アルジェリアが安保理に出したパレスチナを国連加盟国に勧告する決議案を4月19日に採決した結果、理事国15か国中、賛成が日・仏など12か国、棄権が英・スイスの2か国でしたが、米国が拒否権を発動し否決されました。
国連総会は5月10日の緊急特別会合で、パレスチナの国連加盟を支持し、安全保障理事会に再検討を求める決議を日仏中ロを含む143か国の賛成多数で採択しました。
これだけではパレスチナは残念ながら国連に加盟出来ませんが、今後、国連で提案や修正案を提出する権利や、国連総会の委員会などで役員に選出される権利などが認められます。
採決に当たりパレスチナのマンスール国連大使が行った演説は、
「イスラエルの首相はパレスチナ国家が、存在にかかわる脅威だと公然と宣言し、われわれを地理や歴史から消し去り、民族浄化、アパルトヘイト(人種隔離)、ジェノサイド(集団殺害)をもたらそうとしている。
パレスチナが自由な諸国の共同体の中に正当な地位を得る日は必ず来る。占領と植民地支配、死と破壊はわれわれの運命ではない。それは私たちに押し付けられたものだ。自由こそ唯一の運命だ」・・・と格調の高いものでした。
それに対してイスラエルの国連大使は、国連総会の壇上で小型のシュレッダーで国運憲章を裁断し、パレスチナをナチス・ドイツに続く「ユダヤ民族の存在を脅かす新たなジェノサイド体制」「将来のテロ国家」と呼び、国連が「国連憲章を無視した」と主張しました。そして「あなた方が自らの手で国連憲章をシュレッダーにかけている」と述べたうえでシュレッダーのパフォーマンスを行い、「恥を知れ」と吐き捨てて降壇しました。
何とも無茶苦茶で理解しがたい話です。この演説はパキスタンの国連大使やアイルランドの国連大使から当然のように批判されました。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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パレスチナ国連加盟支持 143カ国賛成 決議採択
しんぶん赤旗 2024年5月12日
【ワシントン=石黒みずほ】国連総会(193カ国)は10日の緊急特別会合で、パレスチナの国連加盟を支持し、安全保障理事会に再検討を求める決議を日仏中ロを含む143カ国の賛成多数で採択しました。法的拘束力はありませんが、国際社会の総意を示しました。討論では、多くの国がイスラエルのガザ侵攻を批判し、即時停戦やパレスチナ支援の重要性を訴えました。
反対はイスラエルや同国を擁護する米国などわずか9カ国にとどまり、英国など25カ国が棄権しました。
決議が採択されたことにより、現在「オブザーバー国家」の位置づけとなっているパレスチナは、国連で提案や修正案を提出する権利や、国連総会の委員会などで役員に選出される権利などが認められます。正式な加盟国となるには安保理が加盟を勧告した上で、国連総会で承認される必要があります。
安保理は4月、常任理事国の米国が拒否権を行使し、パレスチナの正式加盟を総会に勧告する決議を否決しました。これを受け、アラブ首長国連邦(UAE)がアラブ諸国を代表し、安保理に再検討を求める決議を総会に提出。同国のアブシャハブ国連大使は「決議案の採択が長年にわたる不正義を正す歴史的な一歩になる」として、支持を呼びかけました。
パレスチナのマンスール国連大使は「私たちの自由は平和への障害ではなく、平和への唯一の道筋となる」と強調しました。
パレスチナ承認は平和の核心
フランシス国連総会議長は、イスラエルとハマスの衝突以降、中東地域全体が大惨事の瀬戸際に立たされているとし、停戦合意の実現を要求。加盟国に対し「われわれの最大の目的である平和にむけてコミットする時だ」と訴えました。
採決後の議論では、4月にパレスチナ国家承認を決定したカリブ海のバルバドスが「関係国は中東地域の永続する平和に向けて歩み寄る時であり、パレスチナの国家承認は平和の核心となる」と強調しました。
アフリカのカボベルデは、人々の平等の権利と民族自決権を原則とした国連憲章に基づき、決議に賛成したと指摘。「人道的惨事の下、パレスチナの人々は国際社会に全面的に支持されなければならない」と訴えました。
「2国家解決が、イスラエルの長期的な安全とパレスチナの国家として存在する正当な望みを実現する唯一の解決策だ」(ルクセンブルク)、「パレスチナを加盟国として認めることが、2国家解決に向けた重要な一歩となる」(ポーランド)などの発言が相次ぎました。
自決、独立、国連加盟はパレスチナ人民固有の権利
マンスール国連大使演説(要旨)
しんぶん赤旗 2024年5月12日
10日の国連総会でパレスチナのマンスール国連大使が行った演説の要旨は以下の通り。
ガザで3万5000人以上が殺され、8万人が障害を負い、200万人が家を失った中でここに立っている。イスラエルの計画は変わっていない。破壊と追放だ。病院の敷地で大量埋葬地が発見され続けている。世界は、パレスチナ人に対する行為の規模や残虐性をまだ理解し始めてすらいない。
イスラエルの首相は、政治的生き残りのために数千人をさらに殺害する用意がある。彼はパレスチナ国家が、存在にかかわる脅威だと公然と宣言し、76年前のナクバ(大災厄)を継続し、(パレスチナ人追放を)完了させようとしている。
われわれを地理や歴史から消し去り、民族浄化、アパルトヘイト(人種隔離)、ジェノサイド(集団殺害)をもたらそうとしている。
パレスチナで、世界で、コロンビア大学のキャンパスで、パレスチナの旗は誇り高くひるがえっている。それは自由と公正を信じる人々のシンボルとなっている。
われわれは、国連憲章や国際法をわれわれにも滴用してほしいと要求しているだけだ。パレスチナ人民を追放し、破壊しようとするキャンペーンが究極の水準に達しているとき、民族が先祖の土地に自由と尊厳のうちに生きる権利、その権利の承認を必要とする平和を支持することをあなた方は決定できる。
解放運動が一つ一つ正当な地位を占めてきたこの議場に私はいる。パレスチナが自由な諸国の共同体の中に正当な地位を得る日は必ず来る。占領と植民地支配、死と破壊はわれわれの運命ではない。それは私たちに押し付けられたものだ。自由こそ唯一の運命だ。
私たちの自決、独立国家、国連加盟への権利は、イスラエルの拒否権の対象となってはならない。交渉の対象でもない。パレスチナ人民の固有の権利だ。
決議案への賛成票は、パレスチナ人の生存への投票だ。いかなる国への反対でもない。
「パレスチナに自由を」、決議案に賛成票を。ありがとう。
国連憲章を裁断 イスラエル国連大使、演壇で
しんぶん赤旗 2024年5月12日
イスラエルのエルダン国連大使は10日、パレスチナの正式加盟を支持する決議案が討議された国運総会の壇上で、小型のシュレッダーで国連憲章を裁断しました。
エルダン氏は、パレスチナを第2次大戦でのナチス・ドイツに続く「ユダヤ民族の存在を脅かす新たなジェノサイド体制」「将来のテロ国家」と呼び、国連が「国連憲章を無視した」と主張。「あなた方が自らの手で国連憲章をシュレッダーにかけている」と述べたうえでシュレッダーのパフォーマンスを行い、「恥を知れ」と吐き捨てて降壇しました。
パキスタンのアクラム国連大使は、「今日、国連、国連総会、加盟国に対する侮辱を聞いた。これは侵略者の傲慢(ごうまん)だ。過去70年間、国連憲章にうたわれたパレスチナ人民の自決権を踏みにじってきた占領者が処罰されてこなかった事実を反映している」と厳しく批判。イスラエルの行動は「加盟国の期待や国逓の基準や慣行に反する」として、「総会はこのような侮辱に適切な対応を行うだろう」と述べました。
決議案への賛同が「テロヘの報賛」だとのイスラエルの主張には、アイルランドも反論。「本日の決議は、外交の力、国際法の力、グローバルな多国間システムの力の証明だ」と述べ、「パレスチナが暴力やテロではなく、政治と外交、国際法制度、説得の力を行使することを約束するという宣言だ」と指摘しました。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。