元外務官僚の孫崎享氏が掲題の記事を出しました。
同氏のコラムは日刊ゲンダイに週1回掲載されるもので、字数に制限があるので極めて簡潔に結論だけが示されています。
4つの大きな出来事として ① 米国大統領選挙(一般有権者による投票は11月5日)、
② 台湾総統選挙(1月13日)、③ ウクライナ戦争(米欧の支援が後退し、ロシアが負けるシナリオはなくなった)、④中東情勢(パレスチナ自治区ガザの戦闘を契機に武力紛争があちらこちらで勃発している)
を挙げています。
その他に世界の構造的変革が進んでいるとして、これまでは米国が圧倒的な優位を誇り米国に同調するG7が世界の潮流をつくってきたが、「真のGDP」(購買力平価ベース)では既に中国が1位になり、非G7の上位7カ国の合計はG7の合計を上回ったとして、経済で米国主導が崩れ、G7指導体制も終わりつつあり、世界が米国に追随する体制は終わったと述べています。
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日本外交と政治の正体 孫崎享
2024年は大変革の年になりそう…予想される4つの大きな出来事
日刊ゲンダイ 2024/01/04
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
2024年は世界全体で大変革の年になりそうである。予想される大きな出来事を見てみたい。
① 米国大統領選挙(一般有権者による投票は11月5日)。現時点では世論調査でトランプが3ポイント程度バイデンをリード。米国大統領選挙は常に共和党優位区、民主党優位区、激戦区に分かれる。従って激戦区が選挙を左右するが、ここではトランプがリードしている。
トランプ大統領が再選されれば、世界での軍事紛争を主導する軍産複合体、及び金融資本に支配されるバイデン政権から、国内企業を最優先する「アメリカ・ファースト」に戻る。
② 台湾総統選挙(1月13日)。蔡英文総統の後継として路線を引き継ぐ与党・民主進歩党候補の頼清徳氏と、最大野党・国民党の侯友宜・新北市長の戦い。前者が勝利すれば中国との緊張が継続し、後者が勝利すれば対中融和政策を模索する。
③ ウクライナ戦争。米欧の支援が後退し、ロシアが負けるシナリオはなくなった。もはや、戦いは意味のない人命の消耗戦となる。どこまで和平交渉が進むかが焦点だ。
④中東情勢はパレスチナ自治区ガザの戦闘を契機に武力紛争があちらこちらで勃発している。
これまでイスラム諸国は武力で抑えられたが、無人機、ロケット砲、ミサイルなどの使用で戦えることが分かった。イエメン、パレスチナ西岸、レバノン、シリア、イラク(米軍基地攻撃)と戦域が拡大する可能性がある。
こうした個別の事象以外にも、世界の構造的変革が進んでいる。
第2次大戦後の冷戦期を含め、これまでは米国が圧倒的な優位を誇り、米国に同調するG7(主要7カ国首脳会議)が世界の潮流をつくってきた。
だがこの体制は変わった。米情報機関CIAは、「真のGDP」として各国の購買力平価ベースを比較している。それによると、中国24.8兆ドル、米国21.1兆ドル。さらに非G7の上位7カ国の合計は、G7の合計を上回る。つまり、経済で米国主導が崩れ、G7指導体制も終わりつつある。これは外交にも反映し、世界が米国に追随する体制は終わった。
ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのテロ攻撃を機に、イスラエルはガザに侵攻。多くの一般市民を殺戮した。
世界は即時停戦を求めたが、米国は拒否した。
米国は道義的にも世界の指導者でなくなり、この動きが各地での紛争勃発にもつながっている。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。