2013年2月23日土曜日

石原氏・安倍首相・維新の会・自民党は憲法違反と


 伊藤真氏が主宰している法学館憲法研究所のホームページに、同所顧問 浦部法穂氏の論文「憲法尊重擁護義務」が掲載されました(21日付)。
 
 そこでは日本国憲法第10章「最高法規」の意味から説き起こされ、石原慎太郎氏をはじめ安倍首相や多くの大臣や国会議員、日本維新の会や自民党などが公務員の憲法尊重擁護義務99条)に違反していることが、極めて明快な論理で語られています。

 そしてそもそもあらゆる「改正」が憲法上許容されているのではなく、許容されない「改正」を首相や党首が声高に叫び、それに対して政権自体やメディアが何の批判も加えていないのは驚くべきことだとしています。

 以下に事務局で要約した同論文の要旨を紹介します。(詳細は下記のURLをクリックして原文をご覧ください)
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憲法尊重擁護義務 (浦部法穂の憲法時評)
浦部法穂・法学館憲法研究所顧問  2013221
(上記URLをクリックすれば同記事にジャンプします。以下同) 

 (要旨 事務局で要約)
 憲法第10章「最高法規」には、基本的人権の永久不可侵性97条)、憲法に反する法律等は無効であること(98条)、そして公務員の憲法尊重擁護義務99条)を定めているが、この3箇条の条文は憲法の最も重要な基本的性格を明らかにしたものである。

 99条の条文では、とりわけそこに名指しされている「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官」という国の中心的な権力を委ねられた者は、「その他の公務員」に率先して、この義務に忠実であることが求められている。
それなのに最近の国会議員や大臣のなかには憲法上のこの義務をまったく無視している輩が少なくなく、国家として異常な姿である。 

 その代表格が知事時代から「現行憲法は無効だ、憲法を破棄せよ」と公言していた日本維新の会代表の石原慎太郎氏で、今月12日の予算委員会でもこの持論を展開し、事実上「内閣総理大臣が憲法破棄を宣言すればそれによって現憲法の無効が確定する、だから憲法破棄宣言をすべきだ」と首相に迫った。
こういう発言が国会の場で堂々となされ、それを戒める発言が国会の場でも内閣からも、またメディアからも出てこないということは驚くべきことである。石原氏は憲法99条の義務に明らかに反しており、もはや衆議院議員としての資格を有しないとされるべきである。 

 かりに内閣総理大臣が「憲法破棄」を宣言しそれによって現行憲法の無効が確定するとしよう。憲法が無効だということになれば内閣総理大臣や他の大臣も、国会議員も、その地位の法的根拠を失う。だからその瞬間に当の内閣総理大臣は内閣総理大臣でいられなくなり、他の大臣も国会議員もその地位を失う。
それでも彼らがなお総理大臣や大臣あるいは国会議員の地位にとどまり続けたとしたら、それは非合法的に権力を奪取する行為、すなわちクーデターである。
石原氏の質問はクーデターの唱道にほかならない。 

 一国民であればそういうことを唱える自由はあるが、公職にあるものには憲法99条によって「憲法尊重擁護義務」を課せられているからその自由はない。石原氏がみずからの思想・持論を貫きたいと考えるのなら、彼は都知事にも衆議院議員にもなってはならず、日本維新の会も在野の政治団体にとどまるべきであった。
これは「自主憲法制定」を唱える安倍首相や少なからぬ大臣・国会議員、また、それを党是とし「新憲法草案」を発表している自民党も同類である。自民党の改憲案「自主憲法制定論」が現憲法を廃棄して新憲法を制定すべきだとする議論である以上、それは「憲法尊重擁護義務」とは相容れない。 

「国会議員が国の一番基本となる憲法のあり方を議論するのは当然で、むしろ国会議員の最も重要な任務ではないのか」という反論は、「憲法尊重擁護義務」の範囲内にとどめられるべきで、「憲法破棄」などという議論は明らかに一線を越えている。
国会の憲法改正の発議権はあくまで「改正」の発議権であって「憲法廃棄」や「新憲法」の発議権ではない。