2024年1月27日土曜日

トイレ、プライバシー、生理など 女性安心の避難所を 女性が運営に関われる仕組みが大事

 1万人以上の被災者を出した能登半島地震発災から1ヵ月が経とうしています。
 避難生活の長期化が予想されるなかで、過去の震災の教訓から、声を上げづらい女性や子どもの声をくみあげる体制づくりが求められます。
 しんぶん赤旗日曜版が、減災と男女共同参画研修推進センター共同代表で静岡大学教授の池田恵子さんに、必要な対策を聞きました。
 対策が極めて具体的に示されていて説得力があります。
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トイレ、プライバシー、生理用品 女性安心の避難所を 運営に関われる仕組みが大事
                  しんぶん赤旗日曜版 2024年1月28日号
 能登半島地震発災から1ヵ月がたとうとしています。避難生活の長期化が予想されます。過去の震災の教訓から、声を上げづらい女性や子どもの声をくみあげる体制づくりが求められます。減災と男女共同参画研修推進センター共同代表で静岡大学教授の池田恵子さんに、必要な対策を聞きました。  日恵野香記者

  間仕切りがないために
  のぞきなど性被害発生
 -被災の全容がいまだにつかめない状況です。これまでの震災避難の経験から、避難生活で女性に多いリスクと対策は。
 ぼうこう炎や、血行不良によって血が固まりやすくなり、肺に詰まって起こるエコノミークラス症候群です。
 ドイレが不衛生だったり、暗くて防犯上の不安がある、家族の世話に追われるなどの理由で排せつをがまんし、水を飲まない、下着を取り換えられないことなどが原因にあげられます。
 また、過去の大災害では、間仕切りがない場所での着替え、授乳姿をのぞかれる、ふとんに入られるなどの性暴力の発生も報告されています。
 内開府が公開している、安全な避難所を運営するためのチェックシート(別項)をもとに取り組めば、不安やトラブルは大きく減らすことができます。

避難所チェッグリスト

○間仕切りなどでプライバシーを確保した授乳室・おむつ替えスペース

○男女別の更衣室・休養スペース

○乳幼児のいる家庭用エリア

○介護・介助が必要な人のためのエリア

○女性専用スペース(女性用品の設置、女性相談窓□)

○男性と女性でトイレを離れた場所にする

○トイレヘの経路や設置場所・個室内に照明を設置する

○管理責任者には男女両方を配置する

○自治的な運営組織の役員に女性が3割以上参画する

○生理用品・下着等の女性用品の配布は女性が担当する

○配偶者からの暴力の被害者等の避難者名簿の作成と情報管理の徹底

○就寝場所や女性専用スペース等への巡回警備

○男女一緒に行う防犯体制がある

○防犯ブザーやホイッスルの配布

○女性の不安や女性に対する暴力等への相談窓□、男性の悩みの相談窓□の設置と周知


子どもや齢者にとっても安全な場になる
支援求めるのは、わがままではない

 -「みんな大変な時に要望を伝えるのは自分だけのわがままかも」と悩むことも。
 「みんながまんしているのに」と心身の健康と安全をがまんすると、結果として他の人にもがまんを強いて、多くの火の健康や安全上のリスクを高めることになります。誰もが気兼ねなく相談し、必要とする支援を求め、自分もできることを協力する体制をつくることで、全体の災害関連死を減らすことにもつながります。

 -女性や子ども、高齢者の困りごとを減らす避難所づくりで大切なことは。
 避難所の管理責任者や意思決定の場に女性が関われる仕組みをつくることが大切です。
 生理用品の配布や授乳場所、性暴力の防止など、被災生活のなかで女性や子どもが直面する困難を拾いあげることに、社会全体が関心を持ち始めたと感じます。しかし、避難所や自治会の運営が男性中心になりがちで、女性の困りごとやニーズを把握しきれないことも多いです。
 子育て・介護を担うことの多い女性が声を上げられなければ、子どもや高齢者に必要な支援ができなくなることにもつながります。介護や子育てを担う男性にも困難を強いることになります。

  女性軽んじない社会を
  つくる土台になり得る
 -女性が責任ある立場に関わることに、戸惑いや、ためらいを感じる人もいます。
 生理用品や紙オムツ、粉ミルクの種類や違いが分からない人が、適切に二ズを把握して配布できるでしょうか。介護や子育て、女性の体に関わる物資は、必要だと認識されなければ用意されない可能性もあります。
 女性や多様な人々が意思決定の場に関わる方が素早く円滑に必要な支援を行い、みんなが安心して過ごせる避難所をつくれます。 
 「子育て・介護は女がやるもの」という性別による役割の押しつけを肯定するものではありません。しかし、現状に即して女性が責任ある立場で能力を発揮することを示すことにより、女性を軽んじない平等な社会への土台づくりにもなり得ると私は考えています。
 男性のひとり親家庭や介護世帯も、従来の性別による役割分業の枠組みとは異なるために支援が届きにくいという課題もあります。
 性別、障害の有無、持病、家族構成などにより、困りごとや必要とするものは異なります。何より大切なのは、避難所にいる一人ひとりがどのようなことに困り、何を求めているのかをていねいに聞き取り把握することです。互いに信頼関係を結び、不安を軽くし合える取り組みが必要です。