東電の国会事故調査委員会に対する虚偽説明問題については、この数日 東京新聞をはじめとする多くの地方紙が東電を非難する社説を掲げています。しかしながら大手紙では毎日新聞のみのようです。大手紙やTVにとっては電力会社は最大級の広告主=お得意先なので、いつも下手に出て批判などはもっての他という態度で一貫しています。
新潟日報も11日付の「東電虚偽説明 再調査で事故原因究明を」と題した社説で、この事件を取り上げました。そして短い文章ですが、非常用復水器が重要な機器であることから説き起こし、現場の運転員が地震直後に非常用復水器などからの水蒸気漏れがあったと疑っていることから、同装置や付属配管は津波ではなく地震で壊れた可能性があり、東電は「地震で重要機器が損壊した」という事故原因の核心を隠したいがために虚偽の説明をしたのではないかとしています。
同社説はさらに「地震の揺れで非常用復水器が壊れたということになれば、耐震基準の見直しが迫られる」と述べていますが、これこそは東電を含む「原子力むら」の人たちが最も惧れている事態です。
津波に対しては防潮堤が有効※1とされていま建設が進められていますが、装置の耐震強度が足りないということになれば原発を作り直すしかないからです※2。
※1防潮堤には津波の直撃を避ける機能はありますが、防潮堤の端部を迂回して押し寄せてくる水を阻止することはできないので、多少の時間は稼げるものの低い標高にある施設や建物はいずれ水没します。
※2武田邦彦教授は3.11の地震で東日本の原発が悉く損傷したことを確認して、現行の原発は「震度6の地震に持たない」ことを繰り返し強調しておられます。また2006年に原発の耐震強度を見直す委員会が作られましたが、「既設の原発は強度不足だ」と言える筈はないので実のあるものにはならず、ある良心的な教授は委員を辞したとも述べています。
柏崎刈羽原発も中越沖地震では、設計基準を数倍上回る水平方向加速度が加わり、現実に3600箇所が損傷しました。これも「予期していた以上に強い地震でした」で済まされるような事柄ではなく、設計基準が甘過ぎて耐震強度が現実に不足していたということに他なりません。
そういえば今度の新しい安全基準では、肝心な設計強度についてはどのように改定したのでしょうか?
以下に新潟日報の記事を紹介します。
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東電虚偽説明 再調査で事故原因究明を
新潟日報 2013年2月11日
調査妨害と受け取られても仕方があるまい。
国会が設置した事故調査委員会が東京電力福島第1原発の内部を調べようとした際、東電側が事実と異なる説明をしたため、断念せざるを得なかったことが分かった。
調査を求めたのは、1号機の原子炉建屋内にある非常用復水器と呼ばれる重要施設だ。
原子炉圧力容器内の温度や圧力が上昇した場合に、蒸気を水に変えて循環させ、炉内を冷やす。
電源の喪失とともに、非常用復水器が機能しなかったことが炉心溶融を早めたとみられている。
国会事故調は、津波ではなく地震で非常用復水器や配管が壊れた可能性があると推測していた。
ところが、既に照明が設置されていたにもかかわらず、東電側は放射線量が高いといった危険性に加え、「現場は真っ暗」などと事実と異なる説明をした。
「意図的に虚偽の説明をしたわけではない」と釈明しているが、問題は大きいと言わざるを得ない。
結果的に、地元住民の暮らしを奪った過酷事故の原因究明に至らなかったのである。東電の責任は極めて重いといえる。
地震で重要機器が損壊したという事故原因の核心を隠したかったのでないか、といった疑念の声が上がるのは当然だろう。
現地調査は原因解明の鍵を握っていたと言ってもいい。
東電内部の調査委と民間の福島原発事故独立検証委、政府の事故調査・検証委は、地震による重要機器の損傷に否定的な見方を示した。
これに対し、想定外の津波を原因とした東電や政府の見解に疑問を呈していたのが国会事故調だ。
その根拠となったのが、地震直後に非常用復水器などからの水蒸気漏れを運転員が疑っていたことや、津波の第2波到達前に1号機が電源喪失したとの分析結果である。
それが東電の虚偽説明によって、津波と地震の揺れのどちらなのかという原因究明の機会が妨げられてしまったのだ。
東電とやりとりをした国会事故調の元委員は、非常用復水器の調査をあらためて実施するよう衆参両院議長に要請した。
事故原因をあいまいにしておくわけにはいかない。現地調査を断念した理由が事実と違っていたことが明らかになった以上、再調査を実施すべきである。
原子力規制委員会は先日、地震・津波対策と過酷事故対策から成る新たな安全基準案を示したばかりだが、地震の揺れで非常用復水器が壊れていたということになれば、耐震基準の見直しが迫られる可能性も出てこよう。
東電は過去にもトラブルなどを隠ぺいしていた。同じような行為を繰り返していては、ますます信頼を失うばかりではないか。
今回の事態を重く受け止め、再調査に最大限協力していく姿勢が求められる。同時に、情報公開の徹底を図ってもらいたい。