2024年5月1日水曜日

揺らぐ自民 共闘が威力(しんぶん赤旗)

 今回の衆院3補選では野党共闘が「全勝」しました。
 国民が厳しく裏金問題を批判する中でも自民党は一番肝心な真相究明」を全くしませんでした。そのうえ議員の処分も中途半端だったし、政治資金規正法の改正案もお粗末窮まるもので、裏金問題を解決しようとする姿勢が皆無でした。正に醜態であって自民党のお粗末窮まる実態が改めて国民の前に暴露されました。
 しんぶん赤旗が掲題の記事を出しました。
 「しんぶん赤旗」の裏金スクープに注目し独自の調査も重ねて刑事告発した上脇博之神戸学院大学教授は「裏金事件の影響は思った以上に大きかった」、「加えて自民党が候補を立てられなかった長崎・東京で第2自民党維新も負けた。つ勝ったのは野党共闘で、市民と野党の共闘が力を持つという希望を再び示した(要旨)と語りました。
 今回の衆院3補選では、自民党に「対峙する」野党勢力が共闘することの重要性が改めて明らかにされました。
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政治考 揺らぐ自民 共闘が威力
                       しんぶん赤旗 2024年4月30日



東京15区補選勝利を聴衆に呼び掛ける酒井候補(左から4人目)と日本共産党の田村智子委員長(その右)ら=16日、東京都江東区



 「始まる前から厳しい状況だった。何をやっても埋められなかった。すべての取り組みが効果なし。岸田首相が島根に2回入ったが逆効果だった。逆風というより冷たい風が吹いていた」
 不戦敗含め自民党が全敗した衆院3補選投開票から一夜明けた29日、自民党議員の一人は、国民にそっぽを向かれる政権党の苦境を吐露しました。
 一番肝心な真相究明の部分でモヤがかかったままだ。このままでは何をやっても信用されない。処分も中途半端。法改正の対応も遅いし中身が薄い。すべてがツーリトル・ツーレート(小さすぎるし、遅すぎる)。これでは支援者の納得さえ得られない」

 裏金問題での政権への不信任を認めざるを得ません。
 自民党が唯一候補を擁立した保守王国・島根でも大差の敗戦。メディアの出口調査でも、投票した8割近くが裏金問題を重視したとし、「重視した」人のうち65%が立憲民主党公認で共産党が自主支援した亀井亜紀子氏に投票しました(「朝日」)。
 「しんぶん赤旗」の裏金スクープに注目し独自の調査も重ねて刑事告発した上脇博之神戸学院大学教授(憲法学)は「裏金事件の影響は思った以上に大きかった。弔い合戦となった島根でも大差で負けている」と指摘。「加えて自民党が候補を立てられなかった長崎・東京で維新が勝てなかった。つまり第2自民党も負けた。三つ勝ったのは野党共闘だ。市民と野党の共闘が力を持つという希望を再び示した」と語ります。
 ただ投票率が低く課題は残るとし、「裏金をなくす政治改革」に向けた積極的提案とともに「野党共闘への積極的支持を広げるには、国民生活が変わるという『政治を変える』政策を示すことが重要だ」と語り、国会内外での市民と野党の闘いを強調しました。

 自民党閣僚経験者の一人は「裏金スクープも含め、野党3勝は共産党の力が大きい。選挙協力が絶大な威力を見せた」と指摘します。
 揺らぐ自民党政治に対し、野党がこれに代わる共闘の対抗軸を国民に示せるかが改めて政治の大きな焦点となっています。
 立憲民主党の手塚仁雄衆院議員は「東京15区での市民と野党の共闘による勝利はとてつもなく大きな価値がある。いま政治が変わっていく潮目の変化に直面していると感じる」と強調。「『利権やお金で動く古い政治と決別し、まっとうな政治を』との酒井なつみ候補の訴えが、無党派を含む幅広い有権者の支持を集めた。ぶれずに都知事選、都議補選、解散・総選挙へとつなぎたい」と語ります。
 岸田首相による「会期末解散」もささやかれるなか自民党議員の一人は語ります。
 早期解散に突っ込めば『政権交代』、少数野党への転落もある。自公VS野党共闘の一騎打ちの構図をつくられたらビックリするような結果になる

できない「岸田降ろし」
 全敗の結果を受けても、「岸田降ろし」の可能性について自民党内は否定的な見方が支配的です。
 前出の議員の一人は「そもそも今、とてもそんな元気はない。これだけ批判されて反省もせずに内ゲバを始めたら国民から見放される」と述べます。
 別の議員も「今や自民党の組織としてのガバナンス(まとまりのある運営)が全く利いていない。幹事長は動かないし、みんな党のことより、自分のことばかり考えている。組織全体の信用が低下している中で、岸田首相の責任だけを問題にできる状況ではない」と語ります。自民党全体の信用が地に落ち、まさに表紙を替えようにも代わりがいない状況です。

「融解」する党組織
 さらに自民党組織そのものの「融解」を憂う声も。前出の閣僚経験者の一人は「自民党はもともと一人親方の世界のようなところがある。派閥解消は仕方ないが、派閥がなくなると党としてのガバナンスの基盤がなくなる。次第に烏合(うごう)の衆のようになっていく。それが今一番の心配だ。政党組織という点では共産党が一番しっかりしている」。
 別の議員は「党の立て直しを担える人材が見えない。小選挙区制の弊害だ。自分の力でなく党次第、党首の人気次第、風向き次第で選挙と政治を考えてきた。人物の劣化がはなはだしい」と語ります。
 大政局の進行のもと、裏金問題を含む「自民一強」のもとでの組織のひずみが、国民の厳しい批判の中で急速に露呈しています。

露呈した経済無策
 同時に、自民党の危機の根底には、30年にわたり経済成長が止まり、賃金が上がらず、少子化が止まらず、有効な手だても見えない―経済無策への失望があります。異常円安はさらに加速し、物価の高騰は生活を圧迫し続けています。
 自民党議員の一人は「円安というより『円弱』になって諸外国からいいようにたたかれている。アベノミクスのひずみで借金が増え、利上げが難しいことなどが見透かされている。これも『一強』のツケだ。インフレ高進の中で庶民の収入は増えない。官製賃上げは中小には及んでいない。年金生活者などには厳しい。財界の資金を原資とする裏金が庶民に苦しい経済政策につながってきたとなると、批判は根深い」と語ります。
 同時に敵基地攻撃の体制強化の中で、米国にすがって延命を図ろうとする岸田政権が、自衛隊と米軍の司令部の統合を進めるなど日米同盟の大変質を強行するもと、新たな市民の闘いの機運が強まっています。

政治資金が焦点に
 今後、国会終盤における政治資金規正法の改正問題が政治の焦点になってきます。
 ところが、政治資金パーティーの禁止を含む企業・団体献金の全面禁止の問題では自民党議員、関係者は一様に後ろ向きです。
 「規正法改正なんていうのは永田町の論理でしかない。国民には関心がない」「裏金にしていたことが問題で、報告書への記載の義務付けや政治家の責任の強化、透明化が中心のはずだ」という声が相次ぎます。
 一方で、「企業は名前が出ることを嫌う」とパーティー券購入の不記載を半ば容認する声さえ出る始末です。そもそも企業側にはパーティー券購入の記録を公開するシステムがなく、企業によるパーティー券購入の実態は深い闇の中にあります。
 政治資金パーティーの禁止を含む、企業・団体献金の全面禁止を一貫して主張し、この問題での論戦をリードしてきた日本共産党の真価を発揮するときです。

総裁選の前倒しも
 9月には自民党総裁選が予定され、新総裁が選出されれば総選挙になるとする見方で永田町の衆目は一致しています。総裁選前倒しの可能性を指摘する声も出ています。
 日本共産党は総選挙での躍進と共闘の前進を両立させるために全力をあげていきます。
                    (中祖寅一)