琉球新報が5日の社説に「規制庁漏えい 厳密検証で癒着断ち切れ」と題する主張を掲げました。原子力規制庁の地震・津波担当の審議官が敦賀原発の活断層に関する公表前の調査報告書を当の日本原電に渡していた事件に関するものです。
審議官は8回に渡り原電の幹部と面談をしていました。これまで原電は敦賀の活断層に関して、規制委に対して異様とも見える強硬な態度を示していましたが、裏で規制庁のトップ技術者と気脈を通じていたのであればそうした態度も首肯できます。
規制庁は福島原発の深刻な事故を引き起こしたことの反省から4ヶ月前に衣替えをして発足したばかりなのに、早くも国民の見えないところで規制する側と規制される側との癒着が明らかにされました。それなのに規制庁はこの件を審議官個人の問題と決め付けて、更迭と訓告処分にとどめるという生ぬるさでした。事件の詳細は「本人が明確にしていない」として明らかにせず、原電側からの聴き取りも「権限がない」ため実施しないとして、うやむやのままに蓋をしようとしています。
社説は「規制庁には、再発防止への真剣味が全く感じられない」と述べています。
こんなことではこの先も隠れた癒着が進み、規制庁の存在意義がなくなる惧れは十分にあります。以下に琉球新報の社説を紹介します。
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【社説】 規制庁漏えい 厳密検証で癒着断ち切れ
琉球新報2013年2月5日
日本原子力発電敦賀原発(福井県)の断層調査をめぐり、原子力規制庁の地震・津波担当の審議官が、公表前の調査報告書案を、日本原電に漏らし、更迭された。
原発建屋の直下に活断層があるかどうかをめぐり、二つの組織が論争を繰り広げているさなかに、相手方を利する内部文書漏えいである。癒着そのものだ。
福島第1原発事故を受け、原子力発電を規制する側と推進する側がもたれ合い、事故の危険性を黙殺して甚大な被害を招いた。
国民から厳しい批判にさらされた「原子力ムラ」の反省に立ち、設置されたのが原子力規制委員会だ。規制庁がその事務局を担う。政府からの独立性を高め、事業者とも距離を置くはずだった。
幹部である審議官は、活断層との見方を強める規制委への反論を練りたかった日本原電の求めに応じ、公表前の報告書案を手渡した。
規制庁発足からわずか4カ月。原発を規制する側と推進する側が今もなお、国民の見えないところで気脈を通じている状況が露見した。驚きを禁じ得ない。
今回の不祥事は、透明性を高めて、原子力行政への信頼を厚くする取り組みに冷や水を浴びせた。生まれ変わったはずの原子力規制行政への信頼は大きく損なわれた。
審議官は原電幹部と5回(その後原電が8回に訂正)にわたり1人で面談していた。2人以上で対応することを定めた内規にも反していた。
組織の存在意義の根本が問われる大失態にもかかわらず、規制庁は審議官個人の問題と決め付け、更迭と訓告処分にとどめた。あまりに生ぬるい対応ではないか。
規制庁は会見で、原電と審議官のやりとりの詳細は「本人が明確にしていない」として明らかにしなかった。説明拒否をうのみにし、甘い追及で真相にふたをしたに等しい。原電側からの聴き取りは、「権限がない」ため、実施しないという。謝罪の言葉もなく、事態の矮小化に走っている。
不祥事の遠因と直接的要因を突き止めることなしに、規制庁本体の組織的不備の有無を見極めることは困難だ。規制庁には、再発防止への真剣味が全く感じられない。
規制委は、7月に新安全基準を打ち出す大仕事を控える。全職員が襟を正してしがらみを断ち切り、信頼回復に向けた組織体制の厳しい検証を尽くしてもらいたい。