2024年5月29日水曜日

ラファ攻撃中止を命令 国際司法裁 イスラエルに暫定措置

 国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官が20日に、国際人道法違反の戦争犯罪を重ねるイスラエルのネタニヤフ首相やガラント国防相らへの逮捕状を請求したのに引き続き、国際司法裁判所(ICJ)は24日、エスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ南部ラファでの軍事攻撃の即時中止の暫定措置を命じました。
 ICJは1月と3月にもジェノサイドを防止する暫定命令を出しましたが、イスラエルはそれを完全に無視しました。軍事作戦中止を命じたのは今回が初めてです。
 命令の内容は、これまでの暫定措置命令を即時履行すること、ラファ検問所を開放し必要十分な人道援助物資流通への妨害をやめること、ジェノサイド容疑に関する国連調査団のガザヘの立ち入りを認めること 等です。

 パレスチナ自治政府の議長府はこの暫定措置に対して、パレルチナの権利を支持する諸国に謝意を表明し、「この国際的コンセンサスは、イスラエルがその同盟国とともに孤立していることを証明した」と強調しました。
 エジプト、ヨルダン、サウジアラビアそしてトルコは、それぞれこの暫定措置を歓迎し評価する見解を表明しました。

 スペイン25日、イスラエルのガザへの軍事侵攻は「真のジェノサイド(集団殺害)」だと述べるとともに、パレスチナを国家として承ずる意向を発表しました。

 一方、米連邦議会は国際刑事裁判所(ICC)が20日にネタニヤフ首相の逮捕状を請求したことへの報復として、ICCに制裁を科す法案を超党派で検討しています。
 確かに米国も国連の運営費用を一部負担しているとはいえ、議会はICCに対してどんな権限を持っているというのでしょうか。非常識というしかなくこれでは米国はイスラエルと共に孤立を深めるだけです。
 しんぶん赤旗の4つの記事を紹介します。
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ラファ攻撃中止を命令 国際司法裁 イスラエルに暫定措置
                        しんぶん赤旗 2024年5月26日
【ベルリンー西本博美】国連の主要司法機関、国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は24日、エスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ南部ラファでの軍事攻撃の即時中止を命じる暫定措置を出しました。南アフリカが、イスラエルによるジェノサイド条約(集団殺人罪の防止および処罰に関する条約)違反をICJに訴えていた裁判で、部分的でもイスラエルに軍事作戦の中止を命じたのは初めてです。
 国際人道法違反の戦争犯罪を重ねるイスラエルに対しては、国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官が20日、ネタニヤフ首相やガラント国防相らに逮捕状を請求するなど、国際的な圧力が高まっています。
 暫定処置は、最終判決の前に出される「仮処分命令」に相当します。1月と3月にも、イスラエルに封し人道支援への協力やジェノサイドを防止するために「あらゆる手段」をとるよう命じる暫定措置を発していました
 今回の暫定措置は、ラファ攻撃開始にともなう住民の強制退避や人道状況の悪化などに触れて、これまでの暫定措置の即時履行を要求。さらにラファ検問所を開放し必要を満たすだけの人道援助を行うこと、ジェノサイドの容疑に関する国連調査団のガザヘの立ち入りを認めることもイスラエルに命じました。
 今回の暫定措置に対して、パレスチナ自治政府報道官は「ガザの戦争中止という国際的なコンセンサスを反映したもので歓迎する」と表明。イスラエル政府は反発し、閣僚らが戦争継続を主張しました。


「イスラエルは従え」国際司法裁の命令 アラブ諸国・トルコ要求
                        しんぶん赤旗 2024年5月26日
【カイロ=秋山豊】国際司法裁判所(ICJ)が24日、ガザ南鄙ラファでの軍事攻撃の即時停止を命じたことを受けて、アラブ諸国とトルコは、イスラエルに命令に従うよう求めました
 パレスチナ自治政府の議長府は、イスラエルは自らを国際法を超越した国であると考えていると批判。国際社会に対し、イスラエルにICJの命令と国際法、国際的に正当性のある諸決議を履行させるように求めました。
 議長府はパレルチナの権利を支持する諸国に謝意を表明し、「この国際的コンセンサスは、占領国(イスラエル)が、それに支援、保護、免責を与える同盟国とともに孤立していることを証明した」と強調しました。
 エジプト外務省は、ICJがイスラエルにガザと工ジプトの境界にあるラファ検問所の開放を命じたことを称賛しました。イスラエル軍が7日にラファ検問所を制圧して以来、同検問所は閉鎖され、ガザヘの人道支援物資を搬入できずにいます。
 同省は「イスラエルは占領国としてガザの人道状況の悪化に法的責任を全面的に負っている」と述べました。
 ヨルダン外務省は、ICJの命令は残忍な侵略戦争と、それが引き起こしている比類ない苦しみ、人道的惨事を終わらせるという国際的な意思を示したと指摘し、イスラエルによる履行の重要性を強調しました。
 サウジアラビア外務省は、ICJの命令を「前向きな措置」とたたえ、パレスチナ人へのあらゆる形の攻撃を止める責任を果たすよう国際社会に求めました。
 トルコ外務省は「法を超越する国はない」と述べ、イスラエルに命令の迅速な履行を要求。国連安全保障理事会に「これを実現するため、役割を果たす」よう求めました。

【解説】国際社会の圧力高める時
 国際司法裁判所(ICJ)24日の暫定措置で、イスラエルにガザ地区南部ラファでの軍事攻撃の中止を求めました。イスラエルに対して、パレスチナ人に対するジェノサイド(集団殺害)を予防・処罰するための「あらゆる措置」を求め、人道支援、食料搬入などを求めてきた2度の暫定措置に続く新たな命令です。
 イスラエルは、これまでの命令をまともに履行せず、国際社会の非難に挑戦するかのように軍事作戦を強行してきました。その結果、ガザでは一層の人道状況の悪化が進みました。
 暫定措置の文面では、裁判官らが、こうした深刻な人道状況に懸念しつつ次のように指摘しています。
 ー南部ラファの状況は 「破滅的だ」。
 ーガザの4分の3以上の地域からの退避命令に加え、7日のラファヘの軍事攻撃開始前後の退避命令で、80万人が避難させられた。避難先の「安全地帯」には水もトイレもない。「尋常ではない重大さ」だ。
 ーラファからの退避が「市民の安全を高めるために行われた」との(イスラエルの)主張には「説得力がない」。

 ICJにイスラエルのジェノサイド条約違反を提訴した南アフリカはこれまで、イスラエル軍のガザでのすべての軍事作戦の中止と全面撤退、即時停戦を命じる暫定措置を求めてきました。ICJが部分的であれ、イスラエル軍の作戦の中止を命じるのは初めてです。
 イスラエルの強硬姿勢は、深刻な人道状況を生み、国際社会でのイスラエルとその同盟国の孤立を深めるものとなっています。これまでの暫定命令を徹底的に無視してきたイスラエルに対し、ICJがより厳しい措置を出さざるを得なくなったといえます。
 イスラエルに今度こそ暫定措置を履行させるよう、国際社会の圧力を高める時です。
                            (伊藤寿庸)


「真のジェノサイドガザ紛争にスペイン国防相
                        しんぶん赤旗 2024年5月27日
 スペインのロプレス国防相25日、イスラエルの軍事侵攻によパレスチナガザで紛争は「真のジェノサイド(集団殺害)」だと述べました。スペインはパレスチナを国家として承ずる意向を発表し、イスラエルは反発しています。ロブレス氏は承認について反イスラルの動きではなく「ガザでの暴カの終結」を支援するためだと強調しました。
 ロイター通信によると、ロブレス氏はスペイン国営テレビのインタビューで、「ガザで起きていることを無視することはできない。これは真のジェノサイドだ」と語りました。
 スペインはアイルランドやノルウェーと共に2228日付でパレスチナを国家として承認すると発表。ロプレス氏はこれは誰かに敵対するものでも、イスラエル政府や私たちが尊重するイスラエル人に敵対するものでもない」と説明しました。
 スペインのサンチェス首相は20日、より多くの国がパレスチナを国家として承認すれば、イスラエルとイスラム組織ハマスとの間での停戦を求める国際的な圧力が高まるだろうと述べていました。
 国際司法裁判所(ICJ)が24日にイラエルに対し、ラファでの軍事攻撃の即時中止を命じる暫定措置を出しました。スペインのアルバレス外相は25日、X(旧ツイッター)の投稿で、ICJの暫定措置は「義務的なものである。私たちは(イスラエルに)その適用を要求する」「ガザの人々の苦しみや暴力は終わにすべきた」と主張しました。


米議会ICC制裁法案検討 イスラエル支援で圧力 世界から批判
                        しんぶん赤旗 2024年5月25日
 国際刑事裁判所(ICC、本部オーフンダ・ハーグ)が20日にイスラエルのネタニヤフ首相の逮捕状を購求したことへの報復として、米連邦議会はICCに制裁を科す法案を超党派で検討しています。、努力を妨害する勣きに、国際社会から厳しい批判の声が上がっています。
 ICCへの制裁法案は、下院で多数派を握る共和党が主導しています。共和党はイスラエル支援の強力なメッゼージを発するとして、民主党も巻き込んだ超党派かつ上下両院での法案可決を目指しています。民主党議員の大部分とバイデン政権は協力する姿勢を示しています。
 不院外交委員会のマコール委員長(共和党)は23日、逮捕状を出すか判断するICCの予審裁判部に「逮捕状発行を恵いとどまらせることが法案の目的だ」と述べました。
 一方、世界各国の120を超える人権団体や平和団体は22日、バイデン米大統領に連名書簡を送り、米議会の動きに反対するよう要求しました。書簡にはヒューマン・ライツ・ウオッチやバーゼル平和事務所などが名を連ねています。
 書簡は、ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領への逮捕状ではバイデン政権がICCの役割に理解を示したことを指摘。「司法判断を選択的に扱うことは人権侵害や虐待から人を守るである法律の信頼性や効力を破壊する」と批判しました。たとえ米国がICCに非加盟であっても「独立した国際的な司法制度を支持し続けるよう求める」と強調しました。
 国連のドゥジャリク事務総長報道官は21日、「すべての国連加盟国は司法制度を尊重する責任を負っている」と指摘しました。
 米メディアは4月末、ICCがネタニヤフ氏への逮捕状請求を検討していると報道。米議会では逮捕状が請求された場合には報復措置を求める議論が強まりました。
 国運人権理事会の特別報告者45人は5月10日の声明で、「報復の脅迫は免責の文化を助長する」と指摘。「パレスチナのガザ地区での流血を終わらせるために世界が団結すべき時にICCへの報復の議論を目にするのは苦痛だ」と批判し、米国とイスラエルにICCへの協力を求めました。

米ハーバード大が イスラエル批判学生の卒業を認めず

 米ハーバード大学で23日行われた学位授与式で、ガザに侵攻を続けるイスラエルヘの抗議行動に参加した学生13人の卒業を認めないという懲罰を行いました。
 これに抗議して1000人以上が式場から退席し、「彼らを(式典に)参加させろ」と唱和しました。
 式典であいさつした学生シュルティ・クマルさんは大の決定を強く批判し、「今学期、私たちの言論の自由と連帯の表明は処罰の対象となり卒業は不確かなものになった」と訴え学位を受け取る前に退席しました。

 チリの学生たちの間でガザでの侵攻を続けるイスラエルの大学との関係断絶を求める運動が高まっています。24日には首都サンティアゴでパレスチナ連帯の数百人デモが行われ、ジェノイド(集団殺害)をやめよ、いますぐ停戦をとの声を上げました。
 学生の一人、パロマ・バレンスエラさんは「公立の大学としてジェノサイド反対の声明を出さないのは間違っているし、非難されるべきだ」「私たちはジェノサイドの共犯者であり続けてはならない」と述べ、大学も国家もイスラエルとの関係を断絶するべきだと訴えました。

 昨年、ガザでのイスラエルの行為をジェノサイド(集団殺害)条約違反として国裁司法裁判所(ICJに提訴した南アフリカ政府は24日、ガザ南部ラファヘの軍事攻撃の停止をイスラエルに命じた国際司法裁判所(ICJ)の決定を「画期的」と歓迎しました。
 しんぶん赤旗の2つの記事を紹介します。
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言論の自由と連帯の表明は処罰の対象となった イスラエル批判学生 大学側が卒業認めず 米ハーバード大
                        しんぶん赤旗 2024年5月25日
学位授与式で抗議
 米ハーバード大学で23日行われた学位授与式で、パレスチナ自治区ガザに侵攻を続けるイスラエルヘの抗議行動に参加したことで同大学が学生13人の卒業を認めない決定を下したこと対し、多くの卒業生が抗議しました。式典で「占領を終わらせろ」と書かれた角帽やパレスチナの旗を掲げる学生や、退席して抗議を示す学生の姿がありました。
 同大学の学生新聞クリムゾンによると「1000人以上が退席」しました。式場から立ち去った学生は、卒業を認められなかった13人に言及し、「彼らを(式典に)参加させろ」と唱和しました。式典であいさつした学生は大の決定を強く批判。米紙ニューヨーク・タイムズによると、シュルティ・クマルさんは「今学期、私たちの言論の自由と連帯の表明は処罰の対象となり、卒業は不確かなものになった」と訴えました。
 学位を受け取る前に退席したクマルさんは紙に、「彼らは仲間であり友だちだ。その家族が(式典に出席できないため)心を痛めているときに、良心にかけて卒業を祝う気持ちにはなれない」と語りました


大学は共犯者であり続けてはならない チリ留学性が連帯デモ
イスラエルとの断絶を要求
                        しんぶん赤旗 2024年5月27日
 中南米地域で最大のパレスチナ難民が居住するチリの学生たちの間で、ガザでの侵攻を続けるイスラエルの大学との関係断絶を求める運動が高まっています。24日には首都サンティアゴでパレスチナ連帯のデモが行われ、ジェノイド(集団殺害)をやめよ、いますぐ停戦をとの声を上げました
 現地からの報によると、デモを呼び掛けたのは、チリ大学生連合や大学内のパレスチナ連帯組織。サンティアゴ市内にあるチリ大学本部キャンパスでは、1948年のイスラエル建国でパレスチナ人が故郷を追われた「ナクバ(大災厄)」の日に合わせ、学生らが15日からパレスチナ連帯キャンプを設置。大学当局に、イスラエルのガザ攻撃をジェノサイドとして非難することや、イスラエルの企業や大学との関係を断絶するよう要求しています。
 24日のデモには、キャンプに寝泊まりている数百人の学生が参加しました。学生の一人、パロマ・バレンスエラさん(20)は、メディアの取材に、「公立の大学としてジェノサイド反対の声明を出さないのは間違っているし、非難されるべきだ。私たちは、こうした不正義に対して黙っているわけにはいかない」、「ジェノサイドの共犯者であり続けてはならない」と述べ、大学も国家もイスラエルとの関係を断絶するべきだと訴えました。
 チリ大学のパレスチナ連帯委員会のアルド・ビジャロポス代表は、イスラエルのテルアビブ大学の研究成果が、イスラエルの軍事作戦に反映している可能性を指摘。「私たちが学ぶ教育機関は、イスラエルの学術団体との関係を断つ必要がある」と強調しています。

ICJ命令 南ア歓迎
 南アフリカ政府は24日、ガザ南部ラファヘの軍事攻撃の停止をイスラエルに命じた国際司法裁判所(ICJ)の決定を「画期的」と歓迎しました。ロイター通信が伝えました。
 南アは昨年、ガザでのイスラエルの行為をジェノサイド(集団殺害)条約違反としてICJに提訴。今月16日、ラファ攻撃停止命令をICJに求めていました。
 南アの国際関係・協力省のゼイン・ダンゴール総長は、「この命令は画期的なもので、イスラエルが軍事行動を停止するよう明確に言及した初めてのものと、同省が公開した動の中で述べました。局長は、ICJの調査官の立ち入り許可をイスラエルに命じることについて国連安保理に提起すると述べました。

 南アのラマポーザ大統領は大統領府の声明で、ICJ命令を歓迎する一方、ガザでの人的被害抑制に国連安保理が成功していないことを引き続き懸念していると表明。「この裁判は、ガザに住む一般のパレスチナ人焦点を当てたものだ。彼らは個々に責任を負ってないものによって集団懲靫受け、7ヵ月間苦しんでいる」と述べました。 

ICJの判決を無視してイスラエル軍がラファの難民を空爆、多数の死傷者

 エスラエルに対し国際司法裁判所(ICJ)が24日にパレスチナ自治区ガザ南部ラファでの軍事攻撃の即時中止を命じる暫定措置を出した後も、イスラエルのラファ攻撃(空爆・砲撃)は止みません。26日にもハマスの2名を殺害するという口実で爆撃しましたが、それによって40名以上のパレスチナ人を殺害され、数百名の負傷者が出ました。

 イスラエルは「精密誘導爆弾使用した云々」と述べていますが、一体誰がそれを信じると思っているのでしょうか。決して口実にはなりません。イスラエルのICJ無視の態度は徹底していますが、それは直ちにジェノサイドの敢行を意味する以上、絶対に許されることではありません。
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ICJの判決を無視してイスラエル軍がラファの難民を空爆、多数の死傷者
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 イスラエル軍は5月26日、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)がラファで設置した10カ所以上の避難場所を空爆、少なくとも40名が殺害されたと伝えられている
 ラファには100万人とも150万人とも言われる人びとが避難民として生活、イスラエル軍が攻撃すれば大量殺戮と呼べる状況になることは明白だったこともあり、ICJ(国際司法裁判所)は5月24日、イスラエルに対してラファでの軍事作戦を停止するようにという判決を出していた。その判決に挑戦するかのようなイスラエル軍の攻撃だ。
 こうした残虐行為をイスラエルが続けられる理由は「国際社会」と自称するアメリカやイギリスの支援があるからにほかならないが、西側の有力メディアも「国際社会」の宣伝機関としてフル稼働している。その背景は本ブログで繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。
 そうした宣伝機関のひとつであるアトランティックに掲載されたグレアム・ウッドの記事に登場する「合法的に殺された子ども」という表現はさすがに批判されている。「合法的に殺された子ども」のことが世界に伝えられることはイスラエルにとって好ましくないので、ジャーナリストがガザへ入ることを規制すべきだとウッドは主張している。確かにイスラエル軍は子どもや女性だけでなく、医療関係者やジャーナリストを攻撃のターゲットにしてきた。
 イスラエル軍によるガザでの大量虐殺について西側の有力メディアは「イスラエル軍とハマスの戦闘の巻き添え」だと主張しているが、実態はガザやヨルダン川西岸からパレスチナ人を一掃することにある。つまり1948年5月に「建国」が宣言されて以来、イスラエルは民族浄化作戦を展開してきたのだ。殺されたくなければ難民としてさまよえというわけである。

 アメリカ軍もイラクへ軍事侵攻した際、「戦闘の巻き添え」と称して非武装の人びとを殺傷している。例えば、2007年7月にバグダッドでアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが地上の一団を銃撃し、ロイターの特派員2名を含む非武装の十数名を殺害している。内部告発を支援する活動をしているWikiLeaksがこの銃撃の様子を撮影した映像を2010年4月に公開、問題になった。
 WikiLeaksへこの情報を渡したのはアメリカ軍のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵。2010年5月に逮捕され、軍事法廷は懲役35年を言い渡された。
 アメリカの司法当局はWikiLeaksの象徴的な存在であるジュリアン・アッサンジを起訴しようと目論む。自分たちにとって都合の悪い情報が明らかにされることを恐れた支配層が見せしめのため、彼に報復しようとしたと言えるだろう。
 アッサンジはロンドンのエクアドル大使館へ逃げ込んだが、2019年4月11日、アメリカの政府機関の要請でロンドンのエクアドル大使館へロンドン警視庁の捜査官が踏み込み、逮捕された。現在、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所へ入れられている。

 バラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。この時に手先として使ったのがネオ・ナチだが、クーデター体制は国民の支持を得ていたとは言い難く、アメリカ/NATOは8年かけて戦力を増強しなけらばならなかった。そのために利用されたのが「ミンスク合意」だ
 準備が整い、ヤヌコビッチの支持基盤のひとつだったドンバスを攻撃しようと準備していた時、ロシア軍は終結していたウクライナ軍や軍事施設、そして生物兵器の研究開発施設を攻撃、ウクライナ政府はすぐに停戦交渉を開始、ほぼ合意したのだが、それをアメリカやイギリスの政府や議員が壊している。
 そのアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国の支配層は2023年の前半までロシア軍に楽勝できると思い込んでいたようだが、ウクライナ軍は崩壊状態だ。アメリカ/NATOはロシアをあまりにも過小評価しすぎていた。ウクライナが勝利することは不可能に近い。そこで始めたのがロシアの戦略核施設への攻撃や長距離ミサイルによるロシア市民に対するテロ的な作戦だ。

 イスラエル軍はガザで苦戦している。非武装の住民を大量虐殺しているものの、ハマスに勝利することはできていない。しかもパレスチナ人はイスラエルの攻撃に耐え、国外へ逃げ出していない。イスラエル政府はパレスチナ人を皆殺しにするつもりのように見える。口先でどのように言おうと、アメリカやイギリスをはじめとする西側諸国はイスラエルによるパレスチナ人虐殺を支えていることは間違いない。

29- 中国は決して忘れない:「仕返しは地獄になる」(賀茂川耕助氏訳)

 NATO軍によるいわゆる「コソボ空爆」の一環として1999年5月7日、米軍の爆撃機B-2がベオグラード市内に出撃した際に、駐ユーゴスラビア中国大使館を爆撃し、29人の死傷者を出しました。

 後に緊急会議が開催されNATOと米国は中国に対し誤爆を謝罪しましたが、当時中国はセルビア側を支援していたため、故意に攻撃したのではないかという観測も報道されました。
 それから25年が経過した同日、米国のブリンケン国務長官が中国の空港に降り立ちましたが、出迎えたのは外相ではなく上海市党委員会主任で政治局委員のチェン・ジーニンで、レッドカーペット敷かれていなかったということです。

 この事実は もはや25年前の中国ではなくたとえ「誤爆」と言い訳されたとしても、唯では済まされないまでに、中国はいまや軍事的、経済的な大国になったことを顕わしています。
 米国がそのことをとうに忘れていたにしてもです。
「耕助のブログ」の掲題の記事を紹介します。
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中国は決して忘れない:「仕返しは地獄になる」
                 耕助のブログNo. 2161  2024年5月28日
   China Never Forgets: “Paybacks can be HELL!”  by Seth Fcerris
ベオグラードの中国大使館爆撃25周年に中国がベオグラードを訪問したことは、米国務長官が中国に到着した際に冷遇されたことと合わせて考えれば、米国に明確なメッセージを送るはずだ。ワシントンのエリートたちがそれを理解できるほど賢いかどうか別問題であるが。
アンソニー・ブリンケン米国務長官は中国に到着し、飛行機を降りると、出迎えには伝統的なレッドカーペットが敷かれていなかった。ブリンケンを出迎えた高官たちのヒエラルキーのトップにいたのは、上海市党委員会主任で政治局委員のチェン・ジーニンだった。ブリンケンは米国の国務長官であり、儀礼上、出迎えは少なくとも中国の外相のワン・イーだが、彼はいなかった。
また、米国と特にブリンケンが、ロシアとの緊密な関係を理由に中国に対する制裁の脅威を発していることも注目に値する。国連安全保障理事会で承認されていない制裁は違法であると考える中国側にとっては、間違いなく好ましくないことであろう。
ウクライナでのロシアの「特別軍事作戦」(SMO)が始まって以来、米国は、中国がロシアに武器を供給しているという噂を持ち上げてきた。今、彼らは「デュアルユース(二重使用)」という包括的な用語のもと、中国のあらゆる輸出品に狙いを定めているように見える。
このような懲罰的制裁の実績は悲惨なもので、特にイラクの場合をみると医療品や食料品などの「デュアルユース」品目に対する制裁で、子どもたちだけで50万人が死亡したと考えられている。もちろん米国はこの数字が「誇張されたもの」であると主張しようとしているが、これにはまともな証拠がない。
このような制裁の本質を示す証拠としては、ローデシア、そしてその後継国ジンバブエ、さらにはイラン、そして現在のロシアへの適用が挙げられる。経済的とはいえ、制裁は戦争の武器であり、その主要な行使者に牙をむき始めている

言うまでもなく、中国がすぐに方針を変えることはないだろう。ロシアとの貿易は急成長しており2023年には目標の2000億米ドルを400億米ドルも上回っている。これにより中国経済は2024年の第1四半期だけで5.4%の成長となった。
EUが愚かにも拒否し、禁止したロシアからのエネルギー輸出を、中国は喜んで手に入れ、ますます増大する工業力の燃料として役立てている。その見返りとして中国は米国とEUの制裁によって生じたロシアへの輸入不足を補い、工作機械やコンピューター・チップなどの製造品を提供してロシア経済を支えている。
米国の制裁の脅威に対して、中国外務省のワン・ウェンビン報道官は中国の立場を改めて表明した:
    米国は、中国とロシアの間の正常な貿易と経済交流をめぐって根拠のない非難を続ける一方で、ウクライナに多額の援助を提供する法案を通過させている。これは偽善的で非常に無責任である。中国はこれを断固として拒否する。
    ウクライナに関して、中国の立場は公正かつ客観的である。和平と政治的解決のための協議を促進することに積極的に取り組んできた。政府は法律と規則に従い、デュアルユース品の輸出を監督している。中国はウクライナ危機を作っていないし、当事者でもない。私たちは決して炎上を煽ったり、利己的な利益を求めたりしないし、スケープゴートになることも決して認めない。
    中国がロシアや世界の他の国々と、平等と相互利益に基づいて正常な貿易と経済交流を行う権利を妨害したり、妨げたりすべきではないということを、もう一度強調しておく。中国の合法的かつ合法的な権利と利益は侵害されるべきではない。
    米国は、炎上をあおったり、他国を中傷したり、責任を転嫁したりすることは、ウクライナ問題を解決する方法ではないことを知る必要がある。すべての当事者の正当な安全保障上の懸念を受け入れ、対話と交渉を通じてバランスの取れた、効果的で持続可能な欧州の安全保障体制を構築することだけが、正しい道なのだ。
 
中国の立場は、地球上で最も古く偉大な文明のひとつである中国に期待されるように、バランスのとれた思慮深いものである。米国政府全般、特にアンソニー・ブリンケンは、自分たちの祖先がまだ泥の小屋に住んでいた時代に中国が外交を行っていたことを思い出すべきである。
中国人はまた、米国とEUが戦争を長引かせるために何十億ドルもの兵器を投入しておきながら、他国にはロシアとの民間貿易の停止を要求していることに反感を持っている。この件に関する欧米の偽善に対する彼らの明らかな嫌悪を責めることはできない。
さて、米国によるベオグラードの中国大使館空爆25周年についてである。1999年5月7日の中国大使館空爆は、当時は多くの人がそう考えていなかったが、画期的な出来事だった。この空爆は3人の中国人ジャーナリストを殺害し(当時は衝撃的だったが、米国とその「最大の同盟国」イスラエルによって行われた現代の戦争では当たり前のことになっている)、その他多数の中国人を負傷させた。
当時、中国は国連でNATOによるユーゴスラビア空爆に反対を表明しており、米国主導の攻撃承認案にロシアとともに拒否権を発動していた。米国は後に、空爆は「偶発的」なものだったと主張したが、当時、中華人民共和国よりもはるかに強大な権力を誇っていた米国が、さりげないメッセージを送った可能性は高い。
爆撃の後、北京の米国大使館前で大規模な抗議デモが行われたが、これは政府公認の抗議デモとしては10年ぶりのことだった。爆撃によって中国が軍隊の大規模なアップグレードに力を入れるようになったという証拠もある。なぜなら米国との平和共存政策が支持されないだけでなく米国によって積極的に悪用されていることに気づいたからだ。
しばしば「富国強兵」と呼ばれるこの政策はこの20年間で実を結び、中国は現在、J-20やFC-31のようなステルス戦闘機や、DF-21のような弾道弾対艦ミサイル(「空母キラー」とも呼ばれる)を独自に生産できるようになった。これらはすべて、すでに実績のあるロシアのSu-35のような、より通常の航空機の幅広い配列でバックアップされ、急速に成長し近代化しつつある中国海軍は今や世界最大である。
島嶼基地を作るという中国の政策は、将来の戦争において米国の空母を中国本土や重要な航路から遠ざけ、これらのプラットフォームにおける米国の優位性を否定するのに十分な広さの「立ち入り禁止」区域を作ることを意図しているようだ。

軽視された中国設計の兵器
言うまでもなく、西側の軍事評論家たちは中国が設計した兵器システムを軽視する傾向があり、実際の証拠を示すことなく、米国の兵器システムが「著しく優れている」と決めつけている。ジャベリンATGMやスティンガーMANPADから、レボード2、チャレンジャー2、エイブラムス、ブラッドレーAFV、そして「戦争に勝つ」HIMARS、パトリオット、ストームシャドウ、地上発射型小口径爆弾(GLSDB)に至るまで、西側の「驚異の兵器」はすべて戦争の流れを変えることができず、多くの場合、見事に失敗している
さらに悪いことに、中国を制裁するという脅しは、それが銀行に対する金銭的なものであれ、主要企業や輸出品に対するものであれ、とんでもない裏目に出る可能性が高い。中国は世界の工場であり、世界の機能を維持する日常品の大半を供給している。製造品だけでなく、現代の技術社会が機能し続けるために必要不可欠なレアアースも中国が供給量の92%を占めている

流れは変わった
中国はもはや、1999年の米国大使館爆撃に安全に報復する術を持たない発展途上国ではない。中国は今や、軍事的なものであれ一方的な制裁という非常識な考えであれ、米国のいかなる侵略に対してもさまざまな方法で報復することができる軍事的、経済的な大国なのである。
すでに中国人は米ドル、特に米国債を手放し、金を買っている。このような動きが急速かつ大規模に拡大すれば、脱ドルのプロセスが急速に加速し、ひいては米国が金を刷り続ける能力に深刻な影響を与えるだろう。
米国の大企業に対する逆制裁も、深刻な経済的苦境を引き起こすだろう。レアアースの供給が途絶えれば、米国のテクノロジー産業、特に米軍産複合体を支える産業は急停止するだろう。

まるで米国政府はブロックの中で一番大きな子供ではなく、ブロックの中でたった一人の子供であることに慣れきっていて、発展についていくのに完全に失敗したように私には見える。そして、いじめられっ子が、自分がいじめる相手よりも大きく強くなったことに気づいたときに何が起こるかを知ることになるのだ。

がんばれ米国。責めるのは自分しかいない!
https://journal-neo.su/2024/05/13/china-never-forgets-paybacks-can-be-hell 

2024年5月25日土曜日

戦争犯罪に逮捕状請求 ICC イスラエル首相・国防相 ハマス幹部にも

       お知らせ

  都合により27日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。

 国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相、そしてイスラム組織ハマス指導者の逮捕状を請求したと発表しました。今後、ICCの予審裁判部が逮捕状を出すか判断します。
 この逮捕状請求について多くの国々は「法はすべての人に平等に適用されるべきだ」として歓迎しましたが、イスラエルのネタニヤフは「歴史的暴挙でICCにとって永遠に続く恥だ」と反発し、米国のバイデンも「言語道断」「請求を拒否する」と述べました。
 驚くべき反応ですが、彼らが昨年10月7日のハマスの越境攻撃こそが根源的な犯罪であって、その後のイスラエルのガザでの大虐殺は大した問題ではないと考えていることが良く分かります。しかしそんな考え方はとても通用するものではなく、却ってイスラエルや米国の異常な感覚を証明するものです。
 因みにカーン主任検察官が昨年10月7日の越境攻撃に関してもハマスの指導者に対する逮捕状を請求しているのは、そうでもしないことには紛糾して収まらないと判断したものと思われます。
 しんぶん赤旗の5つの記事を紹介します。
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戦争犯罪に逮捕状請求 ICC イスラエル首相・国防相 ハマス幹部にも
                        しんぶん赤旗 2024年5月22
 国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)のカーン主任検察官は20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相、イスラム組織ハマス指導者の逮捕状を請求したと発表しました。今後、ICCの予審裁判部が逮捕状を出すか判断します。(ベルリン=吉本博美、外信部=洞口昇幸)

 カーン氏は会見で、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で民間人を意図的に殺害し、飢餓状態などの深刻な傷害を与えたのは犯罪行為であり「(ネタニヤフ首相らが)刑事責任を負うと信じるに足る合理的な証拠がある」と強調。「自国民を守るために行動を起こす権利があるが、国際人道法の順守義務を免除するものではない」と断じました。
 逮捕状請求について、南アフリカやスペインなどは「法はすべての人に平等に適用されるべきだ」として歓迎しました。
 イスラエルのネタニヤフ首相は「歴史的暴挙で(ICCにとって)永遠に続く恥だ」と反発し、イスラエルを支える米国のバイデン大統領も「言語道断」「(請求を)拒否する」と述べました。
 逮捕状請求はハマスの最高指導者ハニヤ氏や、ガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル氏を含む3人も対象としました。
 ICCは昨年3月、ロシアのプーチン大統領がウクライナでの子どもの誘拐に関与したとして逮捕状を出しています。
 国際刑事裁判所(ICC) 独立した常設の国際裁判所。戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド(集団殺害)の罪、侵略の罪を犯した個人を裁きます。2002年の設立条約発効を受け、03年に設立されました。裁判官(任期9年)は18人で加盟国が選出します。パレスチナや日本を含む120以上の国・地域が加盟し、米国やイスラエルは非加盟。加盟国は逮捕状が出された者が自国領内に入った際に拘束するよう協力を求められます


ICC・逮捕状請求 各国が支持
                       しんぶん赤旗 2024年5月22
 国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官が20日、戦争犯罪などでイスラエルのネタニヤフ首相やハマスの指導者らの逮捕状を請求したと発表したことについて、南米や欧州諸国や南アフリカなどが支持、歓迎しています。

チリ・コロンビア南アフリカなど
 ICCにイスラエル・パレスチナ両地域での戦争犯罪に関する捜査を求めてきたチリの外務省は20日、ICC検察官の逮捕状購求を支持する声明を発表しました。声明は「ICC検察官が進めている活動を支持し、すべての国が捜査に協力することを期待すると述べています。
 イスラエル軍のガザ侵攻を厳しく批判してきたコロンビアペトロ統馴は20X(旧ツイッター)でコメントを発表しました。ペトロ氏は、逮捕状請求がイスラエルとハマス双万の幹部を対象にしていることについて、「紛争のすべての側の指導者が等しく含まれた措置」と指摘。それが、「正しい方向への一歩であり、無処罰に反対する闘いが大きく発展することになる」と評価しました。
 南アフリカのラマポーザ大統領は20日の声明で決定を「歓迎する」と表明。「国際的な法の支配を守り、凶悪な罪を犯した者が説明責任を果たし、被者の権利を守るために、法はすべての人に平等に適用されるべきだ」と述べました。同国は昨年、イスラルがパレスチナ自治区でジェノサイド(集団殺害)を行っているとして国際司法裁判所(ICJ)に提訴しています。

ベルギーやスペインも
 ベルギー外務省は20日の声明で、ICCの決定を「支援する」と表明。「ガザでの犯罪は、加害者がだれであっても、最高レベルで訴追されなければならない」と強調しました。
 スペインのディアス副首相兼労働相はX(旧ツイッター)への投稿で「良い知らせだ。国際法はすべての人に適用されるべきだ」と歓迎。私たちは何カ月も前から、パレスチナでの虐殺をとめるために必要な捜査を要求してきた」と強調しました。

米はイスラエル擁護
 パイデン米大統領は20日、声明を発表し、国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官がイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を請求したことについて、「言語道断だ」と批判しました。
 バイデン氏は「カーン氏言おうとしていることが何であれ、イスラエルとハマスは決して同等ではない」と強調。「われわれは常にイスラエルを支持し、イスラエルの安全保障を脅かすものに対抗する」と主張しました。
 また、日のホワイトハウスでの演説で、「いま起きていることはジェノサイド(集団殺害)ではない」と強弁し、イスラエルを擁護しました。
 プリンケン国務長官も同日の声明で、カーン氏がハマスの指導者とともにイスラエルの高官の遼捕状を請求したことは「恥ずべきことだ」と明言。この決定は、人質の解放や人道支援の強化など「停戦合意に向けて続けられている取り組みを危うくする可能性がある」と批判しました。

英やドイツ 疑問呈する
 イスラエル寄りの立場を取る英国やドイツは、ICC主任検察官の発表に疑問を呈しました。
 英国のスナク首相の報道は、「戦闘を一時停止させ、人質を脱出させ、(パレスチナヘの)人道援助を受け入れるということに関して、何の役にも立たない」と主張。「英国はパレスチナを国家として承認しておらず、イスラエルはICC加盟に必要なローマ規定を批准していない」として、ICCは逮捕状を請求できる権限がないとの考えを示しました。
 ドイツ外務省は20日の声明で、「(ICCの)独立性手続きを尊重する」と表明する一方、イスラエル首脳らとハマスの指導者の双方に逮捕状が購求されていることから「両者が対等であるとする不正確な印象が増している」と主張。ハマスはイスラエル襲撃時の虐殺の責任を負い、イスラエルはハマスから国民を守る権利があるとしました。


カーン主任検察官 声明(抜粋)、
                        しんぶん赤旗 2024年5月22
 国際刑事裁判所のカーン主任検察官が20日、発表した声明の抜粋は次の通り。

 2023年10月7日以降にイスラエル領およびパレスチナ自治区(ガザ地区)で行われた、次の戦争犯罪、人道に対する罪においてヤヒヤ・シンワル(ハマスガザ地区指導者)、ムハンマド・デイアブ(ハマス軍事部門司令官)、イスマイル・ハニヤ(ハマス政治部門指導者)は刑事責任を負うと信じるに足る合理的根拠がある
 ローマ規定7条(人道に対ずる犯罪)項(b)絶滅させる行為/同(a)および8条(戦争犯罪)2項(c)(i)殺人/同8条2(c)(iii)人質をとるこ(など計8項目)に該当する。

 23年10月8日以降のパレスチナ領内で行われた、次の戦争犯罪、人道に対する罪において、ベンヤミン・ネタニヤフ(イスラエル首相)、ヨアブ・ガラント(国防相)は、刑事責任を負うと信じるに足る合理的根拠がある
 ローマ規定8条2項(b)(xxv)戦争の手段として文民を飢餓の状態にする/同8条2項(a)(iii)身体または健康に対して故意に重い苦痛を与え、または重大な傷害を加えること/同8条2項(a)(i)故意の殺人/同8条2項(b)(i)文民を故意に攻撃/同7条項(b)飢餓によってもたらされる死を含む、全滅および殺人-(など計7項目)に該当する。
 これらは23年10月8日以降の、ラファ、ケレムシャローム、エレズの3ヵ所の検問所の完全封鎖を含むガザ封鎖と、その後の検問所開通の際の、食料や医薬品を含む基礎的物品の輸送の故意の制限によって発生した。封鎖は、同9日以降の、イスラエルからガザヘの水道パイプラインの断水、同8日から今日で統く電力供給の遮断や妨害を含む。これらは食料を受け取るために並ぶ行列への攻撃、人支援団による輸送に対する妨害も含め、文民への攻撃と並行して行われた。
 戦争の手段として飢餓を使用し、▽ハマスのせん滅▽ハマスが拉致した人質の返還のため▽ガザ市民を集匝懲罰する手段として、ガザの人々に対し暴力を使う、統一の計画の一部として実施された。


ガザ北部病院標的 イスラエル軍が包囲・銃砲撃
                        しんぶん赤旗 2024年5月23日
 【カイロ=秋山豊】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は21日、パレスチナガザ北部ジャバリヤのアルアウダ病院がイスラエル軍に19日から包囲されていると述べました。病院のスタッフ148人と患者22人、付き添いの人々が閉じ込めちれています。

「医療サービスが枯渇する」
 本紙が地元の人権活動家の協力を得て21日にインタビューした同病院のムハンマド・サルハ副院長は「イスラエル軍に包囲され、病院の近くで銃撃と砲撃が行われている。救急車が病院から出ることができない。負傷者がここまでたどり着けない」と話しました。
 アルアウダ病院は昨年12月にもイスラエル軍に包囲されました。病院のスタッブによると軍の攻撃で医師3人が死亡し、ベッ48床を失うなどこれまでも深刻な被害を受けてきました。
 サルハ氏は「燃料と清潔な水が不足していることと、病院が標的にされる恐怖で破滅的な状況に直面している」と語りました。
 イスラエルは今年1月にガザ北部でイスラム組織ハマスの部隊を解体したと説明していましたが、ハマスが戦闘力を回復させないためとしてもジャバリヤに攻撃を行っています。
 WHOによると、ガザ北部で機能している病院はアルアウダ病院のほかは、ベイトラヒヤにあるカマルアドワン病院だけです。テドロス事務局長は21日、同病院が攻撃されて集中治療室や受付、屋根などに損害が出たと述べました。
 テドロス氏によると、医療スタッフ20と悪者13人が院内に残っていますが、避難のための活動が続いています。「医療従事者と患者を退避させれば、病院は機能しなくなり、ガザ北部の医療サービスはさらに枯渇する」として、患者と医療従事者の保護を訴えまし
た。

ICCに対抗措置も 公聴会で国務長官 市民は抗議
 プリンケン米国務長官は21日、上院の外交委員会と歳出委員会の公聴会に相次いで出席し、イスラエルのネタニヤフ首相らへの逮捕状を請求した国際刑事裁判所(ICC)に対して、米議会と連携して「適切な対抗措置」をとる考えを示しました。公聴会では市民がブリンケン氏に抗議。与党。与党民主党の進歩派からは逮捕状請求を支持する声も出ています。

 ブリンケン氏はICCの判断について「誤った決定だ」とし、イスラム組織ハマスとイスラエルを同列に扱っているなどと主張しました。議会の超党派で協力し、対抗措置を検討するとしました。
 現地からの報道によると、外交委員命では発言するブリンケン氏の後ろに市民が「犯罪者」と書いたプラカードを掲げ、イスラ工ルのジェノサイド(集団殺害)に加担していると抗議しました。この日の二つの委員会でブリンケン氏の発言は少なくとも6回、傍聴している市民からの抗議で中断されました
 議会では「イスラエルの友人を助けるためにもICCに制裁を科すことを望む」(共和党のグラム上院議員)、「ICCの決定は間違った方向への一歩」(民主党のカーディン上院議員)などイスラエルを擁護する声が少なくありません
 一方、民主党進歩派のサンダース上院議員は20日の声明で、ICCはウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領にも逮捕状を出していると指摘。「国際社会が国際法を順守するこが不可欠だ」と強調し、逮捕状請求を歓迎しました。
 党のオマル下院議員も20日、ICCの動きは「重要だ」とし、バイデン政権に
対して協力を求めました(嶋田峰隆)

著名人権弁護士アマル・クルーニーさん 専門家パネルに参加
ICC・逮捕状請求 「正義もたらす歩」 
                       しんぶん赤旗 2024年5月23日
 【ロンドンー時事国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官がイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を購求したことに,関し、米俳優ジョージクルーニーさんの妻で弁護士のアマル・クルーニーさんは20日、請求を支持した専門家パネルに加わっていたと明らかにしました。4ヵ月以上前に主任検察官に要請され、参加したといいます。
 アマルさんは声明で「いかなる紛争も加法が及ぱないということはあってはならない」と強調。逮捕状請求を「イスラエルとパレスチナでの残虐行為の犠者に正義をもたらす歴史的一歩」と評価しました。
 パネルはアマルさんら複数の法律専門家で構成され、全会一致で請求に。国際法などを専門とするアマルさんは、これまでも人権や紛争を巡る多くの訴訟に携わってきました。



アイルランド、スペイン、ノルウェー パレスチナを国家承認
                        しんぶん赤旗 2024年5月23日
 【ベルリンー西本博美】欧州のアイルランド、スペイン、ノルウェーの3カ国は22日、パレスチナを28日付で国家として承認すると発表しました。これら3カ国は、昨年10月7日のイスラム組織ハマスの越境攻撃を批判しつつ、パレスチナ自治区ガザでイスラエルが続けている国際人道法違反を厳しく非難してきました
 3力国の政府は、中東の永続的な平和と安定を実現しうる唯の政治的解決策はイスラエルとパレスチナの「2国家共存』だど指摘しました。
 3カ国による同時発表は、スペインのサンチェス首相が主導しました。1991年にはマドリードで、イスラエルとパレスチナの和平を目指す中東和平国際会議を主催しており、アラプ諸国とも深い関係を持ちます。連立与党の左派政党も、パレスチナ国家承認をかねてから主張していました。
 アイルランドのハリス相は記者会見で、英国の植民地・占領下からアイルランドが民族自決と独立を勝ち取った歴史に触れながら、パレスチナの国家承認を表明しました。
 ノルウェーは、イスラエルパレスチナの和平交渉を仲介し、1993年の「オスロ合意」につなげた経緯がありますが、この、イスラエルの国連決議、国際人違反に対する批判を強めていました。
 今後もベルギーやスロベニアなど複数の欧州連合(EU)加盟国がパレスチナを国家承認する見通しを明らかにしています。