2013年2月27日水曜日

政府・環境省がまたしても水俣病で偽証工作


 水俣病は、熊本県水俣市にあった「チッソ㈱」(当時は「新日本窒素肥料㈱」)水俣工場の、アセトアルデヒド製造工程からの排水中に含まれるメチル水銀(有機水銀)1が原因物質で、それを体内に取り込んだ魚介類を食べた人間(やネコ)の脳・神経が侵されて悲惨な健康障害を起こしたものです。
   1 アセトアルデヒド合成反応の触媒に使う無機水銀の一部がメチル水銀に変化して排水中に流出したもの

 水俣病が公式に確認されたのは1956年で、チッソが必要な情報の提供を一切拒否する中で1958年には熊本大学がチッソから排出された有機水銀が原因だと解明しましたが、チッソ、国、学界、産業界が総がかりでその結論を否定したために、その間も工場排水が水俣湾に流され続け、そこの魚介類を摂取し続けた住民が水俣病に罹患しました※2
2 高度経済成長の基材であるアセトアルデヒドの生産体制を維持するために、結果的に住民を犠牲にしたとも言えます

 メチル水銀が原因であることが明らかにされたのは、1965年に今度は昭和電工の鹿瀬工場のアセトアルデヒド製造排水により汚染された新潟県 阿賀野川流域の住民の間にも、水俣病(新潟水俣病)が発生していることが分かってからでした。
優に1万人を超える水俣病患者が発生した(世界最大の公害)のは、ひたすら政府(と関係団体)が長期にわたって工場排水が原因であることを隠蔽したことによるもので、3.11の放射能災害に関する東電や政府の隠蔽が、水俣病への対応と酷似しているとしばしば言われる所以です。 

 こうしたなか、政府・環境省がまたしても水俣病訴訟で医師に虚偽の証言を求めたことが明らかにされました。以下に毎日新聞の記事を紹介します。
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水俣病患者認定訴訟:環境省が医師に「虚偽証言」要請か
毎日新聞 20130226

 熊本県水俣市出身の女性(87)=大阪府=が水俣病患者としての認定を求めた訴訟の控訴審で、「女性は水俣病」と法廷で述べる予定だった医師に環境省が、認定申請を棄却した県側の判断は妥当と証言するよう要請していた疑いがあることが分かった。医師が拒否したため出廷は見送られ、大阪高裁は別の医師による「水俣病ではない」とする意見書を採用した。 

 高裁は昨年4月、女性を水俣病患者と認めるよう熊本県に命じた1審・大阪地裁判決を覆して請求を棄却。女性は上告しており、代理人弁護士は「国は虚偽証言をさせようとした」として26日、医師本人が経緯を説明した文書を最高裁に提出した。 

 この医師は、千葉県市川市の国立精神・神経センター国府台病院院長などを務めた神経内科医の佐藤猛さん(80)。原告側が最高裁に提出した書面などによると、佐藤さんは70年代、関東地方の水俣病の検診などに携わり、環境省は116月、医師証人としての出廷を要請した。佐藤さんが検診結果などを基に「水俣病」とする症例検討記録を提出したところ同省職員らが何度も自宅を訪問。「申請を棄却した熊本県認定審査会の判定が間違っていたとなるのは困る」として「判定は妥当だった」と証言するよう要請したという
 佐藤さんは拒否。同年9月に省内であった面談でも拒否後、接触は途絶えたという。結局、佐藤さん作成の記録は高裁に提出されなかった。判決後、佐藤さんが「明確に水俣病と診断できる症例が否定され同情を禁じ得ない」と弁護団に訴え発覚した。環境省は「要請した事実はない。係争中でありコメントできない」と述べた。佐藤さんは「取材は受けない」としている。 

 女性は78年、県に認定申請したが棄却され、07年に大阪地裁に提訴。亡くなった母親の認定を求める別の裁判とともに係争中で、いずれも国の認定基準の是非を争点にしている。2件の原告と被告双方の意見を聞く弁論が315日、最高裁である。 【西貴晴、石川淳一】