2024年1月31日水曜日

31- ウクライナ戦争 兵器性能・生産力で劣る米国がギリシャや日本に兵器を供給させる

 ウクライナ軍の敗北が決定的になる中で、ゼレンスキーはザルジニー最高司令官を排除しようとしています。しかし英国は逆にゼレンスキーを退場させてザルジニーに代わらせようとする一方で、バイデンの周辺はゼレンスキーを支えているということです。いずれにしてもこんな風にトップで内紛が起きていては、命を懸けて戦わされている兵士たちは救われません。
 そもそもウクライナ戦争は、2014年2月にバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデター(バイデン副大統領らが実行)に始まって22年2月にロシア軍がロシア人保護のために侵攻するに至るまで、すべて米国が仕組んたものでした。侵攻の早い段階で停戦がまとまりかけましたがそれを潰したのも米英独仏でした。
 窮地に陥ったバイデンは、ギリシャ2億ドルの援助と引き換えにギリシャ軍が保有するソ連製兵器をウクライナへ譲渡するように頼む一方で、日本にはライセンス生産している迎撃ミサイル「PAC3」を米国に輸出するように要求しました。それがウクライナに供与されるのは明らかです。
 櫻井ジャーナルの2つの記事を紹介します。
 要するにウクライナへの武器の供与は、いまや自転車操業状態に陥っているということです。現実的な案に基づく停戦交渉こそを目指すべきでしょう。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウクライナと中東で窮地に陥っているバイデン政権 
                         櫻井ジャーナル 2024.01.31
 ウクライナではウクライナ軍のバレリー・ザルジニー最高司令官を排除する動きがあるようだ。ヨーロッパ諸国の大使になるという条件でザルジニーは辞任を求められたが、拒否したという。内紛が勃発した理由は言うまでもなく、ウクライナ軍の敗北が決定的だからだ。
 本ブログでも繰り返し書いていることだが、ザルジニーは11月1日付けエコノミスト誌に意見を掲載イギリスの支配層がウォロディミル・ゼレンスキー大統領からザルジニー司令官へ乗り換えようとしているのではないかと噂された。ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントだと言われているが、同国の支配層は彼に見切りをつけたのかもしれない。現在、ゼレンスキーを支えているのはジョー・バイデン米大統領の周辺だと言われている。
 イギリスのベン・ウォレス前英国防相は10月1日、戦場で戦うウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えているとテレグラフ紙に寄稿した記事の中で指摘した。平均年齢は42歳だと言われ、戦場では50歳代や60歳代のウクライナ兵が戦っている。ロシア軍の兵士によると、戦場で妊婦のウクライナ兵を見つけたという。

 現在のウクライナは2014年2月にバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターで誕生した体制下にある。ネオ・ナチを使い、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデターに反発、抵抗を始めた。反クーデター軍は強く、アメリカ/NATOはクーデター体制の戦力増強に乗り出す。そのための時間稼ぎに使われたのがミンスク合意だ。
 アメリカ/NATOは8年かけてクーデター体制の戦力を増強、ドンバス(ドネツクやルガンスク)周辺に要塞線を築いた。アゾフ大隊が拠点にしたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダル、その中間に位置するマリーインカには地下要塞がある。
 2022年の初めからウクライナ軍がドンバスの周辺に集まり、2月に入ると砲撃を激化させた。総攻撃が近いと少なからぬ人が推測していたが、そうした中、2月24日にロシア軍はドンバスで軍事作戦を開始した
 ロシア軍は航空兵力やミサイルの攻撃で終結していたウクライナ軍や軍事基地、生物兵器の研究開発施設などを攻撃、地上での戦闘はドンバスの現地軍、チェチェン軍、あるいは傭兵のワグナー・グループ。戦力を比較するとドンバス側はキエフ側の数分の1だったと言われているのだが、ウクライナ軍は劣勢。そこで2月の終わりには停戦交渉が始まっている。これをアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどが潰したのだ。この辺の事情は本ブログでも繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。
 2023年にウクライナ軍はアメリカ/NATOの圧力で「反転攻勢」試みるが、「大惨事」に終わったのだが、その間、アメリカ軍がキエフの周辺に配備したパトリオット・システムやC-RAM(カウンターRAM)をロシア軍はミサイルやドローンで破壊、アメリカの防空システムは無力化されていると見られている。

 シリアとヨルダンの国境近くにあるアメリカ軍のタワー22基地が1月28日に攻撃され、アメリカ兵3名が死亡、25名以上が負傷したと発表されている。損害の程度から攻撃に使われたのはドローでなくミサイルだと推測する人もいるが、ヨルダン政府はそうした攻撃があったことを否定している。アメリカ軍との関係が明らかになるとヨルダン政府が窮地に陥る可能性があり、否定したのかもしれない。
 この攻撃でアメリカ軍の防空システムが作動していないことに注目、ウクライナでロシア軍がアメリカ/NATOの防空システムを無力化することに成功していることと関連づける人もいる。アメリカやイスラエルが戦争を中東全域に広げた場合、無惨なことになると警告したのではないかというのだ。


兵器の性能も生産力も露国より劣る米国はギリシャにソ連製兵器を供給させる
                         櫻井ジャーナル 2024.01.29
 ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相はギリシャ軍が保有するソ連製兵器をウクライナへ譲渡するように指示したと伝えられている。その前にアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官がミツォタキス首相に対し、2億ドルの援助と引き換えに兵器の譲渡・売却を提案していたという。それだけウクライナ軍は兵器が不足しているということだ。
 アメリカ政府の圧力で日本はアメリカへ迎撃ミサイル「PAC3」を輸出する。そのため、岸田文雄政権は12月22日、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定した。「ライセンス生産」した完成品をライセンス元の国へ輸出することもできるようにしたのだ。これはウクライナへ防空システムを供給するためだろう。韓国はウクライナへ155ミリ砲弾などを供給している。

 昨年中からウクライナの武器弾薬不足は深刻になっていた。ロシア軍がウクライナの兵器庫を爆撃していることもあるが、アメリカ/NATOの生産力はロシアの数分の1にすぎず、アメリカを含むNATO諸国も兵器が枯渇している。
 性能の面でもアメリカ/NATOの兵器はロシアより数十年遅れていると言われている。ソ連の消滅で戦争の相手は航空兵力を持たない弱小国だけになったと思い込んだのか、高性能兵器ではなく高額兵器をアメリカは作るようになったようだ。その象徴が「空飛ぶダンプカー」と呼ばれているF-35戦闘機だ。戦闘機だけでなくミサイルでもロシアはアメリカを圧倒している。「ロシアがアメリカとの技術格差を埋めた」というような状態ではないのだ。

 イギリスのベン・ウォレス前英国防相は10月1日、戦場で戦うウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると​テレグラフ紙に寄稿した記事​の中で指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。平均年齢は42歳だと言われ、戦場では50歳代や60歳代のウクライナ兵が戦っている。ロシア軍の兵士によると、戦場で妊婦のウクライナ兵を見つけたという。

 ロシア軍は1月16日にウクライナのハリコフを攻撃、ウクライナの軍事施設のほか、情報機関や軍関係者が滞在していた旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、その旧ホテルには200人外国人傭兵が滞在していたと言われている。戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。西側の武器を扱えるようにウクライナ兵を訓練する余裕はなく、そうした兵器を扱えるオペレーター、パイロット、整備士などを派遣する必要もある。旧ハリコフ・パレス・ホテルで死亡した傭兵はそうした人びとだろう
 ウクライナ軍は戦える状態ではない。そこで大統領をウォロディミル・ゼレンスキーからバレリー・ザルジニー最高司令官へ交代させ、戦闘を終結させようとする動きがある。そうした中、ロシア軍のIL-76輸送機がフランス製のSAMP-T対空ミサイル2機によって撃墜され、捕虜交換に向かうウクライナ兵65名、乗員6名、ロシア軍の付添兵3名が死亡している。