2024年1月31日水曜日

インチキ派閥解消 の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム

 自民党は25日に臨時総務会を開き、裏金事件を受けて設置した政治刷新本部の「中間とりまとめ」を了承しました。
 しかしそれは裏金事件の真相解明や企業・団体献金の全面禁止には一切触れず、派閥の全廃にも踏み込まない(⇒「政策集団」としての存続を容認)という非常に不徹底なものでした(「真相解明なし 献金禁止なし 派閥全廃なし 裏金事件 自民『刷新』中間まとめ」しんぶん赤旗 26日)。
 国民の怒りが沸騰している中で、良くもこれほどデタラメな『政策刷新』を「中間とりまとめ」とはいえ発表できたものです。そもそも派閥解消と裏金問題は別の話であるのにそれを混然一体とさせることで誤魔化そうとすること自体不純です。

 LITERAが掲題の記事を出しました。しんぶん赤旗の指摘している内容を具体的に説明しています。
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“インチキ派閥解消”の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム! 企業団体の献金、パー券購入も不透明なまま
                            LITERA 2024.01.29
 安倍派幹部が全員不起訴となったパーティ券裏金問題。会見を開いた世耕弘成・前参院幹事長は「政治資金の管理は秘書に任せきりだった」「(キックバック分は)秘書が報告していなかった」などと秘書に責任をなすりつけ、西村康稔・元経産相は「裏金は一切ありません」などと書かれたビラを地元・兵庫県明石市で配布するなど、恥知らずの言動を見せた。
 なかでも、とりわけ酷かったのが萩生田光一・前政調会長だ。報道では当初、萩生田氏の不記載額は数百万円と伝えられていたが、蓋を開けると5年間で計2728万円にものぼっていたことが判明。しかも、地元の八王子市長選が終わってから会見を開き、その額を公表するという姑息な手に出たのだ。
 そのうえ、安倍派幹部の連中は、これほどの裏金不記載の問題を引き起こしながら、揃いも揃って議員辞職を拒否。開会した国会では、テレビカメラが回っていることを知っていながら、何事もなかったかのように笑顔まで浮かべてみせたのだ。
 だが、とんでもないのは安倍派幹部だけではない。これまでダンマリだった安倍派議員たちがいまごろになって巨額の裏金不記載を次々に公表し、あらためて怒りを買っている。

 たとえば、安倍晋三・元首相とともにジェンダーフリーバッシングの急先鋒となり、最近では選択的夫婦別姓の導入やLGBT法案に反対してきたことで知られる山谷えり子・元国家公安委員長は、5年間で2403万円の不記載があったと自身のHPで公表。これには作家の平野啓一郎氏が〈普段から「美しい国、日本」だとか何とか言ってる国粋主義の政治家だが、堕落してるのは自分だろう〉と批判しているほか、ライターの武田砂鉄氏も〈2000円返し忘れたくらいのテンションで2000万円の裏金を謝る〉と、その不誠実さを指摘。

 もっと酷いのが、山谷氏と同じく差別を振りまいてきた杉田水脈・衆院議員だ。杉田議員は21日、自身のブログで「清和会総会、解散等について」と題した記事を投稿。そのなかで、安倍派の解散について〈泣きました〉などと思いを綴ったうえで、しれっと自身にも不記載があったことを記述。〈派閥の指導に従った〉〈不正や私的流用は全くありません〉などと言い訳を並べ立てただけで不記載額すら明らかにしていないのだ。
 杉田議員といえば、昨年11月にネット番組でアイヌ文化の振興事業について「公金チューチュー」などと発言。また、杉田議員はフェミニズム研究者に対して「研究費の不正使用」「反日研究」などと攻撃をおこなってきたが、昨年5月、東京高裁は研究費の不正使用やずさんな経理はなかったとし杉田氏に33万円の賠償を命じている。このように、公金の使い方についてさんざんデマを飛ばし攻撃の犬笛を吹いてきた議員が、自身の裏金不記載については金額さえも明らかにせず平然としているとは──。しかも、「週刊文春」(文藝春秋)によると、杉田議員には「1000万円前後の裏金があった」とされているのだ。

 今回、検察は不記載額3000万円以上を立件ラインにしたと言われているが、これは検察が勝手に決めた基準にすぎず、政治資金規正法への不記載は完全な違法行為だ。裏金の使途について、多くの安倍派議員は明細を明らかにしないまま「政治活動に使った」などと言い張っているが、違法な裏金で政治活動をおこなってきたという一点だけでも議員失格であり、辞職以外の責任の取り方はない。
 ところが、安倍派幹部らが立件を免れたことにより揃って不記載分の使途を明確にすることもなく開き直った結果、武田氏が指摘したように「2000円返し忘れたくらいのテンション」で水に流そうとしているのだ。異常なモラル崩壊が起こっていると言うほかないだろう。

派閥解散は論点ずらしと権力闘争! 安倍派幹部は森喜朗に泣きつき離党勧告から逃れようと…
 しかし、いま起こっている異常事態はこれだけではない。それは、派閥解散による「論点ずらし」とどさくさ紛れの「権力闘争」だ。
 ご存知のとおり、岸田文雄首相は岸田派の元会計責任者が立件されるという報道を受け、唐突に「岸田派の解散を検討する」と公表。そもそも岸田首相は昨年末に岸田派トップを退いており、なぜ派閥とは無関係の人物が解散検討を決定できるのか疑問しかないのだが、この岸田首相の発表を受け、安倍派や二階派、森山派などで“派閥解散ドミノ”が起こった

 あらためて指摘するまでもないが、派閥を解散したところで今回の裏金不記載問題の責任をとることにはまったくならない。むしろ、腐敗をもたらした構造的問題点を明らかにしないまま解散することは、たんなる論点ずらしと責任逃れだ。
 つまり、岸田首相が派閥解散の口火を切ったのは、岸田派の前会長として責任を問われることや、派閥解消を訴える菅義偉・前首相などの無派閥勢力に主導権を握らせたくないという思惑があったことは明白。ようするに、自身の責任逃れや権力闘争の道具として持ち出したにすぎない。
 しかも、岸田首相による派閥解散宣言の流れで解散を発表し、裏金問題の免罪符にしようとしたのが安倍派だが、解散を決定づけたのは森喜朗・元首相だった。25日付の日本経済新聞によると、森氏は岸田首相の表明を受けて萩生田光一・前政調会長ら「五人衆」などに電話をかけ、「君はどう思う? 私は早く解散すべきだと思う」と“天の声”を伝えていたというのだ。
 森氏といえば、今回の裏金問題で特捜部も“本丸”として捜査に乗り出していた疑惑の人物。本サイトでもお伝えしたように、安倍派会長を退いてからも裏金に関与し、詳細を把握していたと見られている。実際、森氏は特捜部の捜査がはじまって以降、北國新聞のインタビュー連載を終了したり、世耕弘成・前参院幹事長や西村康稔・前経産相と“口裏合わせ”の密会をおこなっていた。そのような人物が、安倍派解散の糸を引いていたというのである。

 そればかりか、森氏は自民党執行部が安倍派幹部に離党や議員辞職を求めたとする報道に激怒。25日に茂木敏充幹事長や麻生太郎副総裁らと面会し、安倍派幹部を擁護したという。ようは安倍派幹部が森氏に泣きつき、離党勧告を下させないよう釘を刺してもらったというわけだ。
 ちなみに安倍派幹部は茂木幹事長に「安倍派だけを処分する理由をどう説明するのか。(立件された)二階派、岸田派の幹部も離党させるのか。岸田首相にも『離党しろ』と言うのか」と迫ったというが(朝日新聞25日付)、本来、不記載によって元会計責任者が立件されたことの責任をとり、岸田首相や二階俊博・元幹事長も議員辞職、少なくとも除名処分を受けるべきだ。ところが、そうした当然の政治責任をとろうとしないばかりに、「秘書ガー」を連呼する無責任極まりない安倍派幹部がいまだに議員としてのさばろうとし、とっくに政界を引退した“妖怪”まで引っ張り出して離党勧告から免れようとしているのである。

自民党政治刷新本部のふざけた中間とりまとめ! 派閥全廃も連座制も政治資金パーティ全面禁止も明記せず
 このように、隅から隅まで腐り切った自民党に政治資金をめぐる政治改革など、実行できるはずがない。
 実際、岸田首相が本部長を務める自民党の「政治刷新本部」が公表した中間とりまとめでは、「派閥全廃」を明記せず、派閥が政策集団として存続することを容認。さらに「派閥事務所の閉鎖」「党役員・閣僚の派閥からの離脱」も明記されなかった。過去、何度も繰り返されてきたように、冷却期間を経て派閥が復活するのは目に見えているだろう。
 しかも重要なのは、政治資金収支報告書に虚偽記載があった場合に議員本人の刑事責任を問う「連座制」の適用や、企業・団体からの献金禁止、政治資金パーティの全面禁止が盛り込まれることがなかった点だ。

 いったい、これで何が「政治の信頼を取り戻す」だ。この自民党によるとりまとめでは、今後も議員個人が政治資金パーティを開催し、企業・団体にパー券を売ることができる。しかし、政治団体ではない企業・団体については、どれだけパー券を購入したのかを確認しようがない。口座振込ではなく現金でパー券を購入させてしまえば、それを政治資金収支報告書に記載せず裏金化することが可能になってしまう。万が一、そうした裏金が発覚しても、連座制を適用できなければ、またも議員は「秘書ガー」と言い張って無罪放免となるではないか。
 また、同じく問題なのが、自民党の中間とりまとめでは「政策活動費」にまったくメスを入れていない点だ。政治資金規正法では政治家個人への金銭の寄付を禁止しているが、例外として政党から政治家個人への寄付を認めている。さらに政治家個人の政治資金は使途を公開する義務がないため、「裏金の温床」と呼ばれてきた。事実、自民党は2022年の1年間だけで14億1630万円を政策活動費として支出し、うち計9億7150万円を茂木幹事長が受け取っているが、その使い道は明らかになっていない

 この政策活動費は自民党に限らず日本共産党以外の野党も軒並み支出してきたものだが、改革案として立憲民主党や日本維新の会などは政策活動費の廃止を打ち出している。だが、自民党はこの期に及んでも、この事実上の裏金を手放そうとしないのだ。
 さらに、政権を握る自民党には「官房機密費」という裏金も存在する。
 官房機密費は官房長官の裁量で機動的に使える予算で、情報提供者への謝礼などに使う「調査情報対策費」、情報収集のための贈答品などに使う「活動関係費」、そして「政策推進費」の3つからなり、このうち「調査情報対策費」「活動関係費」は領収書が必要となる。しかし、「政策推進費」は官房長官が自ら出納管理をおこなうもので、具体的な使途が特定されていない段階で国の会計からの支出が完了となる。つまり、国庫から引き出される金でありながら、領収書は不要、支払い先を明かす必要もなし、官房長官の判断ひとつで使える「ヤミ金」「究極のブラックボックス」と言うべき状態となっているのだ。そして、昨年11月、馳浩・石川県知事が東京五輪招致活動に絡み、官房機密費で豪華アルバムを作成しIOC委員たちにばらまいたと発言して問題となったように、官房機密費は国家の利益のためなどではなく、自民党が政治的工作のために湯水のように使っているという疑惑が指摘されてきた。
 実際、第二次安倍政権下では菅義偉官房長官が86億8000万円超を「政策推進費」に充ててきたが、注目すべきは自民党総裁選時の支出だ。菅氏は2020年9月2日に総裁選への出馬を表明したが、その前日の9月1日に菅氏は官邸内にあった官房機密費1億3200万円余のうち9020万円を、自分が自由に使うことができる「政策推進費」に振り分けていた。さらに、菅氏が首相に指名された同月16日に官房機密費の引き継ぎがおこなわれたが、それまでに菅氏が使った金額は4820万円。つまり、たったの16日間で「ヤミ金」を約5000万円も使ったのである。これは明らかに、総裁選対策に使用されたとしか考えられない。
 裏金問題を受けて官房長官は安倍派の松野博一氏から岸田派の林芳正氏に交代したが、今年秋におこなわれる自民党総裁選では、これと同じように、岸田派が総裁選工作として官房機密費を湯水のように使う可能性も考えられるのだ。

裏金問題を告発した上脇教授は「派閥をなくしても総裁選がある以上は裏金つくられ続ける」と指摘
 今回の裏金問題を告発した上脇博之・神戸学院大学教授は、自民党の総裁選は公選法が適用されず買収し放題であるという構造的な問題を指摘したうえで、「派閥をなくしても、総裁選がある以上は裏金はつくられつづけるのではないか」と指摘している(TBSラジオ『荻上チキ・Session』26日放送)。裏金をつくらせない仕組みをつくるうえでも、官房機密費の問題にもメスを入れなければ、自民党の体質は変わらないはずだ。
 さらに、上脇教授は「党や派閥の論理による中途半端な政治改革では、納税者・主権者である国民はたまったものではない」「泥棒に良い刑法がつくれないように、裏金をつくっていた人たちが立法を進めても良いものができるわけがない」と指摘すると同時に、「1994年の政治改革では『政党交付金を導入すればきれいな政治になる』と言っていたのが、裏金をつくっていた。もう税金を泥棒にあげるようなことはやめるべきだ」とも言及している。政党交付金という、わたしたちの税金が裏金議員を抱える自民党に投入され、支えるという仕組み自体を問い直す議論もなされるべきだ。

 29日から国会では本格議論がスタートするが、実態解明はもちろんのこと、裏金議員たちにしっかり政治責任をとらせること、そしてあらゆる裏金が生まれないようにする根本的な改革がなされるよう、徹底した監視が必要だ。派閥の解散で禊を済ませるようなことは、絶対に許してはならないだろう。 (編集部)