世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。「救出活動をやる気がない自衛隊と官邸」と断定していますが、同氏にはそう述べる確固とした根拠があります。
また「なぜ施設科を本格投入しないのか」とも述べています。「施設科」とはいわゆる工兵部隊のことで、重機などの重要な設備を持てない戦場で道路を作ったり 橋を掛けたり 営舎を整えたりする部署で、勿論自衛隊はそれを備えています。
同氏は、政府が道路が寸断されていて自衛隊が救助に入れないと言い訳していることに対して、それは欺瞞であり 幼稚で悪質な言い訳だと断じています。
同氏はいつものように政府のHPを綿密に読み込み、今回の事故後数日間、消防と警察と自衛隊がそれぞれがどういう活動をしているかを把握しました。というよりも事故後の3日間は自衛隊は殆ど何もしていなかったことを明らかにしました。
そして「20年以上前の自衛隊はこうではなかった。広島の土砂崩れで住民が埋まったとき、若い隊員が雨の中、徹夜でスコップを振るい、土の中から生存者を救出した感動の場面があった(要旨)」と述べ、そのことで俄然自衛隊の人気が高まり、災害救助の自衛隊としての声価が国民のなかで高まったとしました。
それがなぜ今はこうなってしまったのかについては、「安倍政権のときに自衛隊像が変貌し災害救助をやらなくなった。右翼政権の方針と政策によって、自衛隊は醜く変質し、災害時に被災者を救出救命する英雄的な活動から手を引き、米軍の二軍に化けて」しまったとして、その都度警告を発してきたと述べています。
渾身の怒りのブログをお読みください。
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救出活動やる気がない自衛隊と岸田官邸 - なぜ施設科を本格投入しないのか
世に倦む日日 2024年1月5日
道路が寸断されているから自衛隊が救助に入れないと、マスコミが弁解の報道を撒きまくっている。玉川徹まで 1/5 の朝番組でそうコメントしていて、その虚構を国民全員が信じ込んでしまっている。Xで誰も反論しない。道路が寸断されて誰も輪島や珠洲に入れないのなら、どうして消防や警察が現地で救助活動しているのだ。どうしてNHKや民放の記者が現場をぶらぶら歩いているのだ。NHK記者の 1/4 の話では、金沢から輪島まで7時間で到着したと語っていた。マスコミは自由に現地入りして取材している。道路交通は確保されている。だからこそ、物資も細々と現地に入っているし、輪島市長や珠洲市長が救助と救援を求めているのだ。NHKの記者が車で通って入れる道を、なぜ自衛隊の車両が入れないのだろう。そういう素朴な疑問をなぜ誰も思い浮かばないのだろう。
道路が寸断されていて自衛隊が救助に入れないという言説は、自衛隊の不作為を正当化する幼稚で悪質なエクスキューズである。騙されてはいけない。欺瞞の共同幻想を軽信して納得してはいけない。1/3 正午すぎ、神奈川県警の広域緊急援助隊員が、発災から44時間ぶりに珠洲市の倒壊した家屋から80代男性を救出している。1/3 午後4時頃、京都市消防局と滋賀県から派遣された緊急消防援助隊が、同じく珠洲市の倒壊した建物から79歳の男性生存者を救出した。1/4 午後4時半頃には、発災から72時間を過ぎた時刻に、大阪市消防局を中心とする緊急消防援助隊大阪大隊が、輪島市の倒壊住居から80代女性の救出に成功している。消防と警察はお手柄の成果を(数は少ないが)上げた。国民の前で存在意義を示している。オレンジとブルーは活躍しているのに、迷彩服は何をしているのだ。
今回の能登地震災害で、消防と警察と自衛隊がそれぞれがどういう活動をしているか、どういう部隊がいつどう編成され展開したか、その時刻や規模や場所についての具体情報が、首相官邸のHPにPDF形式で具体的に公表されている。1/4 午前7時記録のPDFは、おそらくこの日午前10時過ぎに開かれた「第3回能登半島地震非常災害対策本部会議」に提出された資料だが、各省庁の取り組みが纏められていて分かりやすい。一目で全体像が把握できる。Xのタイムラインでこの資料を紹介した投稿を見ない。これを見れば、官邸(岸田と林)がどう動いたかが想像できるし、災害救援の現業実務官庁である警察庁と消防庁と防衛省・自衛隊がどう動いたかが推察できる。1/4 の資料は65ページ。内閣府防災担当・政策統括官(高橋謙司)の文責だ。10年前、御嶽山の災害のとき、同様のPDFを追跡したことを思い出す。
警察の動きは P.38 に記載されている。確認すると、1/1 時点で全国から534人が広域緊急援助隊に召集されていて、1/4 には639人の派遣規模となり、輪島市で260人が、珠洲市で430人が、警察犬10匹を使って救助活動をしている経緯が窺える。神奈川県警のレスキュー隊は他15府県の部隊と共に 1/1 の時点から始動していた。私のブログを以前からご覧の読者の方は、警察庁の中に警察災害派遣隊 という災害対応の組織があり、その中に広域緊急援助隊が編成され、現場で被災者を救出救助する警備部隊(レスキュー隊)が存在する制度配置をご存じのはずだ。ブルーと呼んできた。13年前(2011年)の警察庁の公式資料で、警備部隊は2600人を準備する構想とある。この計画が正しく実現されているのなら、今回の639人(1/4時点)の実働数は少なすぎる。野党には国会で質問して理由を聴いて欲しい。
消防の活動は P.41 に総括されている。 その態勢は、1/4 時点で緊急消防援助隊(オレンジと呼ぶ)が18都府県582隊2080人の規模となっている。うち大隊を派遣しているのは、北陸・近畿・東海の10府県と群馬県。1/4 までにお手柄を2件出したが、この動員数はやはり少なすぎる。公式資料を検証すると、緊急消防援助隊は、2018年時点で全国5978隊6000人の登録数と公表されている。つまり、この消防庁の資料を前提とすれば、全国からわずか3分の1の隊員しか能登被災地に派遣されていない。11府県の大隊動員では少なすぎるだろう。関東甲信8都県の大隊も惜しみなく出動させるべきだし、中国四国のリソースも使うべきだ。なぜ出し惜しみするのか。今こそ活躍の本番であり、日頃の訓練と予算の成果を出すときであり、国民に存在意義を証明するときだ。発災72時間を前に、隊全体の3分の1投入とは何事か。野党にはぜひ国会でこの不全を追及していただきたい。
だが、何と言っても問題は自衛隊(迷彩)だ。防衛省・自衛隊の対応は、P.44 から曖昧な記述で示されている。注目していただきたい。1/4 から活動人員を2000名にするとある。1/1 の初動は1000人だった。FRASHが少なすぎると批判記事を書いている。東日本大震災のとき(菅直人)は、初日で8400人が派遣され、2日後には5万人が動員された。震災の範囲と程度は異なるけれど、どう考えても今回の自衛隊の派遣は少なすぎる。発災から2日間、わずか1000人の自衛隊員しか活動してない。普通科(歩兵)で動員されたのは、金沢の第14連隊、久居(津)の第33連隊、守山(名古屋)の第35連隊だけだ。吝嗇どころではない。能登で救助活動をやる気が全くない真実が透けて見える。呆れ果てて絶句する。地震や洪水の災害のとき、救出救命の活動部隊で国民が最も期待するのは自衛隊だ。消防や警察よりも真っ先に自衛隊に視線が行く。
それは、過去の経験やマスコミの宣伝報道から当然のことだろう。ブログで幾度も嘆いてきたが、昔の自衛隊はこうではなかった。もう20年以上前、広島の土砂崩れで住民が埋まったとき、若い隊員が雨の中、徹夜でスコップを振るい、土の中から生存者を救出した感動の場面があった。テレ朝の報道番組が傍らに張り付いて放送、国民が固唾をのんで緊迫の現場を見守った。そうしたお手柄の経過と実績があり、自衛隊の人気が高まり、災害救助の自衛隊に入りたいと希望する若者が増えた。私自身も高校生のとき、大型台風の直撃に遭遇した折、善通寺から勇敢に山を越えて救援に来た陸自部隊を目撃していて、自衛隊への印象が大きく変わった経験がある。それは1975年だから、革新自治体の政治の全盛期で、すなわち自衛隊への一般の評価が最も厳しい時代だった。かくして懸命の努力で好評を勝ち得た自衛隊像が変貌したのが、安倍政権のときで、自衛隊は災害救助をやらなくなった。
右翼政権の方針と政策によって、自衛隊は醜く変質し、災害時に被災者を救出救命する英雄的な活動から手を引き、中国と戦争する軍隊(米軍の二軍)に化けてしまう。しかしながら、災害時人命救助で貢献する自衛隊というイメージと国民の期待があり、そのブランド価値を否定することもできないため、自衛隊はアリバイ的に「出動」し、奇妙な辻褄合わせの活動を演じてきたのだ。それは端的に言えば、災害で犠牲になった被災者の遺体回収の業務だった。象徴的だったのが10年前の御嶽山噴火時の出来事で、私はずっとブログで自衛隊の不作為を批判する論陣を張り、救助活動を故意に止め、自衛隊だけでなく消防や警察さえも現場に行かせない安倍官邸を糾弾した。結局、72時間過ぎて生存者がいないと判断した後、迷彩とオレンジとブルーの3隊が合同で遺体回収の作業に当たった。それを「救助活動」と詐称して。そして以後、その棄民政策を本質とする災害対応が慣例となり標準となる。
安倍晋三と菅義偉と麻生太郎は、態度で明確にメッセージを発信していたと思う。災害に遭っても政府は国民を救助しないし救済しない。自己責任だから自分で何とかしろ。そんな予算は無駄だ。自衛隊は中国と戦争する軍隊であり、アメリカを助けるのが自衛隊だから、国民は勘違いするんじゃない。そんな政策思想と政府行動でこの15年が流れ、マスコミもそれを当然視し、右翼ネオリベ化した国民も自治体も慣れっこになり、それが常態で常識の世界へと行き着いた。それゆえ、今、棄民政策の洗脳工作が功を奏して、マスコミが「道路が寸断されているから自衛隊が入れない」と言うと、国民全員が頷いて「仕方ない」と簡単に断念する世論状況になってしまった。誰も異論を唱えない。玉川徹ですら疑問を覚えない。本当に、こんな噴飯で異常な倒錯があるかと私は苛立つ。何のために国民は税金を払っているのだ。何のために消防や警察や自衛隊に給料を払い、彼らに訓練をさせているのだ。
自衛隊には工兵(施設科)の組織がある。有事の際に道なき道を整備し、橋なき河に架橋し、陣地を構築して作戦を支援する部隊だ。陸自に装備と兵員の存在がある。今回の能登の震災対応など、まさに彼らの出番で活躍する舞台だろう。だが、Xで、自衛隊に工兵がいるよと誰も言わない。不思議な世論光景だ。仮に北朝鮮軍が能登半島に上陸し、珠洲と輪島を占領して陣地を敷き、半島中部の道路を全破壊したら、政府と自衛隊は「道路が寸断されているので戦闘できません」と言い訳を国民に説明するのだろうか。ロシア軍が稚内・宗谷と知床半島の二方向から同時侵攻して、北緯44度の線を要塞化し、道中央部の陸上交通網を火力で潰した場合はどうか。道路が寸断されているので進めません、留萌 - 網走以北は諦めてオホーツク海は献上しますと、泣き言を言うのだろうか。非常に面白い指摘をしよう。1/4 の政府PDFには、工兵の活動が報告されているのだ。1/3 に3本の県道を修復工事している。
その記述が P.45 にある。苦笑してしまったが、大久保(宇治)から派遣された第4施設団が「道路啓開」の作業をしている。恥ずかしながら、私は「道路啓開」という用語を初めて知った。たった県道3本だが、寸断された道路の復旧任務に陸自の工兵が就いている。読者の皆様は、wiki 情報をチェックして、陸自施設隊の規模と能力がどれほどゴージャスかご認識いただきたい。その上で、マスコミの言う「道路が寸断されているので自衛隊が入れない」の言説の真否を診断いただきたい。施設科の能力は、単に現場で重機を操縦する力仕事だけではない。衛星写真やドローンを駆使して道路の損壊状況を正確に分析把握する任務があり、ゼネコンの比ではないだろう。そして最短時間と最小資源で必要な復旧を達成するという、工兵ならではの特殊な工事設計の技能もある。それらは、一気に爆発的に実行して瞬時に目的を遂げないといけない。秀吉の土木工事でないといけない。有事の作戦行動はそういう性格と条件のものだ。
1/4 から 1/5 にかけて、マスコミ各社が「輪島市で生き埋め多数」と報じ続けている。これは輪島市長発の情報に違いない。つまり、まだ生き埋めになっている者が多くいて、救出して欲しいから何とかしてくれという当局への請願だ。市長が直接顔を出して訴えるのは、政府(岸田官邸)に抗議しているように受け止められ、立場上具合が悪いから、発信者名を伏せてマスコミに書かせている。つまり、それだけ救出救命の手が足りておらず、現場のレスキュー人員が少ないのである。倒壊した家屋の中に生存者が未だ多数いる現実がある。安倍・菅・麻生の棄民政策を継承する岸田文雄が私は許せない。棄民政策に与して国民を騙すマスコミも許せない。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。