原発推進が国策のアメリカは野田政権時代のあやふやな「原発ゼロ」政策にもクレームをつけましたが、そのアメリカでも、昨年原発が売りに出されたものの火力よりも割高なので買い手がつきませんでした。実際に採算がとれないためにいまアメリカの原発は相次いで閉鎖・停止に追い込まれているそうです。
1月30日付けのウォール・ストリート・ジャーナルは、「UBSインベストメント・リサーチの報告によれば、6つの原発が財務的にぜい弱とされうち2つは停止中。別に3つの原発が不採算により廃炉乃至廃炉の予定」であることを報じました。
同記事では原発が不採算に陥った理由を、「連邦政府の試算によると、エネルギー源別の発電の固定費用は天然ガスがメガワット当たり約1万5000ドルで、石炭が3万ドル、原発が9万ドルとなっている。原発はこのほか警備費用がかさみ、放射性物質を扱うため装置導入コストも高くなる。一方、原発では燃料費はコストとして大きくない。これに対し、天然ガス発電では燃料費は最大のコスト要因だが、現在それが急落している」結果であるとしています。
※1日本の火力発電の使用燃料の比率
: 石炭40%、天然ガス40%、石油15%、その他5%
それに対して日本では原発がコスト的に有利という論調が占めていますが、それは「事故リスクコスト」をはじめ原発立地自治体への諸手当・対策費などを原発の発電コストから除外している他に、天然ガスや石油の価格が諸外国に比べて法外に高いことが理由です。
※2天然ガスの輸入価格はアメリカの9倍。添付しんぶん赤旗の記事参照
なぜこんなことになっているのかについては、「発電設備コスト他+燃料コスト」(全原価)の3%が電力会社の利益になるように電気料金を定めてよいという「総括原価方式」であるために、燃料を安く購入しようという発想自体がなかったからだといわれています。
以下に時事通信としんぶん赤旗の記事を紹介します。
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米原発、相次ぎ閉鎖=電力業界、投資慎重に
シェール革命でガス優位
時事通信2013年2月9日
【ニューヨーク時事】
米国で電力会社が老朽化した原子力発電所の閉鎖を決めるケースが増えている。「シェールガス」と呼ばれる天然ガスの生産拡大に伴い、安価なガスを使った火力発電が急増。原発のコスト競争力が相対的に下がり、電力会社が補修に必要な投資に二の足を踏んでいるためだ。
電力大手デューク・エナジーは5日、フロリダ州の原発を廃炉にすると発表。格納容器に入ったひびの補修に巨額の費用がかかり、採算が取れないと判断した。同じ大手のドミニオンも昨年10月、電力の卸売価格の下落を背景に、「純粋に経済性の観点」(ファレル最高経営責任者=CEO=)から、ウィスコンシン州にある原発の廃炉を決めた。原発で最大手のエクセロンは、ニュージャージー州の原発を10年前倒しで閉鎖する方針だ。
米国内の原発の数は世界最多の104基で日本(50基)の倍。これらの建設認可は全て1979年のスリーマイル島原発事故以前に行われた。原発の運転免許の有効期間は40年で、更新すれば20年の延長が可能。既に7割の原発が更新手続きを終えているが、老朽化に伴う補修費用が将来の利益に見合わなくなれば、原発の閉鎖は今後さらに増えるとみられる。
東電、米国の9倍で購入 吉井議員 LNG価格を指摘
しんぶん赤旗 2012年7月28日
日本共産党の吉井英勝議員は27日の衆院経済産業委員会で、東京電力が、同社の子会社が設立した貿易会社から、火力発電用の液化天然ガス(LNG)を対米販売価格の8~9倍の超高値で購入している実態を示し、東電言いなりに電気料金値上げを認可した政府の姿勢をただしました。
問題の会社は、東電の子会社「TEPCOトレーディング」と三菱商事が共同出資し、オマーン産LNGの購入・販売権を有するセルト社。同社は米国向けに百万BTU(英式熱量単位)あたり2ドルで販売する一方、東電には9倍も高い18ドルで販売しています。(今年の実績)
吉井氏は、この問題で東電の広瀬直己社長が「守秘義務があり、存じ上げていない」(26日、衆院消費者問題特別委員会)と答えたことを示し、同社の隠ぺい体質を批判。枝野経産相は「厳しく調べさせていただく」「下げるように指導したい」と約束しました。
さらに吉井氏は、同じシベリア産LNGの買い取り価格が、袖ヶ浦基地(千葉県)で1トンあたり3万1719円、富津基地(同)で7万4975円と2倍も違うと指摘。「商社は東電に高く売ればもうかる。そのツケは全部消費者に回ってくる」と述べ、総括原価方式と燃料費調整制度の見直しを主張。枝野経産相は「一刻も早くこれ(制度)を変えたい」と答えました。