2024年1月22日月曜日

目くらましの「派閥解散」裏金事件 崖際の岸田首相(しんぶん赤旗)

  「赤旗」日曜版のスクープに端を発し、上脇博之・神戸学院大教授の大変なご苦労の下で告発された自民党議員の裏金問題は検察が本格的に捜査する流れになりました。しかしその結果は、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者を経験した事務方が政治資金規正法違反の罪で立件される中、派閥を率いてきた幹部らは起訴されず、「大山鳴動してネズミ1匹」ということでした(この不条理については別掲の記事を参照ください)。

 それでは自民党自体の自浄作用に期待できるかといえば、直近の世論調査で「刷新本部に期待しない」との回答が68%だったことが雄弁に語っています。
 派閥政治の解消はこれまで何度も議論され1989年にも自民党が「政治改革大綱」を策定し派閥解消謳いました。しかし現に派閥は復活し存続しています。
 しんぶん赤旗が掲題の記事を出しました。
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「政治考」
目くらましの「派閥解散」裏金事件 崖際の岸田首相
                        しんぶん赤旗 2024年1月21日
 自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件を受け、安倍派、二階派、岸田派の主要3派閥が解散を宣言しました。一方で真に求められるのは、裏金事件の真相解明と企業・団体献金の全面禁止です。派閥の「解散」は、国民の批判をけむに巻く目くらましでしかありません。

 裏金事件を受けて岸田文雄首相は、自民党内に「政治刷新本部」を設置するなど国民の信頼失墜に歯止めをかけようとしてきましたが、安倍から参加したメンバー10人のうち9人に裏金疑惑が指摘されるなど、早々に破綻。近の世論調査(18日、時事通信)では、刷新本部に「期待しない」との回答が68・3%に上っています。
 今回の派閥解散は、岸田政権が「赤旗」日曜版のスクープを端緒とする国民の批判によって追いつめられた末の「奇策」です。
 政治学者の五十嵐仁法政大学名誉教授は、「諸悪の根源となっている派閥を無くすのは当然だ」と述べつつ、「派閥をやめて真相を解明せず幕引きにするということはあってはならない」と強調。「派閥の解消はトカゲの尻尾切り。それで目くらまししながら、世論の批判が沈静化するのを待つということだと思う」と言います。

 「安倍政権の『桜を見る会』での疑惑や、岸田政権の国葬問題とも通じる真相隠しだ」
 こう語るのは、上西充子法政大学教授です。「通常国会が始まり、政治資金パーティーを巡る裏金疑惑の問題は野党などから追及を受けることは確実だ。だからこそ、追及を受けて説明をするべき人、派閥の責任者を、派閥そのものを無くすことで存在しないことにしたのだ」との見方を示します。
 最大の問題は、一連の会見の中で誰一人として真相の徹底究明を語っていないことです。裏金づくりがどのようにして行われてきたのか、誰が何に使ったのか、国民の疑問に答える説明責任は果たされていません。
 岸田首相は、岸田派の虚偽記載に問する説明責任については「(事務局からの)報告を受け対応を考える」と述べるのみ。その他の派閥の会見でも、事件について幹部の関与など根幹に踏み込む発言はありません。26日召集の通常国会では裏金疑惑の徹底解明が最大焦点となります。
 安倍派、二階派、岸田派の会計責任者を経験した事務方が政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で立件される中、派閥を率いてきた幹部らは起訴されていません

 五野井郁夫高千穂大学教授(政治学)は、今回の一連の裏金づくりが「会計責任者独自の判断ではないはずだ」と指摘します。「必ず、誰かが指示したわけで、それがなのか分からない時、会社や組織というのはしかるべき地位にある人間が責任を取るのが常識だ」と述べ、「到底納得のいかないことが起きている」と憤ります。

「解体すべきは自民そのもの」
 派閥が無くなれ「政治とカネ」は解決するのか-。
 すでに自民党の地方県連でも政治資金パティ一収入が議員に還流(キックパック)れていた疑惑も浮上しています。政治家個人の政団体が裏金づくりをいた疑惑も複数浮上しています。たとえ派閥を解消したとしても、こうした裏金づくりの抜け穴は防げません

二重取りを続け
 最大の解決法は、パーティー券も含めた企業・団体献金の全面禁止を決断することです。自民党は今年も政党助成金を約160億円受け取る見通しで、税と献金の二重取りを続けています。真相の徹底解明のうえに立って、この金権腐敗の根を断ち切らなければ、「政治刷新」など不可能です。
 岸田派同様に、安倍派、二階派も19日に解散を表明しましたが、一方で、麻生派、茂木派は「(所属議員と)よく相談していきたい」と反発。自民党内で亀裂が生じています。
 派閥政治の解消はこれまで何度も議論されてきました。1988年にリクルート事件が発覚し政治不信が高まった際には、自民党が翌89年に「政治改革大綱」を策定し、派閥解消をうたいましたが、その後、派閥は復活し、存続しています
 五十嵐氏は、「今まで何回も『派閥解消』と言いながら、例えば『勉強会』みたいな形で残って、ほとぼりが冷めた頃にまた復活するということが何度も繰り返されてきた」と指摘。 「再び(派閥が)息を吹き返すような可能性をなくさないと問題は解決しない」と語ります。
 実際に、岸田首相は19日の会見で、「政策集団のルールは考えていかなければならない」と述べ、「政策集団」としての存続に含みを残し、二階俊博元幹事長も「人は自然に集まってくる。常識の範囲内で(交流を)やっていきたい」と、解散後の交流を示唆。
 「反省の上に新しい集団をつくっていくことが大事だ」(福田達夫元総務会長・安倍派)の発言も飛び出すなど〝閥政治を解消する気などない″という「本音」が見え隠れします。

権力闘争の基盤
 自民党は1955年の結党以来、派閥政治を続けてきました。派閥の本来の役割は、領袖(りうしゅう)を「総理・総裁」にすることであり、権力闘争の基盤です
 五十嵐氏は「『政策集団』というけれど、過去には派閥ごとに政策的なトーンの違いがあったが、全体として右傾化が進んできた結果、自民党の多元性が減少し、政策的な違いがなくなり、単にお金を集めて分配する役割やポストを獲得するための集団に変質してしまだ」と指摘します。権力闘争と一体不可分の派閥政治は、まさに自民党政治そのものです。
 「解体すべきは派閥でなく自民党そのものではないか」と五野井氏。「自浄作用で岸田首が自民党自体の解体的立て直しができないのであれば、選挙の時に、市民の力で自民党政治を終わらせるしかない」と訴えます。 (田中智己、中野侃、目黒健太、若林明)