月6日(火)の4連休があるだけ。
4月27日の週は火曜日の29日が祝日なだけで普通の週と変わらない。
連休の過ごし方も
自宅で過ごす 35% 近場の日帰り旅行 18%
外食 32% ドライブ 14%
ショッピング 22% 映画 10%
といったところ(株式会社ぐるなび調査)。
「予算を抑えてできる範囲で楽しみたい」が56%。
海外旅行に出かける人は50万人強と見込まれており、全人口の0.4%にとどまる。
外国人の訪日は激増して年初から最速で1000万人を突破している。
日本円暴落で海外に行っても食事すら満足にできない状態にある。
日本国内でも豪華な食事をしているのは外国人に限られている。
日本経済の停滞は深刻。
しかも、分配の変化が加速してきた。中間層が消滅して圧倒的多数が下流に押し流された。
一握りの勢力が所得水準を切り上げた。
生産活動の結果生み出される価値が所得になるが、その所得の分配に際して、一部の者だけが不当に巨額を占有してしまい、圧倒的多数の一般労働者の所得が激減してきた。
所得分配が歪められてきたということ。
社長と平の所得格差が拡大した。社長の働らきが増したわけではない。社長が一般労働者が生み出した価値を横取りしているだけ。
これを「頑張った人が報われる」とは言わない。「頑張った人が報われず」、「頑張っていない人が搾取している」だけだ。
派遣労働など不当極まりない。「派遣」するだけで巨大な「中抜き」をしている。
派遣企業が労働者の派遣先を決定する権限を有する。このために、労働者が正当な権利を主張できない。派遣会社は濡れ手に粟の利益をむさぼっている。
日本の労働者一人当たりの実質賃金は1996年から2024年までの28年間に17%も減少した。世界最悪の賃金減少国だ。
とてもではないが、ゴールデンウィークに海外旅行を楽しめる余裕などない。
「賃上げ」と叫ばれ続けてきたが労働者一人当たりの実質賃金は2022年4月から2025年2月までの35ヵ月間のうち、31ヵ月で前年同月比マイナス。
本年1月の実質賃金は前年同月比2.8%も減少した。
賃上げを叫んでもインフレが亢進し、実質賃金は減り続けているのだ。
インフレ率は消費者物価指数上昇率で本年1月が前年同月比4.0%上昇。
3月でも前年同月比3.6%上昇した。
生鮮食品は本年1月に前年同月比21.9%も上昇した。狂乱物価である。
生鮮食品は2022年に8.1%上昇、23年に7.4%上昇、24年に7.0%上昇した。
24年の水準は20年比で24%も高い。
国民生活窮乏の悲鳴が聞こえてくる。抜本策が必要。
減税論議が喧しいが、〈しょぼい減税〉オンパレードだ。
〈しょぼい減税〉を掲げる政党は選挙後の〈増税〉を目論んでいる。
〈しょぼい減税〉を掲げる政党の化けの皮を剥ぐ必要がある。
(後 略)