2013年2月2日土曜日

米国は好戦性を明言、 首相は改憲を明言 の異常



次期米国防長官が一方的武力行使を明言
 次期米国防長官のヘーゲル氏は31日、就任の是非を判断する公聴会で「必要であれば一方的行動も辞さない」と証言しました。
 アメリカはこれまで、ベトナム戦争でもイラク戦争でもまたアフガニスタン戦争でも、トンキン湾事件や大量破壊兵器所持などのデッチ上げの口実で、いつも一方的に戦争を開始して来ましたが、最早口実も不要だと明言したようです。 

◇安倍首相が国防軍創設の必要性を明言
所信表明演説では注意深く憲法「改正」に触れなかった安倍首相は、1日の参院本会議で民主党議員の質問に応えて、国防軍創設の必要性を明言しました。ついに衣の下の鎧を現したという感じです。
自衛隊が国際法上軍隊として扱われるから憲法改正の必要があるというのも、本末転倒の考え方です。
そもそも公務員として憲法遵守義務のある首相が改憲を主張するのは異常なことですが、きっと圧倒的多数の議席を獲得したという驕りがあるのでしょう。 

◇憲法96条はおかしくない
    首相は特に憲法96条の「改憲の発議は議員の2/3以上の賛成で」を問題にして、「たった1/3の議員の反対で改憲が発議できないのはおかしい」と主張していますが、改憲の発議など憲法改正の手続きを厳しく定めている「硬性憲法」は世界の主流であり、多くの国の憲法(主に成文憲法)がそうなっています。
現実に、直近の選挙でも僅かに有権者の16%の支持で圧倒的多数の議席を獲得した事実がある中では、そのときどきの政権の意図で簡単に改憲が発議できるようであってはいけないことが実感されます。 

◇なぜ外国では憲法を改正しないといけないのか
また諸外国では比較的多数回の改憲を行っているのに・・・という議論がありますが、例えばアメリカの最近の改憲は20年前の「27 修正-連邦議員の任期途中の歳費引上げの禁止」であるなど、外国の憲法は、国会議員の歳費引き上げの時期や、裁判官の任期や重任の可否、あるいは国会議員の数等々かなり細かいところまで規定しているので、どうしても時代に合わせて憲法を替えざるを得ないという現実があります


     「諸外国における戦後の憲法改正」 国立国会図書館

それに対して日本の憲法は細かいところは法律で定めるという構成になっているので、そうした必要性はありません。ですから憲法をかえないのはおかしいという主張も一向に当てはまりません。
 
 以下に次期米国防長官発言の記事、首相の国会答弁に関する記事それに琉球新報の社説「首相改憲表明 何のための憲法か熟議を」を紹介します(いまや政権に対する的確な批判記事は、東京新聞等の地方紙でしか見られません)。
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米国による一方的武力行使も=「最強の軍隊」維持-次期国防長官
時事通信 201321 

 【ワシントン時事】次期米国防長官に指名されたヘーゲル元上院議員(66)は31日、就任の是非を判断する上院軍事委員会の公聴会で、「われわれの安全を守るためなら米軍の全勢力を用いることもためらわず、必要であれば一方的行動も辞さない」と証言した。核開発を続けるイランなどを念頭に、武力行使も排除しない姿勢を示した形だ。

 ヘーゲル氏は、イラクへの米軍増派を批判するなど、介入に慎重な立場を取ってきた。だがこの日は、「米国は世界最強の軍を維持し、国際社会を主導すべきだ。引きこもるのではなく、関与しなければならない」と強調。また「米国の影響力と安全を高めるため、同盟国と緊密に協力することが不可欠だ」と指摘した。
 

「国防軍」憲法に明記を=安倍首相、歴史認識で新談話検討-代表質問
時事通信 201321 

安倍晋三首相は1日午後の参院本会議で、自衛隊を「国防軍」と明確に位置付ける憲法改正について「自衛隊は国内では軍隊と呼ばれていないが、国際法上は軍隊として扱われている」とした上で、「このような矛盾を実態に合わせ解消することが必要だ」と述べ、実現に意欲を示した。
 首相が国防軍創設の必要性を明言したのは就任後初めて。自民党は昨年12月の衆院選で、政権公約に憲法9条への国防軍明記を盛り込んだが、首相は公明党の反対などを考慮して、踏み込んだ言及はしてこなかった。
 首相は同時に「シビリアンコントロール(文民統制)の鉄則や憲法の平和主義、戦争の放棄を変えるつもりはない」とも強調した。民主党のツルネン・マルテイ氏への答弁。  (以下略)
 

【社説】 首相改憲表明 何のための憲法か熟議を
琉球新報 201321 

 安倍晋三首相は衆院本会議で、憲法改定の発議要件を定めた憲法96条を緩和する方向で改定に着手する考えを表明した。
 自民党は昨年4月、戦争放棄をうたった憲法9条を見直し、自衛隊を「国防軍」に改めるほか、天皇を「元首」などと明記する新たな憲法改定案を決定している。
  改定手続きを緩める先に、恒久平和主義を掲げる「平和憲法」を骨抜きにする意図があることは明白だ。強い危惧を抱かざるを得ない。

  国会答弁で首相が、憲法改定に具体的に言及するのは極めて異例だ。所信表明では改憲には一言も触れず、「タカ派色」を封印していただけに唐突感も否めない。
  首相をはじめ自民党内には、当面は景気回復を最優先して参院選勝利につなげ、「ねじれ国会」を解消した上で改憲に道を開く―との青写真があるとされる。
  首相がタカ派色の封印を早々と解いて改憲に前のめりの姿勢を示す背景には、同じく改憲を掲げる日本維新の会との連携を探る意図があることは疑いない。裏返せばこれは、衆院選での改憲派大勝のおごりであり、首相の宿願である改憲の機運を逃したくない―との焦りとも言えるだろう。

  96条は改憲について、衆参両院の「総議員の3分の2以上の賛成」で国会が発議し、国民投票で「過半数の賛成」を得なければならないとする。
  このように通常の法律よりも厳格な改正手続きを定めた憲法は「硬性憲法」と呼ばれるが、世界のほとんどの国が硬性憲法であることにも留意する必要があろう。

  安倍首相は、発議要件を「過半数」に緩和したい意向だが、改憲の“本丸”とされる9条ではなく、96条を前面に出していることにも注意が必要だ。改憲に対する国民の心理的ハードルを低くした後、なし崩し的に権力者に都合のよい改定をしていく狙いが透けて見えるからだ。

  自民党の改憲論議には、敗戦後に占領軍に押し付けられた憲法を改めなければならない―という民族主義的な思想が色濃く映る。そこには憲法の本来の目的であり、国家権力を制限する立憲主義の観点が著しく欠落していると指摘せざるを得ない。

  本来であれば、憲法順守義務に沿って、憲法を生かし切ることが先決であるはずだ。首相は改憲に前のめりになるべきではない。